西日本皮膚科
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57 巻, 3 号
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図説
綜説
症例
  • 福田 英三, 今山 修平
    1995 年 57 巻 3 号 p. 444-448
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    タカルシトール含有軟膏(ボンアルファ®軟膏)により発症したと思われる環状紅斑の2例を報告した。症例1は本軟膏の貼布試験が陽性であったことから, 本軟膏による遅延型アレルギー反応が最も疑われた。さらに原因物質としては軟膏基剤の貼布試験がすべて陰性であり主成分のタカルシトールが疑われた。症例2は臨床経過から本軟膏の関与が示唆されたが, 貼布試験に再現性がみられず確診には至らなかった。
  • 山岸 雄二, 村田 久仁男, 大槻 典男
    1995 年 57 巻 3 号 p. 449-453
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    43歳の男性のvesiculobullous SLEの1例を報告した。約7週間前より, 顔面, 体幹, 四肢に紅斑と紅斑の辺縁に環状配列する小水疱が出没していた。口腔内に小水疱, 多関節炎, 日光過敏, 眼の乾燥症状も認めた。検査所見でリンパ球減少, 抗核抗体陽性, 抗DNA抗体高値, 抗SS-A抗体高値, 補体低下を認めた。病理組織学的には好中球浸潤を伴った表皮下水疱と, 真皮上層に壊死性血管炎がみられた。蛍光抗体法では, 直接法で基底膜部にIgG, IgA, IgM, C3が線状に沈着し, 間接法で抗基底膜抗体80倍を認めた。また, 1M NaClによる剥離皮膚を用いた間接法では, IgGが真皮側に線状に沈着していた。プレドニゾロンとニコチン酸アミドの内服併用で少数の紅斑の出没があるものの, 水疱の新生はなく, 全身状態も良好にコントロールされている。
  • 梅田 由美, 水谷 仁, 清水 正之
    1995 年 57 巻 3 号 p. 454-457
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    79歳の男性。初診2ヵ月前に上眼瞼浮腫性紅斑出現, 初診1ヵ月前に嚥下困難出現, 近医受診し消化管障害の診断にて上部消化管造影を施行された後, 当科紹介となった。初診時バリウム誤飲による嚥下性肺炎を生じており, 両眼瞼部, 頬部, 頚部, 前腕に帯紫色浮腫性紅斑, 背部ではpoikilodermaを認めた。筋脱力症状を認め, 筋生検にて筋線維の変性を認め, 筋電図に異常なく検査所見で筋原性酵素の上昇を認めた。以上より皮膚筋炎と診断。プレドニゾロン, 抗生剤等の治療にて一旦症状軽快傾向を示したがプレドニゾロン漸減中, 皮疹の再燃をきたしメソトレキセート併用を行い現在, 経過観察中である。
  • 長谷川 稔, 坂井 秀彰, 筒井 清広, 小泉 富美朝
    1995 年 57 巻 3 号 p. 458-461
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    40歳の女性。7ヵ月前より口腔粘膜アフタ, 結節性紅斑様皮疹, 外陰部潰瘍が出没していた。初診時に口腔粘膜アフタ, 四肢の結節性紅斑様皮疹および虹彩毛様体炎がみられた。その後結腸潰瘍と右大腿静脈の血栓性静脈炎が出現した。コルヒチンの内服により症状は軽快したが, 扁桃炎に伴い口腔粘膜アフタや結節性紅斑様皮疹の再発を繰り返した。ASLOとASKの値は正常であったが, このような経過から扁桃病巣感染が疑われた。扁桃摘出後1年の時点でBehçet病の症状は明らかに改善した。
  • 平川 智恵, 佐藤 茂樹, 奥本 勇二, 山本 昇壯
    1995 年 57 巻 3 号 p. 462-465
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    タカルシトール含有軟膏が有効であった48歳の男性の典型的なI型の毛孔性紅色粃糠疹の1例を報告した。エトレチナート(チガソン®)の内服により, 皮疹の程度は軽快したが, 軽度の皮膚の潮紅および粃糠様落屑は持続した。エトレチナート内服を中止し, タカルシトール含有軟膏(ボンアルファ®)の外用をおこなったところ良好な経過を得ることができた。
  •  
    池田 祐輔, 秋山 正基, 飯島 正文, 藤澤 龍一
    1995 年 57 巻 3 号 p. 466-471
