アトピー性皮膚炎の治療では保湿剤とタクロリムス軟膏を併用することが多い。本研究では,タクロリムス軟膏の抗炎症効果や刺激感にヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイド
® ローション 0.3%)がどのような影響を与えるのかを検討した。17 例のアトピー性皮膚炎 (中等症 15 例,重症 2 例)患者の顔面と躯幹・ 四肢に,右はタクロリムス軟膏(プロトピック
® 軟膏 0.1%)単独外用(以後,タクロ単独群と呼ぶ)を,左はヒルドイド
® ローション 0.3%+タクロリムス軟膏外用(以後,ヒルド+タクロ併用群と呼ぶ) を 1 日 1 回,2 週間継続外用させた。評価部位の皮疹の重症度は,0:なし,1:軽症,2:中等症,3:重症,4;最重症,の 5 段階で評価し,治療前と治療 2 週後に皮膚科医が行った。タクロリムス軟膏の刺激感に対する評価は,1:とても刺激が強かった,2:刺激が強かった,3:やや刺激が強かった,4:あまり刺激はなかった,5:全く刺激はなかった,の 5 段階で行い,治療 1 週後と治療 2 週後に患者が評価した。顔および躯幹・四肢ともにタクロ単独群とヒルド+タクロ併用群は同程度に有意な皮疹改善効果を示した。治療 1 週後の顔および躯幹・四肢の刺激感を比較すると,ヒルド+タクロ併用がタクロ単独より軽いものは 5 例,ヒルド+タクロ併用とタクロ単独が同等のものは 12 例,ヒルド+タクロ併用がタクロ単独より強いものは 0 例であった。以上より,ヒルドイド
® ローション 0.3%の併用はプロトピック
® 軟膏 0.1%の治療効果を減弱させる可能性は低いこと,ヒルドイド
® ローション 0.3%の併用によってタクロリムス軟膏の刺激感を低減できる症例があることが示された。
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