医療
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  • 西田 正人, 高野 克己, 新井 ゆう子, 小曽根 浩一, 市川 良太
    2008 年 62 巻 12 号 p. 655-661
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本来子宮腺筋症は経産婦に好発する疾患で, 従来は子宮摘出によって問題なく治療されてきた. しかしながら, わが国の女性の晩婚化や少産化を背景に, 妊孕性の温存を希望する性成熟期女性にも罹患する機会が増えている. 子宮腺筋症は激烈な月経痛を引きおこすため, 患者は妊孕性を犠牲にして子宮を摘出するか, 妊孕性を保って月経痛に耐えるかというジレンマに曝されることになる.
    霞ヶ浦医療センターでは2002年からこのような患者を対象にした子宮腺筋症に対する新たな保存的手術を始め, 2005年10月に先進医療に指定されてから, 全国から患者が来院するようになった.
    子宮腺筋症の保存的手術がこれまで不可能であった理由は, 腺筋症病巣が筋腫のように正常筋層と明瞭に区別して核出できないことにあった. われわれは, 病巣を指で触れて硬さで識別しながら高周波切除器を用いればその部分だけ切除できることを見いだし, さらに子宮奇形の形成術で培った技術を駆使して子宮を形成するという新しい術式を開発した.
    手術症例は300例を超え, 十分な安全性を確保するとともに, 満足する術後成績を残すことができた. 今後, 術後妊娠率や再発率といった予後を反映させながら, 術式の改良と普及を目指してゆきたいと思っている.
  • 永野 功
    2008 年 62 巻 12 号 p. 662-667
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    患者の自己決定を支援し社会に信頼される良質な医療の実践には, 医療現場の倫理的問題に対応する臨床倫理委員会の体制が必要である. 臨床倫理委員会は, 研究倫理を審議するInstitutional Review Board (IRB)とは異なる組織であり, 職員の倫理教育, 院内の医療倫理規約の立案や改正, そして倫理コンサルテーションを通じて, 患者の自律を尊重し, 患者ケアの改善を目指す. わが国では, 臨床倫理を扱う倫理委員会の体制整備が不十分であり, そのためさまざまな臨床倫理上の課題に十分対応できていなかった. とくに終末期の治療方針決定については, 時に不透明性, 密室性が拭いきれず, 最近の報道にみられるような社会からの指弾をたびたび受けてきた. これが, いわゆる医療不信の流れを悪化させてきた可能性も否定できない. 今後, ますますの人口の高齢化と医療の高度化に対応して, 患者の意思を尊重しながら医学的に適切な医療を実施するため, そして社会の信頼を取り戻すために, 国立病院機構病院が主体となって, 倫理コンサルテーションの体制作りと有能な倫理相談員の育成を図っていかなければならない.
  • 芳賀 克夫
    2008 年 62 巻 12 号 p. 668-673
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    患者の生理機能を超える過大な手術侵襲が加わると,生体内のホメオスタシスが破綻し, さまざまな術後合併症が発生してくる. 人口の高齢化により, 内科慢性疾患を持つ患者を手術する機会が増えているが, これらの患者の生理機能を術前に把握し, どの程度の手術を行えば大丈夫であるかを判断することはきわめて重要である. われわれはこの目的を達成するために, 患者の生理機能と手術侵襲を定量化することにより, 術後合併症の発生を予測するE-PASS scoring systemを開発した. その後行われた多くの研究により, E-PASSが信頼性の高いリスク評価法であることが示されている. 本稿では, E-PASSの有用性を最新の知見を基に解説する.
  • 宮崎 とし子, 池田 薫, 北條 恵美, 久留 聡, 小長谷 正明
    2008 年 62 巻 12 号 p. 674-678
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    多彩な病態を呈し, 肥満や糖尿病等の合併症が起こりやすい筋強直性ジストロフィー(MyD)のエネルギー代謝を検討した. 携帯用簡易熱量計を用いて, 本症患者19名(男性16名, 53.8±6.9歳; 女性3名, 56.7±3.5歳), と対照22名(男性13名, 53.4±6.9歳; 女性9名, 56.7±3.1歳)の安静時エネルギー代謝量: Resting Energy Expenditure (REE)を測定した.
    MyDのREEは男性912±212.7kcal/日(対照1494±346.5kcal/日), 女性729±94.6kcal/日(対照1210±213.4kcal/日)で, ともに有意に対照より低かった(男性p<0.001, 女性p<0.005).
    検討可能だったMyD男性では, 上腕筋面積: Arm muscle area (AMA)は対照と比較して有意に低く(p<0.001), REEとAMAの問にr=0.781(p<0.001), 知能指数(IQ)との間にr=0.684(p<0.005)で有意な正の相関が認められ, 筋肉量や知的活動がREEに深く影響を与えていた.
