西日本皮膚科
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45 巻, 6 号
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図説
綜説
  • 小堀 辰治, 堀 嘉昭
    1983 年 45 巻 6 号 p. 953-957
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    近年, 毛に関する研究は種々の角度からすすめられているが, なお不明な点が多い。このたび, きわめて俗つぽい, 素朴な疑問として, 鼻背, 鼻尖に毛があるかという問題について調べてみたが, 全部を明らかにすることは出来なかつた。頭部, 顔面で相接する部位である額と前額は同じく無毛であるが, 鼻背, 鼻尖とその無毛となる発生機序は異なるようである。Montagnaら1)は額の発生を加令現象として捉えており, 小堀12)は皮膚にはその個人の年令が最もよく示され, とくに額から前額にかけての変化がその個人の暦年令を示すとしている。試みに男性禿のある52才の男子に鬘をかぶせてみると遥かに若くみえる(図1, 2)。鼻背, 鼻尖ではこのようなことがおこらない。毛はむだに生えている退行器官ではない。何気なく見すごしている毛も身体の一部としてそれぞれの役目をもつているのである。
症例
  • —皮疹の色調の多様性に関する電子顕微鏡的考察—
    西村 正幸, 三原 公彦, 幸田 弘
    1983 年 45 巻 6 号 p. 958-964
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    62才女子の左大腿内側に生じた, 臨床的および組織学的に典型例と思われる, superficial spreading melanomaの1例を報告し, 腫瘍細胞の細胞質にみられたメラノソームの微細構造について考察をおこなつた。典型的ユーメラノソームも少数みられたが, 類円形で変わつた内部構造を示すメラノソームが多かつた。それらは周期性の線維様内部構造の代わりに小胞様, らせん状の微小管状あるいは断片的周期性線維様の内部構造をもち, 種々の量の瀰漫性顆粒状のメラニン沈着を示していた。最近のメラニンに関する化学的知見とユーメラノソームおよびフェオメラノソームの微細構造上の特徴に基づき, これらはフェオメラノソームあるいはフェオメラノソームとユーメラノソームの混合型と考えられた。さらに腫瘍細胞の含有するメラニン色素の質と量の違いが, pagetoid型黒色腫の肉眼的色調の多様性の原因と推測された。
  • —リンパ球モノクローナル抗体を用いた酵素抗体法による解析—
    城野 昌義, 古城 八寿子, 影下 登志郎, 奥村 之啓, 桑原 宏始
    1983 年 45 巻 6 号 p. 965-971
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    老人性角化腫(senile keratosis, SK)を伴つた有棘細胞癌(SCC)症例において, 単クローン抗体を用いた酵素抗体法で, 反応性浸潤リンパ球およびマクロファージを表面形質の差異により亜群に識別, 両腫瘍間で比較·検討し, 以下の結果を得た。両部とも浸潤リンパ球はほとんどT細胞であつたが, T細胞のsubsetsで明らかな差が認められた。すなわちLeu2抗原陽性細胞(L2a(+)細胞)の増加傾向, 腫瘍内侵入像および腫瘍直下集簇像をSK部で認めたが, SCC部ではみられなかつた。またLangerhans細胞をSK部の腫瘍内および間質に相当数認めたが, SCC部ではいずれも比較的減少していた。以上よりSKの腫瘍部および腫瘍直下にL2a(+)細胞を誘導しLangerhans細胞で処理される抗原が確かに1種以上存在すると考えた。
  • 馬野 詠子, 伊藤 祐成
    1983 年 45 巻 6 号 p. 972-975
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    50才男子。主として吉草酸ベタメサゾンクリームを5年以上使用して生じた顔面のステロイド皮膚症難治例を治療中, 眉毛部と下顎部に臨床的にも, 病理組織学的にもeosinophilic pustular folliculitisと診断された局面を生じた。該部に対しては, とくに治療を行わなかつたが, ステロイド外用剤の完全離脱から約9週間後に病巣は消退した。
  • 片岡 和洋, 池田 早苗, 高田 三枝, 江川 政昭, 中塚 博文
    1983 年 45 巻 6 号 p. 976-981
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    Eosinophilic fasciitisの1例を報告した。49才の女子で両下腿に浮腫性硬化性皮疹があり, 一部貨幣大までの紅斑硬結性皮疹となり, 末梢血の好酸球軽度増多, 赤沈亢進, 高γ-globulin血症を伴つていた。組織学的には真皮より筋膜にかけての結合織の増生のほか, 真皮血管周囲への好酸球, リンパ球, 好中球, 組織球の浸潤がみられ, さらに筋組織へもリンパ球を主体とした細胞浸潤がみられた。また, 両下腿骨X-pでは, 腓骨骨膜肥厚がみられ骨膜へも病変がおよんでいる可能性が考えられた。加えて, 自験例において結節状に触知された甲状腺は, 組織学的に甲状腺癌(papillary carcinoma)であることが確認された。Eosinophilic fasciitisとして報告された症例では, 骨膜病変および甲状腺癌の合併の記載はほとんどみられず興味ある所見と考えられた。
