西日本皮膚科
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46 巻, 4 号
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図説
症例
  •  
    鈴木 裕介, 塚本 宏太郎, 堀内 保宏, 増澤 幹男, 神崎 保, 西山 茂夫
    1984 年 46 巻 4 号 p. 883-890
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    悪性血管内皮細胞腫2例について, 経時的に, 血液型抗原および第VIII因子に対する酵素抗体法を施行した。経過が長く, 末期に所属リンパ節のみに転移を示した例では, 腫瘍細胞膜上の血液型抗原は病初期, 中期には存在していたが, 末期には, 原発巣, 転移巣内の腫瘍細胞表面から消失していた。また, 経過が速く, 早期から多臓器への転移を示した例では, 腫瘍細胞膜にはすでに血液型抗原は存在しなかつた。以上より, 膜表面における糖末端基の変化が, 腫瘍増大の緩急, 転移の有無に影響していると思われた。第VIII因子関連抗原は, どちらの例も, まつたく存在しないか, 一部不規則に存在するのみであつたが, 経時的な変化はみられなかつた。
  • 青木 重信, 小堀 幸子, 北島 康雄, 矢尾板 英夫
    1984 年 46 巻 4 号 p. 891-894
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    63才男子のalopecia neoplasticaの1例を報告した。右側被髪頭部の鶏卵大の脱毛で初発した。病理組織学的に, 腺癌の皮膚転移が考えられたので, 原発巣の検索を行つたところ, 肺癌(気管支腺由来)を認めた。本邦における本症の報告10例および自験例について, 臨床的観点を中心として若干の考察を試みた。
  • 伊川 知子, 今山 修平
    1984 年 46 巻 4 号 p. 895-898
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    56才男子。5年前より, 手指関節背面に有痛性の皮疹を生じ, 難治である。組織学的には真皮全層から一部皮下脂肪織にかけてのleucocytoclastic vasculitisであるが, 初期より顕著な線維芽細胞の増殖がみられた。血中IgAが高値で, 真皮の血管壁にC3の沈着がみられたことから, 腸管由来の抗原刺激により血管炎が惹起されたものと推測される。DDSが有効であつた。以上, 臨床像, 組織像よりerythema elevatum diutinumと診断した1例を報告し, 若干の考察を行つた。
  • 杉本 憲治, 志田 裕子, 小西 清隆, 谷口 芳記, 濱口 次生
    1984 年 46 巻 4 号 p. 899-904
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Sjögren症候群に合併した紅斑性天疱瘡の70才女子例を報告した。顔面に膿痂疹, 脂漏性皮膚炎を思わせる紅斑が見られ, 前胸部, 背部では小水疱, 色素沈着を伴う紅斑が認められ, 臨床的に紅斑性天疱瘡の典型像を呈していた。小水疱の組織学的所見は棘融解を伴う表皮内水疱であつた。背部の紅斑において, 直接蛍光抗体法で表皮細胞間に一致するIgGの沈着と真皮乳頭の毛細血管壁にIgMの沈着を認め, 電顕所見では真皮血管内皮細胞内にmicrotubular structureを認めた。また患者は以前より眼, 口腔内の乾燥症状があり, 両側角膜炎を認めた。Shirmer test陽性および小唾液腺生検所見, 耳下腺造影所見からSjögren症候群の確実例と診断した。血液検査所見では, 天疱瘡抗体320倍陽性, 抗核抗体640倍陽性(homogeneous型), 抗SS-A抗体1024倍陽性, さらにIgGλ型M蛋白が陽性であつたが, 抗DNA抗体, 抗RNP抗体, 抗Sm抗体, 抗SS-B抗体, LE細胞は陰性であつた。これらの所見から紅斑性天疱瘡とSLEあるいはSjögren症候群のような自己免疫疾患とは密接な関連があると考えられた。
  • 前田 学
    1984 年 46 巻 4 号 p. 905-911
