西日本皮膚科
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47 巻, 2 号
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図説
症例
  • —構成細胞の微細構造について—
    西村 正幸, 三原 公彦, 日野 由和夫, 幸田 弘
    1985 年 47 巻 2 号 p. 213-219
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    25才女子の右第2指末節指腹部に生じた腱鞘巨細胞腫の1例を報告した。電子顕微鏡的に本腫瘍は滑膜A, B細胞類似の細胞, 両者の中間的形態を示す細胞およびそれらの変化によつて生じたと考えられる多核巨細胞, 泡沫細胞およびmyofibroblastからなり, これらの細胞は間質中に島嶼状に小胞巣を形成していた。本症の病理学的位置づけに関して, 周囲の結合織に対して傷害性でなく拡大性の増殖様式をとる点, および正常ではみられない細胞間接着装置の分化, 多核巨細胞や泡沫細胞を形成する点は, 炎症や過形成というよりむしろ良性腫瘍を示唆すると考えられる。
  • —特にフィブロネクチンおよびラミニンの分布について—
    前川 嘉洋, 乃木田 俊辰, 荒尾 龍喜
    1985 年 47 巻 2 号 p. 220-223
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    いわゆる皮膚混合腫瘍の腫瘍細胞の発生由来については, 汗腺由来であろうことは確実で, 間質の成分についても, 変性した膠原線維とヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸が存在すると報告されている。78才女子および61才女子の鼻背に生じた2症例につき, 間質におけるフィブロネクチンおよびラミニンの分布につき, 蛍光抗体法により検討を加えた。フィブロネクチンは軟骨様構造部に一致して, 変性膨化した膠原線維とともに, 顆粒状に強く染色され(78才女子例)腫瘍細胞および管腔内には存在しなかつた。ラミニンは2症例ともに腫瘍細胞と間質の間に線状に染色され, これらの腫瘍細胞が生成することを示唆する所見が得られた。
  • —特に皮膚所見について—
    朔 民子, 今山 修平, 占部 治邦, 林 靖生
    1985 年 47 巻 2 号 p. 224-229
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    48才男子。全身の色素沈着, 皮膚の硬化, 四肢の剛毛, 多発性の血管腫などの皮膚症状を呈し, 手袋—靴下型の多発性神経炎症状, 腹水, 下肢の浮腫, リンパ節腫脹などが認められた。内科入院後の精査にて, 形質細胞の浸潤を伴う限局性の骨硬化所見, 血清学的にIgA, λ型のM蛋白の存在, 肝脾腫, ホルモン値の異常を認め, 「多発性神経炎と内分泌症状を伴うplasma cell dyscrasia」と診断された。プレドニソロン経口投与により, 症状の著明な改善が見られた。本症候群の皮膚所見を自験例と比較検討した。
  • 野上 玲子, 吉永 愛子, 緒方 康博
    1985 年 47 巻 2 号 p. 230-235
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    真性赤血球増加症の皮膚症状としては顔面および手掌の潮紅, 粘膜の充血, 温度依存性皮膚そう痒, 蕁麻疹がよく知られている。自験例(48才女子)ではこれらのほか, 全身に多発する結節性紅斑様皮疹を呈し, 真性赤血球増加症の病勢と並行して消長が認められたことから, 結節性紅斑を真性赤血球増加症のdermadromeの一つと考え, 報告した。また自験例ではPPDに対しhypersensitivityを示し, PPDにより結節性紅斑が惹起された。本例にみられた結節性紅斑の発生因子として多血症の病態, すなわち, 全血液量の増加, 血液粘稠度の上昇, 血小板増多が関つていると推測され, 文献的考察を行つた。
  • 折原 俊夫, 塚田 篤子, 古谷 達孝
    1985 年 47 巻 2 号 p. 236-241
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    抗RNP抗体高値のMCTD1例, SLE2例の計3例に, その顔面紅斑の組織所見で著明な核破壊を伴う好中球浸潤, 出血および血管壁変性, すなわちleukocytoclastic vasculitisの所見が認められた。SLEにおける壊死性血管炎の発症頻度は皮膚, 内臓諸臓器ともに低く, とくに核破壊を伴う好中球浸潤がみられるものは極めて少ない。自験3例において顔面紅斑にこの所見が認められ, しかもMCTDに特徴的とされ, かつレイノー現象, 皮膚潰瘍などの血管病変と関連の深いとされる抗RNP抗体が高値であつたことは, 両者の間に何らかの関連があるものと考えられる。
