西日本皮膚科
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72 巻, 6 号
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図説
症例
  • 内海 大介, 松浦 浩徳, 林 宏明, 笹岡 俊輔, 藤本 亘
    2010 年 72 巻 6 号 p. 569-576
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    63歳の女性。2008年末ごろ左腰部の褐色色素斑に, 2009年2月ごろ手, 四肢の紅斑に気づいた。近医での胸部X線にて間質影を指摘され, 5月中旬に当科を受診。手, 四肢に典型的なGottron徴候がみられ, 筋電図では軽度のミオパチー所見を認めたが, 筋酵素は正常範囲内で, 明らかな筋力低下も認められなかった。胸部CTではNSIP(nonspecific interstitial pneumonia)パターンの間質性肺炎を認めた。以上の所見より間質性肺炎合併clinically amyopathic dermatomyositis(以下CADM)と診断した。プレドニゾロン1 mg/kg/dayの内服を開始し, シクロスポリン150 mg/dayの併用, ステロイドパルス療法を行ったが経過中に難治性皮膚潰瘍, 縦隔気腫を併発した。シクロスポリンをタクロリムス3 mg/dayへ変更し, 呼吸状態は安定しているようにみえた。しかし入院後約5ヵ月目に誤嚥性肺炎を発症。抗生剤加療により一時改善したが, その後急速な間質性肺炎の増悪をきたし, 呼吸不全のために永眠された。CADMは予後不良の間質性肺炎を合併し, 治療抵抗性であることが知られている。皮膚筋炎合併間質性肺炎に対するエビデンスのある治療法は存在しないが, 近年, 早期からの免疫抑制剤を用いた治療法で予後が改善したとの報告がある。予後不良な本症においては, 間質性肺炎の活動性を正確に評価しながら, 免疫抑制剤による積極的かつ迅速な治療を行うことが非常に重要であると考えられた。
  • 足立 孝司, 進藤 真久, 山田 七子, 吉田 雄一, 山元 修, 山崎 章
    2010 年 72 巻 6 号 p. 577-580
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    52歳, 女性。10年前よりレイノー現象があり, 50歳時に抗セントロメア抗体陽性の限局型全身性強皮症と診断された。その1年後, 特に誘因なく全身のそう痒が出現し, オロパタジン塩酸塩内服加療で改善していたが, その4ヵ月後より四肢に紅斑が出現, 徐々に拡大し, 左上肢の発赤・腫脹もみられるようになった。末梢血で好酸球増多を呈し, 病理組織学的に真皮の好酸球浸潤とflame figureを認めたためWells症候群と診断した。プレドニゾロン30 mg/日内服治療を行い改善したが, ステロイドの中止, 減量により再発した。
  • 出口 絵美, 今福 信一, 中山 樹一郎
    2010 年 72 巻 6 号 p. 581-584
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    遺伝性出血性末梢血管拡張症(hereditary hemorrhagic telangiectasia : HHT/Rendu-Osler-Weber syndrome)は反復する鼻出血で気づかれる常染色体優性遺伝性の血管奇形である。HHT患者の多くで血管内皮細胞由来のTransforming growth factor (TGF)-βスーパーファミリーシグナル調節蛋白をコードするendoglin 遺伝子(ENG)もしくはactivin receptor-like kinase 1遺伝子(ACVRL 1)の変異が認められている。本邦におけるHHT患者からはENG変異の報告しかない。症例は39歳の男性。幼少時から鼻出血を繰り返し, 6年前より難治となった。硬口蓋や舌に点状の紅色丘疹が多数みられた。口唇の紅色丘疹の病理組織像では真皮上層に拡張した毛細血管が確認された。同時に左肺動静脈瘻と小脳静脈奇形, 小腸の毛細血管拡張が認められた。遺伝子解析にてENGの変異が認められ, HHT 1型と診断された。
  • 江崎 由佳, 井上 雄二, 石原 剛, 尹 浩信, 林 尚子, 馬場 秀夫
    2010 年 72 巻 6 号 p. 585-589
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    72歳, 女性。初診の3か月前に, 健康診断にて便潜血反応陽性であったために近医を受診し肛門部の腫瘤を指摘された。生検により悪性黒色腫の診断を受けたために当科へ紹介受診となった。初診時に, 肛門部に長径10 mmの黒色腫瘤と色素斑を認め, 内視鏡下に直腸に長径15 mmの腫瘤および潰瘍, 色素沈着を確認した。全身精査にて明らかな転移巣を確認できなかったので, 腹腔鏡下に, 直腸~肛門切断術を行った。直腸部分で, tumor thickness 9 mm, pT4bN0M0 Stage IIcと診断し, 手術後化学療法(DAVferon)療法中である。術後1年経過した現在, 4クール施行し, 再発を認めていない。
