西日本皮膚科
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59 巻, 4 号
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図説
症例
  • 久保 宜明, 滝脇 弘嗣, 浦野 芳夫, 津田 英隆, 松尾 伸二, 荒瀬 誠治, 塩田 洋
    1997 年 59 巻 4 号 p. 531-535
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
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    持久性隆起性紅斑と診断した29歳, 76歳, 81歳の3女性例を報告した。これらの症例では臨床的に典型的と考えられる結節や紅斑·局面のほかに, 膿疱, 紫斑, 潰瘍など非典型的な皮疹を生じ, 多彩な臨床像を呈した。特に足底の紫斑·血疱は全例でみられ, 1例ではそれが初発疹であった。1例はステロイド外用のみで皮疹は消退し, 2例はDDSが奏効した。またリウマチ因子陽性の2症例では蚕蝕性角膜潰瘍(Mooren’s ulcer)を合併し, 皮疹とほぼ同時期に発症したと考えうることから持久性隆起性紅斑との関連が示唆された。以上から持久性隆起性紅斑は教科書的な典型像以外に, かなり幅広い臨床像を呈することもあると考えられ, また眼科的合併症の検索も必要と思われた。
  • 荒木 美好, 工藤 清孝, 熊谷 浩子, 中島 崇博
    1997 年 59 巻 4 号 p. 536-539
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
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    6歳の女児。急性上気道炎の診断で治療中, 四肢に圧痛を伴う紅斑, 皮下結節が出現し, 皮下結節の皮膚生検で真皮深層の小動脈に壊死性血管炎が認められ, 結節性多発動脈炎(PN)と診断した。副腎皮質ステロイドによるパルス療法を1クール施行後ステロイドを漸減して中止したところ, 投薬中止約3週間後に症状が再燃した。再度パルス療法を3クール施行後ステロイドを漸減中止し, 経過観察していたところ再燃した。その後アスピリンで経過観察中であるが症状の再燃はなかった。自験例では初診時および再発時に溶連菌抗体価の上昇がみられ, PNの発症に溶連菌感染が関与していることが推測された。
  • 澤井 まゆみ, 田辺 恵美子, 金田 美紀, 夏目 妙, 蛭田 啓之, 亀田 典章
    1997 年 59 巻 4 号 p. 540-544
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
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    Symmetrical lividities of the soles of the feetの5例を報告した。女性3例, 男性2例で, 20代が2例, 50歳以上が3例であった。多汗は3例に認められた。運動との関連ははっきりしなかった。いずれも歯科金属充填を認めた。臨床像は足の側縁, 踵, 土ふまずの浮腫性紅斑であり, 1例は偏側性, 2例に一部に過角化が認められた。病理組織で全例に角質増殖と角質浮腫, 真皮毛細血管拡張が認められた。臨床像, 病理組織像より本症を胼胝腫と異汗性湿疹の中間に位置する病態であると考え, 金属などのアレルギーの関与も考えられると推察した。
  • 信崎 幹夫, 白崎 文朗, 筒井 清広, 坂井 秀彰, 竹原 和彦, 石倉 多美子
    1997 年 59 巻 4 号 p. 545-548
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    約10年の慢性関節リウマチ(RA)の経過中に血管炎による皮膚症状を呈した2例を報告し, rheumatoid vasculitisの概念について若干の考察を加えた。皮疹は四肢の潰瘍, 紫斑, 水疱, 血疱などがみられ, 組織学的に真皮の壊死性血管炎と真皮皮下境界部の小動脈の一部に血栓がみられた。全身的な症状は軽度の間質性肺炎が1例に認められた。検査所見ではリウマチ因子, 免疫複合体の高値, 赤沈の亢進, 凝固線溶系の異常がみられ, そのなかでthrombin-antithrombin III complex(TAT)とplasmin-α2 plasmin inhibitor complex(PIC)の高値が特徴的であった。このうちTATが血管炎の病勢を示すマーカーに成り得ると考え, これについても若干の考察を加えた。
