西日本皮膚科
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78 巻, 4 号
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目次
図説
綜説
症例
  • 増田 亜希子, 伊東 孝通, 和田 麻衣子, 日高 らん, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 4 号 p. 353-355
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    27 歳,女性。小児期よりアトピー性皮膚炎に罹患していた。初診の 6 年前より夫の精液付着部位に蕁麻疹と瘙痒を認めた。その後,避妊具なしで性交した際に全身に蕁麻疹を認め,呼吸困難も出現した。同様のエピソードが過去 2 回あった。避妊具を使用した性交渉では同様の症状を生じたことはなかった。近医を受診し,精漿アレルギーの疑いで当科を紹介され受診した。10 倍から1000 倍に希釈した夫の精漿を用いたプリックテストでは,検査した全ての濃度で紅斑と膨疹が出現した。本疾患は精漿中に存在する前立腺由来の糖蛋白に対するⅠ型アレルギー反応であると考えられている。精漿アレルギーの患者の半数以上にアトピー性皮膚炎の既往があると報告されており,皮膚バリア機能の障害による経皮感作が発症に重要な役割を担っていることが推察される。本疾患は皮膚科領域での報告は比較的稀であるが,アトピー性皮膚炎関連アレルギー疾患の一つとして位置づけることができると考え報告した。

  • 山内 恵, 牧野 雄成, 牧野 貴充, 福島 聡, 神人 正寿, 尹 浩信
    2016 年 78 巻 4 号 p. 356-361
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    66 歳,男性。初診の 1 年前から前腕部の皮膚硬化が出現した。前医での皮膚生検の結果,強皮症の診断で当科を初めて受診した。抗 RNA ポリメラーゼ Ⅲ 体が陽性であった。顔面,手指の皮膚硬化の進行,呼吸苦が出現し間質性肺病変を認めたため,シクロホスファミド内服(100 mg/day)を開始した。呼吸苦,皮膚硬化は一時改善傾向であったが,皮膚硬化が再び増悪した。また発熱,呼吸苦が出現し,高分解能 CT で左右下肺野のすりガラス影,網状影が拡大し,動脈血ガス分析,呼吸機能検査の増悪を認め,KL-6:2282 U/ml,SP-D:418 ng/ml と上昇し,間質性肺病変は活動性があると考えた。シクロホスファミド大量静注療法(1000 mg/day,月 1 回)と共に,アザチオプリン 100 mg/day の内服の併用を開始した。シクロホスファミド大量静注療法 6 クール後呼吸苦は軽快し,胸部高分解能 CT 検査にて間質性陰影の改善,動脈血ガス分析の改善を認めた。KL-6 や SP-D,LDH は低下し,%VC や DLCO に軽度の改善を認めた。さらに皮膚硬化の改善も認めた。シクロホスファミド大量静注療法終了後,アザチオプリン単独による内服治療を継続し,5 年以上にわたり皮膚硬化および間質性肺病変の再燃を認めていない。

  • 伊地知 亜矢子, 三苫 千景, 安河内 由美, 内 博史, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 4 号 p. 362-366
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 は 76 歳の女性。2003 年に関節リウマチ(RA)と診断され,タクロリムス,プレドニゾロン,サラゾスルファピリジンで治療されていた。2013 年に両拇指の腹側に皮下結節が出現し,徐々に増大してきた。症例2は66歳の女性。2005 年に RA と診断され,メトトレキセート(MTX)投与が開始された。 RA の病勢が強く,2013 年にエタネルセプトの併用が開始され,その 2 カ月後に左第 4 指背側に結節が出現した。2 症例とも,組織学的に真皮に膠原線維のフィブリノイド変性を伴う柵状肉芽腫がみられた。いずれの症例も薬剤は中止されず,結節の消失には至らず,活動期 RA にみられたリウマトイド結節と診断した。しかし,症例 2 は MTX に加え,エタネルセプトが開始されて 2 カ月後に手指の結節が生じており,薬剤誘発性の可能性も考えられた。RA 患者にみられる結節は,リウマトイド結節,MTX 投与中にみられる MTX-induced accelerated nodulosis の他,近年,TNF-α 阻害剤などの生物学的製剤投与中に出現した報告例もある。MTX や生物学的製剤と結節形成の関連性について,文献的考察を加え報告する。

