西日本皮膚科
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85 巻, 3 号
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目次
図説
  • 田代 綾香, 久保田 由美子, 梶田 章恵
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 155-156
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    患者:67 歳,男性

    主訴:髪際部の浸潤性紅斑

    生活歴:大酒家(日本酒 2 合/日× 47 年)

    既往歴:高尿酸血症,脂質異常症,アルコール性肝障害,逆流性食道炎,睡眠時無呼吸症候群(CPAP 装着中)

    現病歴:初診の 2 カ 月前から髪際部に痒みのない紅斑が出現してきたため当科を受診した。ダーモスコピーでは毛細血管拡張が主体であったため,酒さとして経過観察していたが 3 カ 月後に頰部の紅斑が隆起してきたため再診した。

    現症図1):前額や頰部の髪際部から耳介前面にかけて,軽度瘙痒のある境界明瞭な浸潤性紅斑が局面を形成していた。耳介内側にも紅斑を認めた。

    血液検査所見(異常値は下線で示す):白血球4280/μl(好酸球9.8%,異型リンパ球-),HbA1c 6.5%,HTL V-1(-),s-IL2R 213U/ml

    単純CT 検査:有意なリンパ節腫大なし

    病理組織学的所見図2 ab,HE 染色):右耳珠の約 1 cm の紅色結節から 4 mm トレパンで生検した。表皮に著変なく,grenz zone を有し真皮全層に明瞭なリンパ濾胞様構造を多数認めた。浸潤するリンパ球は異型性に乏しく,tingible body や tingible body macrophage もみられた。

    免疫組織化学的所見:CD20(図2 c),CD79a 陽性細胞は濾胞中心に,CD3(図2 d)陽性細胞は濾胞辺縁に多く認められた。胚中心マーカーである CD10 は胚中心部で弱陽性,辺縁部で陰性であり,Bcl-2 は胚中心部で陰性,辺縁部で陽性であった。

    診断:偽リンパ腫

    治療と経過:生検後の自然消退はみられず,瘙痒に対して少量のステロイド内服と光線療法(エキシマライト)を開始した。紅斑の浸潤はとれ,初診から 2 年経過した現在,ほぼ消退した。

綜説
症例
  • 竹内 聡, 山本 雅士, 塩道 泰子, 中原 剛士
    2023 年 85 巻 3 号 p. 164-168
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:35 歳,女性。初診 4 日前より上肢に自覚症状のない紅斑,同 2 日前には四肢の有痛性紅斑と 40 度の発熱を生じ,翌日近医皮膚科を受診し,当科に紹介され受診した。皮膚生検で結節性紅斑の診断で,ベッド上安静とロキソプロフェン 300 mg/日の内服治療で症状は軽快していたが,経過中に妊娠 4 週が判明した。ロキソプロフェン内服は 3 週間で終了し,アセトアミノフェン内服に変更してさらに 2 週間で治療した。その後妊娠 37 週の正期産,正常産で出産し,皮膚症状の再燃もなかった。症例 2:25 歳,女性,妊娠 24 週。初診 3 週間前より前医で腎盂腎炎のためアモキシシリン内服治療中であった。同 10 日前に左頰部の擦過創周囲に有痛性紅斑が出現し,その後左右の膝,右肘部,左踵部にも同様の紅斑が出現してきた。皮膚生検で結節性紅斑の診断で,入院してベッド上安静のうえ,遷延する腎盂腎炎にセファゾリン点滴も併用しつつ,妊娠中を考慮しアセトアミノフェン 1200 mg/日の内服を開始した。同 2400 mg/日まで増量したが症状制御が不十分で,プレドニゾロン 10 mg/日内服追加により症状は軽快した。退院後,外来にて両薬の漸減終了後も結節性紅斑は再燃なく,妊娠 40 週の正期産,正常産で出産した。本症は妊娠も発症因子のひとつであり,妊婦での発症は妊娠時期や合併症など考慮した慎重な治療選択,他科連携,十分な患者説明,経過フォローが重要である。文献的考察も加え報告する。

  • 加納 慎二, 西尾 栄一, 森田 明理
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 169-171
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    53 歳,女性。2020 年 7 月に感冒症状でアセトアミノフェン(カロナール錠®)を内服後に四肢,口唇,眼瞼,陰部に色素沈着,水疱,びらんを伴う境界明瞭な紅斑が出現し当院を紹介され受診した。臨床所見および病理組織学的所見より汎発性水疱性固定薬疹(generalized bullous fixed drug eruption:GBFDE)と診断した。被疑薬の内服を中止後も症状が進行していたため,ステロイドパルス療法を施行したところ速やかに症状は改善した。アセトアミノフェンにおいて薬剤誘発性リンパ球刺激試験は陽性であったが,パッチテストは皮疹部,無疹部ともに陰性であった。GBFDE は治療反応性の良好な疾患と考えられているが,本邦での報告は少なく,海外では死亡例の報告もあるため正確な診断および,今後の症例の蓄積による治療方法の確立が必要である。

