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大杉 治司, 東野 正幸, 徳原 太豪, 綛野 進, 高田 信康, 西村 良彦, 竹村 雅至, 船井 隆伸, 奥田 栄樹, 木下 博明
1999 年 32 巻 8 号 p.
2051-2057
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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胃食道逆流症評価における食道内ビリルビン測定の意義を, 逆流愁訴を有する24例と無愁訴5例を対象にpH測定と比較検討した. ビリルビン測定にはBilitec 2000を用い, 吸光度0.15以上をビリルビン逆流とし, 観察時間に対する逆流の百分率を%timeとした. 無愁訴例の%timeはともに5%以下であり, 有愁訴例中, 上部消化管に器質的病変のない3例では酸逆流は5%以下であったが, 2例で8%以上のビリルビン逆流を認めた. 逆流性食道炎を認めた21例中, 胃切除後の4例では全例にビリルビン逆流を認めた. 他の17例では食道炎の重症度によって酸逆流に差はなかったが, ビリルビン逆流の%timeに有意の差を認めた. 食道内アルカリ化とビリルビン逆流に相関はなかった. 食道内ビリルビン逆流測定は胃食道逆流症の診断・重症度評価に有用で, 特にachlorhydriaや酸逆流軽度例に診断的意義があると思われた.
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竹村 雅至, 大杉 治司, 徳原 太豪, 高田 信康, 木下 博明, 東野 正幸
1999 年 32 巻 8 号 p.
2058-2063
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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胸腔鏡下食道切除術では十分なリンパ節郭清は困難とされ, 通常開胸下手術と同等の根治性が得られるか評価は一定していない. そこで我々は当料で行っている小開胸併用胸腔鏡下食道切除術 (本術式) のリンパ節郭清程度を通常開胸症例と比較検討した. 本術式施行例のうち通常開胸移行例・非治癒切除例を除く39例を対象 (T群) とし, 通常開胸例は本術式導入以前の他臓器合併切除例を除く治癒切除53例 (C群) を用いた. 両群に手術死亡はなく, 合併症の頻度には差がなかった. 肉眼的進行度に差を認めたが, 組織学的進行度には差がなかった. 胸腔内操作時間はT群で有意に長かったが, 胸腔内出血量では差がなかった. リンパ節郭清個数・転移個数でも差がなく, 胸腔内に限っても差がなかった. 部位別にリンパ節郭清個数をみたが, 特に差がなく, 小開胸併用胸腔鏡下食道切除術はリンパ節郭清からみると, 通常開胸とほぼ同等の郭清が行え食道癌に対する根治術として用いることができる可能性が示唆された.
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平岡 敬正, 梅本 敬夫, 国枝 克行, 加藤 元久, 熊沢 伊和生, 佐治 重豊
1999 年 32 巻 8 号 p.
2064-2071
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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1985年から5年間に手術した胃癌411例中, 術後10年以上を経過し, 予後が判明している261例 (Stage I 117例, II31例, III62例, IV51例) を対象に, 胃癌取扱い規約上の予後因子別に単変量解析と多変量解析を行い, 腫瘍マーカーの術前値と術前・後値の変動から治療効果評価法としての有用性を検討した. 次いで, 多変量解析結果から, Stage, 術1か月目のCEA値とIAP値, 術前・後のCEA値変動率差, 治癒切除・非治癒切除, 転移リンパ節個数を入力変数とし, 入力層で9ユニット, 中間層で9ユニット, 出力層を2ユニットの階層型ニューラルネットワークモデルを作成した.
本モデルを用いた学習効果は, 学習用症例130例中94例 (72.3%) が正確に応答し, 未知症例では131例中90例 (68.7%) が正確に応答した.
以上の結果, ニューラルネットを用いた予後予測は, 治療効果を含めた予測法として有用である可能性が示唆された.
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小林 正則, 大山 繁和, 太田 惠一朗, 松原 敏樹, 太田 博俊, 高橋 孝, 中島 聰總
1999 年 32 巻 8 号 p.
