西日本皮膚科
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85 巻, 1 号
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目次
図説
  • 江川 形平, 椛島 健治
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    症例:80 歳,女性

    主訴:趾間の鱗屑,掌蹠の鱗屑・小水疱

    現症:74 歳時に掌蹠の小水疱,鱗屑が出現し,近医で掌蹠膿疱症と診断された。外用剤で加療されるも難治であり,当科へ紹介となった。エキシマライトによる光線療法が開始されたが難治であった。光源を UVA1 へ切り替えたところ,両側第 1~2 趾間からサンゴ色の蛍光が観察された(図 1 )。趾間部の瘙痒の訴えはなく,真菌鏡検は陰性であった。細菌培養検査は施行していない。

    診断および治療:特徴的な蛍光の所見から紅色陰癬と診断し,クリンダマイシンゲルを処方した。趾間の鱗屑は速やかに消退した。

  • 三浦 真理子, 轟木 麻子, 生野 知子, 竹尾 直子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:2 歳,女児

    主訴:腰背部の有茎性腫瘤

    既往歴:気管支喘息

    現病歴:1 年前より腰背部に常色の小丘疹を認め,徐々に増大し有茎性となり,周囲に小丘疹が出現してきた。

    初診時現症:腰背部中央左側に大豆大の有茎性の紅色腫瘤を認め,周囲に粟粒大の淡紅色丘疹が多発していた(図 1 )。

    ダーモスコープ所見:有茎性腫瘤の表面には真珠様の光沢を有する黄白色の小塊が透見された(図 2 ab)。

    治療および経過:周囲の粟粒大丘疹は伝染性軟属腫と診断し摘除した。中央の有茎性腫瘤は 1 カ月後の再診時には表面に潰瘍を認め縮小していたが,親の希望で局所麻酔下に切除した。

    病理組織学的所見:表皮に壊死性変化を伴い,表皮角化細胞の胞体内に多数の好酸性封入体を認めた(図 3 ab)。

    有茎性腫瘤の診断:伝染性軟属腫

綜説
症例
  • 中川 浩一, 東田 理恵, 松尾 彩子, 岡林 綾
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 :81 歳,男。舌の血腫と指尖,腹部の出血斑を主訴に初診した。指尖は糖尿病の血糖値測定部位,腹部はインスリン注射部位に一致していた。血小板数は 0.5×104/μL と著明に減少していたが,PT-INR,APTT は正常範囲だった。各種臨床検査,画像所見から免疫性血小板減少症と診断した。プレドニゾロンの投与には反応せず,免疫グロブリン大量療法によって血小板数は速やかに回復した。症例 2 :83 歳,女。舌の血腫と下腿の点状紫斑を主訴に紹介された。血小板数が 0.7×104/μL と著明に減少していたが PT-INR,APTT は正常範囲だった。各種臨床検査,画像所見から免疫性血小板減少症と診断した。プレドニゾロン 20 mg/day の投与に反応して血小板数は回復した。ピロリ菌感染も検出されたので除菌治療を行った。また,症例 2 では COVID-19 ワクチンの 3 回目接種後に発病しており,ワクチン接種との関連性についても考察した。症例 1,2 ともに舌の血腫(口腔内出血)を合併しており,血小板数減少も重篤な状態であった。過去の文献を渉猟して,口腔内出血は免疫性血小板減少症の注意すべき症状であることを強調した。