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    69才女子。5, 6年前より糖尿病および高血圧症に罹患し, 治療を受けていたが, 昭和54年5月より症状が悪化したため, 一宮市の某病院に入院した。その時に疥癬と思われる患者と同室したため疥癬に罹患し, ステロイド軟膏の全身塗布を続けるうちに皮疹が増悪し, ノルウェー疥癬に進展した。この1例と, さらにこの患者を媒介として, 職員25名, 入院患者11名, 付添いの家族4名に疥癬の発生をみた院内感染例を経験し, その治療および経過や対策について若干の文献をまじえ報告した。
  • —最近2年間(1981∼1982)の教室および本邦報告例の統計的観察—
    照屋 信博, 森 奈津子, 林 紀孝, 利谷 昭治, 樋口 謙太郎
    1984 年 46 巻 4 号 p. 912-916
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    1981, 1982年の2年間に福岡大学病院皮膚科で経験したケルスス禿瘡の6例を報告した。症例は全例小児である。症例1: 7才5ヵ月男児, T. rubrum, 症例2: 6才2ヵ月男児, M. canis, 症例3: 4才6ヵ月女児, M. canis, 症例4: 1才3ヵ月男児, M. gypseum, 症例5: 1才1ヵ月男児, T. rubrum, 症例6: 3才4ヵ月女児, M. gypseum。あわせて福岡大学病院開設以来10年間の本症報告例23例の原因菌種についてまとめを行つた。なお1981, 1982年の2年間の本邦皮膚科領域での原著, 抄録収載分のケルスス禿瘡症例について集計し主要原因菌の変遷について検討した。
  • 佐藤 敬子, 坂崎 善門, 成沢 寛, 木藤 正人, 友田 哲郎, 荒尾 龍喜, 天野 敏夫
    1984 年 46 巻 4 号 p. 917-921
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    54才女子の肺胸膜, 心外膜を露出した重症60Co潰瘍の1治験例を報告した。肋骨壊死, 肺線維症, 心筋症, 慢性滲出性収縮性心外膜炎を合併し, 横転皮弁および筒状皮弁により被覆した。
研究
  • —ハトムギ細胞傷害性物質の分離—
    平野 京子, 安田 和正, 降矢 けい, 堀川 博朗
    1984 年 46 巻 4 号 p. 922-927
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    現在までにわれわれはハトムギ種皮熱水抽出物がウイルス性疣贅に対し効果のあることを臨床的に確かめた。今回この活性物質の分離を試みた。活性は51Cr-labeled K-562をターゲットとするdirect cytotoxicity testで測定した。まずハトムギ種皮熱水抽出物をメタノール:クロロホルム(1:2v/v)溶液で抽出し, その可溶成分を濃縮した。これをシリカゲル薄層クロマトプレート(Merck Art5745)を用い, 展開溶媒として石油エーテル:エチルエーテル:酢酸(80:20:1)を用いて一次元上昇法によりクロマトグラフィーを行つたところRf値0.18の位置に活性物質が認められた。さらにこの部分をIR, ガスクロマトグラフィー, GC-MSにて分析した結果, 主にC16:0のpalmitic acidとC18:1の不飽和脂肪酸の塩であることが同定され, またC18:0のstearic acidおよびC18:2の不飽和脂肪酸の塩が少量含まれる混合物であることが判明した。
  • 阿部 順一, 中野 俊二, 笹井 陽一郎
    1984 年 46 巻 4 号 p. 928-930
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    家族性良性慢性天疱瘡における水疱について, 水疱蓋裏面および水疱底面を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。水疱底面では, 微絨毛を有する基底細胞に被われた真皮乳頭の突出(絨毛様構造)を, そして疱膜裏面の有棘細胞には分岐, 延長, 融合などを示す微絨毛が明瞭にみとめられた。透過電顕による観察でも, 有棘細胞および基底細胞に, 尋常天疱瘡においてみられたような退行変性の像は観察されなかつた。
