西日本皮膚科
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82 巻, 2 号
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目次
図説
  • 足達 麻衣, 村尾 玲, 久保田 由美子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 2 号 p. 71-72
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    症例:94 歳,女性

    主訴:左前腕屈側の黒色斑

    既往歴:認知症

    現病歴:いつ出現したかは不明だが,デイケアスタッフが左前腕屈側にある黒色斑に気付いたため当院を受診した。

    現症:左前腕屈側に約 1 cm の星形を呈した色調不整な黒色斑を認めた。中央は浸潤のある黒灰色局面で雪の結晶のように放射状に黒褐色線条が伸びていた(図1)。

    ダーモスコピー所見:中央部は黒灰色塊を呈し,中央から放射状に伸びる黒色線条と辺縁では spoke wheel area(車軸状領域)と leaf-like structures(葉状領域)を認めた(図2 )。

    治療および経過:特徴的なダーモスコピー所見より基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)を疑い,辺縁から 5 mm 離して全切除した。

    病理組織学的所見(切除標本,図3 ):腫瘍の中央部では表皮は萎縮し,表皮基底層から連続する下方への突出や,側方への進展がみられる基底細胞様細胞からなる腫瘍胞巣と,palisading を呈し周囲にムチン沈着を伴う腫瘍胞巣を,真皮深層まで認めた。真皮内の腫瘍周囲にはメラノファージの集塊も多数認められた。腫瘍辺縁では,表皮基底層から連続して蕾状や樹枝状に伸びる腫瘍塊が等間隔で認められた。

    診断:結節型 BCC

  • 清水 裕毅, 松田 絵奈
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 2 号 p. 73-74
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    症例:64 歳,男性

    主訴:肛門周囲からの出血,排膿を伴う紅色結節

    現病歴:初診の 1 カ月前から下着に血液汚染があった。肛門周囲と会陰部に紅色結節があり,近医で加療するも改善しないため当科を受診した。

    既往歴:生来から視覚障害と聴覚障害

    現症図1 ):肛門周囲の 7 時方向に 1 つ,肛門から 5 時方向,5~6 cm 離れた会陰部に排膿を伴う 3 つの大豆大の紅色結節を認めた。肛門から会陰部の結節まで,圧痛を伴う線状の皮下硬結を認めた。

    病理組織学的所見図2 ):化膿性肉芽腫や痔瘻癌の鑑別目的に皮膚生検を行った。表皮は不全角化がみられ,真皮では毛細血管の増生と血管腔の拡張もあった。真皮の血管周囲と間質に形質細胞,好中球,リンパ球の密な浸潤がみられた。表皮は重層扁平上皮で構成され,表皮や真皮の細胞に極性の乱れや核分裂像など異型はなかった。

    単純 CT 像図3 ):直腸から会陰部右側の皮下軟部にかけて連続する瘻孔を認めた。

    診断治療および経過:培養検査で腸内細菌を検出した。以上から瘻孔部に炎症性肉芽組織を伴う痔瘻と診断し,肛門外科で手術を行う方針となった。

綜説
症例
  • 麻生 麻里子, 伊藤 宏太郎, 大賀 保範, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:33 歳,男性。鼻炎に対し市販薬 (喘妙錠 A,パブロン鼻炎カプセル S® ) 内服後,四肢,鼠径部,腰臀部に色素沈着を残さずに消退する紅斑の出現を繰り返していた。臨床経過より固定薬疹を疑ったが原因薬剤の同定はできなかった。初診の 2 年後に鼻炎のためディレグラ® 2 錠内服後,発熱と同時に前回と同部位に水疱を伴う紅斑が出現したため,これらに共通して含まれる塩酸プソイドエフェドリン (PEP) による非色素沈着型固定薬疹 (nonpigmenting fixed drug eruption ; NPFDE) と診断した。 症例 2:41 歳,女性。感冒に対し市販の新ヒストミン® カプセル S 内服後,臀部に瘙痒を伴う紅斑が出現した。過去に市販のコンタック® 総合感冒薬 EX で同症状を繰り返しており,これらに共通して含まれる塩酸メチルエフェドリン (MEP) による NPFDE を疑った。ディレグラ® 内服テストにより同症状が誘発され,PEP とMEP の交差反応を確認できた。