  • 和田 民子, 籏持 淳, 植木 宏明, 門田 尚
    1985 年 47 巻 2 号 p. 242-247
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    69才女子の汎発型環状肉芽腫の1例を報告した。抗核抗体が陽性で, 末梢血リンパ球でT細胞とB細胞の比率の逆転およびOKT3, OKT8の減少とOKT4, OKIa 1の増加が認められ, ツ反が陰性, DNCBテストは感作不成立などの免疫学的異常を示した。糖尿病の合併はなかつた。皮疹が自然消退した後, 末梢血リンパ球のT細胞とB細胞の比率とsubpopulationは正常化する傾向を示した。
  • 麻野 誠一郎, 高橋 収, 重見 文雄
    1985 年 47 巻 2 号 p. 248-250
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    症例はブラジルからの帰国者で, ブラジル滞在中に農園の土壌より経皮的に感染したと思われる。左手に特有の線状紅色蛇行状皮疹が生じ, 組織で表皮内に空洞があり, その中に虫体を認めた。経皮感染によるcutaneous larva migransは本邦では発生しないが, 諸外国との交流が盛んな今日, 本邦でも診る機会があるものと思われるので, 原因幼虫のlife cycleならびに臨床像などについても記載した。
  • 高瀬 孝子, 馬場 徹, 上野 賢一
    1985 年 47 巻 2 号 p. 251-256
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    症例は44才女子。昭和43年, 右上眼瞼に皮疹が出現し, 右眼周囲に徐々に拡大したので, 切除植皮を行い根治した。切除組織片を培養し, Phialophora verrucosaを分離した1)。昭和52年, 左頸部の皮疹に気づき, 徐々に拡大したため, 昭和54年当科を受診した。頸部皮疹の痂皮および生検組織片からの培養にてFonsecaea pedrosoiを分離した。組織内菌要素としてはsclerotic cellsのほかにsclerotic cellsからの短い菌糸発芽がみられた。頸および鎖骨上窩リンパ節への転移もみられた。5-フルオロサイトシンの内服が有効であつた。現在, 頸部皮疹は瘢痕治癒し, 触知するリンパ節もない。2種の黒色真菌による, 時期の異なる重複感染例が観察されたので報告した。
  • 長谷川 隆, 小林 まさ子, 寄藤 和彦, 伊藤 達也, 吉田 秀史
    1985 年 47 巻 2 号 p. 257-262
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    近年, 形成外科的手技の導入により, われわれ皮膚科医にも著明な後遺症を残すことなく口唇部腫瘍切除後の再建ができるようになつてきた。今回われわれがこれまで行つてきたなかから代表的7症例につき, 口唇部の再建法として単純V字形切除縫縮術2例, V字形切除縫縮術+Z形成術1例, subcutaneous pedicled flap法1例, reverse Gillies’ fan flap法+ステップ·テクニック1例, Abbé-Estlander法1例, nasolabial flap+Abbé flap法1例を施行し, 良好な結果を得たことを述べた。さらに口唇部腫瘍切除後の再建術は患者の年令と性, 腫瘍の性格と切除量, 腫瘍切除後の欠損の大きさと部位が術式の選択と組み合わせを決定することを述べた。
研究
  • —光顕·電顕二重同定法による同定について—
    手塚 正, 高橋 昌江, 宮本 博泰
    1985 年 47 巻 2 号 p. 263-267
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    遺伝性掌蹠角化腫表皮顆粒細胞層に電顕上みとめられた微細粒子状物質の凝集塊が, 光顕上の7-(N-dimethylamino-4-methyl-3-coumarinyl)maleimide染色でS-S結合に富む小顆粒そのものであることを, DACM染色を行つた凍結標本より直接電顕標本を作成し, 顆粒と核の相互関係から証明した。
  • 榊 哲彦, 重見 文雄, 玉田 伸二, 佐野 寿昭
    1985 年 47 巻 2 号 p. 268-271
