69歳,女性。初診の1ヵ月前頃より左大腿内側に発赤,腫脹が出現した。近医で丹毒(疑い)と診断され抗生剤による加療を受けたが,症状はさらに悪化したため当科を受診した。初診時,下腹部から左大腿にかけて疼痛を伴う発赤,腫脹あり,大腿前面では径1cmのびらんがあった。末梢血検査で白血球減少を認めた。病理組織学的には,皮下の脂肪組織を中心に,中型から大型の異型リンパ球がびまん性に浸潤していた。免疫組織化学染色では,腫瘍細胞はCD3,CD8,CD45ROとGranzymeBが陽性,CD4,CD5,CD10,CD20,CD23,CD56,CD79
αやmyeloperoxidaseは陰性であった。さらに
αβ型のT-cell receptor(TCR)遺伝子の再構成が検出された。以上の所見から,皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫と診断した。診断確定後,当院血液内科へ転科し,Hyper-CAVD療法(cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,dexamethasone)を施行したが,多臓器転移,敗血症を来し初診からわずか3週間後に永眠した。剖検の結果hemophagocytic syndrome(HPS)を合併していたことが判明した。
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