  • 大澤 梨佐, 中島 喜美子, 藤岡 愛, 山本 真有子, 砥谷 和人, 廣瀬 康昭, 佐野 栄紀
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    62 歳,男性。初診 9 日前に左臀部の表皮囊腫を摘出した。術後,創周囲に発赤,腫脹が出現したため,細菌性膿瘍と診断し,切開排膿術を施行したところ,膿瘍の拡大と発熱が出現したため当院を紹介され受診した。初診時,左臀部中央に壊死組織を伴う手拳大の潰瘍があり,辺縁には紫斑,硬結を触れる発赤があった。血液検査で CRP 上昇に加えて貧血,血小板減少,白血球上昇と骨髄芽球の出現を認めた。骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)を合併した壊疽性膿皮症と診断し,入院の上プレドニゾロン 25 mg/ 日の内服を開始した。プレドニゾロン開始後,解熱し炎症反応も低下したが,疼痛が強く潰瘍の縮小もみられなかったため,プレドニゾロンを 55 mg/ 日に増量したところ,潰瘍はやや縮小し辺縁の皮下硬結も軽減した。しかし,その後プレドニゾロン漸減に伴い潰瘍の拡大と末梢血芽球の増加を認めたため,シクロスポリン 250 mg/ 日を追加投与した。MDS に対してはアザシチジンを投与したが反応に乏しく,入院約 4 カ月後に永眠した。外傷や外科的侵襲後の急速に進行する膿瘍・潰瘍病変は壊疽性膿皮症を疑い,合併症の検索が必要と考えた。

  • 田中 佳世, 井上 卓也, 米倉 直美, 村中 友加里, 成澤 寛, 力武 美保子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 2 号 p. 90-93
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    62 歳,女性。関節リウマチ,混合性結合組織病で治療されていた。初診の約 1 年前より右肩甲骨部に皮下腫瘤が出現し,徐々に増大したため当科を受診した。MRI では右肩甲骨部内側に被膜を有する囊腫様病変を認め,部分切除を行った際に内部から漿液性成分と白色の粥状物の排出を認めた。病理組織では,腫瘤は囊腫様構造を呈し,内部には好酸性の無構造物質と泡沫細胞を認め,necrobiotic xanthogran uloma を疑ったが,臨床所見,検査所見および全摘した病変の病理組織学的所見より慢性滑液包炎の診断に至った。滑液包炎は主に整形外科領域の疾患であり,皮膚科からの報告は少ないが,皮下腫瘤を認めた場合,特に炎症性関節炎や外傷などの既往がある場合には滑液包炎を鑑別疾患の一つとして考慮することが重要と考えた。

  • 佐久川 裕行, 山口 さやか, 山城 充士, 苅谷 嘉之, 新嘉喜 長, 山本 雄一, 高橋 健造
    2020 年 82 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    31 歳,女性。16 歳頃より自覚していた左足底の黒色斑が,妊娠 25 週頃より急速に増大し,隆起してきたため,妊娠 30 週で当科を紹介された。初診時,左足底に 18×10×2 mm の潰瘍を伴う黒色結節があり,悪性黒色腫を考え 10 mm マージンで全切除生検を行った。病理組織学的には,表皮真皮境界部を主体として,豊富なメラニン顆粒を含有し核小体の目立つ異型細胞が胞巣状に増殖しており,末端黒子型の悪性黒色腫と診断した。Tumor thickness は 3 mm,深部断端,側方断端は陰性であった。pT3bNXMX stage Ⅱb 以上の診断で,早期の全身検索および補助化学療法が必要と判断し,妊娠 32 週 4 日に経膣分娩で早期娩出した。胎盤や出生児に転移所見はなかった。出産後,全身検索,センチネルリンパ節生検を行い,末端黒子型悪性黒色腫 stage Ⅱb(pT3bN0M0)と診断し,術後の補助化学療法として,DAV-Feron 療法を 3 クール行い IFN-β の局注射療法を継続している。術後 4 年が経過しているが,再発,転移はない。