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    足底疣贅の表層薄切標本を用いて検討した結果, 組織学的に特徴的とみなされる像が得られ, PAP法による免疫組織化学的検討ではウイルス抗原の核内局在をみとめた。表層薄切材料は足底疣贅の診断に有用で, PAP法の併用はウイルス性疣贅の診断に有用な方法であると思われた。
  • 吉田 正己
    1985 年 47 巻 2 号 p. 272-277
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    昭和54年2月から昭和57年5月までの期間に臨床的に皮膚粘膜の単純ヘルペスと診断した134例(そのうち分離陽性107例)を対象とし, ウイルスの分離率と分離ウイルス株の型別を検討し, 次の結果を得た。1)発疹の形態別によるウイルス分離率: 小水疱と膿疱から95%以上, 糜爛と痂皮下糜爛から75%以上にウイルスを分離できた。さらにアフタ, 潰瘍, 丘疹, 水疱前紅斑からも分離できた。しかし痂皮と水疱後紅斑からは全く分離できなかつた。2)病日とウイルス分離率の変動: 1病日100%から6病日57%まで漸減傾向を認めた。しかし7病日から30病日の検索でも今回は注意深く湿潤病巣を捜し出したところ67%に分離できた。3)病巣部位別によるウイルスの型別: 顔および体幹上半からは75例すべて単純ヘルペスウイルス(HSV)1型が分離され, 手からは6例中2例にHSV 2型が分離された。臀部と男子外陰部の14例からはすべてHSV 2型が分離されたが, 女子外陰部からは5例中4例にHSV 1型が分離された。とくに成人の初感染11例はすべてHSV 1型であり, このうち女子外陰部, 乳房, 口腔に生じた6例が性的接触による感染と考えられた。
  • 花田 勝美, 田崎 理子, 熊坂 義裕
    1985 年 47 巻 2 号 p. 278-282
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    亜鉛欠乏症と易感染性の因果関係を検討する目的で, 50才, 70才男子, 60才女子の低亜鉛血症患者3例における多核白血球のsuperoxide anion (O2-)産生能を検討して, 次の結果を得た。1)亜鉛療法開始前の3症例の血漿亜鉛濃度の平均が35.1±27.0μg/dlであつたのに対して, 亜鉛療法後では89.2±10.0μg/dlと上昇した。2)Jonston法に準じて測定した患者白血球のO2-産生能は, 亜鉛療法前の10分値, 30分値がそれぞれ21.7±10.4nmol/4×105 cells, 40.1±17.6nmol/4×105 cellsであつたのに対して, 治療後のそれは32.7±1.1nmol/4×105 cells, 62.3±1.0nmol/4×105 cellsと正常に復していた。以上より, 低亜鉛状態における易感染性には, 多核白血球のO2-産生能の低下が一因となり得ることが示唆された。
  • 四本 秀昭, 田代 正昭
    1985 年 47 巻 2 号 p. 283-285
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    免疫応答の調節にはさまざまな因子が関与している。免疫応答の大きさは動物の系統により異なり, 免疫応答遺伝子が関与していると考えられている。接触皮膚炎をマウスで研究する場合も, その反応の大きさは系統により差のあることが明らかにされており, マウスを選択する際は注意を要する。われわれは比較的手に入れやすい7系統のマウス (AKR, C3H, C57BL/6, A/J, CBA, DBA/2, BALB/C) で, DNFB (2,4-dinitro-1-fluorobenzene), OX (2-phenyl-4-ethoxymethylene-5-oxazolone), TNP (picryl chloride) に対する接触皮膚炎の大きさを調査した。DNFBに対しては, A/J, C57BL/6で比較的大きな, AKRで小さな接触皮膚炎が観察された。OXに対してはいずれのマウスでも大きな反応がみられ, A/J, BALB/Cではことに大きい反応が観察された。TNPに対しては, A/Jで大きく, C3Hで小さな接触皮膚炎反応が観察された。したがつて, これらの抗原を用いて接触皮膚炎の実験を行う場合, その目的により抗原, マウスを選択する必要があると考えた。
講座
治療
  • Ara-A帯状疱疹皮膚科研究班
    1985 年 47 巻 2 号 p. 292-301