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Annular elastolytic giant cell granuloma(以下AEGCG)とgeneralized granuloma annulare(以下GGA)の異同は常に問題となっている。今回われわれは両者の病像を兼ね備えた4症例を比較検討した結果, AEGCGとGGAは同一ベクトル上にある疾患と想定するのが妥当と考えた。症例1: 70歳の女。両前腕, 両手背, 両足背の紅褐色から淡褐色の環状局面。症例2: 31歳の男。両下腿の紅褐色から淡紅色の環状局面。症例3: 36歳の女。項部, 前頚部, 右肩関節前面, 背部の紅褐色の環状局面。症例4: 30歳の女。左下腹部の褐色の局面。病理組織学的には病変辺縁隆起部における多核巨細胞の弾力線維の貪食像, その内側における弾力線維の消失および減少が程度の差はあるものの全例で認められ, これはAEGCGに合致する所見であった。一方膠原線維の変性, palisading granulomaなどGGAを示唆する所見も症例により程度の差はあるが認められた。
  • 山本 淳子, 園田 忠重, 板見 智, 橋本 裕之, 高安 進, 寺師 浩人
    1995 年 57 巻 3 号 p. 472-476
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    77歳の女性。50歳頃より下腿の浮腫, 色素沈着, 下肢静脈瘤, 腹壁静脈の怒張を認めていた。左下腿難治性潰瘍を主訴として65歳時に当科を初診。これまでに4回の入退院を繰り返し, 2回の植皮術を受けている。65歳時に汎血球減少, 脾腫, 凝固能異常, 75歳時に肝硬変, 食道静脈瘤が確認されており, 平成5年1月第4回入院時, 下肢静脈造影にて穿通枝の弁機能不全, 深在静脈の高圧状態, 腹部CTにて肝内静脈の拡張, 肝部下大静脈の狭窄が, 血管造影にて下大静脈の完全閉塞が確認された。以上の所見よりBudd-Chiari症候群によるうっ滞性皮膚炎, 下腿潰瘍と診断した。膝蓋までの大伏在静脈, 穿通枝の結紮切除, 潰瘍を含めた広範囲切除, 分層植皮術を施行した。平成6年8月現在潰瘍の再発をみていない。自験例を含めBudd-Chiari症候群による下腿潰瘍について考察した。
  • 柳原 健志, 宮田 信子, 柿添 栄一, 本田 栄, 都 深, 小池 俊一, 出来尾 哲, 地土井 襄璽, 笠田 守, 心石 隆敏, 池田 ...
    1995 年 57 巻 3 号 p. 477-482
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    最近経験した口唇部扁平上皮癌(SCC)の3例を記載した。次いで当科開設以来14年間のSCC 40症例について統計的観察を行い, これら3例の位置づけについて考察した。その結果, 口唇部SCCは老人に多く, 日光との関係が深いものと考えられたが, 喫煙などその他の要因の関与の可能性も考えられた。
  • 岩崎 泰政, 森 保, 宮本 義洋, 波多野 裕二, 森田 栄伸, 佐藤 茂樹, 山本 昇壯
    1995 年 57 巻 3 号 p. 483-489
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    最近12年間に広島大学医学部附属病院皮膚科で経験し治療した熱傷瘢痕癌10例について, 統計学的検討を行ったので, 予後や治療方法も含めて報告する。全例が有棘細胞癌であり, 全有棘細胞癌92例の10.9%を占めた。男女比は7:3であり, 発生部位では下肢が最も多く70%を占めた。組織学的分化度では高分化型が80%を占め, TNM分類では原発巣がT3以上に進行した症例がほとんどであった。前駆症状として, 受傷後平均33.4年で10例全例に難治性潰瘍が出現し, さらに9例は潰瘍出現後平均7.8年で腫瘤が出現した。受傷から瘢痕癌と診断されるまでの期間は平均41.1年と非常に長く, また受傷年齢が高いほど癌化までの期間が短かった(p<0.01)。予後については, 累積5年生存率が61.0%であり, 熱傷瘢痕癌以外の有棘細胞癌に比べて予後不良であった(p<0.05)。手術治療としては, 膝窩部に発生した症例は十分な腫瘍切除と植皮術を行い, 鼠径部のリンパ節郭清を行った。踵部に発生した症例は遊離肩甲骨部皮弁を用いて再建し, 頭部に発生した症例では, 頭蓋骨および硬膜を切除後, 遊離腹直筋皮弁を用いて再建した。熱傷瘢痕部に生じた難治性潰瘍は早期に予防的な切除を行うことが必要であるが, 腫瘍の十分な切除とリンパ節郭清を行うことにより良好な経過をとる症例も多く経験した。
