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中野 倫代, 稲福 和宏, 畦元 亮作, 新村 兼康
2009 年 71 巻 4 号 p.
388-391
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
56歳の男性。約1年前より,背部と下肢にそう痒を伴わない遠心性に拡大する環状の紅斑が繰り返し出現していた。ステロイド外用を行ったが,再発を繰り返すため,当科を紹介された。全身精査の結果,肝右葉に160×120×180 mmの巨大肝細胞癌が発見された。手術後に環状紅斑は消退し,以後再発は認められていない。環状紅斑は,悪性腫瘍,感染症,薬剤,膠原病などの基礎疾患を背景として出現することがある。内臓悪性腫瘍に併発した遠心性環状紅斑の1例を若干の文献的考察を加えて報告した。
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藏岡 愛, 穐山 雄一郎, 小川 文秀, 清水 和宏, 佐藤 伸一, 赤星 吉徳
2009 年 71 巻 4 号 p.
392-395
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
57歳,男性。初診の14年前,両下腿内踝部に皮膚潰瘍が出現した。近医皮膚科で外用治療を受けるも難治であり,2008年1月上旬,精査加療目的で当科紹介入院となった。右下腿内踝部に70×25 mm,左下腿内踝部に60×35 mmの不整形な潰瘍を認めた。内部には黄色壊死組織が付着し,周囲は著明な色素沈着と皮膚萎縮・硬化を認めた。左大腿,両下腿に静脈瘤があり,右大腿には静脈ストリッピング術による創痕があった。身長184 cmで,声が高く,体毛は少なく,女性化乳房,両精巣萎縮を認めた。理解力不足,軽度の言語発達遅滞も感じられた。血清LH,FSH増加とテストステロン低下を認め,染色体検査で核型47,XXYを検出し,Klinefelter症候群と診断した。下腿潰瘍はKlinefelter症候群に伴う静脈瘤,うっ滞性皮膚炎により生じたと考えた。安静と外用治療で下腿潰瘍は軽快,上皮化した。明らかな基礎疾患がない男性のうっ滞性皮膚炎や難治性下腿潰瘍をみた場合,Klinefelter症候群も念頭に置く必要があると考えた。
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小池 雄太, 山岡 俊文, 小川 文秀, 佐藤 伸一
2009 年 71 巻 4 号 p.
396-399
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
54歳,女性。1996年,手指から前腕にかけての急速な皮膚硬化,開口障害が出現し,抗topoisomerase I抗体陽性の全身性強皮症と診断された。2000年頃より指尖の皮膚潰瘍が出現し,外来通院にて治療されていたが,次第に難治となり入退院を繰り返した。2007年4月から既存の潰瘍治療に加え,ボセンタンの内服を開始したところ,潰瘍の新生が減少すると共に,その重症度も改善した。ボセンタンはエンドセリン受容体拮抗薬として肺高血圧症の治療に使用されてきたが,近年,全身性強皮症に合併した皮膚潰瘍の発生を抑制することが明らかにされてきた。全身性強皮症患者において,既存の潰瘍治療薬では効果が不十分な場合の新たな治療選択肢として期待できる。
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石川 一志, 波多野 豊, 大谷 裕一郎, 中田 健, 阿南 隆, 片桐 一元, 藤原 作平, 門田 淳一, 熊本 俊秀, 糸永 一朗, 池 ...
2009 年 71 巻 4 号 p.
400-404
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
50歳,男性。強い疼痛を伴う手指の冷感にて発症し,全指趾末節が暗紫色調となり,肢端が壊疽となった。38度台の発熱,好中球優位の白血球増多,CRP高値,低酸素血症を伴い,肺血流シンチにて左下葉,右肺尖部に欠損を認めた。前腕伸側の大豆大の皮下硬結の病理組織検査では,血栓を伴った動脈炎の所見のみしか得られなかった。理学的に,四肢末梢の知覚過敏が有り,多発性単神経炎と診断した。1ヵ月で約15kgの体重減少も認めた。発熱に対して抗生剤は無効であった。臨床症状から結節性多発動脈炎を疑い,ヘパリン投与下のステロイドパルス療法とその後のプレドニゾロンおよびシクロホスファミド内服により炎症所見と低酸素血症は改善した。交感神経節ブロック,高圧酸素療法などを併用し,切断を要した左第4趾以外は救指し得た。
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――形態学的解析とX線元素分析――
山崎 亜矢子, 山田 七子, 吉田 雄一, 山元 修, 大藤 聡
2009 年 71 巻 4 号 p.
405-407
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
39歳,女性。初診の3ヵ月前から頭頂部に脱毛斑が出現し,徐々に拡大した。近医受診前夜,洗髪中に髪の毛が絡まりほぐれなくなったため当科に紹介された。絡まった毛髪を実体顕微鏡で観察すると毛髪表面に白い結晶状物質が不規則に分布付着し,走査型電子顕微鏡による観察ではキューティクルが毛の表面から浮き上がり逆立ったような像を呈していた。エネルギー分散型X線分析では,毛髪表面に異常成分は検出されなかった。不適切なヘアケア(毛髪の手入れ)によって生じたものと思われた。
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荻田 あづさ, 小坂 祥子, 新見 やよい, 川名 誠司
2009 年 71 巻 4 号 p.