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    9施設の共同研究により, 高年令者の帯状疱疹に対するAra-Aの有用性を, Ara-A 10mg/kg/日投与群と5mg/kg/日投与群および従来どおりの治療の対照群について, 封筒法による三群比較試験により検討した。皮疹に対する効果は, 50%の症例に著明改善以上の改善がみられたのは, 年令60才以上で, 10mg/kg/日投与群, 5mg/kg/日投与群, 対照群の順に試験開始後6日, 8日, 12日であつた。疼痛に対する効果では, 50%の症例に疼痛の明らかな軽減がみられたのは, 年令60才以上で, 10mg/kg/日投与群, 5mg/kg/日投与群, 対照群の順に試験開始後5日, 6日, 12日であつた。また, Kaplan-Meierの生命表解析によれば, 年令60才以上では, 10mg/kg/日投与群は対照群に比較して有意(P<0.01)に, また5mg/kg/日投与群に比較して有意な傾向(P<0.1)で疼痛が軽減した。副作用は, Ara-A投与両群で各1例認められたがいずれも軽度であり, 安全度評価では対照群と有意差はなかつた。有用度評価は, 「極めて有用」が10mg/kg/日投与群, 5mg/kg/日投与群, 対照群の順に, 60.0%, 52.9%, 6.3%で, Ara-A投与両群は, 対照群に比較して有意に(P<0.05)優れていた。以上, Ara-Aは帯状疱疹に有用性を示し, とくに, 重症化かつ遷延化しやすい60才以上の高年令者における帯状疱疹に対して高い有用性を示した。
  • Sch 30500腫瘍研究会メラノーマ分科会
    1985 年 47 巻 2 号 p. 302-307
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    皮膚悪性腫瘍に対し, Sch 30500(組換え型ヒトIFNα2)を全身性または局所に投与し, その抗腫瘍効果ならびに安全性について検討した。全身投与は, 8例の悪性黒色腫患者に対し3×106IUないし10×106IU, 1日1回, 連日または隔日の筋肉内投与が行われたが, 奏効例は皆無であつた。局所(腫瘍内またはその周辺)投与は, 悪性黒色腫, 転移性皮膚癌, 菌状息肉症を含む皮膚悪性リンパ腫, およびその他の皮膚悪性腫瘍の患者62例に対し行われ, うち評価対象例は53例であつた。投与量は腫瘍の大きさにより調節されたが, 個体1日総量として1×106IUないし10×106IUの連日または隔日投与であり, 肉眼的個体別奏効率は50.9%(27/53)であつた。疾患別では, 悪性黒色腫44.8%(8/18), 悪性リンパ腫80.0%(8/10), 菌状息肉症40.0%(2/5), 有棘細胞癌14.3%(1/7)などであつた。病巣の大きさ別では小病巣の方が高い奏効率を示した。副作用としては, 高頻度の発熱を伴う感冒様症状, 悪心·嘔吐などが認められ, また臨床検査値異常としては, 白血球減少, 血小板減少, GOT·GPT上昇などが主な所見であつた。これらの副作用は, 継続投与中に軽快, 消失するもの, あるいは投与を中止し無処置あるいは対症療法で軽快, 消失する程度のものでとくに重篤なものではなかつた。以上の結果からSch 30500の局所投与は皮膚悪性腫瘍に対し, 有用な治療法と考える。
  • —多施設によるオープンスタディー—
    KH-101研究班
    1985 年 47 巻 2 号 p. 308-320
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    塩化リゾチームの皮膚潰瘍に対する肉芽形成, 上皮化および溶菌などの作用を十分に発揮させ, かつ創傷面に対する保護作用が高く, 分泌物の吸収も考慮した刺激性の少ない, 安全かつ安定なKH-101軟膏(塩化リゾチーム5%含有)が国内で新たに開発された。今回, 各種皮膚潰瘍患者176例にKH-101軟膏を投与し, 臨床効果, 副作用ならびに有用性を検討して以下の成績を得た。
    1) 有用性は, 「有用」以上で63%, 「やや有用」以上では84%であつた。また, 主な疾患別有用率(有用以上)は, 褥瘡53%, 熱傷潰瘍69%, 外傷性潰瘍79%であつた。
    2) 性状所見のうち, 肉芽形成, 表皮形成および壊死物質除去では改善率は「著明改善」でおのおの47%, 53%, 39%で他の性状の改善率に比べて高かつた。
    3) 潰瘍面の感染症例(89例)の細菌陰性化率は43%であり, 未感染症例(74例)の細菌陽性化率は20%と低く, 主薬である塩化リゾチームのもう一つの特徴である溶菌作用が反映されていると考えられた。