  • 永田 祥子, 福丸 聖太, 溝口 志真子, 瀬戸山 充, 神崎 保, 神園 政行
    1997 年 59 巻 4 号 p. 549-551
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    80歳の男性。1996年4月頃に顔面を除く全身の皮膚硬化を主訴に鹿児島大学医学部皮膚科を受診した。また前胸部に多発する浮腫状の丘疹を伴っていた。丘疹部と硬化部の病理組織学的所見より, 前者において真皮上層部は硬化性萎縮性苔癬様所見, 真皮深部はmorpheaの所見, 一方, 後者はmorpheaと考えた。本症はmorpheaに硬化性萎縮性苔癬様の病理組織学的変化が加わったものと診断したが, 両者の関連について文献的検討も含め, 考察を加えた。
  • 持冨 勇次, 神田 彰, 大竹 直樹, 三好 逸男, 神園 政行, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1997 年 59 巻 4 号 p. 552-554
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
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    膿疱性乾癬の治療法にはエトレチナート内服, ステロイド内服, シクロスポリンA内服, PUVA療法などがあるが, これらの治療法が無効である場合もある。今回さまざまな治療が無効であったにもかかわらず, ステロイドパルス療法が劇的に奏効した膿疱性乾癬の1例を経験したので報告する。症例は36歳の女性。1988年に妊娠中に右上腕に紅斑が出現, 出産後に発熱を伴い紅斑が全身に拡大し膿疱を伴ってきた。再発性環状紅斑様乾癬の診断で鹿児島大学皮膚科に入院し, エトレチナート内服, ステロイド内服, PUVA療法などの治療で紅斑は徐々に改善した。この時は退院までに139日を要した。退院後, 近医に通院していたが, 1993年に妊娠を契機に皮疹が再発した。急激な皮疹の増加と発熱を認めたために, 当科に再入院した。入院初日よりコハク酸メチルブレドニゾロンナトリウム(1g/日)の点滴静脈内注射によるパルス療法を開始した。皮疹はパルス療法第2日目に消退した。この時は退院までに21日しか要しなかった。1996年に誘因なく皮疹が再発した。当科入院後, 前回入院時と同様のステロイドパルス療法を行ったところ, 皮疹はパルス療法第2日目に消退した。この時は退院までに23日しか要しなかった。以上より, さまざまな治療法が無効である膿疱性乾癬に対しては, ステロイドパルス療法も試みる価値のある治療法であると考えた。
  • 松倉 節子, 佐々木 哲雄, 中嶋 弘
    1997 年 59 巻 4 号 p. 555-557
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
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    乳癌術後の後療法としてタモキシフェンを内服中の64歳女性で乏脂性皮膚炎の治療中, 胸部の両側乳癌術後瘢痕部に褐色小丘疹が多発した。所属リンパ節は触知せず, 末梢血好酸球の軽度増加を認めた。病理組織学的に真皮上層に腫大した内皮細胞を有する小血管の増生, 内腔の狭小化, リンパ球と好酸球を主とする密な細胞浸潤を認め, angiolymphoid hyperplasia with eosinophilia(ALH)と診断した。ステロイド外用剤で治療し, 約6ヵ月後に瘢痕を残すことなく消退した。本例は乳癌術後瘢痕部に出現した点, ステロイド外用剤のみで消退した点において特異的と考えられた。ALHの疾患概念およびその病因について若干の考察を加えた。
  • 澁江 賢一, 清水 昭彦, 古賀 哲也, 利谷 昭治
    1997 年 59 巻 4 号 p. 558-561
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    3例のeosinophilic pustular folliculitisを経験した。患者はいずれも壮年男性であり, 顔面, 背部, 両上腕に中心治癒傾向を示し, 辺縁に毛孔性丘疹ないし膿疱が集簇するそう痒を伴う紅斑局面を呈した。病理組織学的に2例では多数の好酸球を含む毛包内膿瘍が認められたが, 残りの1例では好酸球浸潤がHE染色でほとんど確認することができなかったので好酸球顆粒蛋白に対するモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行ったところ陽性所見を示したことから, かつてそこに好酸球が存在し脱顆粒した可能性が考えられた。2例はインドメタシンとミノサイクリン内服併用で, 1例はDDS内服で皮疹の改善をみた。