408-411
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
12歳,女児。生下時より両眼球結膜に青褐色斑,5歳頃より両頬部,四肢に点状の淡褐色斑が出現し徐々に増加した。受診時,両頬部に径数mmの褐色斑が左右対称性に散在し,両眼球結膜には青褐色斑を認めた。また両手背,両足背に径約2mmの褐色斑が散在していた。両側性太田母斑,後天性真皮メラノサイトーシス(以下ADM),遺伝性対側性色素異常症,網状肢端色素沈着症を疑い,皮膚生検を施行した。病理組織学的には,真皮浅層にメラノサイト様樹枝状細胞の増生を認め,真皮メラノサイトーシスの像を呈した。臨床症状および病理組織学的所見より,本症例を眼球メラノーシスを伴う後天性真皮メラノサイトーシスと診断した。太田母斑とADMは,顔面の色素異常症として比較的よくみられる疾患であるが,本症例は鑑別に苦慮した症例であったため,鑑別点などについて考察を加え報告した。
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鶴田 紀子, 平島 徳幸, 古場 慎一, 三砂 範幸, 成澤 寛
2009 年 71 巻 4 号 p.
412-415
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
62歳,男性。初診の数日前より39℃の発熱と皮疹を認め,近医で治療を受けるも改善しないため当科を受診した。全身に爪甲大の淡い紅斑,肝障害,後頚部の刺し口と思われる皮疹,発熱などの特徴的な臨床像よりツツガムシ病と診断した。塩酸ミノサイクリンの点滴を開始し紅斑は急速に退色したものの,発熱は持続し肝障害も増悪した。塩酸ミノサイクリンによる副作用と考え,治療薬を変更せざるをえなかった。一般的にクロラムフェニコールも有効とされるが,直ちに薬剤を入手することができず,対応に苦慮することとなった。アジスロマイシンに変更したところ,解熱し肝機能障害も軽快した。またクロラムフェニコールを併用した。その後もツツガムシ病の再燃を認めなかった。
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安川 晋輔, 武下 泰三, 森 大輔, 古江 増隆
2009 年 71 巻 4 号 p.
416-420
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
水痘再罹患の3例を経験した。いずれの症例も水疱底の塗抹標本での蛍光抗体直接法で,水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus ; VZV)特異抗原が陽性であり,組織学的に水疱内には多核巨細胞も認められたこと,血清VZV抗体価が初感染パターンではなかったこと,帯状疱疹を思わせる皮疹がみられなかったこと,水痘の既往があったことから水痘再罹患と診断した。3症例とも抗ウイルス剤の投与にて1週間程度で症状の改善が認められた。
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佐田 明日香, 平島 徳幸, 三砂 範幸, 成澤 寛, 隅 健次, 園畑 素樹, 藤崎 亜紀, 福嶋 晃子
2009 年 71 巻 4 号 p.
421-424
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
71歳,女性。1週間前より左臀部の紅斑・腫脹・疼痛が出現した。初診時,肛門左側から左臀部にかけて,びまん性の紅斑・腫脹・熱感を認めた。緊急手術を施行したところ,多量の排膿とともに鋭利な異物が発見された。異物は組織学的所見と形状から,魚骨と判断した。痔核や痔瘻は認められず,臀部慢性膿皮症などの所見もなく,膿瘍腔から魚骨が摘出されたことから,魚骨が肛門を穿通して皮下に迷入したことにより発症した肛門周囲膿瘍と診断した。魚骨の穿孔・穿通による肛門周囲膿瘍は,本邦において自験例を含め12例が報告されている。突然の肛門周囲膿瘍を見た場合には,稀ではあるが魚骨の穿孔や穿通による膿瘍形成も念頭におく必要があると考える。
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春山 護人, 尾藤 利憲, 椋本 祥子, 吉木 竜太郎, 戸倉 新樹, 河野 邦江, 森田 栄伸
2009 年 71 巻 4 号 p.
425-427
発行日: 2009/08/01
公開日: 2009/11/12
ジャーナル
認証あり
35歳,男性。初診半年前から特定の菓子パン摂食後の仕事中に蕁麻疹が生じるようになった。約1ヵ月前には,血圧低下,呼吸困難などのアナフィラキシー症状を呈した。小麦とグルテンのプリックテストは共に陽性であったが,IgE-RASTは陰性を示した。患者血清を用いたIgE免疫ブロットで
ω-5グリアジン特異IgEが陽性であり,小麦依存性運動誘発アナフィラキシーと診断した。症状の誘発には,グルテン摂取に加えてアスピリン内服と運動の同時負荷が必要であり,かつ菓子パン以外の小麦食品では蕁麻疹をみないため,菓子パン内に含まれる少量のサリチル酸誘導体などの添加物が発症に関与している可能性が考えられた。
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