2072-2076
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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早期胃癌における至適リンパ節郭清範囲の解析を目的に, Roviere, Collerらにならい, 胃を左胃動脈領域, 右胃動脈領域, 右胃大網動脈領域, 脾動脈領域の4領域に分け, 各領域に転移を認める早期胃癌の分布を検討した. 対象は, 腫瘍径4cm以下の早期胃癌単発リンパ節転移例84例である. その結果, 左胃動脈リンパ領域が幽門前庭部, 胃上部大弯を除くほぼ全胃を占め, 胃角上より肛門側の幽門部全体を占める右胃大網動脈のリンパ領域と広く重なりがあることが明らかとなった. 一方, 右胃動脈, 脾動脈領域はおのおの幽門前庭部小弯, 胃上部大弯の狭い範囲であった. これらは, 胃中下部では, 複数の方向にリンパ節転移が起こることを示している. したがって, 早期胃癌の縮小手術に当たっては上記の動脈リンパ領域を考慮にいれリンパ節の郭清範囲を決定すべきである.
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八巻 孝之, 鈴木 正徳, 福原 賢治, 海野 倫明, 遠藤 公人, 竹内 丙午, 柿田 徹也, 松野 正紀
1999 年 32 巻 8 号 p.
2077-2084
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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肝虚血再灌流時の肝および血中過酸化脂質動態とその測定意義を明らかにするため, 肝細胞膜主要脂質の第1次過酸化物であるphosphatidylcholine hydroperoxide (PCOOH) の肝組織と血中の濃度をCL-HPLC法で検討した. ブタを用いて, 肝流入血行路遮断を10, 20, 30分間施行した. 肝energycharge と動脈血中ケトン体比は虚血時間が長いほど著明に低下し, 再灌流後に回復したが, alanineaminotransferaseと肝組織PCOOHは再灌流により経時的に上昇し, 還元型グルタチオンは経時的に減少した. 末梢血PCOOHは, 肝組織および肝静脈血のPCOOHとの間に極めて強い正の相関関係が認められた (r=0.978, 0.989). 以上から, 肝の再灌流障害発症には活性酸素による膜脂質過酸化が強く関与し, 末梢血PCOOHは再灌流障害を直接的に, かつ鋭敏に把握する有用な指標となる可能性が示唆された.
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佐藤 尚紀, 畠山 優一, 五十嵐 渉, 小野 俊之, 小山 善久, 井上 典夫, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
1999 年 32 巻 8 号 p.
2085-2094
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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肝線維化として肝に蓄積する細胞外マトリックス (以下, ECMと略記) に注目し, その定量化の硬変肝切除における意義について実験的に検討した. 肝硬変ラットを作成し肝部分切除を施行した. 切除肝組織標本にECMを構成するラミニン, フィブロネクチン, I, III, IV型コラーゲンの免疫染色を行い, 自動画像解析装置を用いておのおの定量化した. さらに肝切後24時間, 48時間における残肝のBrdU標識率を求め, 肝再生能の指標とした. 各ECMの測定値とBrdU標識率の関係においてラミニン, III型コラーゲン, IV型コラーゲンは肝切24時間後のBrdU標識率とおのおのr=-0.497, r=-0.511, r=-0.481 (すべてp<0.05), 肝切48時間後のBrdU標識率とおのおのr=-0.559, r=-0.444, r=-0.375 (すべてp<0.05) の有意な負の相関関係が得られた. したがって, 硬変肝におけるラミニン, III型コラーゲン, IV型コラーゲンの定量化は硬変肝切除後の肝再生能を予測する指標として有用であると考えられた.
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桜井 嘉彦, 宮北 誠, 山高 浩一, 林 憲孝, 田近 栄四郎, 清水 和彦
1999 年 32 巻 8 号 p.
2095-2099
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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今回, われわれは食道粘膜下腫瘍の診断で手術を施行し, 術後の病理組織学的検索にて 胞形成を伴う分離腫と診断された1例を経験したので報告する. 症例は53歳の男性. 主訴は嚥下困難, 咽頭異和感であった. 食道透視, 内視鏡検査, CTにて頸部食道に発生した粘膜下腫瘍と診断した. 手術は頸部食道切開により有茎性に発育する腫瘍を確認し, 腫瘍摘出術を施行した. 病理組織学的所見では, 腫瘍は食道粘膜下に存在しており, 重層扁平上皮と腫瘍との間には粘膜筋板はなかった. 腫瘍は嚢胞と脂肪腫様脂肪組織から形成されており, 混合線と軟骨を脂肪組織内に認め, 導管にはさまざまな大きさに拡張するものもみられた. 嚢胞は二層性の立方上皮で被覆され, 嚢胞の上皮は導管上皮と組織学的に同様であったことから, 嚢胞は導管の拡張によるものと考えられた. 腫瘍は気道組織の不完全分離により形成されたもので, 嚢胞形成を伴う分離腫と診断された.
