西日本皮膚科
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78 巻, 5 号
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目次
図説
綜説
  • 濱口 儒人
    2016 年 78 巻 5 号 p. 463-467
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    皮膚筋炎 (dermatomyositis:DM) と多発性筋炎 (polymyositis:PM) は自己免疫性の炎症性筋疾患に位置付けられている。DM は筋のみならず皮膚にも病変を有し,合併症として間質性肺炎と悪性腫瘍が知られている。DM における臨床症状は多彩であるが,悪性腫瘍合併例では間質性肺炎の合併は少ないこと,急速進行型間質性肺炎合併例では筋症状に乏しいことなど,いくつかのサブグループに分類されることが以前から知られていた。これまではこのようなサブグループ分類は臨床症状に基づいていたが,近年,複数の筋炎特異的自己抗体 (myositis-specific autoantibody:MSA) が同定されたことで,MSA に基づく分類が一般的になってきた。代表的な MSA として,抗 Mi-2 抗体,抗 TIF1 抗体,抗 MDA5 抗体,抗 ARS 抗体,抗 NXP-2 抗体,抗 SAE 抗体,抗 SRP 抗体がある。以前は抗 Jo-1 抗体のみが enzyme-linked im munosorbent assay (ELISA) 法あるいは二重免疫拡散法で同定でき,他の MSA の同定には手技が煩雑な免疫沈降法を必要とした。しかし,最近,抗 ARS 抗体,抗 TIF1 抗体,抗 MDA5 抗体,抗 Mi-2 抗体のELISA 検査試薬が開発され,DM/PM の診断に大きく寄与することが期待される。DM は皮疹が初発症状となり皮膚科を初診する機会が多いため,DM について理解を深めることが必要である。

  • 中原 剛士, 森本 宏, 村上 尚史, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 5 号 p. 468-473
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    タクロリムス軟膏がアトピー性皮膚炎に対して臨床使用されてからすでに 15 年が経過し,その有効性と安全性は国内外の多くの短期および長期投与試験によって明らかにされてきた。ステロイドの長期外用による皮膚萎縮などの副作用がタクロリムス軟膏には認められないことから,タクロリムス軟膏は外用ステロイドの薬効と副作用を補完しうる薬剤として位置づけられている。アトピー性皮膚炎の病態解明は不十分であるが,遺伝的,生理学的,免疫学的あるいは新規薬剤による治療的知見が集積され,多くの科学的進展が得られつつある。病態解明の進展とともに,当初 T 細胞活性化を抑制する免疫抑制薬としての位置づけで臨床応用されたタクロリムスは,アトピー性皮膚炎発症病態の様々な側面を制御しうる薬物である可能性が指摘されるようになった。本稿では,タクロリムスによる痒み抑制,アレルギー性炎症抑制および皮膚バリア機能改善などの最近の知見を総括し,タクロリムス軟膏によるアトピー性皮膚炎治療の新たな可能性に言及した。

症例
  • 垣生 美奈子, 藤山 幹子, 村上 正基, 佐山 浩二
    2016 年 78 巻 5 号 p. 475-478
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    3 歳,女児。9 カ月前に背部に 1∼2 cm の紅斑が出現し,1 カ月後には四肢や体幹に拡大した。初診時,全身に淡紅斑,淡赤褐色斑が散在しており,斑内には点状出血が混在していた。病理組織所見と合わせ,Schamberg 病と診断した。成人の Schamberg 病と異なり,乳幼児の症例では皮疹の分布が下肢のみでなく,上肢や体幹など広範囲にわたる例がしばしばみられる。乳幼児の報告例は極めて少ないが,皮疹の非特異的な分布と,年齢的に生検が行い難いことから,診断がついていない症例が潜在している可能性がある。乳幼児の慢性に経過する皮疹として点状出血を混じる赤褐色斑を認めた場合,その分布に関わらず Schamberg 病は鑑別疾患となる。

  • 小林 紘子, 平郡 隆明 , 鼻岡 佳子, 安村 純子, 西小森 隆太, 平家 俊男 , 秀 道広
    2016 年 78 巻 5 号 p. 479-482
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    6 カ月,男児。出生翌日より,全身に瘙痒の明らかでない紅斑と膨疹が毎日出没するようになった。近医小児科を受診し,抗ヒスタミン薬を内服したが効果がなく,当院を紹介され受診した。血液検査では末梢血白血球の増加(29570/mm3),炎症マーカーの上昇(CRP 4.65 mg/dl,SAA 106.2 μg/ml)を認めた。 また,皮膚生検にて真皮の浮腫と血管周囲の好中球浸潤を認めた。以上より,クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)を疑い遺伝子検査を施行したところ,NLRP3 遺伝子に p. Ile598Phe ヘテロ変異を認め,診断を確定した。カナキヌマブ(ヒト化抗ヒト IL-1β モノクローナル抗体)投与にて症状は速やかに軽快し,血液検査異常も改善した。生後すぐに生じ,かつ持続的に出没する蕁麻疹様皮疹を認めた場合,本疾患を疑うことが重要で,遺伝子検査を行うことにより早期診断・治療が可能となり,予後の改善が期待できる。

