西日本皮膚科
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68 巻, 6 号
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図説
綜説
症例
  • —悪性腫瘍を合併した自験11例の臨床解析—
    市原 麻子, 青井 淳, 若杉 正司, 影下 登志郎, 尹 浩信, 小野 友道, 木村 公一
    2006 年 68 巻 6 号 p. 618-622
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 57歳,男性。両下腿の点状紫斑と関節痛を主訴に来院。胸部レントゲン,胸部・腹部・骨盤部CTで肺・肝・大動脈周囲リンパ節等に転移性腫瘍病変が認められた。精査の結果,原発巣として肝細胞癌が示唆された。症例2: 63歳,男性。両下腿の点状紫斑を主訴に当科受診。汎血球減少が認められ,骨髄穿刺の結果,骨髄異形成症候群と診断された。2例ともアナフィラクトイド紫斑(AP)が契機となって悪性腫瘍が発見された。成人発症のAPは感染症や薬剤などに加えて悪性腫瘍の検索が重要であると考えた。
  • 上田 暢彦, 佐藤 貴浩, 横関 博雄
    2006 年 68 巻 6 号 p. 623-625
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    76歳,女性。慢性関節リウマチにて3年前よりメソトレキセート,プレドニゾロンによる治療中であったが,初診の4日前より痒みを伴う小水疱が体幹四肢に出現し,徐々に増数した。初診時,周囲に紅斑を伴う緊満性の小水疱が散在し,一部に膿疱も混在していた。血液検査所見上,炎症反応の高値とmonoclonal IgA gammopathyを認め,生検組織では表皮下の水疱形成と真皮上層の密な好中球浸潤がみられた。水疱内には好中球を認めた。Bullous rheumatoid neutrophilic dermatosisと診断した。DDS150mg/日にて治癒した。
  • 五月女 聡浩, 濱崎 洋一郎, 北村 洋平, 川村 由美, 彭 志中, 籏持 淳, 山崎 雙次
    2006 年 68 巻 6 号 p. 626-629
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    70歳,女。2003年8月より手指に,12月より両II・III趾にチアノーゼがみられ,下腿にびらん,網状皮斑が出現した。プロスタグランディン製剤の点滴静注,高圧酸素療法などで皮膚潰瘍は上皮化した。しかし同年10月より両下腿に爪甲大までの皮膚潰瘍が多発したため精査したところ,抗SS-A抗体陽性,シルマー試験およびガム試験陽性,唾液腺シンチで唾液の分泌低下を認めたためシェーグレン症候群と診断した。下腿からの皮膚生検は真皮下層の血管の閉塞,血管周囲に少数のリンパ球,形質細胞からなる細胞浸潤を示し,シェーグレン症候群に伴う血管病変と考えた。皮膚潰瘍は末梢循環改善剤内服と局所処置で軽快した。下腿潰瘍を契機に診断されたシェーグレン症候群の報告は比較的稀であるが,難治性下腿潰瘍の原因精査において,シェーグレン症候群も念頭に置くべきであると考える。
  • 品川 はる美, 太田 幸則, 岩下 賢一, 梅澤 慶紀, 松山 孝, 小澤 明, 平林 香
    2006 年 68 巻 6 号 p. 630-632
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    57歳, 女性。関節リウマチにてプレドニゾロン5mg内服中。初診の約1ヵ月前から右肘部に径3~8mmの透光性のある半球状に隆起する小結節が多数集簇し,一部では融合してみられた。ムチン沈着症,汗腺系腫瘍などを考え皮膚生検を施行した。組織学的には表皮直下に紡錘形の細胞を混じた粘液様物質を限局性に認めた。同部はアルシアンブルー染色陽性,トルイジンブルー染色で異染性を示した。以上より本症例を限局性の皮膚ムチン沈着症cutaneous focal mucinosis(CFM)と診断した。甲状腺機能異常などを含め全身性疾患はみられなかった。CFMは特定の疾患と合併することは少ないといわれているがCFの本邦報告53例をまとめ,合併症の有無,鑑別疾患などについて若干の文献的考察を加えた。
  • 河原 亜紀子, 尾野 大洋, 河原 和俊, 伊藤 正俊, 吉田 正己
    2006 年 68 巻 6 号 p. 633-635
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    33歳,男性。ガラスの艶消し作業中,右手拇指球が65%フッ化水素酸に触れた。帰宅後に右手を30分間水洗したが疼痛が続いた。来院後直ちにグルコン酸カルシウム5mlを病変部周辺に局所注射した。受診時の心電図にてQT延長が認められ心室細動の誘発を危惧したため,ICUに緊急入院して2%塩化カルシウムの静注と全身管理を行った。その後は他の循環器症状や呼吸器症状等は出現せず,6日後に右手の局所症状も消退した。化学熱傷では使用している化学薬品の種類を知り,それに対する迅速な治療が予後に重要であることを痛感した。
