西日本皮膚科
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75 巻, 2 号
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図説
症例
  • 佐藤 さゆり, 高橋 宏征, 水柿 典子, 加賀谷 真起子, 高橋 博之, 南辻 泰志
    2013 年 75 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    73 歳,男性。両下腿に浸潤を触れる紫斑,水疱,血疱が出現し,急速に皮膚潰瘍へ進展した。皮膚生検にて leukocytoclastic vasculitis の組織像を呈し,さらに尿潜血,尿蛋白および消化管潰瘍を認めた。Henoch-Schönlein 紫斑病 (HSP) と診断し,プレドニゾロン内服を開始したところ皮疹は改善し,その後の全身精査にて S 状結腸癌が発見された。高齢者の HSP は時に典型的ではなく,水疱や皮膚潰瘍など多彩な皮膚症状を呈することがある。さらに,悪性腫瘍の合併も報告されている事を念頭において精査する必要があると考えられた。
  • 松尾 敦子, 緒方 亜紀, 釘宮 倫子, 下村 泰三, 城野 昌義
    2013 年 75 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    皮膚筋炎の診断と治療経過中に,PET およびリンパ節生検にて悪性リンパ腫 (diffuse large B cell lymphoma) を発見できた 80 歳と 71 歳の男性症例を報告した。2 症例ともにリツキシマブを併用した複合化学療法により,両疾患とも完全寛解 (CR) を得ることに成功し,CR を各々 6 年と 5.5 年間維持している。CHOP または THP-COP 化学療法にリツキシマブを併用したレジメにて,B 細胞リンパ腫の予後は飛躍的に改善している現状において,自験例から類推できる皮膚筋炎診療のポイントは次のように整理できる。抗 155/140 抗体が陰性でも,間質性肺炎が軽度で,皮膚症状は強いが.痒を伴わない高齢の男性皮膚筋炎患者では「潜在している悪性リンパ腫を PET 検査などで積極的に探し出す意義は大きい」と思われる。
  • 河野 美己, 高原 正和, 中尾 匡孝, 亀田 亜矢子, 斉藤 知子, 工藤 恭子, 加藤 しおり, 中原 剛士, 内 博史, 師井 洋一, ...
    2013 年 75 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    抗 BP180 抗体を有し,痒疹様結節が先行した結節性類天疱瘡の 2 症例を報告する。1) 62 歳,女性。初診の約 2 年前から四肢,体幹,頭部にそう痒を伴う結節が出現し,結節性痒疹として加療していたが,大腿に水疱が出現した。抗 BP180 抗体陽性,生検および蛍光抗体法の結果から結節性類天疱瘡と診断した。プレドニゾロン (以下 PSL) 5 mg/日,ミノサイクリン 150 mg/日の内服で水疱は消失した。ミノサイクリンの漸減中に結節が再燃したため,PSL 15 mg/日へ増量し速やかに改善した。2) 55 歳,女性。2007 年 3 月頃両上肢にそう痒を伴う結節が出現し,全身に拡大した。結節性痒疹として,ステロイド外用,ナローバンド UVB で治療開始したが,6 月に四肢に水疱が出現した。抗 BP180 抗体陽性,生検および蛍光抗体法の結果から結節性類天疱瘡と診断した。PSL 25 mg/日,ミノサイクリン 100 mg/日の内服で水疱は消失した。2010 年 4 月に水疱の再燃を認め,PSL 50 mg/日の内服で水疱は消失したが,強いそう痒が持続したため,ベタメタゾンの内服へ変更した。そう痒は軽度改善したが,結節は残存している。これまでの結節性類天疱瘡の報告例を検討すると,痒疹結節が生じた後に水疱が出現した結節先行例が多いため,臨床症状が痒疹結節のみでも結節性類天疱瘡を念頭に置いて,BP180 に対する抗体測定や蛍光抗体法を行う意義があると考える。
  • 三田村 康貴, 伊東 孝通, 原田 佳代, 占部 和敬, 門脇 賢典, 岡村 精一, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 2 号 p. 134-137
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    49 歳,男性。39 度台の発熱と両膝の圧痛を伴う紅色結節と瘢痕浸潤様紅色丘疹を主訴に当科を受診した。皮膚病変の病理組織学的検査では共に非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫があり,後者は中央部に異物の混入を認めた。ACE や Ca の検査所見は正常値だった。ステロイド内服で皮疹は消退したが,発熱性好中球減少症を認めたため入院した。骨髄生検で急性骨髄性白血病 (acute myeloid leukemia : AML) と診断された。以前に血小板減少が指摘されていたことから MDS (myelodysplastic syndrome) から AML への移行に伴ったサルコイド反応と確定診断した。化学療法を行い,経過中に皮疹の再燃はなかった。サルコイドーシスまたはサルコイド反応が AML に先行してみられた症例について検索したところ,AML にサルコイド反応が先行した症例は自験例を含め 2 例と稀であった。
  • 藤岡 愛, 横川 真紀, 中島 喜美子, 樽谷 勝仁, 佐野 栄紀
    2013 年 75 巻 2 号 p. 138-140