  • 安野 佳代子, 中村 徳志, 前川 嘉洋, 野上 玲子
    1995 年 57 巻 3 号 p. 490-493
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    放射線照射から20年以上経過した後, 照射部位に皮膚癌が発生した3症例(有棘細胞癌2例, 基底細胞癌1例)を経験した。放射線治療を選択する際には, その利益が不利益を明らかに上回ると考えられなければならないが, 改めてこのことを考えさせられる症例であった。
  • —Toxic Shock-like Syndrome—
    井上 雄二, 城野 昌義, 葉 著寿, 益田 敬子, 小野 友道
    1995 年 57 巻 3 号 p. 494-498
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    Toxic shock-like syndrome(TSLS)と診断された65歳の女性例を報告した。本症例は感冒様症状に続発し, 突然の右下腿の有痛性発赤腫脹として発症した。近医で抗生剤と免疫グロブリンの投与を受けたが, 血圧低下·肝機能障害·腎機能障害などをきたし, さらに右下腿皮膚の大半は水疱形成と壊死に陥り, 当科に緊急入院となった。入院直後に右下腿の広範な外科的デブリードマンと広域スペクトル抗生剤の全身投与を行った。その後急速に全身状態および局所状態は改善し, 救命することができた。抗生剤投与中で血液培養はできなかったが, 手術時の壊死組織よりA群溶連菌を分離でき, 臨床経過よりA群溶連菌によるTSLSと診断した。最後に, 本症診断の問題点と発症機序について文献的に考察した。
  • 並里 まさ子
    1995 年 57 巻 3 号 p. 499-502
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    再発をくりかえすB群らいの67歳の女性例を報告した。初診時, BBらいの臨床像を示していた。長期にわたる臨床, 治療経過を検討した結果, 光田反応の陰性化に続いて, DDS単剤治療の有効性が低下していることが認められた。増菌負荷による免疫力の低下と, low gradeのDDS耐性菌の出現が相互に関与した結果, 遷延する臨床症状と菌指数の上昇を来したものと推察した。DDS(100mg/日), rifampicin(600mg, 月2回)の2剤投与を開始して2.5ヵ月後, 皮疹の増強と左第1指の運動障害を認めたが, 短期間のprednisolone投与にて軽快した。病理組織学的検討にてup-gradingを伴うリバーサル反応(境界反応)と考えた。さらにofloxacinを追加投与した。初診時より5ヵ月後, 全般に皮疹の消退傾向は明らかであるが, 生検部位とその近傍では, 時に発赤と浸潤性の増強がみられる。
  • 細川 篤, 上里 博, 野中 薫雄, 金城 浩邦, 富永 智
    1995 年 57 巻 3 号 p. 503-507
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    11歳の女子の未定型群らいの1例を報告した。初診の約2ヵ月まえに脱毛と白毛を伴う低色素斑4個が出現した。DDS50mg連日投与し治療約3ヵ月で略治した。未定型群らいの皮疹は浸潤を伴わない淡紅色斑や低色素斑である。乾燥性で時に粃糠様鱗屑を伴う。知覚鈍麻, 脱失は軽度であることが多く判定に迷うことも多い。組織学的にも特徴的所見がみられず, らいの2型2群のうちもっとも診断が難しい病型と考えられた。らいの診断ならびに他の疾患との鑑別に重要な末梢神経内らい菌の検索に過よう素酸·カルボール·パラロザニリン法(原田法)とS-100蛋白の免疫染色が有用であるが, 本症例では同染色法で菌陰性であった。しかし末梢神経の部分的変性像が認められた。琉球大学附属病院では1982年∼1991年の10年間に6名の小児らいを経験しており沖縄県では新患がまだしばらく発見されることが予想された。
  • 山内 秀彦, 徳王 宏, 石原 剛, 松永 若利, 小野 友道
    1995 年 57 巻 3 号 p. 508-510
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    われわれは熊本大学医学部皮膚科および関連施設の過去10年間9症例のheat-press injuryを検討した。年齢は1, 24, 38歳および40代3例, 50代3例であった。いずれも女性で全例手指の受傷であった。受傷原因としては5例はクリーニング等のプレス機で, 3例で食品関連などの機械であった。尚, 1歳女児例はアイロン落下によるものであった。切断した1例を除いて7例に対し植皮術, 1例に有茎皮弁作製術を行った。