  • 朝長 絵理子, 井上 卓也, 高瀬 佳奈子, 永瀬 浩太郎, 石井 文人, 橋本 隆, 成澤 寛
    2016 年 78 巻 5 号 p. 483-486
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    58 歳,女性。主訴は四肢・体幹・口腔内の水疱。初診から 10 日後に腋窩などの間擦部に水疱形成があり,精査加療のため当院を紹介され受診した。病理組織学的に表皮下水疱を認め,蛍光抗体直接法では C3,IgG が表皮基底膜部に線状に沈着していた。1M 食塩水剝離皮膚蛍光抗体間接法で IgG が真皮側に沈着し,正常ヒト真皮抽出液による免疫ブロット法では 290 kDa のⅦ型コラーゲンと反応したため,後天性表皮水疱症と診断した。プレドニゾロン(PSL)1 mg/kg/day(60 mg)投与にて病勢は落ち着いたが,40 mg/day に減量した時点で水疱の新生を認めた。ステロイドとの併用で有効性が報告されているコルヒチン 1.5 mg/day 内服を開始し,その後は順調に PSL を減量することができた。ステロイド抵抗性があり,治療に難渋する症例ではコルヒチンの併用が有用と考えた。

  • 江藤 綾桂, 中村 美沙, 伊藤 さおり, 田中 摩弥, 市川 美樹, 森岡 友佳, 辻 学, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 5 号 p. 487-490
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    Deep dissecting hematoma を形成した 6 例を経験した。患者は全て女性であり,四肢の皮膚は dermatoporosis の特徴的所見を呈していた。患者の平均年齢は 81.8 歳であったが,ステロイド内服中の 2 例においては他患者と比較し若年であった。抗凝固薬は 3 例で内服しており,血腫は全例が打撲を起こしやすい下腿後面に形成されていた。Deep dissecting hematoma は発赤や熱感など感染を疑う兆候を伴い蜂窩織炎と診断されることも多く,自験例も全例で発赤や熱感を伴っていた。1 例で外科的処置を必要とし,2 例で持続陰圧閉鎖療法を施行し治癒までに 1∼5 カ月の長期間を要した。Deep dissecting hematoma の形成を防ぐために,dermatoporosis の存在を念頭におき,四肢の被覆など外傷予防を行うことが重要である。

  • 小林 真二, 中原 真希子, 内 博史, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 5 号 p. 491-493
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    16 歳,男性。初診の 1 カ月前から体幹にびまん性に多発する青灰色斑が出現し,自覚症状を伴わないため放置していたが,徐々に拡大・増数したため当院を受診した。青灰色のびまん性色素斑が躯幹に散在性にみられ,臨床検査所見では異常はなかった。病理組織学的に組織学的色素失調がみられ,臨床所見,検査所見から ashy dermatosis と診断した。治療としては,アスコルビン酸とトラネキサム酸を内服したが,初診から 4 カ月時点で色素斑に特に変化はみられていない。Ashy dermatosis には確立した治療法はないが,発症原因が特定できた報告例では,原因対策で皮疹は改善している。Ashy dermatosis と診断した際は詳細な問診が必要であると考えた。

  • 苅谷 嘉之, 山城 充士, 山口 さやか, 粟澤 剛, 眞鳥 繁隆, 高橋 健造, 上里 博
    2016 年 78 巻 5 号 p. 494-499
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    57 歳,男性。約 5 年前から左下顎部に自覚症状を欠く小結節に気づいた。結節は 1∼2 年前より出血・排膿を伴って増大・縮小を繰り返すようになった。近医で外用・内服薬による治療を受けたが改善しないため,2014 年 8 月中旬に当科を受診した。初診時,左下顎部に 10 mm 程の淡紅色調を呈する半球状・弾性軟の小結節を認めた。単純切除をしたところ,病理組織学的には真皮内母斑の深部に類円形の骨組織を 1 個認めた。以上の所見より,骨形成を伴う真皮内母斑,いわゆる Nanta 骨性母斑と診断した。本邦報告例を集計したので,その結果を加えて報告した。