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間中 浩, 国崎 主税, 市川 靖史, 金谷 洋, 松村 奈緒美, 山岡 博之, 嶋田 紘, 中谷 行雄, 北村 均
1999 年 32 巻 8 号 p.
2100-2104
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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症例は食欲不振を主訴とした77歳の女性. 4型胃癌の診断で当科に入院した. 上部消化管造影検査では胃のMC領域に巨大な皺壁の肥厚を認めた. 上部消化管内視鏡検査では全周性の皺壁肥厚と白苔を伴う易出血性の潰瘍を認め, 生検から悪性リンパ腫 (びまん性中細胞型) と診断された. N
4, SI, stage III (Naqvi 分類) の診断で術前にcyclophosphamide, adriamycin, vincristine, prednisolone 療法 (以下, CHOP療法と略記) を2クール施行した. 化学療法後, 腫瘍の縮小傾向を認めたが腫瘍からの出血があったため平成8年2月20日胃全摘術, 膵脾合併切除術, D
2郭清を施行した. 根治度はCであった. 患者は術後10か月で全身リンパ節転移により死亡した. T細胞型胃悪性リンパ腫の発生頻度はまれで, 化学療法が奏功しにくく, 治療方針も確立していない. 本疾患は有効な化学療法の確放が予後を改善すると考えられた.
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安本 和生, 平野 晃一, 川島 篤弘
1999 年 32 巻 8 号 p.
2105-2109
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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胃癌術後に舌転移をきたしたきわめてまれな症例を経験した. 症例は65歳の男性. 胃体上部の進行胃癌のため, 胃全摘術とD
2リンパ節郭清を施行した. 病理組織学的には, 中分化型管状腺癌, 3型, ss, ly
0, v
2, n
1で, 総合的進行度はH
0, P
0, t
2, n
1のstage IIであった. 術後約1年目に, 血清CA19-9値の再上昇を認め, 同時期に臍部右側に皮下腫瘤が出現した. 病理組織学的に胃癌の皮膚転移と診断した. 血清CA19-9値はその後も漸増し, 経過中舌左側の瀰漫性腫大も認められた. 舌腫大部からの生検組織像とCA19-9免疫染色陽性所見から胃癌の舌転移と診断した. 自験例は舌, 皮膚およびリンパ節以外には明らかな遠隔転移を有さなかった. また, 癌関連遺伝子の検討では胃原発巣の腫瘍先進部, 舌および皮膚転移巣においてp53の強発現を認めた. p53遺伝子変異が異癌の進展に関与している可能性を示唆した.
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八木 美徳, 瀬下 明良, 三橋 牧, 荒武 寿樹, 山竹 正明, 藤田 竜一, 曽山 鋼一, 小川 真平, 亀岡 信悟
1999 年 32 巻 8 号 p.
2110-2114
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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症例は74歳の男性. 下血を主訴に来院. 胃前庭部後壁に0-IIa+IIc の早期胃癌と十二指腸球部後壁に2'型の腫瘍を認めた. また, 大腸内視鏡検査にて上行結腸に2'型の癌性潰瘍を認め, 胃癌, 十二指腸癌, 上行結腸癌の同時性3重複癌の診断にて手術を施行した. 術式は広範囲幽門側胃切除術, 上行結腸部分切除術を行った. 病理検査では胃: papillary adenocarcinoma, 十二指腸: moderately differentiatedadenocarcinoma, 上行結腸: moderately differentiated adenocarcinomaであった. 十二指腸の組織像はいわゆるwith lymphoid stroma様の所見があり, LMP-1免疫染色, EBER in-situ hybridizationにて多くの癌細胞に陽性であり, EBウイルスとの関連が示唆された. 胃癌におけるEBウイルスとの関連は報告されているが, 検索しえた範囲内では十二指腸癌においてEBウイルスとの関連を報告したものはなく, また十二指腸癌を合併した同時性3重複癌は本邦11例目の報告となる.
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柴田 信博, 柴田 高, 新居延 高宏, 池田 公正, 北田 昌之, 高見 元敞, 竹田 雅司
1999 年 32 巻 8 号 p.