  • 石原 秀治, 小野 友道
    1995 年 57 巻 3 号 p. 511-514
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    55歳の女性。16年間顔面に生じたにきび様皮疹, アテローム, および脂肪のかたまりが拡がっていくと思い取り除いていた。自傷行為を否定することはなく, 他の精神病的症状や人格の低下もみられない。また他の疾患による二次的な症状であることは否定された。これらのことなどにより単症候性心気症monosymptomatic hypochondriacal psychosis(MHP)による神経症性擦傷neurotic excoriations(NE)と診断した。面接や向精神病薬などの投与により自傷行為は消失してきた。
研究
  • 森田 栄伸, 山本 匡, 岩崎 泰政, 高路 修, 山本 昇壯
    1995 年 57 巻 3 号 p. 515-519
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎患者において好酸球顆粒蛋白であるmajor basic protein(MBP)の血清中濃度を測定し, これが臨床的パラメーターとしていかなる意味を持つか検討した。アトピー性皮膚炎患者95名について血清MBP値を測定し, その値と臨床症状, 末梢血好酸球数, 血清IgE値, 血清eosinophil cationic protein(ECP)値との相関を検討した。血清MBP値はアトピー性皮膚炎患者で皮疹の重症度にともない高値を示し, 治療により有意に低下した。血清MBP値と末梢血好酸球数との間には有意な相関がみられたが血清ECP値との相関は弱かった。また血清MBP値と血清IgE値との間にも相関がみられ, 両者間にはなんらかの関連が示唆された。血清MBP値は血清ECP値とともにアトピー性皮膚炎患者において好酸球活性化の指標になるとともに疾患の活動性の指標にもなりうると考えられた。
  • 鳥巣 仁枝, 今山 修平, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 3 号 p. 520-524
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫のコンピューター診断を目的に, 色素性母斑を対照として画像解析を行った。病変の撮影には偏光クロスレンズを装着したデジタルカメラを用いたが, 偏光下で撮影することにより表面反射が取り除かれ, 角層下の色調が明瞭に認められた。病変の範囲の決定に最も有用であったのは色の三属性のうち明度であったことから, 病変領域の抽出には明度を用いた。こうして抽出された病変の形状と色調について解析を行ったところ, 悪性黒色腫より色素性母斑のほうが色素沈着領域の辺縁の形は不整であることが判明したが, 一方で悪性黒色腫は病変全体に占める暗調領域の割合が高いことが判明した。両者の鑑別がある程度可能であることから, この解析法は侵襲的な方法で診断を行う前の補助的手段として有用と思われた。
講座
統計
  • 小野 公義
    1995 年 57 巻 3 号 p. 535-539
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    兵庫県皮膚科医会が実施している皮膚病サーベイランスのうち単純ヘルペス, とくに1987∼93年の7年間に定点より報告された15,084例について統計的検討を行った。(1)1987年以後は, 1990年ごろより単純ヘルペスは増加傾向を示している。(2)月別の発症率をみると5, 6, 9月は発症が少なく, 暑さ寒さのきびしい2, 3, 8, 12月には多くなっている。(3)男女の性比は1:1.9で, 女性が男性の約2倍多い。とくに20歳代では女性が男性の3倍である。(4)年齢別分布では10歳代, 20歳代がほぼ同数で最も多く, 次いで0∼9歳と30∼50歳代がほぼ同数で続く。これを男女別にみると, 男性は0∼9歳, 10歳代と40歳代, 50歳代をピークとする2峰性, 女性は20歳代をピークとする1峰性のカーブを描き, 男女の年齢別分布に大きな差があることがわかった。このことは, 男性と女性の発症原因が異なる因子によって支配されている可能性を示していると思われる。
治療
  • 田中 達朗, 三砂 範幸, 松崎 令子
    1995 年 57 巻 3 号 p. 550-554
