西日本皮膚科
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71 巻, 3 号
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図説
綜説
症例
  • 水本 一生, 新原 寛之, 森田 栄伸, 春田 直樹
    2009 年 71 巻 3 号 p. 260-264
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
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    症例は70代の女性。下肢静脈瘤に伴う静脈うっ滞が原因の下腿潰瘍と診断され,大伏在静脈抜去術が施行されたが,潰瘍は拡大傾向を認めた。Duplex scanにて不全穿通枝による静脈うっ滞が原因の難治性潰瘍と診断し,内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術とデブリドマンを施行した。潰瘍部に良好な肉芽形成が認められたため,遊離分層網状植皮術を施行した。植皮術後35日目に完全な上皮化が認められた。退院後3ヵ月になるが潰瘍の再発はみられていない。
  • 林 周次郎, 濱崎 洋一郎, 北村 洋平, 五月女 聡浩, 池田 秀幸, 沖田 博, 籏持 淳, 山崎 雙次, 中村 哲也, 高橋 雅一, ...
    2009 年 71 巻 3 号 p. 265-268
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
    ジャーナル 認証あり
    78歳,男性。1996年11月頃より手指,前腕に皮膚硬化が出現したため,1997年当科を受診した。レイノー現象,舌小帯の短縮,抗核抗体160倍,皮膚生検所見などより全身性強皮症(diffuse type)と診断した。皮膚硬化に対して外用PUVA療法およびプレドニゾロンの内服を行い,硬化の改善を認めた。2007年4月に嚥下障害を生じ,上部消化管内視鏡を施行した。内視鏡で,下部食道に白色隆起性病変がみられ,生検で食道癌(carcinosarcoma)と診断された。同年7月に食道部分切除,噴門側胃切除手術が施行された。
  • 持田 耕介, 緒方 大, 福田 桂太郎, 片岡 照貴, 中浦 淳, 吉川 周佐, 清原 祥夫
    2009 年 71 巻 3 号 p. 269-274
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
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    直腸肛門部悪性黒色腫は頻度が少なく,特異的症状に乏しく早期診断が困難であり,診断時にはすでに遠隔転移を認めることも多い,きわめて予後不良の疾患である。我々は経肛門的腫瘍全摘生検施行にて診断,腹会陰式直腸切断術施行,術後化学療法にて長期生存を得ている症例,及び多臓器に遠隔転移を生じたが化学療法にて消化管病変を抑え,QOLを維持できた症例を経験した。症例1 : 69歳,女性。2004年6月,前医外科にて歯状線部口側の黒色分葉状腫瘤を全摘生検し,病理組織検査にて悪性黒色腫と診断され,後療法の目的で2004年8月に当科を紹介され受診した。腹会陰式直腸切断術,左側方リンパ節郭清術を行い,術後補助化学療法としてDAV療法を5コース施行した。術後3年5ヵ月の現在も再発はしていない。症例2 : 74歳,男性。2001年5月,近医外科にて肛門管右側の黒色腫瘤を切除し,病理組織検査にて悪性黒色腫と診断された。2002年7月に同部位に再発を認め,同外科にて腹会陰式直腸切断術,人工肛門造設術を施行された。術後2ヵ月後の同年9月,胃壁,直腸壁,右副腎,腹腔・骨盤腔内リンパ節に転移があり,当科を紹介され受診した。DAC-Tam療法5コース,約9ヵ月間で胃病変PR,直腸病変SD。この間,経口摂取及び消化管出血コントロール可能であった。その後,背部・四肢皮膚に多発転移あり,CDV療法に変更して2コース追加したが脳転移が出現し永眠した。化学療法開始から16ヵ月,全経過33ヵ月であった。
  • 大西 明美, 吉田 雄一, 山元 修, 林 一彦
    2009 年 71 巻 3 号 p. 275-277
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