  • 久保田 由美子, 古賀 哲也, 利谷 昭治
    1997 年 59 巻 4 号 p. 562-565
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    小児の環状肉芽腫の3例を報告した。症例1: 2歳の女児。臀部·下肢·足背に一部環状を呈する皮疹を認めた。生検1週後にすべての皮疹は消退傾向にあったが, 1ヵ月後, 両足背に再燃した。症例2: 2歳の男児。左下肢·足背に環状皮疹を認めた。再燃·消退をくり返し3年半後も一部残存している。症例3: 3歳の女児。左足背の環状皮疹は, 初診から半年後に自然消退した。いずれの症例も, 皮疹は下肢∼足に分布し, 生検の有無を問わず消退傾向にあった。
  • 黒木 りえ, 占部 和敬, 今山 修平
    1997 年 59 巻 4 号 p. 566-569
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    色素沈着と類天疱瘡様の水疱を呈した全身性アミロイドーシスの76歳の男性例を報告した。皮膚, 直腸, 腎臓からの生検組織にアミロイドの沈着が認められた。免疫組織化学によりアミロイド沈着部位に一致して抗Igλ light chain抗体への陽性反応が認められ, Igλ light chain由来のALアミロイドーシスであることが示唆された。血中, 尿中にはM-protein(IgG-λ type)が認められ, アミロイドを形成したAL蛋白は血中M-protein由来である可能性が示唆された。
  • 小辻 智恵, 斉藤 和, 梅林 芳弘
    1997 年 59 巻 4 号 p. 570-571
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    11歳の男児の左臀部に生じた14×12mm大, 境界明瞭でドーム状に隆起する表面平滑, 弾性硬の皮内結節を報告した。病理組織学的には真皮全層に数個の分葉からなる均質な石灰沈着がみられた。先行病変および全身的な代謝異常, 膠原病などはみられなかった。Brain Woodsらの原著を検討し, subepidermal calcified nodule(SCN)と考えた。SCNが臀部に生じることは稀と思われた。
  • 力久 航, 桐生 美麿
    1997 年 59 巻 4 号 p. 572-574
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は37歳の女性。初診の約6年前, 胸部左側に2∼3個の皮下結節が認められたが放置していた。次第に増加してきたため手術目的で北九州市立医療センター皮膚科を受診した。結節出現3年後に同部に鈍的外傷を受け圧痛が出現した。局麻下に直径3∼20mmの結節8個を摘出した。各結節は境界明瞭, 黄白色球形で可動性良好であったが, 最大の結節は周囲組織と癒着していた。病理組織学的には, 厚い線維性被膜で被包された変性脂肪組織からなり, 脂肪壊死, 石灰化, 炎症性細胞浸潤などを伴っていた。自験例は肉眼的および病理組織学的所見より, 1977年に報告されたnodular-cystic fat necrosis1), および, その後報告されたmobile encapsulated lipoma2), posttraumatic fat degeneration and herniation, nodular fat necrosis3), encapsulated necrosis on the legs showing a changing number of nodules4), encapsulated fat necrosis5)と同一の疾患と考えられた。本疾患に対していくつかの疾患名が提唱されているが, 本疾患の本態は“fat necrosis”であり“lipoma”ではないこと, 自験例および文献的検索で“cystic”ではない結節や“mobile”ではない結節が認められたこと, 下腿以外の部位にも結節が認められること, また膵疾患に関連するいわゆる“nodular fat necrosis”とは全く異なる疾患であり紛らわしいことから, encapsulated fat necrosis5)という疾患名が最も適切と考えた。
  • 川畑 久, 瀬戸山 充, 山口 圭子, 関山 光弘, 松下 茂人, 大竹 直樹, 神崎 保
    1997 年 59 巻 4 号 p. 575-577