2115-2118
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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結腸癌の肝転移に対して4回の肝切除を施行し, 8年間生存中の症例を経験したので報告する. 症例は56歳の男性で, 1990年5月, 閉塞性イレウスのため緊急手術をうけた. 術中に横行結腸癌および転移性肝癌と診断され, 結腸右半切除と肝部分切除が行われた. 組織学的にはいずれも中分化型腺癌であった. 1年6か月後にCTスキャンにより外側区域の転移巣が発見され, 2回目の肝切除 (外側区域切除) が行われた. さらに4年後, CTスキャンによりS4とS8に2個の転移巣が発見され, 3回目の肝切除が行われた. その3年後にはS5に4cmの転移巣が発見され, 4回目の肝切除が行われ, いずれの組織診断も中分化型腺癌であった. 患者は初回手術より8年経過した現在, 元気に生存中である. 大腸癌肝転移に対する再肝切除の臨床評価はいまだ明らかでない. この症例経過は選択された症例に対する再肝切除の有効性を示すものである.
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横井 一樹, 原田 明生, 榊原 巧, 小松 義直, 吉田 滋, 矢口 豊久, 村上 裕哉, 福原 良之
1999 年 32 巻 8 号 p.
2119-2123
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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症例は63歳の男性. 高血圧, 糖尿病, B型慢性肝炎にて近医通院中, 腹部超音波検査にて肝内腫瘍陰影を指摘され紹介となった. 血液検査, CT, 血管造影検査にて肝硬変合併肝細胞癌と診断し, 開胸開腹下に肝部分切除術を施行した. 術後膿胸から菌血症を合併し同時に全身の皮膚に水疱, 膿疱が多数出現しNikolsky現象陽性であった. 胸水, 腹水, 動脈血よりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が分離されたためブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (SSSS) と診断した. 抗生物質投与と胸腔ドレナージにより軽快した.
SSSSの成人発症例は基礎疾患を有する場合がほとんどである. 自験例は高度肝硬変, 糖尿病による免疫抑制状態にあり, さらに肝切除, 術中大量出血などの過大侵襲が加わり発病に至ったと考えられる. 成人型SSSSは極めてまれで, 肝切除後の発症は過去に報告がなく自験例が初めてであった.
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田村 昌也, 木元 文彦, 室林 治, 長尾 信, 藤岡 重一, 村田 修一, 清崎 克美, 若狭 林一郎
1999 年 32 巻 8 号 p.
2124-2128
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
ジャーナル
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壊疽性胆嚢炎により発見され, 術後11か月めに皮膚転移をきたした胆嚢原発性小細胞癌の1例を経験したので報告する. 症例は75歳の女性で, 右上腹部痛を主訴として来院した. 急性胆嚢炎の診断にて経皮経肝胆嚢ドレナージを施行し, 全身状態の安定化後に胆嚢摘出術を施行した. 摘出標本では胆嚢底部に小指頭大の黄色調不整形の隆起性病変をほぼ全周性に認め, 病理組織学的に小細胞癌と診断された. 術後5か月めに肝転移を, 11か月めに皮膚転移を認めさらに16か月めに右腋窩の孤立性リンパ節転移を認めた. 皮膚転移の経路としては, 経皮経肝胆嚢ドレナージに伴うドレナージ経路からの直接的播種が最も考えられた.
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金高 賢悟, 小原 則博, 湯沢 浩之, 濱田 貴幸, 粟津 諭, 山田 雅史, 前田 潤平, 宮田 昭海, 天野 実, 河合 紀生子
1999 年 32 巻 8 号 p.
2129-2133
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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非機能性膵島腫瘍が原発巣切除後9年を経て肝転移を来たし, 肝切除後1年間以上再発なく経過している1例を経験した. 症例は65歳の男性. 1987年, 膵外発育型膵島腫瘍に対し腫瘍を含めて膵尾側部分切除術を施行した. 以後, 近医にて経過観察していたが, 1996年7月, 腹部エコーにて肝右葉に多発腫瘤を認め, 当科再入院となった. 腹部CTでは周囲が良好に造影され, 中心部に壊死を思わせる低吸収域を伴っていた. 他に原発と思われる病巣が存在せず, 膵島腫瘍の肝転移再発を疑い, 肝右葉切除術を施行した. 病理組織学的所見より, 非機能性膵島腫瘍の肝転移再発と診断したが, 興味深いことに核DNA量解析では原発巣がdiploidであったのに対し, 転移巣ではaneuploidyを呈した. 術後2年を経過するも再発なく生存中であり, 膵島腫瘍は発育速度が緩徐であるため, 転移巣に対しても積極的な外科的切除にて良好な予後が期待できると思われた.
