西日本皮膚科
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80 巻, 1 号
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目次
図説
綜説
  • 本田 哲也
    2018 年 80 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
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      脂質は,糖質・たんぱく質と並ぶ三大栄養素の一つであり,多種の脂肪酸から構成される。脂肪酸は,細胞膜などの生体膜構成,エネルギー源,シグナル伝達などの機能を有し,生体恒常性維持に極めて重要な役割を果たしている。一方で,その過剰な摂取やアンバランスな摂取が,皮膚疾患を含めた様々な病態の悪化因子として注目されている。また,脂肪酸の中でも,オメガ 3 系脂肪酸やオメガ 6 系脂肪酸は食事からの摂取が必要な必須脂肪酸である。特にオメガ 3 系脂肪酸は抗炎症作用を有している可能性が多数報告されており,新たな創薬ターゲットとしても注目されている。食事由来脂肪酸の観点からの疾患の病態解明,および創薬展開が今後益々期待されている。

  • ―― ベルリン・シャリテ医学史博物館とゲッティンゲン大学医学史研究所 ――
    石原 あえか
    2018 年 80 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
    ジャーナル 認証あり
症例
  • 前原 恵里子, 三苫 千景, 高松 紘子, 原田 佳代, 和田 尚子, 松田 知与, 石田 倫子, 今山 修平, 占部 和敬
    2018 年 80 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
    ジャーナル 認証あり

    53 歳,女性。初診 6カ月前に血管性浮腫を伴う蕁麻疹を発症した。抗ヒスタミン薬,H2 受容体拮抗薬,抗ロイコトリエン薬,ジアフェニルスルホン,ステロイド,シクロスポリン等様々な治療を試したが症状を完全に抑制できなかった。慢性蕁麻疹においてトロンビン合成が亢進しており,トロンビンと凝固カスケード蛋白の合成を抑制するワルファリンが慢性蕁麻疹の症状を抑制するという報告がある。そこで自験例において,ファモチジン 20mg/日,オロパタジン塩酸塩 10mg/日,シクロスポリン 150mg/日に加えてワルファリン 1mg/日の併用を開始した。ワルファリン開始 3日目に 2mg/日に増量し,以降 PTINR 1.5∼2.0 を目標に 1週間毎に 1mg/日ずつ増量した。内服開始時に 42点であった urticaria activity score used for 7 consecutive days(UAS7)は,開始 21 日目にワルファリンを 4mg/日に増量して 4日後には 7点に低下した。その後,UAS7は 0点を維持できたため,シクロスポリン,次いでワルファリンを漸減,中止し,ファモチジン,オロパタジン塩酸塩の順に中止した。治療を終了して 1年 2カ月経過するが症状の再燃はない。難治性慢性蕁麻疹におけるワルファリンの有用性について考察し,報告する。

  • 佐々木 諒, 立川 量子, 山口 和記, 日浦 ゆかり, 今福 信一
    2018 年 80 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
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    69 歳,女性。2015 年 3 月上旬より発熱,嘔吐,血尿を認め,その後,両下肢に紫斑が出現し当科を受診した。血液検査で胆道系酵素値と IgA 値の著明な上昇,腹部 CT で胆囊,総胆管に結石を認めた。内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(endoscopic retrograde biliary drainage:以下 ERBD)でステント留置後,紫斑と胆道系酵素値は改善した。病理組織検査で真皮上層の血管周囲に leukocytoclastic vasculitis の像と免疫組織化学染色で血管壁周囲に IgA の沈着を認めた。その後,再び両下肢に紫斑,胆道系酵素値の上昇を認め再度 ERBD を行ったが,その際ステントの脱落を認めたため再留置を行った。その後,速やかに紫斑と胆道系酵素値の改善を認めた。胆石症や胆囊炎にアナフィラクトイド紫斑病を合併した症例は過去にも報告がある。自験例では 2 度に亘り胆石症の治療後に紫斑の改善を認め,胆石症の存在がアナフィラクトイド紫斑病の発症に関与していることが考えられた。成人のアナフィラクトイド紫斑病を診察した際は胆石症も疑って検査を行うことが重要と考えられた。