  • 笹本 聖人, 藤﨑 亜紀, 藤﨑 伸太, 今福 信一
    2016 年 78 巻 4 号 p. 367-370
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    症例は 48 歳の男性。2011 年夏ごろより両手背に環状の紅斑が出現した。2012 年 2 月より 2013 年 12 月までステロイド外用にて治療していたが軽快しないため,2014 年 4 月,右手背より生検した。病理組織学的に真皮にムチン沈着を伴う膠原線維の変性とそれを取り囲むような組織球の集簇がみられ,palisading granuloma の所見であった。血液検査で HbA1c 5.4%,リゾチーム,アンギオテンシン変換酵素はともに正常で,胸部レントゲン写真にて両側肺門リンパ節腫脹はなかった。以上の所見より汎発性環状肉芽腫と診断し,ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル外用に加え,週 1 回エキシマライト療法を開始した。初回照射量は 300 mJ/cm2 とし,紅斑をみながら照射量を増量した。計 25.75 J/cm2 の照射後,両手背の紅斑は平坦化した。ターゲット型光線治療は,健常部を避けて施行できるため,低侵襲で本症に対して有用な治療法の一つと考えられた。

  • 八木 夏希, 筒井 清広, 洞庭 賢一
    2016 年 78 巻 4 号 p. 371-375
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:75 歳,女性。50 歳で糖尿病を指摘され,65 歳から内服・インスリン療法を開始した。初診 1 カ月前に全身皮膚に瘙痒が出現し,2 カ月後から前胸部から季肋部に強い瘙痒を伴い黒色痂皮を付す丘疹が多数出現した。症例 2:81 歳,男性。76 歳で糖尿病を指摘され内服加療中だった。初診 4 カ月前から全身に瘙痒を認め,痂皮を付す角化性丘疹が急激に多発した。2 症例ともに病理組織学的に変性した膠原線維の経表皮性排泄像がみられ,後天性反応性穿孔性膠原線維症と診断した。アロプリノール 200 mg /日内服を開始し,症例 1 は 4 カ月,症例 2 は 1 カ月で瘢痕治癒した。後天性反応性穿孔性膠原線維症に対し,アロプリノールの内服は有効であると考えた。

  • 永井 伸幸, 沖田 朋子, 一宮 誠, 武藤 正彦
    2016 年 78 巻 4 号 p. 376-378
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    症例は 75 歳,男性。約 3 カ月前から両足部に疼痛を伴った網状皮斑があった。造影 CT 検査にて腹部大動脈内壁の不整な血栓像を認め,血栓は内腔に向かって突出していた。壊疽に陥った右第 5 趾の切除標本の病理組織像では,真皮中層から脂肪織の血管内腔に紡錘形の裂隙形成を伴う好酸性無構造物質による閉塞および器質化を認めた。以上からコレステロール結晶塞栓症である shaggy aorta 症候群と診断した。 コレステロール結晶塞栓症の原因としては,カテーテル検査などの血管内操作に基づく場合がよく知られているが,誘因が不明の症例では shaggy aorta 症候群を考慮することが重要と考える。

  • 小川 達也, 田口 詩路麻, 中山 凱夫
    2016 年 78 巻 4 号 p. 379-381
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    48 歳,女性。左下腿の皮下腫瘤が徐々に増大し,当科初診 3 年前に摘出術を施行された。組織診断は脂肪腫であった。その 1 年後に同部位に腫瘤が再発し,生検を施行された。組織診断は脂肪肉腫であった。当科を紹介され摘出術を施行した。組織学的に大小不同の脂肪細胞が線維性間質を交えて密に増殖しており,異型間質細胞,脂肪芽細胞様細胞を認めた。脂肪細胞は MDM2,CDK4 陽性であった。これらの所見から atypical lipomatous tumor と診断した。術後 9 カ月経過観察しているが,再発はない。Atypical lipomatous tumor は高分化型脂肪肉腫と同義とされ,四肢の深部組織や後腹膜に好発する。予後は腫瘍の発生部位により,特に四肢や皮下では良いとされる。

