地質学雑誌
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111 巻, 10 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 狩野 彰宏, IODP Expedition 307乗船研究員
    2005 年 111 巻 10 号 p. 571-580
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/01
    ジャーナル フリー
    近年,世界中の海底から多くの深海サンゴ礁が報告されている.その主要構成生物である冷水サンゴは,熱帯~亜熱帯の造礁サンゴとは異なり,光を必要としない.これらは巨礫や海山などの固い底質を好み,堆積物による蓄積が制限され,水流が強く栄養塩濃度が高い海域で,普遍的に円錐~レンズ型の礁を作る.アイルランド沖ポ-キュパイン海盆での深海サンゴ礁は,水深600~900 mの海底に,直径2 km高さ200 mに達する堆積体として存在する.掘削結果によると,堆積体は主に細粒の粘土・生砕物・石灰質ナノ化石から構成され,長さ数cm以下のサンゴ片を含む.サンゴは生物浸食作用により埋没前には断片化するが,生息時に細粒堆積物をトラップする能力をもち,円錐型の堆積体は安定性を保ちながら成長したと考えられる.深海サンゴ礁から得られた最近の研究成果は,類似した特徴をもつ地質時代のマッドマウンドの堆積過程や環境を理解するヒントになる.
論説
  • 鴈澤 好博, 紀藤 典夫, 柳井 清治, 貞方 昇
    2005 年 111 巻 10 号 p. 581-589
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/01
    ジャーナル フリー
    西南北海道亀田半島に分布する北海道駒ヶ岳起源の降下テフラの調査から,Ko-h(17 ka)より下位に5層のテフラが存在し,そのうち最下位のテフラ(E-x)はToyaより下位に位置することが明らかになった.テフラはいずれも,斜方輝石(30-48%)と単斜輝石(12-25%)を含み,斜長石とpm型ガラスに富んでいる.斜方輝石の屈折率はγ=1.706-1.713の範囲にある.これらの特徴からテフラはいずれも駒ヶ岳起源と推定される.最初期の噴火年代は,E-xはToyaの下位に位置すること,また,E-x下位の泥炭層の花粉分析から,MIS5dの中期と推定される.テフラ間に挟まれるレス質堆積物の層厚から推定して,E-xからKo-hの噴火サイクルは12-32 kaである.
  • 古川 邦之, 鎌田 浩毅
    2005 年 111 巻 10 号 p. 590-598
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/01
    ジャーナル フリー
    阿蘇カルデラ内に分布する高野尾羽根流紋岩溶岩から得られた4本のボーリングコアの構造記載を行い,内部構造の発達過程を議論した.高野尾羽根溶岩は上部の軽石質層と黒曜石層の互層,中部の結晶質層,そして下部の黒曜石層の三層準からなる.この内部構造は流動時の冷却と脱ガス過程を経て形成されると考えられる.中部の結晶質層には,周囲よりも結晶化し,微細な空隙を多量に含む微細空隙部が存在している.この微細空隙部は,溶岩の噴出直前あるいは直後に形成されたと考えられる.給源から離れたボーリングコアでは,微細空隙部が流動により引き伸ばされ流紋岩溶岩に特徴的な縞状の流理構造を形成する.またその微細空隙部により規定される流理構造の傾斜角は,結晶質層の上部ほど大きくなる傾向があり,ランプ構造を呈している.
  • 公文 富士夫, 金丸 絹代, 田原 敬治, 角田 尚子, 山本 雅道, 林 秀剛
    2005 年 111 巻 10 号 p. 599-609
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/01
    ジャーナル フリー
    木崎湖において2003年12月に採取した35 cm長の柱状堆積物について検討し,1969年以降の3回の大洪水の層準を認定した.その年代をもとにして平均堆積速度を求め,有機炭素含有率の経年的な変化を求めた.一方,1981年以降に木崎湖で行われてきた毎月の湖沼観測記録をまとめ,21年間のクロロフィルa量の経年的な変化を明らかにして,湖水中の生物生産量の指標とした.また,アメダス気象観測資料を用いて,気温や降水量などの気象要素の資料を得た.これら3者間の相関を検討して,有機炭素含有率は,年間クロロフィルa量および冬の平均気温と有意な相関をもつことを見出した.冬の暖かさ(厳しい冬の短さ)が冬季の生物生産性を高め,それが年間の生物生産量に影響を与えて,堆積物として沈積する有機物量を増加させたと考えられる.湖沼堆積物中の有機炭素含有率は,過去の気温(冬の平均気温)の指標として有効である.
  • 白石 史人, 早坂 康隆, 高橋 嘉夫, 谷水 雅治, 石川 剛志, 松岡 淳, 村山 雅史, 狩野 彰宏
    2005 年 111 巻 10 号 p. 610-623
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/01
    ジャーナル フリー
    高知県仁淀村に分布する鳥巣層群谷地層中の石灰岩のSr同位体比は,続成作用の効果を考慮した結果,解像度のよい年代値として利用できることが明らかになった.カソードルミネッセンス法による観察結果と微量元素濃度の分析結果は,石灰岩中の構成物のうち,腕足類化石が最もよく堆積時の初生的な海水Sr同位体比を保持することを示す.また,層孔虫や石灰海綿 Chatetopsis sp.は腕足類よりやや高いSr同位体比を示し,それによる年代のずれは後期ジュラ紀から前期白亜紀においては2.8 m.y.に達するため,これらの化石は詳細な年代の議論に使うことはできない.腕足類から得られたSr同位体比を最新のSr同位体比曲線に合わせると,谷地層下部の石灰岩体の堆積年代は,146.1~148.4 Ma(中期Tithonian)と計算される.Sr同位体比から得られた石灰岩の堆積年代は微化石年代と整合的であり,より解像度が高い.
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