西日本皮膚科
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76 巻, 5 号
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図説
綜説
症例
  • 浮田 彩, 山崎 修, 西原 修美, 佐々木 和実
    2014 年 76 巻 5 号 p. 442-446
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    39 歳,男性。下肢静脈瘤手術のために心臓血管外科に入院し,4 日目より眼囲の紅斑,腫脹と肘窩の紅斑,丘疹が出現し,頚部,躯幹に拡大し,退院後も軽快しないため当科を受診した。パッチテストでパジャマの抽出液に陽性。パジャマの成分を分析し,ポリエステル用の青色分散染料が検出された。パッチテストで Disperse Blue 106,Disperse Blue 124 が陽性であり,検出された化学構造類似の分散染料による接触皮膚炎と考えた。入院患者の中毒疹様の皮疹についてはパジャマによる接触皮膚炎も考慮する必要がある。
  • 松木 真吾, 水本 一生, 川崎 洋司, 吉田 学, 森田 栄伸
    2014 年 76 巻 5 号 p. 447-453
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    75 歳,男性。2 型糖尿病の既往あり。手背と背部に紅色丘疹が出現したため当科を受診した。組織学的に乾酪壊死を伴わない小型の類上皮細胞肉芽腫であった。CT など全身検索を行ったが他臓器に所見がないことから皮膚サルコイドと診断した。顔面に皮疹が出現したためプレドニゾロン (以下 PSL) 内服治療を開始した。皮疹は消退したが糖尿病のコントロールが悪化した。維持量でも躯幹に環状の皮疹が出現してきたため再度皮膚生検を施行した。組織学的所見は辺縁のはっきりしない類上皮細胞肉芽腫であった。 臨床症状と病歴から汎発性の環状肉芽腫 (granuloma annulare:以下 GA) と診断し,糖尿病コントロール目的に PSL を漸減中止したところ皮疹は増悪した。Narrow-band UVB (以下 Nb-UVB) 療法を週 2 回の外来通院で施行し,計 20 J/cm2程度で皮疹は平坦化した。今回我々は外来通院が可能な Nb-UVB の治療計画でも有効性がある可能性を示すとともに,GA における Nb-UVB の作用機序と糖尿病悪化に伴う GA の増悪機序について考察を加え報告する。
  • 眞鳥 繁隆, 宮城 拓也, 花城 ふく子, 園崎 哲, 林 健太郎, 粟澤 剛, 苅谷 嘉之, 高橋 健造 , 上里 博
    2013 年 76 巻 5 号 p. 454-458
    発行日: 2013/11/28
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    患者は 66 歳,女性。自宅の家屋内でハブに右足を咬まれた。右足内側の受傷部には 1 個の牙痕がみられ,激痛を訴えていた。受傷 3時間後には有痛性の腫脹は右足背から右下腿に広がり CPK も上昇した。 Simple needle manometer 法での筋区画内圧を測定したところ 70 mmHg(正常値 0~8 mmHg)と著明に上昇しており,コンパートメント症候群と診断した。直ちに減張切開術を行い,筋壊死による後遺症や腎障害を回避することができた。Simple needle manometer 法による筋区画内圧測定法は簡便で,蛇毒咬症を含めたコンパートメント症候群の早期診断に有用である。
  • 和田 麻衣子, 里村 暁子, 伊東 孝通, 高原 正和, 古江 増隆
    2014 年 76 巻 5 号 p. 459-464
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    14 歳,女児。2008 年 4 月中旬より頭頂部・頭部左側の脱毛に気付き,塩化カルプロニウム・ステロイドの外用,セファランチン・グリチルリチン酸の内服を開始するも改善を認めなかった。同年 11 月上旬よりスクアレン酸ジブチルエステル (SADBE) による局所免疫療法を開始したが,2010 年 5 月頃より徐々に脱毛巣が拡大し,同年 8 月頃より蛇行状脱毛症の像を呈した。本人・両親の同意を得て,2011 年 4 月下旬よりエキシマライト療法を開始した。照射開始前は頭部左側から後頚部にかけて,生え際に帯状の脱毛を認めた。脱毛面積は 25%以上 49%未満で「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2010」1) の分類上,S2 であった。150 mJ/cm2 から照射を開始したところ照射開始 1 カ月後頃から少しずつ発毛を認め,照射開始 3 カ月後で 75%以上の発毛を認めた。小児の円形脱毛症に対してもエキシマライト療法が有効な症例があると考えられる。