  • 中村 俊介, 鍬塚 大, 神尾 芳幸, 村山 直也, 中島 真帆, 室田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 172-175
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    71 歳,男性。初診 5 年前に,急性心筋梗塞に対し冠動脈バイパス術を施行されている。初診 2 年前に,左下肋部の異物肉芽腫を摘出された。同部位から次第に排膿がみられ,結節を形成したため当科を再診した。左下肋部に 12 × 13 mm のドーム状の暗褐色結節を認め,残糸による異物肉芽腫や化膿性肉芽腫を疑い,抗菌薬の投与を行うも改善せず,局所麻酔下に摘出を試みたところ,索状構造物が皮膚から皮下脂肪織,さらに深部まで続いていた。構造物の底部が同定できず摘出困難と判断し,摘出は中止した。その後,CT 検査で皮膚結節の下部から心外膜へ続く線状構造物が確認された。一時的心外膜ペーシングワイヤの皮内遺残に伴う異物肉芽腫と診断した。

  • 古河 裕紀子, 佐藤 絵美, 筒井 啓太, 青木 光希子, 古賀 佳織, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 176-179
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    25 歳,男性。1 カ 月前より頚部から左肩にかけて弾性軟な腫瘤を自覚し当院を受診した。MRI 検査では左腋窩から鎖骨上窩にかけて境界明瞭な約 10 cm の腫瘤様病変を認め,内部は T1WI で等~高信号,STIR では不均一な低~高信号,DWI でごく淡い信号上昇,血管と思われる索状構造の貫通を認めた。脂肪性腫瘍が疑われ全身麻酔下で切除した。切除した腫瘍は弾性軟で黄色調の腫瘍内にやや硬く褐色調の部が混在していた。病理組織所見では好酸性顆粒状胞体を含む細胞や泡沫状胞体を含む細胞を認め,褐色脂肪腫と診断した。褐色脂肪腫は褐色脂肪組織に由来する良性腫瘍であり,褐色脂肪組織は新生児には豊富に存在するが成人するにしたがって減少する。今回我々は比較的稀な褐色脂肪腫の 1 例を経験したので報告する。

  • 下農 真弘, 小池 雄太, 橋本 邦生, 室田 浩
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 180-183
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 : 1 歳 9 カ 月,女児。生後 12 カ 月頃より腹部と下顎部の皮膚萎縮が出現し,淡い紅暈を伴いながら徐々に拡大し,下腹部に皮膚潰瘍を生じた。MRI で皮下脂肪組織の減少,皮膚生検で付属器周囲・脂肪組織の炎症細胞浸潤と脂肪変性を認め,小児腹壁遠心性脂肪萎縮症と診断した。治療として,タクロリムス軟膏 0.03%を長期継続し,発症 3 年で下腹部は臍上方から鼠径部まで,下顎部右側は反対側まで緩徐に拡大したが,下腹部の脂肪萎縮は軽度改善している。 症例 2:4 歳 3 カ 月,女児。3 歳頃より尿線の偏位と陰部の皮膚萎縮に気づかれた。初診時,右鼠経部から右大陰唇にかけて周囲に軽度の紅斑を伴う皮膚萎縮を認めた。CT で同部位の皮下脂肪組織の萎縮があり,小児腹壁遠心性脂肪萎縮症と診断した。治療としてタクロリムス軟膏 0.03%の外用を行い,皮疹部は周囲の発赤の軽減を認め,12 カ 月のフォロー期間中,皮膚陥凹部の範囲は変化を認めなかった。 小児腹壁遠心性脂肪萎縮症の標準治療は現時点で定まっておらず,本症例はタクロリムス軟膏を主体とした外用療法で安定した経過を示した。今後の治療法の選択肢のひとつと考えられる。

  • 佐藤 志帆, 山﨑 修, 徳田 真優, 杉原 悟, 野村 隼人, 森実 真
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 184-187
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:77 歳,男性。左前頭部の血管肉腫に対し,外科的切除後パクリタキセルによる維持化学療法を行うも,肺,肝臓,リンパ節転移とともに血小板減少をきたした。抗血小板抗体陰性,血小板結合性免疫グロブリンG(PA-IgG)陽性,DIC スコア 5 点であった。初診から 10 カ 月後に死亡した。症例 2:93 歳,男性。左頭頂部の血管肉腫に対し,放射線治療,パクリタキセルによる維持化学療法を行うも,肺,後頚部リンパ節転移,血小板減少をきたした。PA-IgG 陽性,DIC スコア 5 点であった。初診から 20 カ 月後に死亡した。2 例とも多発遠隔転移が出現し,腫瘍部での血小板消費により,Kasabach-Merritt 症候群と同様の機序で血小板減少をきたしたと考えた。当院で 2012~2021 年に経験した進行期に血小板減少を伴った 3 症例では,血小板減少を伴わなかった 25 症例と比較すると多臓器転移の割合が高かった。