  • —とくに治療および帰属について—
    芦澤 かがり, 小玉 肇, 福代 新治, 西本 正賢
    1983 年 45 巻 6 号 p. 982-986
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
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    46才女子および65才女子2例のSweet症候群を報告した。2例とも顔面, 前胸部, 背部正中あるいは下腹部に有痛性隆起性紅斑が, また四肢では結節性紅斑が認められた。臨床検査成績では発熱, 好中球増多, 血沈亢進, CRP 陽性を認めた。組織像では, 真皮に核破壊をともなう好中球の稠密な浸潤と浮腫が認められた。2例とも抗生剤では症状が軽快せず, 第1例にはDDSを第2例にはヨードカリを投与し, 2例とも著効が得られた。投与中止後も再発はみられない。なお第2例には子宮頸癌が先行していた。Sweet症候群は臨床像, 組織像および治療に対する反応の点より, 結節性紅斑の範疇に入る疾患であると考える。
  • 浪花 志郎, 久本 和夫, 岡崎 泰典, 麻上 千鳥, 藤田 英輔
    1983 年 45 巻 6 号 p. 987-990
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    31才女子の仙骨部に生じた仙骨癒着性, 表面結合織性の嚢腫で, 水滑液嚢腫と考えられた1例を報告した。病理組織学的に, 嚢腫内壁は滑液膜と考えられる細胞層, ついで慢性炎症性反応としての結合織層および肉芽腫層で被覆されていた。臨床的, 細菌学的, 病理組織学的および電顕的検索から, 二次感染および日和見感染による局所組織の破壊が誘因となつて, 異所性の滑液嚢または骨膜内の未分化間葉系細胞から不完全な形ではあるが滑液膜が形成され, 結合織層および肉芽腫層の増生を伴つて, 嚢腫形成にいたつたものと推察された。
  • 野上 玲子, 工藤 昌一郎, 前川 嘉洋
    1983 年 45 巻 6 号 p. 991-994
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 生後3ヵ月女児。右足背点滴刺入部を中心として造影剤の血管外漏出によると思われる深達性潰瘍を形成し, 分層植皮術を施行した。症例2: 77才女子。右前腕点滴刺入部に一過性の発赤, 腫脹を来したが, ヒアルロニダーゼ加生食水局注などの保存的療法により軽快した。 皮下注による造影法も行われているが, 動物実験の報告で造影剤の皮下または筋注が明らかな組織障害を示しており, 極量以上を皮下に注入することは危険と考えられる。 造影剤の血管外漏出時の対策として, ヒアルロニダーゼ加生食水の速やかな局所投与により, 症例2のごとく良好な結果を得た。不幸にして壊死に陥つた場合は植皮術の適応となろう。 放射線科領域では急速大量投与による造影法の導入につれて, 造影剤による副作用として皮膚障害の発生が増大する可能性が警告され, 皮膚科においても今後この種の症例の増加が危惧される。
研究
  • 岡崎 泰典
    1983 年 45 巻 6 号 p. 995-1001
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Streptokinase·streptodornase(SK·SD)抗原による皮膚反応および白血球吸着阻止試験の皮膚科領域における臨床応用の有用性について検討し, 以下の結果を得た。
    1. 健康人群
    1) SK·SD皮膚反応は20∼59才の健康人群28例においてSK濃度5単位と10単位とでは正の相関を示した。2) SK·SD皮膚反応は20∼59才の健康人群28例では, PPDおよびPHA皮膚反応, またT細胞数およびSK·SDを抗原とするLAI試験のいずれとも有意の相関を示さなかつた。
    2. 疾患群
    1) SK·SD皮膚反応は20∼59才の細胞性免疫能抑制性疾患18例で, PPD皮膚反応とともに反応低下の傾向を示した。2) SK·SD皮膚反応は20∼59才の細胞性免疫能非抑制性疾患群21例では反応低下の傾向を示さなかつた。一方PPD皮膚反応は反応低下の傾向を示した。3) SK·SD皮膚反応は60才以上の健康人群23例, 細胞性免疫能抑制性疾患群18例, および細胞性免疫能非抑制性疾患群13例のいずれにおいても, PPD皮膚反応とともに反応低下の傾向を示した。
    以上から, SK濃度として5単位のSK·SDによる皮膚反応は20∼59才の症例を対象とする場合, 細胞性免疫能の指標として有用であると考えられた。しかし, SK·SDによる白血球吸着阻止試験の有用性は認められなかつた。