  • 一期﨑 優季, 柏田 香代, 金丸 央, 牧野 貴充, 梶原 一亨, 福島 聡
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    50 歳,女性。初診の約 2 週間前に手指の痺れと上肢の筋力低下を自覚し,前医を受診した。手指屈側に鉄棒豆様皮疹を認め,皮膚筋炎を疑われた。胸部 CT にて間質性肺炎像を認めたため紹介となった。当科初診時,筋酵素の上昇や画像上筋炎所見は認めず,無筋症性皮膚筋炎と診断した。初診 8 日後に入院し,同時に抗 MDA5 抗体陽性と判明したため,プレドニゾロン(1 mg/kg/day),タクロリムス,シクロホスファミド大量静注療法(IVCY)を導入した。治療後肺炎像は消失し,IVCY は 3 クールで終了し退院とした。その後外来にてプレドニゾロン漸減中だが,再燃を認めていない。抗 MDA5 抗体陽性皮膚筋炎は,急速進行性肺炎を併発し予後不良であることが知られている。自験例は早期に多剤併用免疫抑制療法を行うことにより,病状の進行を抑制し得たと考えられた。

  • 橋本 紗和子, 下村 尚子, 古森 環, 川上 かおり, 下村 裕, 小泉 明子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    患者は 45 歳,女性。17 年前に下顎に熱感・硬結を伴う紅斑が出現し,ステロイド内服で軽快した。その後,ステロイドは漸減・中止され,再燃なく経過していた。9 年前にクローン病を発症したため 8 年前からアダリムマブの投与が開始され,以後継続されていた。今回再び下顎に熱感・硬結を伴う紅斑が出現した。近医皮膚科で細菌感染が疑われ,抗生剤内服・外用で加療されたが,症状が増悪したため当科を紹介され受診した。病理組織では,真皮から皮下脂肪織にかけて好酸球を主体とした稠密な炎症細胞浸潤を認めた。17 年前の病理組織も同様に好酸球を主体とした炎症細胞が浸潤しており,flame figure を認めた。以上より,Wells 症候群(好酸球性蜂窩織炎)と診断した。ステロイドの内服加療を開始し,紅斑・硬結は改善傾向となったが,ステロイド減量中に一度再燃した。その後はステロイドの減量をより緩徐に行い,中止後も再燃なく経過している。Wells 症候群は多彩な臨床像を呈し,典型的には細菌性蜂窩織炎に類似した臨床像を認める。経過は様々であり,頻繁に再発し経過が長期におよぶ症例もある。Wells 症候群の発症機序は明らかではないが,生物学的製剤に関連した症例が過去に海外で報告されている。調べうる限り,本邦において生物学的製剤投与中に発症した Wells 症候群の報告は無く,自験例が最初の報告である。

  • 中川 浩一, 東田 理恵, 松尾 彩子, 原田 大輔, 岡林 綾
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:68 歳,男性。高校生時から腋窩に,22~23 歳時には頚部に黄白色丘疹がみられた。複数の皮膚科クリニックを受診したが診断はつかなかった。45 歳ころに飛蚊症のような症状を発症して眼科で黄斑変性症と診断された。その後,次第に視力が低下していき初診時には右眼はほぼ失明状態であった。皮膚病変の精査目的に近医から紹介を受けた。頚部の黄白色丘疹から生検し,真皮中・下層に好塩基性に染色される変性・膨化した弾性線維がみられた。Elastica van Gieson 染色では弾性線維が糸巻き状に観察され,von Kossa 染色では石灰沈着が証明された。当院の眼科を受診し蛍光眼底検査で網膜血管線条が認められた。遺伝子検査で ABCC6 遺伝子の有意な変異が検出された。以上の所見から,発症から 50 年以上たって弾性線維性仮性黄色腫の診断を得た。本疾患では先に皮膚症状が発現し,その後に眼症状,循環器疾患などが現れてくることが文献に示されている。自験例でも確定診断に至った時点で既に眼症状も併発していた。今後,本疾患は皮膚科医が早期診断することにより患者の予後へ貢献することが可能であると認識した。