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    帯状疱疹後痛および神経痛の患者20名に対し液体窒素凍結, 赤外線併用療法を行った。方法は疼痛を訴える部位に, 水疱を形成しない程度に液体窒素を含ませた綿棒を圧抵した後, 近赤外線を10分間照射した。痛みの評価は薄場ら1)の作ったペインスコア(PS)を用い, 改善率[(施行前PS-施行前PS)/施行前PS×100]を算出し, 100∼75%を著効, 74∼50%を有効, 49%以下を無効とした。結果は, 著効7名, 有効9名, 無効4名で著効と有効を合わせた有効率は80%であった。本治療法は, 約5回の治療である程度の鎮痛結果が得られ, 治療開始までの期間と改善率に相関関係は見られず, 長期経過した症例でも高い改善率が得られた。また, 本治療法は痛みの強い症例ほど有効であった。
  • 古井 良彦, 遠藤 桃子, 副島 清美, 片山 一朗, 西岡 清
    1995 年 57 巻 3 号 p. 555-558
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    I. はじめに: われわれはlidocaineの経口アナログであるmexiletine hydrochlorideを, 帯状疱疹ならびに帯状疱疹後神経痛の疼痛を除去する目的で使用し, 有効であったので報告する。II. 対象ならびに方法: 対象は帯状疱疹患者97名と帯状疱疹後神経痛の患者8名で, 全例を無作為に次の3群に分けた。第1群: 基本処方+mexiletine(150mg/day), 第2群: 基本処方+vidarabine(300mg/day)+alprostadil(60μg/day), 第3群: 基本処方[naproxen(300mg/day)+mecobalamin(1500μg/day)]のみ。III. 結果: 帯状疱疹において, mexiletineを投与した第1群では内服開始の次の日には疼痛が約半分に, 4日目には約1/5に減少した。また全例が約9日で疼痛が消失し, 他群に比し除痛効果が優れており予後も良好であった。他群では疼痛消失までの期間がより長く, 疼痛が残った症例がみられた。帯状疱疹後神経痛についても同様の傾向がみられた。IV. かんがえ: mexiletineの経口投与はiontoforesisと同程度の有効率を示し, 帯状疱疹ならびに帯状疱疹後神経痛に伴う疼痛の治療に有効であると考えられる。
  • 籏持 淳, 植木 宏明, 河原 和枝, 難波 三郎
    1995 年 57 巻 3 号 p. 559-565
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    α-リノレン酸, エイコサペンタエン酸(EPA), ドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系多価不飽和脂肪酸含有食品(イパオール®)投与の成人型アトピー性皮膚炎に対する臨床効果を検討した。投与を8週間行い, 全般改善度は「著明改善」が33.3%, 「中等度改善」が11.1%で「中等度改善」以上の合計が44.4%を示した。有用度においても「きわめて有用」が33.3%, 「有用」が11.1%で「有用」以上が44.4%であった。今回の試験では副作用は認められなかった。投与期間中, 血液中のEPA, DHA値およびEPA/アラキドン酸(AA)比の測定を行ったが, これらはすべて有意に上昇が認められた。n-3系多価不飽和脂肪酸含有食品(イパオール®)は成人型のアトピー性皮膚炎に対して有用性があると思われた。
  • 工藤 和浩, 吉村 達雄, 田上 八朗
    1995 年 57 巻 3 号 p. 566-571
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    2%ケトコナゾールクリームで脂漏性皮膚炎を長期治療したときの有効性, 安全性および有用性を検討した。外用方法は適量を被験部位に1日2回単純塗擦することとした。治験を実施した全7症例の最終全般改善度は, 治癒4例, 著明改善1例, 改善1例, 不変1例であり高い改善率(6/7, 86%)を示した。治療期間中, 副作用の発現や臨床検査値の異常変動は認められず, 本剤の安全性の高さを確認した。今回の報告症例は大学病院という施設の関係上少数ではあるが, 2%ケトコナゾールクリームは脂漏性皮膚炎の治療に有用な薬剤になり得るとの印象を得た。
  • —塩酸アゼラスチン(アゼプチン®)とフマル酸クレマスチンの有用性の比較—
    西村 正幸, 木村 秀人, 駒田 信二, 高崎 修旨, 亀山 明, 河野 昭彦, 瀬口 俊一朗, 高野 廣英, 局 幹夫, 藤井 義久, 古 ...