  • 鍬塚 さやか, 大久保 佑美, 鳥山 史, 大坪 まゆみ
    2010 年 72 巻 6 号 p. 590-594
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    54歳, 女性。初診の8ヵ月前より手指背面, 頭頚部, 腰背部に硬い紅色小結節が多発し, 顔面, 前胸部では紅斑を伴っていた。また同時期より全身の関節痛も出現した。指背の紅色結節の皮膚生検で真皮全層に好酸性の組織球様細胞と多核巨細胞の浸潤を認め, multicentric reticulohistiocytosisと診断した。Gaシンチで, 臨床的に明らかであった皮膚病変や関節痛の部位のほか, 無疹部の皮膚, 皮下組織, 関節などにも異常集積がみられ, 病変が広範囲に及んでいることが示唆された。また, 関節症状については, 膝関節の滑膜生検を行い, 皮膚と同様の組織所見が認められたためmulticentric reticulohistiocytosisによる多関節炎と診断した。本疾患の関節炎は関節リウマチとの鑑別が難しい場合があるため, 両者の鑑別につき述べた。
  • 中野 美沙, 宇治野 友美, 高原 正和, 内 博史, 師井 洋一, 古江 増隆
    2010 年 72 巻 6 号 p. 595-599
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    57歳, 女性。2007年8月より食欲不振, 全身倦怠感が出現し, 息苦しさを自覚したため近医を受診した。胸部Xpで左胸水および左胸膜肥厚を指摘され, 外科に紹介され, 左胸水に対し胸腔ドレナージを施行された。FDG-PETで左胸膜に多発性に異常集積が認められ, 悪性腫瘍が疑われた。対側肺や他臓器に集積は認められなかったため, 開胸下に胸膜生検術を施行されたところ, 胸腔内は黒色の腫瘤が播種状に存在しており, 一部を生検した。生検組織の病理診断は悪性黒色腫であった。術後, 胸水コントロール目的に胸膜癒着術を施行されたのち, 9月下旬に当科紹介され, 入院となった。体表に悪性黒色腫を疑う所見はなく, PET, CTでも胸膜以外に腫瘍性病変を認めなかったため, 胸膜原発の悪性黒色腫と考え, 10月よりDACTam療法を開始した。2クール終了時のCTで肺病変の増悪を認めたため, CDV療法に変更した。骨髄抑制が遷延したため, 1クール終了後, パクリタキセル単剤投与(triweekly)に変更した。6クールを施行したが, 胸膜病変の増大および, 肝転移, 腹腔リンパ節転移を認めたため, パクリタキセル療法を中止し, IFNβの局注に変更した。2週間ごとにIFNβ300万単位を皮下注していたが, 腫瘍の増大, 多発転移をきたし, 診断より1年9ヵ月で腫瘍死した。
  • 飛田 礼子, 澄川 靖之, 草竹 兼司, 新原 寛之, 千貫 祐子, 森田 栄伸, 鈴木 久美子
    2010 年 72 巻 6 号 p. 600-603
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    60歳台, 男性。20年前から右踵部に拇指頭大の黒色の色素斑を認めていた。3年前に徐々に拡大してきたため, 近医にて部分生検を施行, 病理組織からlentigo simplexと診断されていた。経過をみていたところ, 皮疹の拡大と色の濃淡を認めてきた。初診時, 右踵部に70×40 mmの不整形の色素斑を認めた。境界は不明瞭で, 色調の濃淡がみられた。ダーモスコピーではparallel ridge patternとdepigmentationを認めた。悪性黒色腫が疑われ全切除生検を行った。臨床所見と病理所見よりacral lentiginous melanoma in situと診断した。前医の生検の時点で悪性黒色腫を生じていたのか, あるいは生検後に生じたのかは不明であった。しかし, 部分生検の所見がその病変全体の状態を反映しているとは限らないことから, 悪性黒色腫が疑われる症例では可能な限り全切除生検が望ましいと考えられた。
  • 栗原 雄一, 辻 学, 高原 正和, 松田 哲男, 古江 増隆, 国場 尚志, 本房 昭三, 松本 忠彦, 河崎 昌子
    2010 年 72 巻 6 号 p. 604-607
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    77歳の男性。肺気腫のため, 20年間のステロイド内服歴があり, また農作業のため, 手指の外傷が絶えない状態であった。2007年夏より右手関節部に紅色局面が出現したため, 同年9月, 皮膚生検を施行, 真皮内に肉芽腫様構造と褐色の菌糸形菌要素が認められた。黒色菌糸症と診断し, 切除および植皮を施行, さらにイトラコナゾール内服による後療法を行い, 臨床的に治癒に至った。組織より分離された真菌は, 形態学的所見およびPCR-RFLPを含む分子生物学的検索でExophiala jeanselmei タイプ5と同定された。
  • 伊藤 理英, 福田 英嗣, 早乙女 敦子, 向井 秀樹, 新原 邦江, 森田 栄伸