  • 益子 礼人, 岡 大五, 青山 裕美
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    円形脱毛症(Alopecia areata:AA)は毛包に対する自己免疫反応により脱毛が生じる疾患で,アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis:AD)を合併すると,脱毛が難治化し治療抵抗性となることが多い。今回我々は,AD を合併した AA に対しヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬であるバリシチニブを投与し,AD と AA の両方が改善した症例を 3 例経験した。症例 1 は蛇行型 AA の 38 歳女性,症例 2 は汎発型 AA の 34 歳女性,症例 3 は汎発型 AA の 36 歳男性。3 例ともバリシチニブ投与開始 2 カ月後から発毛がみられ,AD のみならず AA に対する JAK 阻害薬の治療効果に対して患者満足度が高かった。文献的には JAK 阻害薬の減量や中止により AA が再発した症例が報告されており,継続期間については患者とよく話し合って決める必要がある。

  • 上田 茜, 中野 純二
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 38-40
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    14 歳,女性。左片麻痺を生じ,右中大動脈梗塞の診断にて当院脳神経外科に入院した。入院後も麻痺の進行があり,心臓エコー検査等にて心臓粘液腫が認められた。下口唇に点状皮膚色素沈着がみられ,心臓粘液腫との合併により Carney 複合と診断された。Carney 複合とは,皮膚や心臓の粘液腫,皮膚色素斑,数々の内分泌機能亢進症状を呈する稀な疾患である。Carney 複合の死因の 50%以上は心臓粘液腫関連による死亡であるため,点状色素沈着等の皮膚症状から本疾患を疑い,致命的な合併症の早期発見のため,精査をする必要がある。

  • 加古 志織, 澤田 啓生
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    45 歳,女性。3 年前から左臀部に疼痛を伴わない皮下腫瘤を認め,徐々に増大したため来院した。初診時,直径約 6 cm の弾性軟で可動性良好な皮下腫瘤を認めた。脂肪腫などの皮下腫瘍を考え MRI を施行した。MRI では,約 53×46×27 mm の囊胞性腫瘤を認め T1 強調像で均一な低信号,T2 強調像で均一な高信号を示した。皮様囊腫や脂腺囊腫などを考え,局所麻酔下で全摘出術を施行したところ,囊腫は薄い被膜に覆われ,内部には淡黄色の透明な液体を含んでいた。病理組織学的には単房性囊胞であり,囊腫壁は主に一層の線毛を有する円柱上皮であったため,皮膚線毛囊腫と診断した。免疫組織化学染色では細胞核がエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体,PAX-8,WT-1 で陽性であり,CEA,S-100 は陰性であった。本例は発症部位や免疫組織化学的染色の結果から Müller 管由来であると考えた。

  • 仲本 すみれ, 隈 有希, 辻 学, 中原 真希子, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    基礎疾患や家族歴のない 9 歳男児。3 歳時に頭頚部の石灰化上皮腫を5 カ所切除した。数年前から頭頚部,腰部,四肢に皮下結節が出現し,合計 8 カ所の皮下結節を認めた。6 カ所切除し,病理組織学的検査でいずれも石灰化上皮腫の診断となった。過去の報告では,石灰化上皮腫が 6 個以上多発した症例の多くで筋緊張性ジストロフィー,家族性腺腫性ポリポーシス,Turner 症候群,Rubinstein-Taybi 症候群など何らかの症候群を合併している。自験例は遺伝子検査を行っていないが,臨床上これらの症候群を疑う所見はなかった。明らかな症候群や家族歴を伴わない場合でも,β-カテニン遺伝子の変異により多発性石灰化上皮腫を来す可能性がある。β- カテニン遺伝子の変異は悪性腫瘍を生じる可能性がある。自験例は遺伝子変異に関しては明らかではないが,今後の悪性腫瘍の発現に注意して経過をみていく必要がある。