    1995 年 57 巻 3 号 p. 572-579
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    痒みを伴う各種炎症性皮膚疾患の治療における抗アレルギー剤塩酸アゼラスチン(アゼプチン®)と抗ヒスタミン剤フマル酸クレマスチンの有用性について比較検討した。全体にアゼプチン®はフマル酸クレマスチンより高い有用性を示し, アゼプチン®とフマル酸クレマスチンの有用性の差は週数を増す毎に顕著となり, 疾患別にみるとアトピー性皮膚炎, 慢性湿疹, 脂漏性皮膚炎といった慢性の経過をとる疾患において有用性の差が顕著であった。フマル酸クレマスチン投与群に比べて, アゼプチン®投与群において著明改善の比率が非常に高く, この差は両者の薬効の切れ味の違いを反映するもので臨床使用にあたりきわめて重要と考えられた。
  • 中山 樹一郎, 堀 嘉昭
    1995 年 57 巻 3 号 p. 580-585
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    乾癬のcyclosporin A療法中高血圧を呈した10例にcalcium channel blockerのnifedipine持効錠を1日20∼40mg投与し, その降圧効果を検討した。Nifedipine持効錠を投与した乾癬患者は10例中9例が高脂血症を合併し, cyclosporin A療法前の血圧も境界型の高血圧を示している場合が多かった。Nifedipine持効錠を投与し, 2週間で有意に血圧は低下した。この効果は調査した限り55週まで継続した。重症の乾癬患者にcyclosporin A療法を考慮する場合, 患者の背景とくに高脂血症, 糖尿病の有無, 高血圧の既往などに注意を払う必要があり, 一旦cyclosporin Aにより高血圧が誘発され, かつcyclosporin Aの減量が難しい場合, nifedipine持効錠の速やかな併用が有用であることが示唆された。
  • 豊田 典明, 橋本 喜夫, 松尾 忍, 飯塚 一
    1995 年 57 巻 3 号 p. 586-593
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    旭川医科大学附属病院皮膚科およびその関連施設において, 皮膚潰瘍33例, 褥瘡25例の計58例を対象に, 白糖とポビドンヨード配合軟膏であるユーパスタコーワ®の有効性, 安全性, 有用性を検討した。全症例における最終全般改善度では軽度改善以上で88.2%の改善率を示し, 症状別改善度ではとくに膿性分泌物, 壊死性物質の付着, 悪臭で60%以上の改善率が認められた。またMRSA, 緑膿菌を含む細菌感染に対しても有効性が確認され, 肉芽形成促進作用に併せ創面浄化作用に優れた薬剤と考えられた。副作用は8.6%に認められたが, いずれも投与部の疼痛で重篤なものは認められず, 有効性, 安全性が高く, 製剤的にも安定した極めて有用性の高い潰瘍治療剤と判断した。
  • in vitroおよびin vivoにおける検討—
    原本 泉
    1995 年 57 巻 3 号 p. 594-600
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    多種のフラボノイドを含む油溶性甘草エキス(LE)がチロジナーゼ活性を抑制することが認められ, メラニン産生の抑制効果がすでに確認されている。今回吸光度法と14C-thiourasil uptakeによるmelanization assayを行ってLE中に約10%含まれるグラブリジンがLEおよび他のフラボノイドより抗チロジナーゼ活性が強いことを確認した。またグラブリジンの濃度を38%にしたLEを作成し酸化チタン, オリザノールなどを含むクリームに0.1%および0.2%になるように配合し, 臨床試験に使用した。色差計にて治療前後に明るさを示すL値を計測し肝斑, 炎症後色素沈着, 炎症後色素沈着と肝斑合併, 老人性色素斑などにおける治療効果を検討した。0.1%LEクリーム使用(33例)のpaired-t-testによるL値の比較では治療前後に有意(P<0.05)の改善がみられた。