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は16歳の男性。1年9ヵ月前に頭部に丘疹, 結節が出現した。その後, 周部に脱毛をみるようになった。初診時に頭皮は多数の結節性病変が認められ, 脳回転状皮膚を呈していた。膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎および仮性黒色表皮腫に伴った脳回転状皮膚と診断した。免疫能や内分泌系の検査では異常は認められなかった。膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎に対して, くり貫き法による手術, 抗生剤および亜鉛の内服, グルココルチコイド局注を行い症状の軽快をみた。調べ得た範囲内では膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎および仮性黒色表皮腫の両者に続発したとみなされる脳回転状皮膚の報告はない。
  • —好発部位についての考察—
    松永 若利
    1997 年 59 巻 4 号 p. 578-581
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    ポートワイン母斑が顔面, 頭頚部領域に存在する場合には思春期頃より血管腫上に結節性病変が出現することがある。このような肥大性ポートワイン母斑症例を臨床的に詳しく観察したところ, その好発部位は皮膚表面血流量が本来多い部位と極めて高い相関関係があることに気づいた。皮膚表面血流量は主に真皮内に存在する細血管内を通る血流量を示すものであり, 結節の出現には何らかの点で細動静脈吻合が関係しているものと考えた。腫瘤出現の詳しいメカニズムについては全く不明であり, 今後の検討を要するところであるが, 今まで日光による影響で結節が出現するのではないかと漠然と考えられていた問題に対して, 新たな知見を提出することは意義あるものと考え報告する。
  • 半仁田 優子, 長嶺 安司, 萩原 啓介, 上里 博, 野中 薫雄, 宮里 肇, 大城 清
    1997 年 59 巻 4 号 p. 582-585
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    45歳の男性。生来, 仮性包茎であった。初診時に陰茎亀頭部に疼痛を伴った境界明瞭で光沢のある紅色局面が認められ, 臨床的にQueyrat紅色肥厚症が疑われた。病理組織学的には明らかな悪性像はみられなかった。1年後に陰茎癌に進展した。陰茎癌と診断した時点でのTNM分類はT1N0M0, Jackson分類ではstage I, 病理組織学的には分化型有棘細胞癌であった。当初, 患者のQOL(quality of life)を考慮し, 化学療法, 放射線療法を併用した保存的治療を行った。治療終了2ヵ月後, 亀頭部の発赤, 疼痛が持続し, 病理像では表皮内癌の所見と, 一部真皮への腫瘍細胞浸潤を疑う所見を認め, 最終的に陰茎部分切断術を施行した。陰茎癌は臨床的に乳頭増殖型の場合, 特にlow stageの症例では放射線治療を含めた保存療法の適応がある。放射線治療を行う場合, 包皮への過照射を予防するため, 包茎合併例では仮性包茎であっても治療前に環状切除術を行う必要がある。
  • 増野 年彦, 磯田 美登里, 奥田 由香, 永井 祥之介
    1997 年 59 巻 4 号 p. 586-589
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    69歳の男性。肛門周囲の環状に配列する疣贅様結節を主訴に広島赤十字·原爆病院皮膚科を受診した。結節部の生検を行い病理組織学的にPaget病と診断し切除術を施行したが, 切除標本の肛門管部で重層扁平上皮部のPaget様病変に連続して粘膜上皮部に腺癌を認め, さらに, その口側の直腸粘膜に別の高分化型腺癌を認めた。本症例では直腸癌を合併した肛門癌が肛門周囲皮膚に進展しPaget様病変を示したものと考えた。
  • —Gh-RHアナログ(ブセレリン)が無効であった皮膚平滑筋腫—
    村上 義之
    1997 年 59 巻 4 号 p. 590-592
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    29歳の女性。24歳時に子宮筋腫に対してGn-RHアナログを投与され, 腫瘍の縮小と過多月経や月経困難症などの症状の消失をみた。22歳頃に下顎や上腕に紅色小丘疹が出現, 次第に増加し, 前腕と大腿を除くほぼ全身に小丘疹が多発した。臨床像と病理組織学的所見より多発性皮膚立毛筋性平滑筋腫と診断した。典型例と考えられ, 本腫瘍とestrogenの関係について若干の考察を加えて報告する。
  • 西 正行, 寺崎 健治朗, 松下 茂人, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1997 年 59 巻 4 号 p. 593-594