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鯉沼 広治, 雨宮 哲, 岡 昭一, 山口 博, 関 博章, 村井 信二, 原 孝志, 赤松 秀敏, 古泉 桂四郎
1999 年 32 巻 8 号 p.
2134-2138
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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症例は58歳の女性. 腹部膨満, 下腿浮腫, 1か月間に約10kgの体重増加を主訴に当院を受診した. 腹部超音波検査で腹部のほぼ全体を占める巨大な充実性腫瘍を認め, 腹部CTでは不均一な造影効果を持つiso density mass, 腹部MRIではT1で低信号, T2で高信号として認められた. 腹部血管造影で胃大網動脈より腫瘍への新生血管の増生と腫瘍濃染を認めたが腫瘍全体としてはhypovascularであった. 大網原発腫瘍と診断し開腹手術を施行した. 腫瘍は大網切離のみで容易に摘出され, 大きは32×26×13cm, 重量6,900g, 暗赤色, 表面平滑, 内部は充実性で血液を含む壊死巣が散在した. 病理組織学的には混合型 (粘液型+円形細胞型) 脂肪肉腫であった. 術後11日目に退院したが, 術後3か月に局所再発を認めた. 術後4か月に再手術を施行したが腹膜播種のため, 再手術後約1か月で死亡した.
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福井 貴巳, 横尾 直樹, 吉田 隆浩, 田中 千弘, 加藤 達史, 東 久弥, 白子 隆志, 山口 哲哉, 岡本 清尚
1999 年 32 巻 8 号 p.
2139-2143
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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イレウスを契機に発見された, 多発小腸瘻と異所性胃粘膜を伴う重複腸管の1例を経験したので報告する. 症例は71歳の女性. イレウス症状にて, 当科紹介受診. 腹部は膨満し, 軽度の圧痛, 筋性防御を認めた. 腹部単純X線およびCTにて, 高度に拡張した小腸ガス像を認めたことより小腸イレウスと診断, 同日, 緊急開腹術を施行した. 手術所見はトライツ靭帯より約130cm肛門側の小腸間に1か所の瘻孔形成を認めた. また, 回盲部より約100cm口側に高度に拡張した小腸が癒着, 同部位口側に近接して重複腸管を認めた. さらに高度に拡張した小腸間に計3か所の瘻孔形成を認めた. トライツ靭帯より約130cm肛門側の瘻孔部分は瘻孔切除にとどめ, 重複腸管は拡張腸管とともに切除し手術を終了した. 病理組織所見では小腸本管に異所性胃幽門腺を認めた. 本症例は, 胃所性胃粘膜より瘻孔が形成されたことが, イレウスの一因となった極めてまれな症例と考えられた.
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大城 望史, 田中 恒夫, 板本 敏行, 時田 大輔, 山崎 浩之, 大石 幸一, 木村 まり, 藤高 嗣生, 住元 一夫, 福田 康彦
1999 年 32 巻 8 号 p.
2144-2148
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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症例は63歳の男性で, 主訴は下血. 血清CA19-9異常高値 (830U/ml), CT, Gaシンチなどから, 悪性腸間膜腫瘍を疑い開腹した. 回盲部より80cmの部位にMeckel憩室を認め, 同部に腫瘍および腸間膜リンパ節の腫脹を認めたため, リンパ節郭清を含めた回腸切除を行った. 病理組織学的にはMeckel憩室から発生した中分化型腺癌で, 憩室内には迷入組織を認めなかった. 術後血清CA19-9は速やかに低下し, また抗CA19-9抗体を用いた免疫染色で陽性であり, CA19-9産生腫瘍と診断した. Meckel憩室癌は本邦22例目と極めてまれである. 本症は予後不良であるが, 自験例は1年6か月経過した現在も再発の兆候を認めず, CA19-9の上昇も認めていない.
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石橋 理香, 蒲池 正浩, 黒肱 敏彦, 小林 慶太, 山下 裕一, 白日 高歩
1999 年 32 巻 8 号 p.
2149-2152
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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閉塞性大腸炎はイレウス症状を伴った大腸癌に合併する症状で, 時に劇症化し予後不良となることがある. 今回, 劇症化した閉塞性大腸炎の1例を経験したので報告する.