  • 帖佐 宣昭, 津守 伸一郎, 緒方 克己, 蜂須賀 裕志
    2018 年 80 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
    ジャーナル 認証あり

    77 歳,男性。体幹,上肢に爪甲大までの浮腫性紅斑が散在し,両足に水疱,潰瘍を認めた。前医でプレドニゾロン (prednisolone:PSL) 10 mg/日内服治療を開始するも改善無く,抗 BP180 抗体 860 U/ml と高値であり,水疱性類天疱瘡 (bullous pemphigoid:BP) と診断された。PSL 20 mg/日へ増量したが改善せず,WBC 11300/μl,CRP 16.82 mg/dl で,皮膚からの滲出液が持続するため当科を紹介された。体幹, 四肢に BP の皮疹を認めると共に,左足背を中心とした壊死性蜂窩織炎 (necrotizing cellulitis:NC) を合併していた。局所麻酔下に切開,デブリードマン,創洗浄を行い,抗生剤を開始し,ステロイド内服を継続した。NC は改善傾向を示したが,BP は悪化したため大量免疫グロブリン静注 (intravenous immunoglobulin:IVIG) 療法を併用したところ BP は改善した。左足背の皮膚潰瘍に対し,局所麻酔下に shave wheals 法で採皮するパッチグラフトを行い,創閉鎖した。中等症以上の BP に重症感染症を合併している場合,ステロイドの増量や他の免疫抑制剤の追加投与は施行しにくい。近年,乾燥ポリエチレングリコール処理ヒト免疫グロブリンの効能にステロイド剤の効果不十分な BP が追加された。また従来から IVIG 製剤には重症感染症における抗生剤との併用の効能が認められている。これまでのところ本邦および海外において BP に NC を合併し,大量 IVIG 療法を施行した症例の報告を蒐集することはできなかった。中等症以上の BP に重症感染症を合併している場合,大量 IVIG 療法は積極的に行う価値の高い有効な治療法であると考えた。

  • 大熊 未佳, 笹木 慶子, 戸井 洋一郎
    2018 年 80 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
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    48 歳,男性。生下時より全身に白皮症があった。難治性労作時呼吸困難を主訴に当院呼吸器外科を受診し,生検にて非特異的間質性肺炎と診断された。全身性白皮症および原因不明の間質性肺炎より眼皮膚白皮症 (OCA) を疑った。出血時間の軽度延長,血小板凝集能の低下がみられ,症候型 OCT の一型,Hermansky-Pudlak 症候群 (HPS) を疑い,遺伝子検査にて HPS1と診断した。初診 2 年後,右耳介下部に褐色小結節が出現し,切除生検にて悪性黒色腫と診断するも呼吸状態が不良であり,局所の拡大切除のみ行い半年後に死亡した。HPS をはじめ白皮症は紫外線による皮膚癌の発症リスクが高いと考えられているが,悪性黒色腫合併例の報告は少ない。

  • 小松崎 ゆき, 林 周次郎, 山内 瑛, 塚田 鏡寿, 鈴木 利宏, 濱﨑 洋一郎, 刀川 信幸, 籏持 淳
    2018 年 80 巻 1 号 p. 35-37
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
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    25 歳,女性。出生時から左頰部に線状の褐色斑があった。数年前より褐色斑の一部が隆起し,当科を受診した。初診時,左頰部に黄褐色で 25×5 mm の疣贅状局面があり,上端に出血を伴う 3×3 mm の紅色結節があった。結節部を含めて生検を施行し,結節部は脂腺腫,局面部は脂腺母斑と病理組織診断した。その後,残存した脂腺母斑を全て切除し,現在まで再発はない。1997 年から 2016 年までに当科で切除した 94 例の脂腺母斑を検討したところ,11 例に二次性腫瘍の合併があった。これまでの他施設における集計結果と合わせると,20 歳以下の脂腺母斑では,悪性腫瘍の発生は 0.5%以下で,一方 50 歳以上の脂腺母斑では 60%以上が悪性腫瘍を合併していた。