    2010 年 72 巻 6 号 p. 608-611
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    58歳, 男。3年前より年に3~4回, パン, ラーメン, ハンバーガーなどを摂取した後に膨疹が出現していた。2008年4月, そばを摂取後に全身の膨疹や呼吸苦が生じたため, 当科を受診した。臨床検査所見にてIgE RASTでは, コムギがクラス2, グルテンはクラス3であった。ステロイドの点滴および抗アレルギー剤の内服で症状は軽快した。後日, 負荷試験を行い小麦摂取+運動負荷, アスピリン摂取のみでは, いずれも症状は誘発されなかったが, アスピリン摂取後に小麦摂取を行ったところ, 1時間後に全身に膨疹や紅斑が出現した。また, 血清中にω-5 グリアジンに対する特異IgEを有していたことより, 自験例を小麦による食物依存性サリチル酸誘発性アナフィラキシーと診断した。その後.患者にアスピリンや小麦の摂取を制限するよう指導し, 偶然摂取した場合も想定しエピネフリン自己注射キットを携帯することとした。
研究
  • 塚原 掌子, 籏持 淳, 五月女 聡浩, 濱崎 洋一郎, 小山内 宰, 大塚 真由美, 藤村 努, 北原 隆, 武馬 吉則
    2010 年 72 巻 6 号 p. 612-616
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    全身性強皮症(以下強皮症)患者の皮膚硬化を定量的に評価する方法としてmodified Rodnan total skin thickness score(m-Rodnan TSS)が一般に用いられている。この方法は, 強皮症患者を多数経験した医師の間では再現性にも優れているとされるが, 測定者の主観が入るのは否めない。今回, 東芝メディカルシステムズ社製の超音波診断装置に硬さを定量的に解析できるTSI(Tissue Strain Imaging)法を導入し, この生体内の硬さを測定する通称Strain計測法によって, 獨協医科大学病院皮膚科に通院する強皮症患者11名の皮膚硬化部位と, 性・年齢を一致させた健常者ボランティア18名の同部位における真皮および皮下組織の硬化度を比較した。このStrain計測では, 皮膚および内部の弾性をStrain値として客観的かつ定量的に表すことが可能であり, 硬化度が高い方が低値を示すことになる。前腕伸側では, 真皮・脂肪層でskin scoreと相関してStrain値が低値を示す傾向が認められ, 特にskin scoreの高い強皮症患者(skin score 2~3)と健常者の間では真皮及び脂肪層でともに有意な差が認められた。以上の結果は, 本Strain 計測法が強皮症患者の皮膚硬化に対して従来からのm-Rodnan TSSによる評価を補佐する客観的な計測手法として有用であることを示唆している。測定者の経験に結果が左右されない本Strain計測法は, 今後強皮症の診断や治療効果判定に活用していく価値があると考える。
講座
治療
  • 竹中 基, 宇谷 厚志, 佐藤 伸一
    2010 年 72 巻 6 号 p. 623-630
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2011/01/15
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎などのそう痒に対し, 効果不十分の場合に抗アレルギー薬を変更することは経験的に行うが, 治療効果を検討した報告は少ない。そこで, ロラタジンによる他剤効果不十分例における効果をSCORAD index, Visual Analogue Scale(VAS), Dermatology Life Quality Index(DLQI)を用いて検討した。そう痒性皮膚疾患患者20名(アトピー性皮膚炎17名, 他のそう痒性皮膚疾患3名)にロラタジン5~10 mgを1日1回4週間経口投与し, 皮膚症状(SCORAD), そう痒(VAS), QOL(DLQI)を評価した。皮膚症状は治療開始前31.6から2週後もしくは4週後の最終評価時15.2と有意な改善が認められた。そう痒は治療開始時60.8から最終評価時27.0(1週後 : 40.1, 2週後 : 33.2, 4週後 : 27.2), そう痒による不眠も31.1から9.2(1週後 : 17.7, 2週後 : 12.7, 4週後 : 8.3)といずれも有意な改善が認められ, 効果は1週後から認められていた。QOLについては, 試験開始前の総合得点は4.2であり, 下位尺度では「症状・感情」2.4, 「日常活動」0.9, 「仕事・学校」0.7であった。最終評価時には, 総合得点が2.2と有意な改善が認められ, 他の尺度も改善を認めた。医師による評価のみならず, 患者自身による評価であるVASやDLQIについても改善が認められたことにより, 効果不十分の症例では他剤に変更することは有効であり, ロラタジンはその際に有効な薬剤であると考えられた。
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