講座
統計
  • 四本 秀昭, 下川 優子, 野元 茂, 酒井 和彦, 野辺 修明, 久保 秀徳, 田代 正昭
    1984 年 46 巻 4 号 p. 938-943
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    昭和48年から57年の10年間に鹿児島大学皮膚科教室で, 尋常天疱瘡8例, 落葉状天疱瘡3例, 紅斑性天疱瘡4例, 水疱性類天疱瘡22例, Duhring疱疹状皮膚炎3例, 良性粘膜類天疱瘡1例の計41例の水疱性疾患を経験した。これらの疾患ごとに臨床症状として, 粘膜疹といわゆるDuhring疱疹状皮膚炎様皮疹に注目し検討したところ, 尋常天疱瘡の75%, 水疱性類天疱瘡の41%に粘膜疹がみられた。また, Duhring疱疹状皮膚炎様皮疹は落葉状天疱瘡1例, 水疱性類天疱瘡2例, Duhring疱疹状皮膚炎2例にみられ, 免疫組織学的検索の重要性を改めて認識させられた。治療については, 天疱瘡群, 水疱性類天疱瘡の多くの症例がコルチコステロイドの全身投与により軽快したが, 水疱性類天疱瘡で4例の死亡例を経験した。Duhring疱疹状皮膚炎は全例DDSが有効であつた。一般検査成績では, 水疱性類天疱瘡で末梢血好酸球増多, 血清補体価や免疫グロブリン異常を示す頻度が高かつた。表皮以外の抗原にむけられた自己抗体では, 天疱瘡で核成分に対する抗体陽性2例, 水疱性類天疱瘡で抗核抗体2例, 抗甲状腺抗体1例を認めた。合併症として, 天疱瘡で慢性活動性肝炎1例, 水疱性類天疱瘡で潰瘍性大腸炎, 慢性甲状腺炎各1例を認め, 水疱性疾患の自己免疫的発症機序を支持するものと考えた。
  • 木村 敦子, 南 千賀子, 小林 博人, 石崎 宏
    1984 年 46 巻 4 号 p. 944-946
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    金沢医科大学病院皮膚科における9年間の鶏眼患者157名について統計的観察を行つた。男女比は1:1.5, 20∼50才代が68%を占めた。部位の明らかな130名では, 左右差はなく, 患者一人当りの平均個数は2個で男女差はなかつた。また, 患者10名の鶏眼36個について, 鶏眼の大きさの鉛片を鶏眼上に固定し, 立位および坐位で足のX線前後像を撮り, 骨と鶏眼の位置や大きさとの関係を検討した。坐位から立位に変る際に骨下から骨外へ移動する鶏眼が最も大きく, 体位に関係なく骨外にあるものは最も小さかつた。以上より, 鶏眼の発生には間欠的な皮膚の骨による圧迫のほかに, 圧迫の際に起こる皮膚の伸展が重要であると推測された。
治療
  • —クリーム剤との比較試験—
    RS44872ソリューション研究班
    1984 年 46 巻 4 号 p. 947-959
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    RS44872(硝酸スルコナゾール)ソリューション(RS-S)の臨床的有用性を同じ1% RS44872を含有するクリーム剤(RS-C)を対照として評価するため21施設よりなる研究班を組織して比較試験を実施し, 以下の成績を得た。
    1. いずれの疾患においても総合効果判定, 菌所見, 副作用および有用性の判定に対してRS-S, RS-C両群間に統計的な有意差は認められなかつた。
    2. 最終総合効果判定における有効率(“有効”以上の率)は足白癬でRS-S: 92.3%, RS-C: 77.4%, 股部白癬でRS-S: 87.5%, RS-C: 90.6%, 体部白癬でRS-S: 80.0%, RS-C: 94.6%, 間擦疹型皮膚カンジダ症でRS-S: 90.9%, RS-C: 100.0%, 癜風でRS-S: 93.9%, RS-C: 96.3%といずれも高い有効率を示した。
    3. 統計的に有意ではないが, 最終総合効果判定および有用性の判定に対して足白癬ではRS-SがRS-Cより, また体部白癬ではRS-CがRS-Sより勝れる傾向(P<0.10)が認められた。
    4. 副作用はRS-Sで5.0%(9/179), RS-Cで4.0%(7/175)にみられた。
    以上の成績からRS-SはRS-Cと同様に皮膚真菌症の治療に高い有効率を示し, 副作用もとくに問題となるものは認められなかつた。