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    81歳の男性。70歳頃発症の頬部悪性黒子を73歳時に全切除, 植皮術を施行した。77歳頃に再発が認められたが放置, 受診時には病変は拡大し, 植皮部へまで浸潤していた。この症例は悪性黒色腫の成長過程におけるradial growthの状態を示すものと考えた。
  • 井上 明代, 大竹 直樹, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1997 年 59 巻 4 号 p. 595-597
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    生来健康であった59歳の女性が適切な治療にもかかわらず11ヵ月にわたり両手指爪, 外陰部, 鼠径部, 口腔内に難治性カンジダ症を発症した。経過中に躯幹, 四肢に2週間で自然軽快する浸潤性紅斑を認め, 病理組織学的にPautrier’s microabscessが認められた。また血清抗human T-cell lymphotropic virus type I(HTLV-I)抗体陽性, DNA診断(southern blot analysis)で血液中, 組織中にHTLV-Iのmonoclonalな取り込みが認められ, ATL(adult T cell leukemia/lymphoma)と診断した。ATLは発症に細胞性免疫の低下が強く関与しているといわれている。今回我々は難治性汎発性カンジダ症および出没する皮疹からATLを疑い臨床的, 免疫学的に細胞性免疫の低下が認められ病理組織学的, 血液学的にATLと確認された症例を経験したので報告した。
  • 大滝 倫子, 大城 由香子, 坂下 さゆり, 赤尾 信明
    1997 年 59 巻 4 号 p. 598-600
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    1歳半の女児。初診: 平成8年5月29日。背部の線状の紅斑を主訴として九段坂病院皮膚科を受診した。初診約1週間前に下背部の線状紅斑に気づいたが放置したところ, 徐々に上背部に伸長した。4月末, 生ホタルイカの摂食歴あり。現症: 下背部より上背, 項部, 側背部にかけ幅約2mmの紆余曲折し末端部に軽い浮腫を伴う線状の紅斑が認められた。好酸球3%, 旋尾線虫間接蛍光抗体法は陰性であった。病理組織像で真皮内に好酸球, リンパ球の浸潤と真皮深層と皮下脂肪織内に虫体断面が認められた。体幅100μm, 角皮に皮棘なく, 筋層はpolymiarian, coelomyarian型, 側索の形態などにより旋尾線虫幼虫type Xと同定した。皮膚生検後再燃はなかった。1974年の大鶴らの報告例を最初に, 本症の報告は52例あるが, そのうち皮膚爬行症は32例であった。男女比は5:1で男性に多く, 1歳半の女児は極めて稀であった。皮膚爬行症の好発部位は腹部で, 背部は比較的稀であった。本症は1992年にピークとなり1995年には減少の気配をみせたが, 本例の発症から今後の多発も危惧される。
  • 高旗 博昭, 濱本 嘉昭, 立野 裕晶, 武藤 正彦, 麻上 千鳥
    1997 年 59 巻 4 号 p. 601-604
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    難治であった粘膜苔癬が, 漢方薬により生じた3例の薬疹を報告した。症例1: 56歳の女性。平成7年5月上旬に下口唇の腫脹, 疼痛, 痂皮が出現した。ステロイドの内服でコントロールされていたが再発を繰り返していた。C型肝炎に投与されていた小柴胡湯の内服テスト陽性。症例2: 51歳の女性。2年前に両頬部粘膜, 下部歯肉に白色局面が出現した。疼痛も加わり難治であった。高血圧に投与されていた桂枝茯苓丸による内服テスト陽性。症例3: 66歳の女性。両頬部粘膜, 口唇の疼痛を主訴に来院した。C型肝炎に投与された小青竜湯の内服テスト陽性。生検した組織像では基底層の液状変性, 粘膜固有層上層に帯状のリンパ球浸潤を認めた。金属パッチテストは3例とも陰性。また漢方薬の服用中止後再発をみていない。
  • 安井 宏夫, 武藤 正彦, 濱本 嘉昭, 廣田 徹, 森脇 由紀, 麻上 千鳥, 倉田 佳子
    1997 年 59 巻 4 号 p. 605-608
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    3歳の男児。自宅浴室で遊んでいる時, 誤って着衣のまま浴槽に転落し, 1度10%, 2度42%(SDB 24%, DDB 18%)の熱傷を負った。Baxter法に準じ初期輸液を行ったが, 受傷4時間後に嘔吐, 血圧の低下, 腹部膨隆, 粘血便をみた。受傷3日目にイレウス, 穿孔性腹膜炎の併発と診断し広範囲腸管切除を行った。腸管壊死はTreitz靱帯部より上行直腸下3分の1までの広範囲なもので上腸管膜動脈閉塞によるものであった。その後受傷皮膚は上皮化した。高カロリー中心静脈栄養にて19ヵ月後生存している。