  • 伊原 穂乃香, 古賀 文二, 今福 信一
    2016 年 78 巻 4 号 p. 382-385
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    45 歳の女性。矯正下着着用後,腰臀部と前胸部に瘙痒を伴う皮疹が出現し当科を受診した。初診時,腰臀部に境界明瞭な左右対称性の紅斑と前胸部に紅色丘疹の集簇がみられ,いずれも瘙痒を伴っていた。 皮疹の出現部位は矯正下着の着用部位に一致しており,接触皮膚炎と考えステロイド外用を開始した。しかし 3 日後,皮疹は更に拡大しており紫斑も混在していた。この時点で,家族歴として長女が伝染性紅斑を発症していたことが分かり,伝染性紅斑,血管炎を鑑別に考え皮膚生検と血液検査を施行した。病理組織学的所見では,液状変性がみられ,真皮上層の血管内皮細胞の肥厚,血管周囲にリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤と赤血球の血管外漏出,核の破砕像がみられた。末梢血でも少数の異型リンパ球の出現とヒトパルボウイルス B19(HPaV-B19)IgM 抗体価が有意に上昇しており,HPaV-B19 感染症に関連した皮膚炎と考えた。同ウイルスの関連する疾患として四肢に皮疹を生じる papular-purpuric gloves and socks syndrome(PPGSS)が知られるが,皮疹形成の機序として,免疫複合体が血管に沈着し物理刺激により紫斑が出現すると提唱されており,自験例は下着の圧迫により生じた PPGSS の亜型であると考えられた。

  • 桑代 麻希, 永瀬 浩太郎, 三砂 範幸, 井上 卓也, 濱田 洋平, 青木 洋介, 草場 耕二, 成澤 寛
    2016 年 78 巻 4 号 p. 386-390
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    85 歳,男性。畜産業。10 年以上前より関節リウマチに対してステロイドと免疫抑制剤を内服していた。 2014 年 6 月に牛小屋で転倒し左前腕を打撲した。7 月上旬に,B 型急性肝炎に対してステロイドミニパルスとラミブジンによる治療を開始した。ステロイド漸減中の 7 月下旬より左前腕から手背の腫脹と発赤が出現し,蜂窩織炎として加療を行うも増悪し血疱も伴うようになったため,当院を紹介され受診した。亜急性壊死性筋膜炎の臨床診断で外科的デブリードマンを行ったところ,膿汁および組織の塗抹・培養にて Nocardia niigatensis が同定された。CT にて肺や脳を含む全身への播種病変は認めず,原発性皮膚ノカルジア症と診断した。また右足背には,数年間の経過を有する皮下腫瘤を認めていた。前医でのステロイドミニパルス後から増大傾向を認めており,穿刺したところ多量の膿汁の排出を認め,培養にて Exophiala jeanselmei が検出され黒色菌糸症と診断した。免疫抑制患者に原発性皮膚ノカルジア症と黒色菌糸症を併発した稀な1例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

  • 光井 聖子, 川上 佳夫, 片山 貴, 岸田 雅之, 臼井 正明, 橋本 倫子
    2016 年 78 巻 4 号 p. 391-394
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    77 歳,女性。口内炎,背部のびらん,食欲低下を主訴に,当科を受診した。関節リウマチ(RA)に対し,メトトレキサート(MTX)を 3 年 9 カ月間内服中であった。初診時,白血球数と血小板数の減少を認め,その後赤血球数,ヘモグロビン値の低下も認めた。MTX を中止し,ホリナートカルシウム(ロイコボリン®)と G-CSF 製剤の投与により症状は回復した。MTX の副作用として口内炎はよく知られているが,自験例では口腔内びらんに加えて,体幹のびらんも伴っていたため,初見では尋常性天疱瘡や Stevens-Johnson 症候群の初期などを考えた。MTX 投与中の患者に生じる口内炎は骨髄抑制を予測する手がかりになること,そして MTX 投与中には,皮膚にもびらんや潰瘍が出現する可能性があることについて熟知する必要がある。