    4) 本剤との関連性のある副作用は14例(8.0%)に認められた。皮膚刺激症状を含む皮膚炎が8例(4.5%), その他滲出液過多3例(1.7%), 疼痛, 悪臭, 二次感染が各1例(0.6%)で頻度は低かつた。副作用の程度は疼痛を示した1例が強度であつたが, 他は中等度ないしは軽度であつた。また全身的副作用はなんら認められなかつた。
    以上の結果から, KH-101軟膏(塩化リゾチームを5%含有)は, 皮膚潰瘍に対して有効かつ安全で有用な外用薬であると考えられた。
  • —Well-Controlled Comparative Study—
    KH-101研究班
    1985 年 47 巻 2 号 p. 321-330
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    皮膚潰瘍に対するKH-101軟膏(塩化リゾチーム5%含有)の有用性を明らかにする目的で, KH-101軟膏基剤(プラセボ), ベンダザック軟膏を対照としてwell-controlled comparative studyで三群臨床比較試験を実施し以下の成績を得た。
    1) 試験実施症例数は180例であつたが, 除外が4例(脱落3例, 対象外1例)あり, 解析対象例は176例であつた。その内訳は, KH-101 58例, ベンダザック60例, プラセボ58例であつた。統計処理の結果, 患者の背景には偏りがなかつた。
    2) KH-101の細菌に対する溶菌作用は臨床試験において確認できなかつた。
    3) 副作用の発生はKH-101 1例(1.7%), ベンダザック3例(5.0%), プラセボ1例(1.7%)であつたが, 特記すべき副作用はなかつた。
    4) 変動のあつた臨床検査値を分析した結果, とくに薬剤との関係は見出せなかつた。
    5) 有用度において, KH-101はプラセボに比べ有意に優れていた。ベンダザックとプラセボとの差を検出することはできなかつた。しかしKH-101とベンダザックの間には有意差はなかつた。
  • 石川 隆夫, 大浦 武彦, 小椋 哲実, 星 光聡, 本田 耕一, 飯田 和典
    1985 年 47 巻 2 号 p. 331-336
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    外傷後瘢痕, にきび痕などの浅い陥凹性瘢痕, 加令によるしわなどに対して, 注射用牛真皮コラーゲン (以下コラーゲンと略す) を用いて, 33例に対して治療した。効果を確認できた31例における治療効果は, 改善26%, やや改善35%, 不変29%, 局所変化10%であつたが, 対象疾患, 注入回数により改善度に違いがあつた。つまり, 受傷後, 長期間経過した, 成熟した瘢痕をもつ陥凹変形に対しては, 改善度は良かつたが, 受傷後まもない陥凹性瘢痕や手術後瘢痕に対しては, コラーゲンの注入が困難で, 改善を示す症例は少なかつた。また, 注入回数では, 同一部位に3回以上注入した症例は, 2回以下の注入の症例よりも改善度はよかつた。一方, 約10%の症例に, コラーゲン注入後, 反応性の発赤, 腫脹を中心とした局所変化が見られた。しかし, この局所変化は, 3ヵ月以内に完全に消失した。
  • 大森 清一
    1985 年 47 巻 2 号 p. 337-341
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    仔牛の真皮コラーゲンをペプシン処理により可溶化し, 抗原性を示すテロペプチドを除外したアテロコラーゲンを作る。これを真皮内に注射することにより, 外傷または病気によつて惹起された皮膚陥凹ないし変形などを治療する。本法の適応例としてもつとも効果を示したものは外傷によつて陥凹だけを生じた例であつた。しかるに瘢痕が中心となつて皮膚の陥凹を生じた例ではその効果はやや劣つた。本剤の使用によつてアナフィラキシー症状は経験しなかつた。
  • 臼田 俊和, 滝 正, 深谷 嘉英, 井沢 洋平
    1985 年 47 巻 2 号 p. 342-346
    発行日: 1985/04/01
    公開日: 2012/03/15
    ジャーナル 認証あり
    副腎皮質ホルモン剤の出現によつて種々の皮膚疾患の治療法は大きく変貌し, 天疱瘡群や類天疱瘡の予後も大幅に改善された。しかしステロイド療法中に生じる感染症は, 宿主の免疫能低下状態に加え, 薬剤耐性菌による場合も多く, 抗生物質の選択は予後を左右する重要なポイントとなる。今回われわれは, 57才女子の尋常天疱瘡例, 83才男子の水疱性類天疱瘡例のステロイド療法中に生じた敗血症に対してcefmetazole(セフメタゾン)が著効を呈した症例を経験したので報告した。
世界の皮膚科学者
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