  • 一宮 弘子, 石川 一志, 大谷 裕一郎, 甲斐 宜貴, 波多野 豊, 片桐 一元, 藤原 作平, 横山 繁生
    2006 年 68 巻 6 号 p. 636-639
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    66歳,女性。初診の約半年前より左手掌に丘疹と紅色皮疹が出現した。近医皮膚科を受診し扁平疣贅と診断された。外用・内服による治療を受け一時軽快したのち再び出現してきたため,当科を紹介されて受診した。初診時,顔面,頭部,腰部中央部を除く全身に半米粒大の孤立性丘疹が密に集簇していた。手掌,指腹では,有痛性の大豆大の丘疹が融合し一部では環状の局面を形成していた。手掌の環状局面の病理組織像と,同部からのサザンブロット解析にてHTLV-1のクローナルなDNAバンドが検出されたことより,成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL)の特異疹として環状肉芽腫(GA)が生じたと考えた。経過中,肺浸潤影の増強を繰り返し,THP-COP療法(THP45mg×1日,CPA750mg×1日,VCR1.5mg×1日,PSL45mg×5日)により著明に改善した。肺病変の悪化時には手指のGA様の皮疹や全身の皮疹は明らかに改善していた。ATLとGAとの関連について文献的考察を行った。
  • 渡邉 理枝, 内田 隆夫, 秋山 正基, 末木 博彦, 飯島 正文, 門松 香一
    2006 年 68 巻 6 号 p. 640-643
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    37歳,男。17年間の喫煙歴がある。15年前上口唇に小結節が出現した。放置していたところ,2年前より徐々に増大したため近医を受診した。有棘細胞癌の疑いで生検を施行され,組織学的にmucoepidermoid carcinomaが疑われたため当科を紹介された。上口唇中央に径16mmの境界明瞭な扁平隆起性結節がみられ,中央部はびらんし黄色痂皮を付着,骨様硬に触知した。組織学的には,粘膜固有層から筋層に腫瘍塊が存在し,充実性腫瘍細胞巣および大小種々の腺腔様構造が散在していた。腫瘍細胞は,好酸性の胞体を持つ上皮細胞様細胞,偏在した核と明るい胞体を有する粘液産生細胞,その中間型細胞で構成されていた。腺腔様構造の内腔には好酸性に淡染する無構造物質を有するものもみられた。上皮細胞様細胞の一部に核異型や核分裂像が認められた。粘液産生細胞と腺腔内容物はアルシャンブルー染色で陽性,PAS染色陽性,ジアスターゼ抵抗性であった。以上より本症と診断し,腫瘍辺縁より15mm離して拡大切除し,下口唇からのAbbe皮弁術を施行した。術後2年経過しているが再発・転移はない。
  • 武下 泰三, 權藤 寿喜, 辻 学, 古江 増隆
    2006 年 68 巻 6 号 p. 644-647
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    肛囲溶連菌性皮膚炎の3例を経験した。症例1は2歳3ヵ月女児,肛囲の紅斑,びらんを認め,びらん面より擦過試料の細菌培養を行いA群β溶連菌を検出した。症例2は6ヵ月男児,肛囲,頚部に紅斑,びらん,落屑を認め,肛囲,頚部のびらん面より擦過試料の細菌培養を行いいずれもA群β溶連菌を検出した。治療は症例1,2ともアモキシシリン(AMPC)内服にて治癒した。症例3は36歳男,肛囲に紅斑,びらん,落屑を認め,びらん面より擦過試料の細菌培養を行いA群およびG群β溶連菌を検出した。アジスロマイシン(ジスロマック®)の内服投与にて治癒した。
  • —某高校ラグビー部の集団検診も含めて—
    篠田 英和, 関山 華子
    2006 年 68 巻 6 号 p. 648-651
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    17歳,男子(発端者,ラグビー部)。左上腕内側に1.7×1.0cmの,鱗屑を伴う辺縁隆起性環状紅斑を認め,培養にてTrichophyton tonsurans(T. tonsurans)を分離した。発端者の所属するラグビー部(発端者を除く39名)の検診を行なった。頭部白癬はみられず,体部白癬2名(顔面,左頚部),頭皮のhairbrush(HB)法陽性者1名であった。体部白癬のうち1人は中学生時柔道部に所属し高校入学時ラグビー部にスカウトされた。その患者のHB法では全スパイクからT. tonsuransのコロニーが検出され,彼が感染源となり,他の部員に感染したと考えられた。ラグビー部員のT. tonsurans感染症は今まで報告がなく自験例が第一報である。ラグビーはラック,モール,スクラム,タックルなど身体を密着させるプレーがみられるため,今後T. tonsurans感染症の集団発生の可能性があり柔道やレスリングと同様注目すべきスポーツである。
  • 前田 学, 望月 隆
    2006 年 68 巻 6 号 p. 652-655