  • 影下 登志郎, 奥村 之啓, 長野 博章, 宮本 裕, 城野 昌義, 小野 友道
    1983 年 45 巻 6 号 p. 1002-1009
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    免疫組織学的に診断した水疱性類天疱瘡22例を臨床的, 組織学的に検討した。症例は男子11例, 女子11例で年令は38才から84才までであつた。発疹の範囲により汎発型17例, 限局型5例に区別され, 臨床形態により水疱型3例, 小水疱型6例, 紅斑型2例, 混在型10例, その他1例に分類した。臨床検査成績で異常を呈したものは, 白血球増多12例, 好酸球増多10例, LDH上昇6例, CRP陽性12例, 高IgE値5例であつた。組織学的に浸潤細胞の種類により好中球型2例, 好酸球型10例, リンパ球型10例があつた。合併症として悪性腫瘍2例, 肝臓および脳腫瘍おのおの1例, 高血圧4例, 糖尿病3例, 甲状腺機能異常2例がみられた。
  • レチノイド(Ro-10-9359)の効果とビタミンA療法の比較
    麻生 和雄, 片方 陽太郎, 徳 誠吉, 渡辺 修一, 渡辺 義弘, 穂積 豊
    1983 年 45 巻 6 号 p. 1010-1017
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    毛孔性紅色粃糠疹(PRP)ではビタミンAが有効とされ, 本邦最近13年間の60症例のうちでも34症例にビタミンAが用いられている。しかしその有効性は, PRPの小児型, 成人型, あるいは皮疹分布の上での末梢型, 紅皮症型, 全身型によつて差異があるようで, 成人型, 全身型, 紅皮症型には効果が少ない。著者らは成人型, 家族性小児型, 小児型の3例にレチノイド(Ro-10-9359)を用い, いずれも有効であることを確認した。その有効性をPRP表皮のプレケラチン生成へのレチノイドの影響から論じた。
  • —水素ガスクリアランス法で測定した健康者各部位の皮膚血流量について—
    竹内 紀文, 小国 隆, 重見 文雄, 武田 克之
    1983 年 45 巻 6 号 p. 1018-1023
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    著者らは水素ガスクリアランス法が皮膚に応用できることを知り, 健康者について身体各部位の皮膚血流量を測定した。男子12名の全身の15箇所の皮膚血流量を比較すると, 前額部では最も血流量が多く, 上肢, 体幹, 下肢と続き, 腰部では例外的に少なく最低を示し, 四肢では屈側が伸側を上回る傾向がみられた。この成績は先人の研究結果とほぼ一致しているが, 測定値にかなりばらつきがあり, 本法の測定手技にいくつかの問題点があることは否めない。そのなかには改良の余地も残されているので, それも含めて考察した。
  • 影下 登志郎, 城野 昌義, 小野 友道
    1983 年 45 巻 6 号 p. 1024-1027
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    掌蹠膿疱症の12例について免疫グロブリンおよび補体の沈着を蛍光抗体直接法によつて検索した。膿疱およびその周囲棘細胞間には全例にIgG, C3の沈着がみられた。角層部では6例にIgG, C3の層状の沈着がみられたがC1q, C5は陰性であつた。表皮真皮結合部および乳頭層では全例陰性であつた。膿疱部における所見は非特異的なものと考えられたが, 角層の所見は特異的な所見と考えた。掌蹠膿疱症の発症機序に角層を中心とした免疫学的な関与が考えられた。
  • —臨床病型と治療効果との関係—
    中野 朝益, 手塚 正
    1983 年 45 巻 6 号 p. 1028-1033
    発行日: 1983/12/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    単純性血管腫を肉眼的にA, B, Cの3型に分類し, アルゴンレーザー療法による治療効果との関係を検討した。100例の単純性血管腫をA, B, Cの臨床型に分類し, 組織学的にも検討し, アルゴンレーザーで治療した。A型は境界明瞭で赤色調が強く, 毛細血管拡張が著明で, 組織学的に真皮最上層に拡張した血管が多数分布するもので, C型は境界はやや明瞭だが赤色調は弱く, 毛細血管拡張が認められず, 組織学的にはA型よりやや深部にあまり拡張していない, 内腔に赤血球のほとんど認められない血管が分布するもので, B型は肉眼的, 組織学的にAとCの中間に属するものとした。米国コヒーレント社製システム1000アルゴンレーザーを用い, 照射出力1.2ワット, 照射時間0.2秒の条件で治療した。治療効果の判定は6ヵ月後におこなつた。A型は28例, B型は38例, C型は34例あり, A型はレーザー治療によく反応し, C型はあまり反応しなかつた。B型はAとCの中間の反応性を示した。単純性血管腫はレーザー治療の反応性により3型に分類され, 肉眼, 組織所見もそれに対応していた。
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