  • 北 和代, 加藤 しおり, 中原 真希子, 中原 剛士, 師井 洋一, 桐生 美麿, 古江 増隆
    2014 年 76 巻 5 号 p. 465-468
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    68 歳,男性。10 年以上前に鼻尖部に径 1 mm の丘疹が出現した。時々出血を認めていたが放置していたところ徐々に増大した。初診時,鼻尖部に弾性軟,有茎性の常色,一部茶褐色の径 5 mm の結節を認め,ダーモスコピー像では毛細血管拡張,淡褐色の pseudopigment network 様所見と白毛を認めた。病理組織学的所見では膠原線維と毛細血管の増生を認め,厚い膠原線維に囲まれた毛包も存在した。真皮内に大型で多角形および紡錘形の細胞を認め,それらは免疫染色にて factor ⅩⅢa,CD34 が陽性,S-100 タンパクは陰性であり,fibrous papule of the nose(FPN)の典型的組織像を示した。しかし,真皮浅層の一部に未熟および成熟毛包が結節状に集簇して結合組織性毛根鞘様の裂隙形成を認める部位があり,毛包成分が豊富であった。以上より毛包成分に富む FPN と診断した。FPN の成因は明らかになっていないが,自験例から外的刺激に伴う反応性の変化によるという説を支持し得るのではないかと考えた。
  • 片野 あずさ, 内海 大介, 大平 葵, 粕谷 百合子, 苅谷 嘉之, 﨑枝 薫, 眞鳥 繁隆, 平良 清人, 高橋 健造, 上里 博
    2014 年 76 巻 5 号 p. 469-472
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    16 歳,男性。生下時より右肩の皮下結節を自覚していた。結節は徐々に増大し,7 歳時には鶏卵大の皮下腫瘤となった。その後も腫瘤は増大を続け,16 歳時に当科を受診した。右肩に手拳大の表面常色,弾性軟,ドーム状に隆起した皮下腫瘤を認めた。下床との可動性は良好で,隆起部中央に瘻孔を有し,瘻孔内より数本の毛髪の突出がみられた。造影 CT 検査では右肩甲骨背側上方に周囲との境界明瞭な,86×44 ×67 mm の増強効果の無い単房性腫瘤であった。摘出された腫瘤は線維性の被膜を有し,その内部には多数の毛髪と粥状物質がみられた。病理組織学的所見では重層扁平上皮に裏打ちされた囊胞状構造を示し,囊腫壁には毛包,脂腺,平滑筋線維が付随し,皮下皮様囊腫と診断した。一般に皮下皮様囊腫は頭頚部,特に眼周囲に好発し,それ以外の部位に発症することは比較的稀である。囊腫の大きさが 5 cm を超える症例は本邦では自験例を含め 7 例のみが報告されているが,頭頚部以外に発症した報告は自験例のみであった。
  • 牧野 麻貴, 牧野 英一, 笹岡 俊輔 , 岡 大五, 藤本 亘
    2014 年 76 巻 5 号 p. 473-477
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    86歳,男性。初診の 5 年以上前から腹部の皮疹を自覚していたが放置していた。2 年前に前立腺癌と診断され抗アンドロゲン療法を開始した。当科初診時,臍部に一致する腹部中央に境界明瞭な 20×22 mm の紅斑を認めた。紅斑の周囲には境界不明瞭な淡褐色斑を伴っていたが触診上は明らかな浸潤は触れなかった。視診上,外陰部,腋窩,肛囲に明らかな異常所見は認めなかった。腹部 CT では肥厚した皮膚病変が皮下組織の臍部に連続している像を確認し,皮膚生検にて乳房外 Paget 病と診断した。所属リンパ節腫大や遠隔転移は認めなかったため,全麻下に摘出術を施行した。術後 3 年が経過した現在,局所再発や明らかな遠隔転移は認めていない。臍部に生じた乳房外 Paget 病は本邦ではこれまでに5例の報告があり,うち4 例が臍部に加え他の部位にも病変が多発している。我々が検索し得た限りでは,自験例は臍部に単発した乳房外 Paget 病の本邦初の詳細な報告例であり,既往として前立腺癌を合併し抗アンドロゲン療法を受けていた。
  • 橋本 安希, 久富 万智子, 古場 慎一, 大川 毅, 三砂 範幸, 松尾 宗明, 成澤 寛
    2014 年 76 巻 5 号 p. 478-481