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    54歳の女性。2年前より右I趾の爪甲中央部に点状から線状の色素沈着を伴う局面を形成したが,自覚症状がないため放置していた。その後,局面は円形となり,爪甲端がもろく粗造になったため2002年11月より近医で加療し,12月に皮膚生検を受け,病理組織検査で悪性黒色腫を否定された。病変部は不変のため,2003年1月に当科を初診した。初診時,爪甲中央部に大豆大の色素沈着部を認めた。グロームス腫瘍や黒色腫を疑い,病巣中央部より径2.5mmパンチで皮膚生検を施行した結果,爪甲下にPAS陽性の菌塊が多数見られた。サブロー培地で培養したところ,白色綿状菌集落を得,スライド・カルチャー像及びribosomal DNAのITS領域の塩基配列がFusarium oxysporumと99.6%の相同性を認めたことより,本症をFusarium oxysporumによる爪真菌症と診断した。経過観察している内に病変部は自然軽快し,現在再発をみない。
講座
治療
  • 町野 博, 橋本 公二
    2006 年 68 巻 6 号 p. 671-676
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    成人アトピー性皮膚炎患者104例を対象に,0.1%タクロリムス軟膏による躯幹,上肢,下肢の皮疹およびそう痒改善効果をスコア評価にて24週間検討した。急性病変の紅斑および丘疹は治療開始2週後には有意に改善し,その後も観察終了時までさらに改善が認められた。そう痒も2週後には有意に改善し,その後もさらに改善が認められた。慢性病変の痒疹結節および苔癬化の改善は緩やかであり時間は要するものの,24週後には有意な改善を示した。塗布時の刺激感は全期間を通して20%以下であり,有害事象により塗布を中止した症例は3例(皮膚感染症2例,刺激感1例)であった。以上より,タクロリムス軟膏は躯幹・四肢のアトピー性皮膚炎を長期にわたり,安全かつ有効にコントロールできる薬剤であることが示唆された。
  • 町野 博, 橋本 公二
    2006 年 68 巻 6 号 p. 677-682
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    頚部に色素沈着病変を有する成人アトピー性皮膚炎患者54例を対象に,頚部病変に対して0.1%タクロリムス軟膏塗布治療を行い,その効果を10段階(1~10)の色調スコアにて評価した。治療に伴い経時的な改善が認められ,開始時平均5.4であったスコアは24週後3.9へ有意に減少した(p<0.001)。最終判定時の著効は8例(14.8%),有効は21例(38.9%)であった。重症例も24週後に有意な改善がみられた。タクロリムス軟膏による頚部色素沈着治療は長期の連用を必要とするものの,安全で経時的な改善効果を与えることが示唆された。
  • 田尻 真輔, 中山 樹一郎, 七隈ロラタジン研究会
    2006 年 68 巻 6 号 p. 683-690
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    乾皮症を含む皮脂欠乏性湿疹で保湿剤治療反応不良例に対して,鎮静作用の弱い第二世代抗ヒスタミン薬であるロラタジンを用いた臨床効果を検討した。保湿剤投与1週後の「日中のかゆみ」および「夜間のかゆみ」のvisual analogue scale(VAS)スコアが投与前に比べ,50%未満の改善群を保湿剤治療反応不良群としロラタジンを追加投与した。全対象66例中保湿剤治療反応不良群は38例で,さらに主治医の判断でステロイド外用剤が追加されたステロイド剤追加群8例と非追加群30例とに分けて止痒効果をVASスコアにより検討した。ステロイド剤非追加群30例の「日中のかゆみ」のVASスコアはロラタジン追加前の35.6±25.8(mean±SD)から投与1,2,3,7週後の17.2±18.1,15.7±20.1,13.7±17.8,12.5±16.5へと有意に低下し,「夜間のかゆみ」のVASスコアもロラタジン追加前の45.0±24.2から24.3±18.3,20.7±21.7,19.2±19.7,15.1±16.3と有意に低下した。同様にステロイド剤追加群8例の「日中のかゆみ」および「夜間のかゆみ」のVASスコアも経時的に低下し投与1週後の日中を除きその低下は有意であった。更にロラタジンの臨床効果を外用ステロイド剤非追加群30例で検討したところ,有効以上が80%(24例)であった。一方,副作用として,2例(5.3%)に軽微な眠気がみられた。ロラタジンは,鎮静作用が少なく,確実な止痒効果を有することから乾皮症を含む皮脂欠乏性湿疹の薬物療法として有用であることが示唆された。
  • 力久 直昭
    2006 年 68 巻 6 号 p. 691-695
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/15
    ジャーナル 認証あり
    静脈瘤の手術後に再発した左下腿の静脈性潰瘍およびうっ滞性皮膚炎の治療に,ハイドロゲル型創傷被覆材(NMD-101)(ビューゲル®)を用いた。NMD-101は潰瘍と皮膚炎の疼痛の緩和・壊死組織の自己融解の促進・再生上皮の温存に優れ,潰瘍の治癒促進に有効であった。
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