症例は60歳の女性. 腹痛にて来院. 来院後, 約6時間でショック状態となり腸閉塞に起因する敗血症と診断し緊急手術を施行. S状結腸癌による閉塞性大腸炎と診断し, 左半結腸切除術を施行した. 術後にエンドトキシン血症, 急性腎不全を合併し, エンドトキシン吸着療法 (PMX) と持続血液浄化療法 (CHDF) を含めた集中治療を行い救命しえた.
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竹内 邦夫, 都築 靖, 安藤 哲, 小林 正則, 萬田 緑平, 野内 達人
1999 年 32 巻 8 号 p.
2153-2157
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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僧帽筋原発平滑筋肉腫を合併した遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (hereditary non-polyposis colorectal cancer; HNPCC) の1例を経験したので報告する. 症例は55歳の男性. 24歳時に上行結腸癌, 35歳時に横行結腸癌, 54歳時にS状結腸癌で手術を行っている. 家族歴では母に大腸癌, 父に胃癌, 兄弟に大腸癌2人, 肝臓癌1人, 母方の叔父に大腸癌1人, 母方の従兄弟に大腸癌1人を認めた. 今回, 右肩の腫脹を主訴に近医を受診. 穿刺細胞診でclass Vの診断を受け, 当科に紹介され入院となった. 精査の結果, 右側肩甲筋群内悪性腫瘍の診断で, 腫瘍摘出術施行. 病理組織診断では僧帽筋原発平滑筋肉腫であった. 術後6か月目に局所再発および肺転移により死亡した. HNPCCは大腸以外の他臓器にも高率に悪性腫瘍を併発するが, 自験例のように軟部悪性腫瘍を合併した症例は極めてまれである.
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森脇 義弘, 神谷 紀之, 菊池 光伸, 小澤 幸弘, 杉山 貢, 原田 博文, 国崎 主税, 今井 信介, 小林 俊介, 笠岡 千孝
1999 年 32 巻 8 号 p.
2158-2162
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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高齢者急性上腸間膜動脈 (SMA) 閉塞症, 小腸壊死に対する広範囲小腸切除後に, 1期的吻合を行ったので, その有用性と安全性を検討した. 83, 78, 75歳の女性の急性SMA閉塞症3例に広範囲小腸切除を行った. 小腸壊死と血性腹水を認めたが, 腸管穿孔はなかった. 数cmの小腸温存には固執せず, 確実に安全と思われる部位で切離し, 器械吻合で1期的に再建した (側端, 側端, 端側吻合). 残存小腸は, Treitz靭帯から30cm, 幽門輪から50cm, Treitz靭帯から30cm, 経口摂取は, 各16, 17, 10病日から開始した. 経口摂取後の排便回数は, 各3~4, 0~1, 15回前後/日と端側吻合で頻回の傾向にあった. 維持輸液も各2,000ml, 1,000, 2,000~1,000ml/日前後であった. 全例, 縫合不全や残存腸管の虚血の進展の徴候はなかった. 高齢であることから消化吸収能をある程度犠牲にして, 空腸瘻とせず一期的に吻合を行ったことで, 近位空腸瘻のデメリットを回避した. 術後造影検査での造影剤の移動速度から, 側端吻合が消化, 吸収に有用と思われた.
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牧野 正人, 谷口 哲也, 山根 成之, 倉吉 和夫, 木村 修, 貝原 信明
1999 年 32 巻 8 号 p.
2163-2166
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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生体内分解性吻合リング (以下, BAR) を用い腸吻合を行った71例74吻合を検討した (小腸-小腸: 5, 小腸-大腸: 25, 結腸-大腸: 44吻合). 1) BARの崩壊・脱落は小腸-大腸吻合で平均術後18日, 結腸-大腸吻合で術後20日であった. 2) 吻合時間は平均21分であった. 3) 縫合不全が2例 (3%), 創感染は5例 (7%) に認められた. 4) BAR吻合に特徴的な合併症として, 術後10日-2週間目にイレウスを含む腹痛, 嘔吐が20例 (28%) に認められた. これは大腸の関与した吻合で認められ, 25mm-BAR使用例で多くみられた. この腸管閉塞症状は緩下剤投与により制御可能であった. BAR吻合では標準的で安全な吻合が短時間で得られる. しかし, 25mmサイズのBAR使用の場合には, 閉塞症状発現に注意が必要で, BARが排出される術後約3週間までは緩下剤投与による排便コントロールを要する.
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赤石 隆
1999 年 32 巻 8 号 p.