  • 吉井 章一郎, 加藤 裕史, 佐藤 秀吉, 鳥山 和宏, 森田 明理
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 188-191
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    63 歳,女性。20 歳台より鼻尖部に 10 mm 程の紅色皮膚結節を自覚していた。最近になり腫瘍の増大がみられ,右鼻腔内に突出し呼吸時の違和感が出現してきたため,当院に紹介となった。初診時,鼻尖部から鼻背部にかけて,長径 3 cm の弾性硬,可動性不良の紅色腫瘤を認め,鼻腔は腫瘍で圧排されていた。 MRI では鼻翼から鼻腔内腔側に突出し,上顎骨との境界が不明瞭であり,T1WI,T2WI ともに低信号の充実性腫瘤を認めた。皮膚病理組織像では,腫大した核を有する扁平上皮様異型細胞が線維化を伴い,微小な胞巣を形成し増殖・浸潤がみられ,Microcystic adnexal carcinoma と診断した。免疫組織化学染色では CEA 陰性,AE1/AE3 と EMA 陽性だった。皮膚側は 10 mm マージンで,深部は鼻中隔軟骨・鼻骨・上顎骨の一部も含め切除を行い,左前外大腿からの遊離皮弁にて再建した。外鼻再建のため数回の手術を要した。現在術後 2 年となり,再発の所見を認めない。

  • 須永 知里, 山内 輝夫, 岩切 琢磨, 永田 茂樹
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 3 号 p. 192-195
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    11 歳,男児。1 カ 月前より右前腕の発赤と腫脹を自覚した。外傷歴やペット飼育歴はない。近医にて抗菌薬の内服で治療するも,排膿と潰瘍がみられ当科に紹介された。右前腕に発赤と鱗屑を伴う瘢痕の中央に痂皮と小豆大の皮下硬結を触れた。初診時に創部より検体を採取した一般細菌・真菌・抗酸菌培養検査はすべて陰性であった。同部位は抗菌剤クリーム外用により症状は軽快するも,1 カ 月半後に右上腕部に皮下硬結が再発した。深在性真菌症などの感染症を疑い皮膚生検術を施行した。HE 染色では真皮中層から脂肪織にリンパ球を主体とする高度な炎症細胞浸潤がみられ,無構造の壊死塊が存在した。その周囲には類上皮細胞が柵状に増生し,外周に稠密なリンパ球浸潤がみられ乾酪壊死性肉芽腫の像を呈していた。 Ziehl-Neelsen 染色,Grocott 染色は陰性であった。皮膚生検部の皮膚一般細菌・真菌・抗酸菌培養検査は全て陰性であった。生検 20 日後に硬結部位が自壊し排膿がみられ,再度,培養検査を施行した。ノカルジア症も鑑別に考え,長期培養を施行したところ,質量同定分析により Mycobacterium mageritense が同定された。皮膚非結核性抗酸菌症と診断し,Clarithromycin,Tosufloxacin による 2 剤併用療法で治療を開始し,2 カ 月半で硬結は消退した。5 カ 月で抗菌薬投与を終了し,その後も皮下硬結の再発はないため治癒と判断した。Mycobacterium mageritense は非常に稀な菌種であり,本邦で小児報告例は 2 例目となる。小児例は使用できる薬剤が限られており,今後更なる症例の集積と治療法の確立を求められる。

世界の皮膚科学者
  • Tae-Gyun Kim
    原稿種別: letter
    2023 年 85 巻 3 号 p. 203-204
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル 認証あり

    Tae-Gyun Kim M.D., Ph.D. is an Assistant Professor of Dermatology in Yonsei University College of Medicine,Severance Hospital, Seoul, Republic of Korea. He received his M.D. from Yonsei University College of Medicine and completed dermatology residency training at the Department of Dermatology, Yonsei University College of Medicine, Severance Hospital. During his residency training, he investigated immunophenotypes of mature dendritic cells (DCs) in chronic plaque psoriasis, which showed an importance of CCL20/CCR6 chemokine system in mature DC-T cell clusters under supervision of Professor Min-Geol Lee and Professor James G. Krueger. After residency training, he received Ph.D. in Cellular & Molecular Immunology at the Department of Environmental Medical Biology from the same institution. During his Ph.D. course, he found that the epigenetic molecule CCCTC-binding factor (CTCF) controls homeostatic maintenance of self-perpetuating immune cell population, such as epidermal Langerhans cells and bone marrow hematopoietic stem cells using conditional knockout system. He was a visiting research fellow in the Lab of Dr. Niroshana Anandasabapathy at Harvard Medical School, where he investigated the tolerance mechanism by migratory DCs of the skin in the context of anti-tumor immunity. In addition, he also studied how tissue-resident memory T cells are maintained and regulated in the skin. In 2021, he was appointed to Assistant Professor (tenured) of the Department of Dermatology, Yonsei University, Severance Hospital.

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