  • 藤川 愛咲子, 竹尾 直子, 中田 京子, 安西 三郎, 福田 晴香, 岡田 憲広, 竹中 隆一, 坂本 照夫, 米津 圭佑, 油布 邦夫, ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    山間部在住の 74 歳,男性。猟犬の飼育歴があり,獣肉アレルギーの既往はない。1 年前,鼠径部のマダニ刺症後に鼠径から大腿部にかけて瘙痒性皮疹を生じ,マダニ脱落後に自然消退した。4 月,草刈り後に下肢に瘙痒性皮疹が出現し全身性に拡大した。腹部にマダニを発見し,自己除去した直後に呼吸困難感,胸痛が出現し救急搬送された。1 カ月後,陰囊部の瘙痒を自覚し同部にマダニを発見し,搔破にてマダニが脱落した直後に全身性の瘙痒,呼吸困難,胸痛を自覚した。Galactose-α-1,3-galactos(eα-Gal)特異的 IgE 抗体は class 2 であり,いずれのエピソードもマダニアナフィラキシーと診断された。自験例は自己除去や搔破などのマダニへの刺激により,唾液中の α-Gal が大量に皮内に注入されたことで発症したと考えられ,マダニアナフィラキシーの既往のある患者にはマダニ刺症時にマダニを指でつまむ,引っ張るなどの刺激を加えないことの啓発が必要と思われた。

治療
  • ― 多施設共同非対照試験 ―
    五十棲 健, 渡辺 晋一
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 82 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    われわれは,重症例を含む爪白癬に対してエフィナコナゾール爪外用液 10%の長期使用時(最長 72 週間)の有効性を経時的に評価した。対象は爪白癬と診断され,本試験の参加に同意が得られた 605 名のうち真菌培養検査が陽性であり有効性を評価できた 219 例とした。最終評価時の臨床的有効率(感染面積 10%以下)は 56.6%,完全治癒率は31.1%,真菌学的治癒率は 61.6%であり,それぞれ経時的な上昇が確認されていることから,継続的な塗布が治癒率の向上に寄与することが示された。重症例でも感染面積の縮小が認められており,有効性が期待できる結果であった。爪白癬患者の生活の質に関する質問票(OnyCOE-tTM)を用いた調査の結果から QOL を改善する可能性が示唆された。安全性の評価対象者における副作用発現率は 6.4%で,すべて投与局所のみに発現し,全身性の副作用は発現しなかった。また長期使用による副作用発生率の増加は認められなかった。本薬は安全性に加えて,長期使用による有効性の向上が明らかとなり,爪白癬治療の有用な選択肢になり得るものと考えられた。

世界の皮膚科学者
  • Jouni UITTO
    原稿種別: レター
    2020 年 82 巻 2 号 p. 115-116
    発行日: 2020/04/01
    公開日: 2020/06/05
    ジャーナル 認証あり

    Jouni Uitto, MD, PhD, has been Professor of Dermatology and Cutaneous Biology, and Biochemistry and Molecular Biology, and Chair of the Department of Dermatology and Cutaneous Biology at the Sidney Kimmel Medical College, in Philadelphia, Pennsylvania, since 1986. He is also Director of the Jefferson Institute of Molecular Medicine at Thomas Jefferson University and Co-Director of the Jefferson Center for International Dermatology. He received his MD and PhD degrees from the University of Helsinki, Finland, and completed his residency training in dermatology at Washington University School of Medicine in St. Louis, Missouri.

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