2167-2171
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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胸腔鏡手術: 適応は深達度がm3からA2までであり, 術中左片肺換気に耐えることとしている. 進行食道癌に対するものは確実なリンパ節郭清を要求される. このためにthoracoweb法により肺を術野から排除し助手の手になる鉗子類もすべて縦隔操作に投入して効率化をはかる. 予後は従来の開胸法によるものと比較して差を認めなかった. 長期的にみた術後肺活量の回復は開胸法よりも良好であった.
腹腔鏡手術: 胸腔鏡手術であっても術後早期の肺活量の低下がなお起きることから, 始められるようになったが現在なお手技の確立に至っていない. 上記の要請から小開腹を置かないのが理想であるので, 手技上の工夫を要する. 我々は小網内にバルーンを挿入し, 膨らませて胃を挙上して, さらに屈曲開排するレトラクターをバルーン内に挿入して直接胃および栄養血管に触れないように視野の展開を行っている.
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小西 文雄, 永井 秀雄, 金澤 暁太郎
1999 年 32 巻 8 号 p.
2172-2176
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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腹腔鏡補助下結腸切除術は, 一般的には, 大腸内視鏡によって摘除できないような腺腫や早期癌に対して施行されている. しかし, 結腸進行癌に対しても症例を選択して施行すれば通常の開腹手術と同じ範囲のリンパ節郭清を施行することができ, 根治的な手術となりうると思われる. 広範囲な癒着がなく, 肥満体でなく, 病変の部位が盲腸, 盲腸に近い上行結腸, S状結腸中ほどの病変であること, などの条件がそろえば, 腹腔鏡補助下手術で第2群, 第3群までのリンパ節郭清が可能であり, 根治的な手術となりうると考えられる. 我々は, 65例の大腸進行癌に対して本術式を施行した結果, 適切に症例を選択して行えば, 開腹手術と同様のリンパ節郭清が可能で, 根治的な手術となると考えられた. しかし, 欧米においてport site recurrenceの報告もあるので, 今後の遠隔成績の結果を検討する必要がある.
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北野 正剛, 板東 登志雄
1999 年 32 巻 8 号 p.
2177-2181
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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いまや腹腔鏡下胆嚢摘出術は胆嚢摘出術の標準術式となった. しかし腹腔鏡による視野は開腹術の視野に比べて制限があり, また2次元のモニター下での鉗子操作には熟練を要するため, 胆管損傷の危険性が常時内在しているといえる. 胆管損傷を回避する手技の要点は, 十分な術野の展開と解剖の把握, 胆嚢寄りでの慎重な剥離操作にある. 自験例の検討では, 腹腔鏡下胆嚢摘出術268例中, 術中偶発症による開腹術への移行は1例 (0.4%) で, 肝硬変合併例での肝床部出血が原因であった. 合併症のため術後開腹術を要したのは1例 (0.4%) で, 高度炎症により細い総胆管が胆嚢頸部背側に強固に癒着し, 胆嚢管とともに一塊となっていた症例での胆管損傷であった. 総胆管結石症に対しては, 主として腹腔鏡下総胆管切開, Cチューブドレナージを選択し, 同法を施行した34例では術後平均9.7日で退院できており, 腹腔鏡下手術における早期退院, 早期社会復帰の利点を損なわない良好な治療成績が得られている.
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問題点とその将来
山川 達郎
1999 年 32 巻 8 号 p.
2182-2186
発行日: 1999年
公開日: 2011/06/08
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腹腔鏡下手術に必要な新しい器具と手技の開発を紹介するとともに, その問題点について言及した. 腹腔鏡下手術を癌症例に適応することに関しては, あらゆる角度から検討がなされてきたが, 実験的には, 使用される動物, 腫瘍細胞などの特殊性から決定的な結論は得られていないのが現状である. また臨床的な研究も, 腫瘍のstage, 生物学的特性なども報告により異なり, 分析が困難であるのが現状であり, 長期予後を論ずるには, あまりにも時期尚早の感がある.
しかし手術侵襲の面から否定する問題が見当たらないのであれば, 残る大きな問題は適応と手術手技に纏わる問題のみである. 腹腔鏡下手術は内視鏡的粘膜切除術と拡大手術の中間的手術と位置づけ, これで十分に根治が期待できる症例に適応を絞るとともに, また一方で外科医は腹腔鏡下腫瘍外科手術の基本手技に習熟する必要がある.
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