研究
  • 森上 徹也, 佐々木 孝志, 西浦 綾子, 石川 絵美子, 玉井 明日香, 横井 郁美, 中井 浩三, 森上 純子, 米田 耕造, 窪田 泰 ...
    2016 年 78 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    上背部の瘙痒性皮膚病変は患者自身の手が届きにくく,患者による自己外用が困難である。今回我々は,患者が自身で背部への自己外用を行うための補助具を考案,試作し,その有用性を検討するため,健常者 43 名の上背部を対象に,手と試作器の外用可能範囲の割合を調べた。上背部全体に占める手による外用可能範囲は,20∼40 代(19 名)で 55.9±19.9%,60∼70 代(24 名)で 43.6±21.2%であった。全年齢において,外用困難な範囲は肩甲骨下方であった。同じ被験者における試作器による外用可能範囲は,20∼40 代で 99.9±0.3%,60∼70 代で 99.6±1.0%と,上背部の全域に及んだ。また,背部に湿疹病変を有する患者 11 名(平均年齢 76.0±7.7歳)を対象に,試作器を使用してステロイドローションと保湿剤ローションを 2 週間外用する臨床試験を行った。上背部の外用可能範囲は,手では 33.2±20.1%だったが,試作器では 99.1±2.7%と有意に拡大した。試作器による外用 2 週間後の医師および患者による重症度評価スコア(最重症=28,皮疹なし= 0)は,ともに開始日の 1/3 に改善した。試験開始時の手による外用への患者満足度(Visual Analogue Scale,非常に満足=100,非常に不満足= 0)は 28.3±23.5 だったが,試作器は 85.4±22.6 と有意に上昇した。試作器への患者満足度は,試験開始時(85.4±22.6)と2週間後(82.5±28.5)で差がなく,満足度は維持されていた。我々が開発中の外用補助具は高齢患者の背部の瘙痒性皮膚疾患に対する自己治療に有用で,患者満足度を向上させた。

講座
治療
  • 安田 正人, 岡田 悦子, 長谷川 道子, 遠藤 雪恵, 龍崎 圭一郎, 岡田 克之 , 田村 敦志, 石川 治
    2016 年 78 巻 4 号 p. 408-413
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    日光角化症は,紫外線による表皮細胞の DNA 損傷から生じる表皮内癌であり,有棘細胞癌の早期病変である。近年,人口の高齢化とともにその発症数は増加してきており,早期治療が重要である。2011 年,日光角化症に対しイミキモド(ベセルナクリーム 5%)が保険適応疾患として追加承認された。日光角化症に対するイミキモド外用療法の有効性ならびに安全性を評価するために,2012年 6月から2013 年 6 月までイミキモドにより治療された日光角化症症例を解析する後ろ向き多施設共同臨床研究を行った。対象症例は 46 例,男性 23 例,女性 23 例,平均年齢は 82.2 歳,罹病期間の平均は 29.3 カ月であり,9 例に前治療歴があった。イミキモドは添付文書通りに使用されており,3 回/週で 4 週間外用,4 週間休薬し,効果不十分の場合はもう 1 コース追加された。奏効率は 78%,治療後 12 カ月まで観察できた 18 例では全例で再発はみられなかった。イミキモド外用による有害事象は,局所皮膚反応のみで,1 コース目では 47.8%,2 コース目では 8.7%にみられた。1 例は休薬する必要があったが,中止後速やかに改善していた。これまでの報告と同様,イミキモド外用は有効性が高く,再発率が低いことから,日光角化症に対して非常に有用な治療薬剤であると考える。

  • 師井 美樹, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 4 号 p. 414-421
    発行日: 2016/08/01
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル 認証あり

    シワは美容上関心の高い老化現象の一つであり,乾燥が原因で生じたシワ(小ジワ)は保湿剤による改善効果が期待できる。そこで,ポリ(トリペプチド-6),(以下:人工コラーゲン)とヒアルロン酸 Na とプルランの 3 つの保湿成分を凍結乾燥した溶解性シート化粧品「エクイタンス® ヴァイトロジーリンクルシート A)と,人工コラーゲン,ヒアルロン酸 Na を配合した保湿美容液「エクイタンス® ヴァイトロジーリンクルエッセンス B)」を用いて,保湿効果とシワに対する有用性を評価することを目的に無作為化単盲検試験を実施した。新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン掲載の目尻シワグレード 2.0∼5.0 に該当し,且つ試験参加の同意が得られた 42 例の健常男性を,年齢およびシワグレードを基準に均等に 2 群に割り付けて,4 週間連用後に評価した。試験の結果,溶解性シートに高い保湿効果およびシワ改善効果が確認できた。有害事象発生者および試験脱落者はおらず,全被験者が試験終了まで問題なく使用できた。

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