地質学雑誌
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108 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 高橋 昭紀, 三次 徳二
    2002 年 108 巻 5 号 p. 281-290
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北海道天塩中川地域上部白亜系の佐久層にはチャネル充填堆積物である礫岩部が見られ,上部チューロニアン階に対比される.その礫岩部の複数の礫中から各々中~上部チューロニアン階と上部セノマニアン階を示すアンモナイト類,イノセラムス類が産出した.上記の生層序と産出化石の検討から次の知見が得られた.(1)チャネルがその上流部においてセノマニアン階まで削り込んでいた,あるいはチャネル構造が形成された時,大規模な海退が本地域において生じた結果,陸上ないし陸棚浅海域が削剥されたと推定される.(2)Inoceramus pedalionoidesの初出は,上部チューロニアン階下部~中部チューロニアン階までさがる可能性がある.(3)Eubostrychoceras cf. japonicumを含む石灰質団塊(礫)は,本種の出現(中期チューロニアン期)からチャネル構造の埋積(後期チューロニアン期)の間に形成されたことが示唆される.
  • 狩野 謙一, 丸山 正, 林 愛明
    2002 年 108 巻 5 号 p. 291-305
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    飛騨山地南部を北西-南東方向に走る境峠断層の第四紀後期における活動を,変動地形と活断層露頭の観察をとおして明らかにした.断層にそって屈曲した中~後期更新世の段丘面を開析する流路からは,数100m規模の左横ずれ変位を見積もることができる.また,断層はこれらの段丘面に数10mオーダーの垂直変位を与えている.断層面に沿って基盤岩中に発達する脆性断層岩の非対称変形組織は,この断層が左横ずれ成分が卓越した断層であることを示唆している.以上から,境峠断層は後期更新世以降に数mm/年の平均変位速度を持って活動してきた左横ずれ断層であることが示唆される.断層で変位した堆積物の14C年代測定によって,この断層の最新活動は1400±40y.B.P. 以降であり,西暦762年あるいは841年の地震のどちらかと関係していることが明らかとなった.
  • 清水 以知子, 島田 耕史
    2002 年 108 巻 5 号 p. 306-317
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    走査型レーザー顕微鏡(laser scanning microscope, LSM)によって岩石組織をデジタル画像として直接読み取り,定量的に解析する方法を報告する.LSMはレーザーを光源とする走査型の光学顕微鏡である.レーザー光の指向性と,これを利用した共焦点法によって,解像度のよい鮮明な画像が得られることに加え,試料の深さ方向にも解像度をもっという利点がある.LSMを用いた表面形状解析では,結晶粒界を鮮明に可視化することができる.岩石鉱物の観察のため,偏光フィルターを挿入して単ニコル・直交ニコル像の取得を可能にした.光源にはKr-Arレーザー(青・緑・赤の3波長同時発振)を備えており,カラー画像の取得や分光顕微鏡としての様々な応用が可能である.得られたデジタル顕微鏡画像を用いて鉱物の光学的性質の画像解析や,特定鉱物のマッピングなどの画像処理を行った.
  • 大清水 岳史, 井龍 康文
    2002 年 108 巻 5 号 p. 318-335
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    沖縄本島中部の勝連半島沖の島々には,主に第四紀更新世のサンゴ礁性堆積物よりなる琉球層群が分布する.本層群は,砂質石灰岩・石灰質砂岩よりなる上部鮮新統~下部更新統の知念層を整合関係で覆う.調査地域の琉球層群はその主体を占める与勝層と,それを不整合で覆う港川層より構成される.与勝層は5つのユニットの累重体であり,個々のユニットは低海水準期の浅海相であるサンゴ石灰岩から高海水準期の沖合相である石灰藻球・Cycloclypeus-Operculina・砕屑性石灰岩へと上方深海化する整合一連のシーケンスよりなる.本層の分布高度は125mに及び,層厚は30mに達する.港川層は主に淘汰のよい砕屑性石灰岩より構成され,サンゴ石灰岩を伴う浅礁湖の堆積物である.港川層は伊計島と津堅島に広く分布し,その層厚は約30mであるが,分布標高は40mを超えない.現時点では両層の地質年代は不明である.
  • 小野 晃
    2002 年 108 巻 5 号 p. 336-346
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    白亜紀中期に肥後-阿武隈帯が形成された.ジュラ紀付加体の重複配列の形成とほぼ同時であったと考えられる.変成帯の冷却・隆起は95Ma頃で,四万十帯の付加体が形成され始めた時期である.変成岩の年代データからみて,肥後-阿武隈帯と三波川-神居古潭帯は同一の島弧-海溝系で形成されたと思われる.この制約のもとで,日本列島のテクトニクスをまとめると:白亜紀中期には西南日本内帯の東方を東北日本や西南日本外帯の地質体が北方へ移動中であった.移動していた地質体の東縁部のサブダクション帯で三波川-神居古潭帯が形成され,その西縁部で肥後-阿武隈帯が形成された.あまり移動しなかった西南日本内帯の東縁部には領家変成岩が形成された.この横ずれ移動は95Ma頃に終息し,その頃に構造運動の状況が大きく変化した.その後,西南日本の大部分の肥後-阿武隈帯はナップ・テクトニクスによって消滅した.
  • Toshiaki Shimura, Toshiko Kawai, Shin-ichi Kagashima
    2002 年 108 巻 5 号 p. 347-350
    発行日: 2002/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Spinel+quartz assemblage is one of the indicators of ultrahigh-temperature (UHT) metamorphism. Metamorphic xenoliths of granulite facies occur in the Sumikawa Granite, Niigata Prefecture. We found the spinel+ quartz assemblage from a pelitic metamorphic xenolith in the granite body. The metamorphic textures show a clockwise P-T-t path and the metamorphic reactions follow the order;Grt+Sil=Spl+Qtz, and Spl+Qtz=Crd. According to thermodynamic model, the spinel+quartz assemblage in this rock is thought to be stable at T>860°C and P>600MPa. This assemblage was presumably generated by metamorphism in the lower crust in the Uetsu area.
  • 澤ロ 隆, 清水 以知子
    2002 年 108 巻 5 号 p. XI-XII
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    走査型レーザー顕微鏡(laser scanning micro-scope, LSM)は単色光であるレーザーを光源とする光学顕微鏡である. レーザーによる像は, 光電変換によりデジタル画像としてパソコン上に格納されるので, 画像処理による岩石組織の可視化に適している(詳細は清水・島田(2002)を参照). 今回使用したLSMは, オリンパス光学工業(株)のFLU-OVIEWである. ここでは北海道日高変成帯, 幌満カンラン岩体のマイロナイト化したハルツバーガイトの観察例を紹介する. 鏡面研摩した薄片を40%ニフッ化アンモニウム水溶液に浸し, 結晶粒界を10分間エッチングしている.
    反射モードでは共焦点光学系がもちいられているため, 走査像には反射強度のほか, 試料面の傾きや凹凸についての情報が含まれている(図1a). 表面反射率をマッピングするには, 試料ステージを深さ(z)方向に変化させたたときの最大輝度をステージに平行な面(xy面)に投影する(図1d,図2b). 透過モードの画像(図2a)では, 赤(レーザー波長647nm)・緑(568 nm)・青色(488 nm)の偏光像を重ね合わせ, 干渉色を表している. LSMにおける干渉色は, 単なる写真の代用にとどまらず, 鉱物の光学的性質そのものを数値化した色情報として利用できる。
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