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    69歳,女性。初診の1ヵ月前頃より左大腿内側に発赤,腫脹が出現した。近医で丹毒(疑い)と診断され抗生剤による加療を受けたが,症状はさらに悪化したため当科を受診した。初診時,下腹部から左大腿にかけて疼痛を伴う発赤,腫脹あり,大腿前面では径1cmのびらんがあった。末梢血検査で白血球減少を認めた。病理組織学的には,皮下の脂肪組織を中心に,中型から大型の異型リンパ球がびまん性に浸潤していた。免疫組織化学染色では,腫瘍細胞はCD3,CD8,CD45ROとGranzymeBが陽性,CD4,CD5,CD10,CD20,CD23,CD56,CD79αやmyeloperoxidaseは陰性であった。さらにαβ型のT-cell receptor(TCR)遺伝子の再構成が検出された。以上の所見から,皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫と診断した。診断確定後,当院血液内科へ転科し,Hyper-CAVD療法(cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,dexamethasone)を施行したが,多臓器転移,敗血症を来し初診からわずか3週間後に永眠した。剖検の結果hemophagocytic syndrome(HPS)を合併していたことが判明した。
  • 馬場 千晶, 金蔵 拓郎, 實 操二
    2009 年 71 巻 3 号 p. 278-280
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
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    69歳の男性。2005年2月より右乳頭部の腫大を自覚。徐々に増大してきたため,2006年12月鹿児島県立大島病院皮膚科外来を紹介受診した。初診時,右乳頭に黒褐色の腫瘤を認め,皮膚生検にて,乳頭腺管癌と診断。胸部CTにて,右乳頭部の腫瘤と転移と思われる右腋窩リンパ節腫大を認めた。鹿児島県立大島病院外科で,胸筋温存乳房切除術および右腋窩リンパ節郭清術を施行した。男性の乳癌はまれではあるが,最も多い臨床症状は,乳頭部の腫瘤触知であり,皮膚科を受診する可能性も高いと考えられた。文献的考察も含め報告する。
  • 野網 淑子, 堀米 玲子, 松本 和彦, 高田 実
    2009 年 71 巻 3 号 p. 281-284
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
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    14歳の女児。父方の曽祖父と大叔母,母方の祖父に肺結核があるが,同居歴はない。胸部の紅色結節と丘疹を主訴に受診した。皮膚生検組織でリンパ球,好中球,好酸球を混じた非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた。皮膚結核,非結核性抗酸菌症,サルコイドーシスなどが疑われたが確定診断に至らず,経過をみていたところ,胸部の皮疹は拡大し,頭部に脱毛を伴う紅斑と頚部リンパ節腫張が出現してきた。リンパ節にも非乾酪性類上皮細胞肉芽腫がみられた。3回目の皮膚生検組織から結核菌が培養され,初診の3年後に尋常性狼瘡の診断が確定した。肺をはじめとする内臓の結核は認められなかった。イソニアジドとリファンピシンの2剤併用治療8ヵ月で略治した。本症例は基礎疾患のない若年者で感染経路が不明であったこと,臨床像が非定型的であったことが特徴であった。
  • 安川 晋輔, 武下 泰三, 林田 潔, 内藤 光三, 山崎 文朗, 權藤 寿喜, 古江 増隆
    2009 年 71 巻 3 号 p. 285-288
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
    ジャーナル 認証あり
    症例は26歳の女性,発熱と血小板減少の精査のため当院内科入院中に,右拇指腹側,掌蹠の紅斑を主訴に皮膚科を受診した。右拇指腹側に散在する圧痛を伴う紅斑と,手掌・足蹠には圧痛を伴わない紅斑が散在し,臨床検査で血小板数の低下,CRPの上昇,FDPの上昇よりDICが疑われ,血液塗抹検査では黄色ブドウ球菌が検出された。敗血症患者に認められた四肢末梢の紅斑より,感染性心内膜炎を疑い循環器内科に精査を依頼した。経胸壁超音波検査で左房後壁に20×10mmの疣贅が認められたため,感染性心内膜炎と診断し,当院心臓外科にて疣贅切除術が施行された。術後10日目には拇指腹側・掌蹠の紅斑は消失した。摘出した疣贅の細菌培養及び血液培養よりMRSAが検出され起因菌と考えた。本例の圧痛を伴う指腹の紅斑をOsler結節,疼痛のない掌蹠の紅斑はJaneway斑と考えた。
  • 関山 華子, 篠田 英和, 西本 勝太郎
    2009 年 71 巻 3 号 p. 289-293
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
    ジャーナル 認証あり
    皮疹内の毛に菌寄生がみられたTrichophyton tonsurans (T. tonsurans)による体部白癬の8例(14歳から16歳の中学生および高校生。男女比は6 : 2)を報告した。初診時に皮疹内の毛を抜去し,菌寄生の有無を調べた。受診前に抗真菌薬の外用で治療した5症例で,毛内および毛根周囲に菌が残存し,毛の培養で陽性であったことから,体部白癬の治療には内服薬の併用が必要と考えた。外用薬によって皮疹は軽快しても毛に菌が残存し保菌者となる可能性があり,再発および感染拡大につながる。T. tonsuransによる体部白癬を診た場合は鱗屑のみでなく積極的に皮疹内の毛も抜去しKOH鏡検することが重要である。