講座
統計
  • 竹川 恵, 石井 則久, 田村 暢子, 松岡 有理子, 中嶋 弘
    1997 年 59 巻 4 号 p. 617-620
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    横浜市立大学医学部附属病院皮膚科外来に通院中の乾癬患者136名(男性97名, 女性39名)につき, 最近5年間の治療の変遷につき検討した。年齢は男性が平均47.7歳, 女性が平均43.9歳であった。PASIスコアの平均値は男性が13.4, 女性が8.3であった。ビタミンD3(VitD3)軟膏の登場に伴い, 顔面では80%の症例で, 同軟膏の外用が主流となってきた。躯幹, 四肢ではステロイド外用剤の使用率の減少がみられた。しかし頭部に関しては5年間を通じてstrongクラスのステロイドローションの外用が主流であった。PASIスコアが10未満の症例では, スコア10以上の症例に比べステロイドの外用が減少し, それはVitD3軟膏の増加が主な要因であった。一方, PASIスコア20以上の症例においてシクロスポリン(CYC)の内服率が増加していた。また, 外用療法の効果は, 男女間で顕著な差は認められなかった。VitD3軟膏, CYCの登場により乾癬の治療法に幅ができ, 患者のQOLを考えた治療法の選択が可能になりつつあると考えられた。
治療
  • 本庄 三知夫, 藤田 日出雄, 古沢 公人, 飯田 利博, 西山 千秋, 岩澤 うつぎ, 鈴木 啓之, 森嶋 隆文
    1997 年 59 巻 4 号 p. 621-626
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    1%塩酸テルビナフィンクリーム剤(ラミシール®クリーム)の1日1回塗布による足白癬に対する有効性と安全性を検討する目的で, 日本大学医学部附属病院三施設において共同臨床試験を実施した。対象は83例(趾間型44例, 小水疱型35例, 角質増殖型4例)であり, このうち9例(趾間型4例, 小水疱型5例)は解析対象除外とした。また3例(趾間型1例, 角質増殖型2例)は安全性評価のみとした。したがって有効性, 有用性評価は71例, 安全性評価は74例を解析対象とした。皮膚所見と菌検査の結果を考慮した総合効果判定は有効以上で趾間型84.6%(33/39), 小水疱型76.7%(23/30), 角質増殖型100.0%(2/2)であった。菌の陰性化は趾間型84.6%(33/39), 小水疱型76.7%(23/30), 角質増殖型100.0%(2/2)であった。副作用の発現は74例中2例(2.8%)に認められた。いずれも投与を中止し対症治療により症状は消失した。有用性は有効以上が趾間型89.7%(35/39), 小水疱型70.0%(21/30), 角質増殖型100.0%(2/2)であった。以上の結果より塩酸テルビナフィン1%クリーム剤(ラミシール®クリーム)は足白癬に対して有用な薬剤と考えられた。
  • —特にテルフェナジンの止痒効果の検討—
    多田 讓治, 荒田 次郎, 益田 俊樹, 長尾 洋, 梅村 茂夫, 平野 紀子, 平松 博子
    1997 年 59 巻 4 号 p. 627-632
    発行日: 1997/08/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    湿疹·皮膚炎群に対して, テルフェナジン(トリルダン®)錠内服と0.1%プロピオン酸アルクロメタゾン(アルメタ®)軟膏の併用療法を行い, その臨床効果, 安全性および有用性とともに, 特にトリルダン®の早期の止痒効果について検討した。アトピー性皮膚炎18例, そのほかの湿疹·皮膚炎群56例の計74例を対象とした。その結果, 有用度はアトピー性皮膚炎で64.7%, そのほかの湿疹·皮膚炎群で81.8%で, 両者間にかなりの差がみられた。また1週目でのトリルダン®の止痒効果についても日中·夜間ともに, そのほかの湿疹·皮膚炎群で優位であった。3例に消化器症状などの軽い副作用が認められた。トリルダン®とmildなステロイド外用剤の併用療法により, そう痒を初めとした臨床症状に有意な改善が得られ, さらに湿疹·皮膚炎群の治療においてトリルダン®とmildなステロイド外用剤の併用療法により, ステロイド外用剤のランクダウンが期待できると思われた。
世界の皮膚科学者
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