    携帯用簡易熱量計を用いた測定によりエネルギー代謝量に応じた適正栄養量を提供することが, 体脂肪の抑制, 糖尿病などの合併症の予防につながり, 療養生活において生活の質(QOL)の維持, 向上につながると考えられた.
  • 松田 俊二, 野田 雅博
    2008 年 62 巻 12 号 p. 679-683
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)(以下, 重症者)の施設(以下, 重心施設)では感染症の流行が頻回にみられる. 重症者の死亡原因では肺炎・気管支炎(42.4%)などの呼吸器疾患が半数以上を占め, 呼吸器感染症の病棟内流行とも関連すると考えられる. 今回, 国立病院機構の重心施設を対象として, 平成19年に病棟内で流行した感染症の調査を行った. 愛媛病院の重心病棟4病棟(入院患者160名)について, 平成19年1年間に病棟内で流行した感染症を調べ, また, 平成19年11月15日から平成20年3月末までの冬季の呼吸器感染症発症者について4種類の検査キットを用いて病原体(インフルエンザ, アデノウイルス, RSウイルス, 咽頭A群β溶連菌)の検索を行った. さらに, 全国の国立病院機構重心施設に対して, 平成19年1年間の病棟内での感染症流行について回数・病原体・感染者数・持続期間のアンケート調査を行った.
    愛媛病院の重心病棟4病棟での平成19年の1年間の感染症流行は7回であった. 春にノロウイルス感染が3病棟で3-4月に1回ずつ, 4月にインフルエンザ流行が1回, 7月から8月にかけてヘルパンギーナ流行が1回, 3月と8-9月に原因不明の発熱疾患の流行が2病棟で1回ずつみられた. 全国の国立病院機構の74重心施設を対象としたアンケート調査の結果は, 49施設125病棟での感染症流行回数は合計61回(0.49回/病棟/年)であった. ノロウイルス感染症およびインフルエンザの流行が多く, 各々16回, 12回であったが, 最も多いのは病原体不明の呼吸器感染症の25回の流行であった(0.2回/病棟/年).
    愛媛病院で冬季に散発的に発生する感染症発症者の病原体検査の結果では, 1名で鼻腔拭い液からRSウイルスが検出されたが, インフルエンザウイルス抗原と咽頭アデノウイルス抗原は検出されなかった. 咽頭拭い液からのストレプトコッカス抗原は5名で検出され, 6名が擬陽性であった. 原因微生物の検出率は低かった.
    病棟で流行する呼吸器感染症の原因微生物の同定は, 今後の院内感染防止対策の上で非常に重要と考えられる.
  • -食道痩の1例-
    川人 智久, 富永 崇司, 遠藤 彰一, 松浦 秀雄, 江川 善康, 中村 宗夫
    2008 年 62 巻 12 号 p. 684-688
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    症例は28歳の女性, ミトコンドリア病(MELAS)に対し内服治療中であったが23歳時より在宅管理が困難となり重症心身障害者病棟に措置入院中であった. 1年前から経口摂取はほとんど不能となり持続的に経鼻胃管からの経管栄養が行われていたが今回, 胃管入れ替えの5日後に多量の上部消化管出血がありICUに転入, 救命処置にもかかわらず死亡した. 剖検所見では, 慢性的な食道潰瘍穿孔部が左鎖骨下動脈起始部に交通しており, ここからの大量出血で死亡したと判断された. 本例は先行する異物誤飲による縦隔炎などの所見もなく, また左鎖骨下動脈起始異常や動脈硬化などによる鎖骨下動脈瘤もともなっていなかったため, 長期の経鼻胃管留置による慢性的な圧迫から食道潰瘍を生じ左鎖骨下動脈-食道痩を形成したと考えられた. まれな症例とは思われるが, 経鼻胃管留置によっておこりうる重篤な合併症と考えられ今回報告した.
  • 武久 政嗣, 三好 孝典, 橋口 修二, 野崎 園子
    2008 年 62 巻 12 号 p. 689-692
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    呼吸障害と嚥下障害を併発する症例に対し気管切開の際に舌骨下筋群の切断を追加した結果, 唾液誤嚥が軽快する可能性が示唆された. 舌骨下筋群の切断は嚥下機能改善手術の補助的手術として他の方法に併用される場合が多いが, 単独施行の場合は手術侵襲が少ない利点がある. 今回の検討では舌骨下筋群の切断が単独でも唾液誤嚥に対し有効であると思われた. 以上より本術式は, 嚥下困難をきたしかつ気管切開の必要な症例における唾液誤嚥の軽減に有効と考えられた.
  • ―質問紙自由記述の内容分析―
    森 朋子, 湯浅 龍彦
    2008 年 62 巻 12 号 p. 693-694
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 山田 昌和
    2008 年 62 巻 12 号 p. 695-700
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 吉田 直之
    2008 年 62 巻 12 号 p. 701-702
    発行日: 2008/12/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
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