講座
統計
  • ――足に注意,高齢者の疥癬――
    宮地 素子, 久保田 由美子, 松尾 美希, 谷川 治, 中山 樹一郎, 安藤 公英
    2009 年 71 巻 3 号 p. 306-311
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
    ジャーナル 認証あり
    西福岡病院で経験した過去約5年間(2003年1月から2007年9月まで)の疥癬症例を報告した。症例数は25例(男 : 女=8 : 17),平均年齢81.7歳。合併症では糖尿病や認知症,高血圧が多く,既往歴は脳梗塞や癌,心筋梗塞が多かった。皮疹は略全身に認めるものから,限局した例もあった。通常疥癬が23例,角化型疥癬が2例であった。冬に診断されることが多く,ヒゼンダニ検出部位は腋窩,趾間からの検出率が高かった。感染源は病院が6例,施設が7例,病院もしくは施設が1例,自宅が1例,友人が疑われた例が1例であった。治療はイベルメクチン内服や25%安息香酸ベンジルローションやクロタミトンクリームの外用を行ったが,内服薬による副作用は認めなかった。再発は治療終了1.5ヵ月後に1例あった。高齢者の足爪白癬,皮脂欠乏性湿疹など足の皮疹をみた場合,疥癬検査は必須である。
治療
  • 高橋 英俊, 飯塚 一, 伊藤 寿啓, 福地 修, 高木 奈緒, 中川 秀己, 馬渕 智生, 小澤 明, 今福 信一, 中山 樹一郎
    2009 年 71 巻 3 号 p. 312-320
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
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    尋常性乾癬患者54名を対象として,マキサカルシトールローション(オキサロール®ローション25μg/g)を被髪頭部,体幹,四肢および顔面に外用した際の有効性および安全性について検討した。有効性評価では,開始時と比較して2週後より紅斑,浸潤・肥厚,鱗屑の各皮膚所見スコアおよび合計スコア(紅斑,浸潤・肥厚,鱗屑スコアの合計)の有意な低下が認められた(p<0.001 : Wilcoxon Signed-Rank test)。安全性評価では,試験期間中,血清カルシウム値,血清クレアチニン値,BUNの有意な異常変動は認められなかった。また,局所性および全身性副作用は認められず,概括安全度においては,92.5%が安全性に「問題はない」,7.5%が「ほぼ問題はない」と評価された。また,試験終了時に一部の患者を対象として実施したアンケート調査では,マキサカルシトールローションを外用するストレスについて,ストレスを「感じなかった」,「ほとんど感じなかった」と回答した患者が81.0%,薬を塗るのに時間がかかると「感じなかった」,「ほとんど感じなかった」が95.3%という結果が得られた。本試験の結果より,マキサカルシトールローションは,尋常性乾癬の被髪頭部のみならず,体幹・四肢・顔面の全身に使用した場合にも高い有効性が得られ,血清カルシウム上昇に伴う高カルシウム血症や急性腎不全を発現する可能性は低いことが示唆された。よって,現在では被髪頭部を中心として用いられているマキサカルシトールローションは,体幹・四肢・顔面に外用範囲を広げた場合でも有用性は高く,軟膏剤を塗布しにくいコンプライアンスやQOLが低下している患者等においては有用な治療の選択肢の一つになると考えられた。
  • ――患者アンケート調査による評価――
    古江 増隆
    2009 年 71 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/07/16
    ジャーナル 認証あり
    第二世代抗ヒスタミン薬であるエバスチン(エバステル®)のそう痒性皮膚疾患に対する臨床効果を,患者アンケート調査により検討した。そう痒を主訴に外来受診したアトピー性皮膚炎患者24例を対象に,エバスチンを1日1回10mg,4週間投与し,エバスチン投与前後に患者アンケート調査を実施した。本試験で使用したアンケート用紙は,質問項目をランダムに配置し,多様な質問形式によるかゆみ評価が前問の思考に引きずられないように配慮し,患者の訴えを評価した。その結果,エバスチン投与によってかゆみの頻度,かゆみの程度,かゆみの強さ(VAS値)などが有意に改善し,エバスチンのかゆみ抑制効果が確認された。また,夜間のかゆみ(睡眠障害),生活の支障度などが有意に改善し,エバスチンはかゆみによって低下したQOLを全般的に改善することが示唆された。さらに,エバスチン服用後に効果が発現するまでの時間は前処方薬に比して有意に短く,作用持続時間は前処方薬と遜色のない結果であった。以上の結果から,エバスチンのかゆみに対する効果が認められただけでなく,眠気などの副作用も少なく,速効性,持続性が認められた。エバスチンはそう痒を有する患者に対し,患者満足度の高い第二世代抗ヒスタミン薬であることが示唆された。
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