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    70 歳,男性。8 年前より下腹部に自覚症状のない紅斑が出現し,徐々に拡大したため当科を受診した。初診時,環状紅斑が多発癒合し,辺縁に浸潤を触れる手掌大の局面を形成していた。また頭部には,30 年前の外傷部位に一致して浸潤を触れる鶏卵大の紅斑を認めた。病理組織検査にて腹部の紅斑は類上皮細胞よりなる肉芽腫を認めた。他臓器に病変を認めず,臨床および組織所見より局面型皮膚サルコイドと診断した。一方,頭部の皮疹には複屈折性を呈するシリカ様の物質を含むサルコイド肉芽腫を多数認めた。過去の外傷部位に残存した異物による瘢痕浸潤と診断し,腹部の局面型皮膚サルコイドと時期を異なって発症した可能性を考えた。複数の皮膚病型が混在したサルコイドーシスは,肺野病変など内臓疾患を合併することがあるため,新たな皮疹の出現を含め定期的な全身検索が必要である。
  • 横山 翌香, 古場 慎一, 久富 万智子, 増岡 美穂, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2013 年 75 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    64 歳,女性。幼小時より右頚部から肩甲骨にかけてざ瘡様の発疹を認め,当科を受診した。右頚部から肩甲骨にかけて列序性に,Z 状の特徴的な配列を呈し,大小不同で,多数のざ瘡面皰・ざ瘡瘢痕様の小陥凹を認めた。臨床所見より面皰母斑を考え切除を行った。病理組織学的に,表皮から連続する漏斗状,紡錘状,手袋状の不規則な陥凹が存在し,真皮内にも層状の角質が充満した表皮腫様の嚢腫構造を認めた。さらに自験例に特徴的な所見は,一部分の嚢腫構造において,(1)不規則に延長する表皮索を伴う嚢腫壁に成熟した脂腺を伴い,(2)嚢腫内に多数の軟毛を認め,(3)免疫染色では,大部分の嚢腫壁に表皮から毛包漏斗部への分化を示すサイトケラチン 1 が陽性で,真皮中層の一部分では毛包漏斗部より毛球部までの分化を示すサイトケラチン 17 が陽性であった。以上の所見から,自験例を面皰母斑と診断した。面皰母斑の発生起源に関しては,現在まで諸説が提唱されており,未だ結論は得られていない。しかし,自験例では,病変部の大部分は毛包漏斗部への分化を示しながらも,一部は毛包脂腺系の深部構造への分化を示していると考えられ,さらに成熟した脂腺も伴っていることから,自験例は「面皰母斑は毛包脂腺系全体の過誤腫である」という説を支持する症例であると考える。
  • 金丸 志保, 井上 知宏, 室井 栄治, 持田 耕介, 成田 幸代, 日高 利彦, 瀬戸山 充
    2013 年 75 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    77 歳,女性。31 歳時関節リウマチを発症した。72 歳時よりエタネルセプトの投与を開始したが無効のため,75 歳時よりアダリムマブへ変更し投与を開始した。初診の 1 ヵ月ほど前より左頬部にドーム状に隆起する表面平滑な直径 1 cm の紅色結節が出現した。皮膚生検にてメルケル細胞癌と診断され,当科に紹介された。診断後,アダリムマブの投与は中止した。拡大切除,術後放射線治療を施行し,術後 3 ヵ月の現在,再発を認めていない。生物学的製剤の長期使用に伴う免疫抑制状態によりメルケル細胞癌を生じた可能性を考えた。
  • 井上 雅子, 泉川 孝一, 須崎 康敬
    2013 年 75 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    67 歳,女性。2009 年に発症した潰瘍性大腸炎に対して,インフリキシマブ 5mg/kg 投与中であったが,消化器症状が悪化したため 2011 年 10 月にインフリキシマブを 10 mg/kg に増量されていた。2011 年 11 月ごろより発熱とともに左手首から手背にかけての発赤,熱感,腫脹が出現し当科に紹介された。抗生剤を投与したが症状は急速に悪化し,CT,MRI で壊死性筋膜炎を疑いデブリードマンを施行した。膿の細菌培養,抗酸菌培養,真菌培養は陰性で,病理組織検査で真皮全層の好中球浸潤を認めた。以上より壊疽性膿皮症と診断し,インフリキシマブの中止とプレドニゾロン投与を開始し症状は軽快した。インフリキシマブで壊疽性膿皮症の発症を抑えきれなかった可能性とインフリキシマブの paradoxical な反応の可能性についての鑑別が必要と考える。
講座
治療
  • — 0.05%ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルおよび 2 %ケトコナゾールローションの単独・併用療法 —
    齋藤 磨美, 山崎 正視, 坪井 良治
    2013 年 75 巻 2 号 p. 164-168
    発行日: 2013/04/01
    公開日: 2013/06/24
    ジャーナル 認証あり
    マラセチアは脂漏性皮膚炎の増悪因子の一つで,外用抗真菌薬はステロイド外用薬と同様に同症の治療にしばしば用いられる。今回我々は,頭部の脂漏性皮膚炎において,0.05%ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル (BBP) ローションを単独で 2 週間外用後,2%ケトコナゾール (KC) ローションとの併用を 2 週間行った群(BBP 群)と,KC ローションを単独で2 週間外用後,BBP ローションとの併用を2週間行った群 (KC 群) の治療効果の推移を観察した。試験開始 2 週間の,上記 2 剤の単独療法期間では,いずれの群でも皮膚所見の合計スコアが有意に改善したが (p<0.01),2 週間後の時点での群間比較では BBP 群の治療効果が有意に優れていた (p<0.05)。その後 2 週間の併用療法期間で,BBP 群,KC 群ともに有意な改善を認め (p<0.01),試験開始 4 週後では両群間に有意差はなくなった。各皮膚所見スコアの推移では,紅斑のスコアが,単独外用 2 週間での群間比較で,BBP 群が KC 群よりも有意に減少していたが (p<0.01),鱗屑・そう痒のスコアの有意差はなかった。また,有害事象の報告もなかった。以上より,外用ステロイド薬と外用抗真菌薬の併用療法が脂漏性皮膚炎に有効であり,治療開始初期には外用ステロイド薬単独療法を行い,その後併用療法に移行するのが,より有用な方法と思われた。
世界の皮膚科学者
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