地質学雑誌
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108 巻, 10 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 及川 輝樹
    2002 年 108 巻 10 号 p. 615-632
    発行日: 2002/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    飛騨山脈南部に位置する焼岳火山群の地質,火山発達史,噴火様式の特徴を,火山層序学,K-Arおよび14C年代測定値などを基に明らかにした.焼岳火山群は,大棚,岩坪山,割谷山,白谷山,アカンダナ,焼岳の6つの火山に大別され,26ka以降に活動した新期(焼岳,アカンダナ,白谷山)と120-70kaに活動した旧期(割谷山,岩坪山,大棚)に分けられる.最も若いマグマ噴火は,2.3ka(calBP)の中尾火砕流堆積物と焼岳円頂丘溶岩である.この火山群は,複雑な斑晶組み合わせをもつ安山岩からデイサイト質の溶岩ドームおよび溶岩流とそれに伴うblock and ash flow堆積物で構成される.この火山群は,その一生を通して降下軽石やスコリアを噴出せず,爆発的な噴火は行わなかった.新期焼岳火山群の長期的マグマ噴出率は0.1-0.35km3/kyであり,この値は日本の第四紀火山の平均的な値である.しかし,焼岳火山群の体積は日本の平均的な火山より小さい.つまり,焼岳火山群は活動時期が短いがゆえに体積が小さい.最近の噴出率が落ちていないことを考慮に入れると焼岳火山群の活動はまだ続き,今後も溶岩ドームおよび溶岩流の形成とそれに伴うblock and ash flowの形成という非爆発的な噴火を繰り返すと考えられる.
  • 安原 盛明, 入月 俊明, 吉川 周作, 七山 太
    2002 年 108 巻 10 号 p. 633-643
    発行日: 2002/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    大阪平野南部の堺市で掘削されたボーリングコアから採取した33試料中から少なくとも72種群の貝形虫化石が産出した.クラスター分析の結果これらの試料は大きく6個のbiofaciesに区分された(PS,SBm,LS,PL,CL,LC).本研究では完新世における堆積環境と相対的海水準の変化を貝形虫群集に基づいて復元した.大阪平野南部では,約9,000-6,000年前(暦年)に急激に海水準が上昇し,その後,現在の海水準まで下降した.最高海水準期は約6,000-5,600年前(暦年)であった.この海水準変動の傾向は大阪平野中央部や大阪湾海域での海水準変動によく類似しているため,これらの傾向は大阪堆積盆地で高い普遍性を持つと考えられる.また,塩分濃度,海岸線からの距離,沿岸流や波浪による影響は相対的海水準変動と良く対応して変化する.
  • 釘宮 康郎, 高須 晃
    2002 年 108 巻 10 号 p. 644-662
    発行日: 2002/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    地形が急峻なため十分な地質調査がなされていなかった四国中央部別子地域三波川変成帯中のテクトニック・ブロックである五良津西部岩体およびその周辺地域の詳細な地質調査を行い,地質図を作成した.五良津西部岩体は,構造的下位から上位へ,かんらん岩,単斜輝石角閃石岩,ざくろ石緑れん石角閃岩,ざくろ石白色雲母角閃岩,大理石,緑れん石石英岩および曹長石白色雲母石英片岩の7つの岩相に区分された.これらの岩相の変成岩の原岩は,それぞれ超苦鉄質岩,はんれい岩,塩基性火山砕屑岩,石灰岩,石灰岩の混ざった珪質堆積岩および泥質岩である.周囲の三波川結晶片岩の塩基性片岩が珪質片岩を伴うのに対して,五良津西部岩体は大理石に富む.これらの結果より,五良津西部岩体の原岩は,頂部に礁性石灰岩を伴う海山,海台あるいは島弧のような海洋プレート上の高まりであったと考えられる.