  • 本田 遼馬, 末永 亜紗子, 菊池 智子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    48 歳,女性。初診のおよそ半年前より,疼痛のない後頭部の腫瘤を自覚し,次第に増大傾向であったため,近医より当科を紹介され受診した。初診時,頭頂部に約 15 mm の暗赤色調の結節を認めた。超音波検査では,頭頂部皮下に 11×9 mm の低エコーの比較的境界明瞭な囊胞様の腫瘤を認め,表皮へ開口するように低エコー帯が索状に延長していた。臨床的に表皮囊腫を疑い,局所麻酔下に腫瘍を切除した。摘出した腫瘍は複数の線維性の中隔に隔てられた腫瘤で,透見性があり,粘液様の内容物を内部に含んでいた。病理組織学的に,腫瘍は小血管を含み,星芒状の核を持つ異型性に乏しい紡錘形細胞で構成されていた。また,腫瘍細胞は vimentin,CD34 に陽性で,desmin,S-100,α-smooth muscle actin に陰性であり,これらの所見から superficial angiomyxoma(以下SA)と診断した。SA は腫瘍の外観,病理組織学的所見,免疫組織化学的所見はいずれも特徴的であるものの,臨床所見,画像所見は多彩で特異的な所見がまだ指摘されておらず,術前診断が困難である。従って,頭部の皮内~皮下に発生した腫瘤においては,SA の存在も念頭において,MRI も含めた画像所見で腫瘍の性状,拡がりを注意深く検討することが重要と考えられる。

  • 中島 里穂, 青山 由貴子, 森坂 広行, 中島 英貴, 佐野 栄紀
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 1 号 p. 56-58
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    50 歳,女性。当科初診の 1 カ月前に強い瘙痒を伴って上肢,顔面に落屑を伴う紅斑,びらんが出現した。近医で落葉状天疱瘡が疑われ,プレドニゾロン(PSL)25 mg 内服とジフルプレドナート軟膏が処方されたが皮疹が増悪したため当科を紹介され受診した。全身に境界明瞭で辺縁が隆起する,薄い鱗屑を伴う母指頭大までの環状の紅斑が多発・融合していた。血清抗デスモグレイン 1,3 抗体,抗 BP180 抗体は陰性であった。当科初診時,乳癌に対して内服中のタモキシフェンによる亜急性皮膚エリテマトーデス型薬疹を疑い,タモキシフェン中止の上,内服 PSL 40 mg に増量したが皮疹の改善は乏しかった。病理組織で角層内に PAS 染色陽性の多数の菌糸および分節胞子,病変部鱗屑の水酸化カリウム直接鏡検で隔壁を有する糸状菌を多数認めた。鱗屑の真菌培養から Microsporum canis(以下;M. canis)と同定し,同菌による汎発性浅在性白癬と確定診断した。ルリコナゾールの外用と塩酸テルビナフィンの内服により皮疹は消退した。発症直前から野良猫を飼育し始めた経緯があり,ネコ由来 M. canis による汎発性浅在性白癬と考えた。

世界の皮膚科学者
  • Oliver Dreesen
    原稿種別: letter
    2023 年 85 巻 1 号 p. 67-68
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2023/03/25
    ジャーナル 認証あり

    Dr. Dreesen is a Senior Principal Investigator and Head of the Laboratory for Cell Aging at the Agency for Science,Technology & Research(A*STAR)in Singapore. He served as President of the Skin Research Society(Singapore)from 2019-2021 and was Chair of the Japan-Singapore Skin Research Conference that took place in Singapore from April 10-12,2019.

    After completing his undergraduate degree in Bern,Switzerland,Oliver Dreesen studied sporulation and intermediary metabolism in the gram-positive soil bacterium Bacillus subtilis at the Institute Pasteur in Paris and the University of California,San Diego. In 2001,he started his Ph.D. project under the guidance of Prof. George A.M. Cross at the Rockefeller University in New York,USA with the intent to elucidate the role of telomeres during antigenic variation in the protozoan parasite Trypanosoma brucei. T. brucei causes African sleeping sickness and evades the host immune response by frequently changing its surface coat. During his Ph.D. studies and a short postdoc in Prof. Nina Papavasiliou’s laboratory at Rockefeller University,Dr. Dreesen made significant contributions to our understanding of telomere replication and telomerase-independent telomere maintenance in T. brucei. Importantly,his work demonstrated how telomere length and breakage can regulate the frequency of antigenic switching and host immune evasion.

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