疾患別では肝斑単独群のみ有意(P<0.05)の改善がみられ, 炎症後色素沈着単独群と炎症後色素沈着と肝斑の合併群ではL値の有意の改善がみられなかった。0.2%使用(35例)のpaired-t-testによるL値の比較では高度に有意(p<0.01)の改善がみられた。疾患別では肝斑が高度に有意(p<0.01), 炎症後色素沈着は有意(P<0.05)の改善を示し, 0.1%より良い成績が得られた。また老人性色素斑でもL値の有意(P<0.05)の改善をみた。二重盲検による比較ではないが0.2%LEクリームの効果は0.1%のものより大きく, in vitroと同様にin vivoの効果も濃度依存性に増大する可能性が示された。
  • 原本 泉, 溝口 昌子
    1995 年 57 巻 3 号 p. 601-608
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    植物甘草より抽出した油溶性甘草エキスlicorice extracts(LEと略す)中に, tyrosinase活性を阻害しメラニン生成に対し抑制作用を有する成分が含まれていることが報告されている。LE中には多種のフラボノイドが含まれるが, このうちLE中に約10%含まれるglabridinにtyrosinase抑制活性が強いことを著者らはすでに報告した。今回, glabridinを50%含むLEを含有するクリームを用い, 多施設二重盲検比較試験により肝斑患者の臨床効果を検討した。対象は30例で, 0.2%LE配合クリーム(治験クリーム)とクリーム基剤(対照クリーム)をハーフサイド法により両側対称性の肝斑に塗布させ12週以上観察した。主治医の肉眼判定における有効性は, 治験クリームが統計学的に有意(p<0.05)に優れていた。また色差計を用い治療開始前と終了後に病変部皮膚のL*値(明るさ)を測定した結果, 対応あるt検定で治験クリームのみL*値の有意(p<0.05)な上昇を認めた。肝斑を対象に, 色差計を用いた二重盲検試験で有意差をみた外用剤の報告はレチノイド(tretinoin)のみで既存の美白剤には見当らない。副作用の発症頻度は両クリーム間に有意の差はみられなかったが, 治験クリーム側1例にglabridinによるアレルギー性接触皮膚炎を生じた。以上, 実験系のみならず臨床試験においてもメラニン生成抑制作用を有することが確認されたLEは肝斑の治療に有用であると考えた。
  • 田尻 雅夫, 武藤 正彦, 中野 純二, 倉田 佳子, 林 弘子, 沖村 博史, 麻上 千鳥, 麻上 義文
    1995 年 57 巻 3 号 p. 609-612
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    皮膚科外来患者の帯状疱疹15例を対象とし, アラセナ-A軟膏単独または他の抗ウイルス剤併用療法における臨床効果と安全性について検討を行った。1)評価対象症例15例に対する皮疹の改善率93.3%, 全般改善度86.6%であった。2)評価対象症例15例中に副作用は認められなかった。3)評価対象症例15例に対する有用率は80%であった。
  • 松本 忠彦, 石崎 宏, 笠井 達也, 西本 勝太郎, 小川 秀興
    1995 年 57 巻 3 号 p. 613-621
    発行日: 1995/06/01
    公開日: 2011/07/20
    ジャーナル フリー
    角質増殖型足白癬に対して, 塩酸ブテナフィンクリーム(ボレー®クリーム)と20%尿素軟膏との併用療法を試みた。本試験では併用効果をより客観的に評価するため投与期間を4週間に限定して行った。その結果60.0%の有効率を得, 短い投与期間を考慮すればほぼ満足のいくものと思われた。副作用と思われる症例は82例中2例(2.4%)にみられ, いずれも局所の皮膚症状であった。塩酸ブテナフィンクリームと20%尿素軟膏による併用は抗真菌剤内服の長期投与不能な難治性の角質増殖型足白癬に対し有効な治療法と考えられた。
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