  • 一瀬 めぐみ, 田中 均, 高橋 努, 宮本 隆実, 川路 芳弘
    2002 年 108 巻 10 号 p. 663-670
    発行日: 2002/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    山中地溝帯の下部白亜系は,従来,岩相や産出化石よりテチス北方型動物群を産する四国の物部川層群に対比されてきた.今回,その東域の中ノ沢および日向沢から見い出した二枚貝化石群集は,これまで報告されていたテチス北方型動物群とは異なり,それらの群集構成はアルビアンのテチス型動物群(熊本県の八代層産の動物群に代表される)とほぼ一致する.それらは山中地溝帯下部白亜系のテチス北方型動物群とは,汎世界的な種を除き,共通する種はほとんど見られない.したがって,山中地溝帯東域の下部白亜系にはテチス北方型動物群を産する下部白亜系に加え,新たにテチス型動物群を産するアルビアンの地層の存在が明らかになった.さらにこのテチス型動物群を産する地層は,西南日本の相当層などとの比較・検討から,武井(1964)が報告したTnoceramus cf hobetsensisを産する上位層との関連性が高いことが示唆される.
  • 石渡 明, 今坂 美絵
    2002 年 108 巻 10 号 p. 671-684
    発行日: 2002/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    丹後半島中央部に分布する八鹿累層は前期中新世の日本海拡大時に噴出した玄武岩~安山岩質溶岩および火砕岩からなる.それらの斑晶組み合わせばType1がOl-Cpx-Pl,Type2がOl-Opx-Pl,Type3がOl-Pl,そしてType4がPlであり,FeO*/MgOはこの順に増加するがSiO2はほぼ一定のソレアイト的分化傾向を示す.これらはLILEおよびLREEに富み,ZrやZr/Yが高く,Nbに涸渇し,大陸性島弧火山岩の特徴を示す.新発見のType1ピクライト質玄武岩はMgO(12wt.%),Ni(300ppm),Cr(1,100ppm)に富み,スピネルのCr/(Al+Cr)が0.64-0.84で他のType1玄武岩(0.49-0.59)より高いが,液相濃集元素組成や他の鉱物化学組成はそれらと同様である.このピクライト質玄武岩は,他の八鹿累層火山岩類と同じ給源マントルから,若干含水条件下で,温度上昇による高い部分溶融程度で形成されたと考えられる.同様なピクライトは活動的背弧海盆の沖縄トラフ周辺にもあり,日本海拡大初期の高温マントルの上昇を示唆する.
  • 鈴木 舜一, 関根 義孝
    2002 年 108 巻 10 号 p. 685-688
    発行日: 2002/10/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
  • 野村 律夫, 西 弘嗣, ODP Leg199 乗船研究者一同
    2002 年 108 巻 10 号 p. XVII-XVIII
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    暁新世―始新世の境界(~55Ma)では深海底生生物種の30~50%が絶滅した. この絶滅イベントは酸素と炭素のそれぞれの同位体比がスパイク状に負ヘシフトしたことと対応している. -2%にも及ぶ底生有孔虫のδ18 のシフトからは深海と表層の水温較差が減少し, 極域の海洋は約18℃まで温暖化したと考えられている(Kennett and Stott,1991). これはLate Paleocene Thermal Maximum (LPTM)として知らていれる. これまで,このような化石群集・同位体イベントを記録した地層には多色性のある顕著な岩相変化が認められていなかった. Ocean Drilling Program Leg 199は,東太平洋の低緯度域で暁新世と始新世の境界を記録する連続コアの回収に成功した(第1,2図). 底生有孔虫の絶滅層準付近の色調変化は著しく, 特に絶滅層準は生物擾乱のない均一な粘土層の下底と一致する. ここでは,カルシウム,マンガンをはじめとする元素の急激な量的変化が起こっている. これら一連の変化は熱水活動等によって深層水・底層水の急激な酸性化が起こったことを示唆する(第3~5図). この時期の海底熱水活動には巨大火成岩区 (たとえば,北大西洋火山岩区) の形成が深く関係していると考えられる (Wignall,2001). 火山活動に伴う温室効果ガスの放出は, 生物の絶滅イベントや急激な温暖化現象を考察するうえでこれから重要な視点となろう.
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