栗駒南部地熱地域に分布する赤倉カルデラは, 径約10×9 kmの地形的カルデラ壁を有し, カルデラ形成期火山砕屑物の奥羽山層, 陥没盆地を埋積した管ノ平層, 後カルデラ期のみみずく山デイサイトに埋積される.奥羽山層は, カルデラ形成に直接関与した火砕流堆積物(珪長質火山礫凝灰岩相)とカルデラ壁の崩落堆積物(凝灰角礫岩相)からなる.赤倉カルデラの形成は, 広域的な基盤岩の隆起に始まり, 直径約5 kmの奥羽山ドーム縁辺部に推定される構造的カルデラ壁(陥没断層)沿いからの火砕流噴出を引き金にして, 陥没と基盤岩の斜面崩壊が同時に発生した.形成時期は鮮新世もしくは前期更新世である.火砕流の噴出量は11 km
3以上, 陥没深度は1,400 m以上ある.赤倉カルデラは基盤岩の広域隆起構造, 重力異常から推定される地下構造, 陥没盆地を埋積する堆積相, 構造的カルデラ壁沿いの火道, 再生ドームの存在などバイアス型カルデラに類似した特徴を有する.
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