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    26 歳,男性。難治性てんかんに対し各種抗てんかん薬に加え,13 歳時より臭化ナトリウムの内服が追加された。18 歳頃より顔面に紅色丘疹・膿疱・結節が出現し,尋常性痤瘡として加療されていたが難治であった。さらに 26 歳時に下肢に膿疱を伴う赤褐色局面が出現した。病理組織学的には表皮の肥厚と偽癌性増殖,毛包の拡大と毛包内および毛包周囲への好中球を主体とした稠密な炎症細胞浸潤がみられた。 以上の臨床症状,病理組織学的所見および臭化物の内服歴より臭素疹と診断し,臭化物内服の中止により皮疹は消退傾向を示した。近年難治性てんかんに対する臭化物の有効性が見直され,これに伴い若年層での臭素疹の報告が増加している。臭素疹の特性を念頭においた上で,青年期の痤瘡様の皮膚症状についても十分な鑑別を行うべきと考える。
講座
統計
  • 齊藤 明允, 藤澤 康弘, 中村 貴之, 古田 淳一, 川内 康弘, 大塚 藤男
    2014 年 76 巻 5 号 p. 487-492
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    悪性腫瘍を合併する成人発症のアナフィラクトイド紫斑 (以下 AP) は知られているが,悪性腫瘍を合併しない例との違いについて検討した報告はあまりない。今回,我々は 2004 年から 2012 年までの 9 年間に当科で成人発症の AP と診断した 19 例を悪性腫瘍の合併の有無で 2 群に分け,臨床所見,検査所見,治療経過を比較した。悪性腫瘍合併群 (A 群) は 6 例で,非合併群 (B 群) は 13 例であった。A 群に合併する悪性腫瘍はすべて固形腫瘍で,AP の発症が悪性腫瘍と同時ないしそれに先行したのは 3 例 (50%) であった。臨床所見では,先行感染症状,関節痛,消化器症状や下肢を超える皮疹の分布の有無については,両群間で有意差はなかった。検査所見では,腎機能障害は B 群で 13 例中 2 例(15.4%)であるのに対して,A 群では 6 例中 4 例 (66.7%) と有意に多かった (P<0.05)。ASO 値,血清 IgA 値は両群間で有意差はなかった。治療経過では,A 群で腎機能障害に起因するステロイドの全身投与が多く行われた。成人発症の AP を診た際は,悪性腫瘍の合併について留意し,特に合併例では腎機能障害の頻度が高いことから,注意深い経過観察が望ましいと考える。
治療
  • ― ヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイド® ローション 0.3%)併用の影響 ―
    中原 剛士, 中原 真希子, 北 和代, 伊藤 絵里子, 竹内 聡, 岩坂 奈緒美, 岩崎 菜保子, 井手 豪俊, 陣内 駿一, 坂本 佳 ...
    2014 年 76 巻 5 号 p. 493-497
    発行日: 2014/10/01
    公開日: 2015/02/03
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎の治療では保湿剤とタクロリムス軟膏を併用することが多い。本研究では,タクロリムス軟膏の抗炎症効果や刺激感にヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイド® ローション 0.3%)がどのような影響を与えるのかを検討した。17 例のアトピー性皮膚炎 (中等症 15 例,重症 2 例)患者の顔面と躯幹・ 四肢に,右はタクロリムス軟膏(プロトピック® 軟膏 0.1%)単独外用(以後,タクロ単独群と呼ぶ)を,左はヒルドイド® ローション 0.3%+タクロリムス軟膏外用(以後,ヒルド+タクロ併用群と呼ぶ) を 1 日 1 回,2 週間継続外用させた。評価部位の皮疹の重症度は,0:なし,1:軽症,2:中等症,3:重症,4;最重症,の 5 段階で評価し,治療前と治療 2 週後に皮膚科医が行った。タクロリムス軟膏の刺激感に対する評価は,1:とても刺激が強かった,2:刺激が強かった,3:やや刺激が強かった,4:あまり刺激はなかった,5:全く刺激はなかった,の 5 段階で行い,治療 1 週後と治療 2 週後に患者が評価した。顔および躯幹・四肢ともにタクロ単独群とヒルド+タクロ併用群は同程度に有意な皮疹改善効果を示した。治療 1 週後の顔および躯幹・四肢の刺激感を比較すると,ヒルド+タクロ併用がタクロ単独より軽いものは 5 例,ヒルド+タクロ併用とタクロ単独が同等のものは 12 例,ヒルド+タクロ併用がタクロ単独より強いものは 0 例であった。以上より,ヒルドイド® ローション 0.3%の併用はプロトピック® 軟膏 0.1%の治療効果を減弱させる可能性は低いこと,ヒルドイド® ローション 0.3%の併用によってタクロリムス軟膏の刺激感を低減できる症例があることが示された。
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