  • 箕輪 智幸, 栁澤 健二, 加賀谷 真起子, 髙橋 博之, 井端 淳, 後藤田 裕子
    2018 年 80 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
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    75 歳,男性。初診 2 週間前より全身のリンパ節腫脹を伴う発熱と共に体幹・四肢に自覚症状を欠く播種状の紅色丘疹・紅斑が出現した。背部紅斑の皮膚生検では,真皮深層の血管および付属器周囲に異型リンパ球を含む単核球の集簇を認め,異型リンパ球は CD3,CD4,CD10,bcl-6,PD-1が陽性であり,angioimmunoblastic T-cell lymphoma(以下 AITL)が疑われ,その後の右鼠径リンパ節生検により AITL と確定診断された。AITL は約半数で皮疹を呈するが,臨床像,病理組織像共に非特異的であるためリンパ節の特徴的な組織像により診断される。今回,皮膚等の節外病変においても免疫組織学的所見が AITL の診断に有用である可能性が示唆されたため,本邦報告例も含めて検討し報告する。

  • 村尾 玲, 古賀 文二, 古賀 佳織, 藤 洋美, 今福 信一
    2018 年 80 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
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    61 歳,男性。2011 年に特発性肺線維症と診断され,ステロイドの全身投与が開始された。2015 年 8 月に左肺移植術が行われ,免疫抑制剤も併用された。同年 12 月中旬より臀部に瘙痒のない褐色斑が出現し当科を受診した。体部白癬の診断で抗真菌剤の外用薬を開始し,まもなく軽快した。2016 年 3 月より両足底と臀部に痂皮を伴う多発性の小結節が出現した。皮膚生検,培養検査および遺伝子検査結果より,Trichophyton rubrum による白癬性肉芽腫と診断した。フルコナゾール内服を開始し,約 2 カ月で皮疹は消退した。白癬性肉芽腫は以前より報告があるが,近年では臓器移植後の発症例も報告されている。臓器移植数は,徐々に増加してきており,皮膚科医は本疾患を改めて認知しておくべきだと考える。

研究
  • 梶田 藍, 山﨑 修, 加持 達弥, 梅村 啓史, 岩月 啓氏
    2018 年 80 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
    ジャーナル 認証あり

    免疫チェックポイント阻害剤をはじめ進行期悪性黒色腫に対する新規治療が生存期間の延長に寄与している。しかし,免疫チェックポイント阻害剤の治療効果の判定は難しく,PD (progressive disease) 症例での中止の判断も難しい。2014 年 7 月より 2016 年 6月に免疫チェックポイント阻害剤 (ニボルマブ,イピリムマブ) を投与した進行期悪性黒色腫患者で PD となり緩和治療へ移行した 8 例を検討した。男性 2 例,女性 6 例,平均年齢 69.3 歳。BRAF 変異陰性例 6 例。PD 判定から免疫チェックポイント阻害剤最終投与までの平均投与回数 2.4 回,平均投与期間 36.1 日,最終投与から死亡日までの平均期間 36.1 日であった。PD 症例では治療の変更または緩和治療へ移行すべきであるが,他に選択肢がない場合は beyond PD でも続行していることも多かった。

  • 岸田 功典, 斎藤 万寿吉, 山﨑 正視, 長谷 哲男, 坪井 良治
    2018 年 80 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2018/02/01
    公開日: 2018/06/04
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    入浴・洗浄は清潔さを保つための重要な生活習慣であるが,高齢者では過度の入浴・洗浄は皮膚の乾燥を招く恐れがある。高齢者の適切な入浴・洗浄条件を検討する目的で 105 病棟の入浴状況をアンケート調査した。その結果,週 2 回の入浴が最多(55%)であった。ついで,入院中の 41名の患者について,右下腿は週 2 回洗浄,左下腿は週 7 回洗浄の2群に分けて皮膚状態が変化するかを検討した。週 7 回洗浄群では皮膚水分量,伸側の皮膚水分蒸散量,皮膚 pH が有意に上昇したが,視診による皮膚状態の違いは見出せなかった。

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