症例は37歳の女性。初診の約6年前, 胸部左側に2∼3個の皮下結節が認められたが放置していた。次第に増加してきたため手術目的で北九州市立医療センター皮膚科を受診した。結節出現3年後に同部に鈍的外傷を受け圧痛が出現した。局麻下に直径3∼20mmの結節8個を摘出した。各結節は境界明瞭, 黄白色球形で可動性良好であったが, 最大の結節は周囲組織と癒着していた。病理組織学的には, 厚い線維性被膜で被包された変性脂肪組織からなり, 脂肪壊死, 石灰化, 炎症性細胞浸潤などを伴っていた。自験例は肉眼的および病理組織学的所見より, 1977年に報告されたnodular-cystic fat necrosis
1), および, その後報告されたmobile encapsulated lipoma
2), posttraumatic fat degeneration and herniation, nodular fat necrosis
3), encapsulated necrosis on the legs showing a changing number of nodules
4), encapsulated fat necrosis
5)と同一の疾患と考えられた。本疾患に対していくつかの疾患名が提唱されているが, 本疾患の本態は“fat necrosis”であり“lipoma”ではないこと, 自験例および文献的検索で“cystic”ではない結節や“mobile”ではない結節が認められたこと, 下腿以外の部位にも結節が認められること, また膵疾患に関連するいわゆる“nodular fat necrosis”とは全く異なる疾患であり紛らわしいことから, encapsulated fat necrosis
5)という疾患名が最も適切と考えた。
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