地質学雑誌
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119 巻, 3 号
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論説
  • 南條 貴志, 佐々木 圭一, 松田 博貴
    2013 年 119 巻 3 号 p. 155-170
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    鹿児島県喜界島北東部で掘削されたSTb-1コアとSTb-2コアを用いて,炭素・酸素同位体組成による地表露出面の認定とそれに基づく海水準変動の復元を行った.その結果,STb-1コアで3層準,STb-2コアで2層準の炭素・酸素同位体組成の負方向へのシフトが認められ,岩相,鉱物組成および続成組織の結果と合わせ,これらの負方向へのシフトは地表露出面であることが明らかとなった.また,STb-1・STb-2両コアの年代は,すでに年代の得られている露頭との対比から約62~52 kaであることが明らかとなった.
    地表露出面から地表露出面までを1つの堆積ユニットとして,シーケンスⅠ~Ⅳの4つに区分すると,各シーケンスは氷床コアにおける酸素同位体曲線のIS-17~IS-14に対応すると考えられる.したがって,炭素・酸素同位体組成に基づく地表露出面の認定は,数千年程度の短周期の海水準変動に伴う地表露出面まで認定できると考えられ,浅海成炭酸塩岩を用いて詳細な海水準変動や堆積シーケンスを復元することに有効であると考えられる.
  • 重野 聖之, 七山 太, 須藤 雄介, 嵯峨山 積, 長谷川 健, 安藤 寿男
    2013 年 119 巻 3 号 p. 171-189
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    北海道東部沿岸,厚岸湾沿岸地域には,日本では珍しい現在でも活動的なバリアーシステムが存在している.その成立過程と現存する理由について,ボーリング試料を用いて堆 積学的手法,古生物学的手法ならびに炭素同位体年代を用いて検討した結果,以下の3点が明確となった.(1)厚岸湾沿岸低地に後氷期海進が到達したのが11400年前である.この当時の海面の高さは現在より50 m低かった.その後の後氷期海進によって,厚岸バリアーシステムが成立したのは8800年前であり,現在もバリアーシステムは維持されている.(2)厚岸低地においてバリアーシステムが現在も地形的に維持されている理由としては,5500年前から続く海面の停滞の影響が大きく,この時期に厚岸湖のカキ礁も上げ潮三角州上に 生成し始めたものと推測される.(3)現在のバリアーシステムが地形的に明瞭であるのは, 17世紀の巨大地震以降の1 cm/年に達する急激な地震性沈降による影響が大きい.
  • 岩田 智加, 亀井 淳志, 岩田 克彦, 柴田 知之, 三谷 明日華
    2013 年 119 巻 3 号 p. 190-204
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    山陰帯島根県奥出雲町に産する阿毘縁花崗閃緑岩は,普通角閃石黒雲母花崗閃緑岩で構成され,北部で横田花崗岩体(黒雲母花崗岩)と,南部で竜駒花崗岩体(黒雲母花崗閃緑岩)と接する.野外調査によりこれらが同時期に活動したことが明らかとなった.阿毘縁岩体のRb–Sr全岩年代は60.5 ± 6.3 Ma(SrI = 0.7053)で横田岩体の既報年代(約59.6 Ma: SrI = 0.7048)と近似し,野外調査の結果と矛盾しない.一方,両SrI値は異なり,本地域では同位体組成の異なるマグマが隣接して存在したことが示唆される.阿毘縁岩体は火山弧型のマグネタイト系I-type花崗岩の特徴をもつ.主・微量成分は一般にハーカー図で分化トレンドを示すが,希土類元素パターンは大きく変化しない.この原因は分別鉱物が希土類元素濃度を変化させにくい組み合わせであったことと,マグマの分化度が小さかったことに由来する.
  • 鈴木 慶太, 酒井 邦裕, 太田 亨
    2013 年 119 巻 3 号 p. 205-216
    発行日: 2013/03/15
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本論では,楕円フーリエ–主成分解析,mPD法フラクタル次元を用いて砕屑物粒子の形状を定量的に評価し,河川,前浜,氷河堆積物を形状から判別することを試みた.楕円フーリエ–主成分解析によって,粒子の伸長度(EF1)と突起度(EF2,EF3,EF2 + EF3)など全体的な形状を表す指標が,mPD法フラクタル次元では,表面構造(FD,FDCv)を示す定量的な指標が得られた.この結果に基づくと,砕屑物粒子は氷河,前浜,河川堆積物の順に円形から棒状に変化する.また,氷河,河川,前浜堆積物の順に表面構造が滑らかになり,かつ,滑らか度の標本ばらつきが少なくなる.これらの指標の中で,堆積場ごとの値の違いが顕著であるのはFD,次いでEF1であり,楕円フーリエ–主成分解析とフラクタル解析の結果を統合的に用いることによって,各堆積環境を明瞭に判別することが可能となった.
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