  • RS44872ソリューション研究班
    1984 年 46 巻 4 号 p. 960-965
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    各種皮膚真菌症118例に対しRS44872(硝酸スルコナゾール)ソリューションを用い臨床的有効性および有用性を評価し次の成績を得た。総合効果判定において足白癬で72.9%(35/48), 股部白癬で92.9%(13/14), 体部白癬で91.7%(22/24), カンジダ性指間糜爛症で100.0%(4/4), 間擦疹型皮膚カンジダ症で95.5%(21/22), 癜風で33.3%(2/6)の有効率を得, 癜風の場合を除きクリーム剤の臨床効果とほぼ同等の成績が得られた。副作用は7例(5.9%)にみられ, その種類は刺激, 発赤, そう痒, 乾燥化, 接触皮膚炎でクリーム剤と同じ傾向を示した。臨床検査を実施した6例については薬剤投与に起因すると思われる異常所見は認められなかつた。また, 有用性の判定結果は足白癬で70.8%(34/48), 股部白癬で78.6%(11/14), 体部白癬で79.2%(19/24), カンジダ性指間糜爛症で100.0%(4/4), 間擦疹型皮膚カンジダ症で95.5%(21/22), 癜風で33.3%(2/6)の有用率を示した。
  • 渡辺 晋一, 下妻 道郎, 鄭 憲, 久木田 淳
    1984 年 46 巻 4 号 p. 966-972
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Sulconazole nitrateは新しく合成されたイミダゾール誘導体の抗真菌剤で, 1%のsulconazole nitrateを含有するRS44872クリームは, すでに第3相試験が行われ, 臨床的にも安全性の点でも優れた薬剤であると評価されている。そこでわれわれは1%のsulconazole nitrateを含有するRS44872ソリューションを各種皮膚真菌症に用い, その有効性と安全性を検討した。対象は当科外来を受診した患者のうち, 直接鏡検により菌要素を確認しえた白癬23例(足白癬12例, 股部白癬5例, 体部白癬6例), 癜風6例, 皮膚カンジダ症4例(カンジダ性指間糜爛症1例, カンジダ性間擦疹3例)である。使用方法はRS44872ソリューションを1日2∼3回患部へ単純塗擦させ, 菌の陰性化と皮膚所見の改善を観察した。結果は有効以上の割合を有効率とすると白癬では有効率95.7%, 癜風では100%, 皮膚カンジダ症では100%となり, 全体で有効率97%という好成績をおさめた。また副作用は全く認められず, RS44872ソリューションはRS44872クリームと同様, 安全で有用性の高い薬剤と考えられた。
  • ACV研究班
    1984 年 46 巻 4 号 p. 973-985
    発行日: 1984/08/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    新しい抗ウイルス剤アシクロビル(以下ACVと略す)静注の正常人の帯状疱疹に対する臨床的有用性につき検討した。7施設によるopen studyの結果, 本剤は20例の患者において, 95%の累積有効率を得, とくに主観的ではあるが, 疼痛に対する抑制効果が示唆された。さらに客観的に本剤の臨床的有用性を評価するため, placeboとしてマンニトールを対照においた二重盲検試験による試験を実施した結果, 各種皮膚症状のうち急性期症状の合算スコアの推移においてACVはplaceboに比較して有意の差をもつて抑制効果を示した。しかしながら全般改善度および改善率に関してはACV群, Placebo群間に有意差を認めなかつた。また, 急性期疼痛に対して疼痛の軽減度, 疼痛持続時間の比較において, ACVはplaceboに比し有意に優れていた。ACVによる副作用および臨床検査の異常は無視できる程度のものであつた。以上よりACV静注療法は正常人の帯状疱疹に使用した場合とくに初期に治療を開始すれば皮膚の急性期症状を抑制し, 疼痛を軽減かつ短期間に消失せしめる効果があることが明らかになつた。
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