  • 大津 正和, 永瀬 浩太郎, 久富 万智子, 古場 慎一, 成澤 寛
    2016 年 78 巻 5 号 p. 500-503
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    30 歳,女性。3 カ月前より自覚した右拇指の爪甲変形にて受診した。MRI にて右拇指の爪甲部に 8.7 × 6.2×4.5 mm の結節を認め,局所麻酔下に切除を行った。結節は比較的容易に周囲組織から剝離でき,爪母を温存して摘出することが可能であった。病理組織学的には,真皮から皮下組織にかけて,表皮との連続性がなく被膜を有さない比較的境界明瞭な結節性病変を認め,同部位は粘液様間質と,間質内に不規則かつ束状に増生する紡錘形もしくは星芒状の線維芽細胞様細胞により構成されていた。 免疫組織化学染色では腫瘍細胞は vimentin と CD34 に陽性所見を示した。以上より自験例を superficial acral fibromyxoma と診断した。術後経過は良好で爪甲の再生を認め,術後の爪甲変形を最小限に抑えることができた。

  • 堤 碧, 伊東 孝通, 河原 紗穂, 安河内 由美, 内 博史, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 5 号 p. 504-506
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は 40 歳,女性。33 歳時に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE),Sjögren 症候群と診断され,ステロイドの内服を開始された。35 歳時に免疫抑制剤が追加され,その約 1 カ月後に胸部に自覚症状のない淡紅色結節が出現し,体幹,四肢に多発したため,精査目的に当科を受診した。病理組織学的所見より,胸部の結節は皮膚線維腫と診断した。多発性皮膚線維腫では,自己免疫疾患や免疫異常を伴っている報告が多いが,SLE と Sjögren 症候群との合併例は稀である。

  • 正木 (立松)沙織, 柴山 慶継, 中浦 淳, 立川 量子, 古賀 佳織, 高橋 聡, 今福 信一
    2016 年 78 巻 5 号 p. 507-511
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は 39 歳の女性。1992 年から全身性エリテマトーデス(SLE),ループス腎炎に対し免疫抑制療法を開始され,下肢の浮腫や腎炎の症状は安定していた。2001 年から顔面,四肢に褐色の小結節が 4 カ所出現し,生検で富細胞性皮膚線維腫と診断された。2008 年に右鼻唇溝に皮下結節が出現し次第に増大した。 切除標本は,病理組織学的に,内部に壊死を有する腫瘍巣が脂肪層から筋層にかけて認められ,腫瘍は主に線維芽細胞様の紡錘形細胞で構成され,不規則に増殖し,核分裂像,核異型も認められた。鑑別診断に nodular fasciitis,atypical fibrous histiocytoma (AFH),low-grade myofibroblastic sarcoma などを挙げ,追加切除を行った。術後 5 年が経過するが,再発や遠隔転移はみられていない。また,術後に右手背と左前腕に皮膚線維腫の新生を認めた。多発する皮膚線維腫は SLE 患者に合併が多いとされるが,発症の原因,機序は不明である。自験例も多発皮膚線維腫を有する SLE 患者であり,術後 5 年経っても再発がみられていないことから,悪性ではないと考えた。以前より AFH は皮膚線維腫の亜型として認識されているが,調べ得た限りでは多発皮膚線維腫の一部に AFH の病理像がみられた報告は無く,貴重な症例と考えた。

  • 大津 正和, 永瀬 浩太郎, 木村 裕美, 白井 礼子, 古場 慎 一, 井上 卓也, 成澤 寛
    2016 年 78 巻 5 号 p. 512-515
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は 75 歳,男性。初診の 1 年前に左第 3 指背側に米粒大の紅色結節を自覚した。結節は徐々に増大し,4×3.5×2 cm の広基性の紅色腫瘤となり,当院を受診した。また,初診時には左腋窩に皮下硬結を触れ,リンパ節転移が疑われた。病理組織学的に手指の病変は真皮内に結節性病変があり,腫瘍細胞はシート状に増殖し,一部表皮との連続性もみられた。腫瘍細胞は好塩基性の基底細胞に類似した細胞が主体で,内部に淡明な泡沫状胞体を持つ細胞も認めた。腫瘍細胞の核は不整型で,クロマチン増生を伴い,多数の核分裂も認めた。免疫染色は AE1/AE3,EMA がともに陽性所見を示し,Adipophilin 染色でも部分的に陽性であった。脂腺癌と診断し,1 cm マージンでの腫瘍切除および左腋窩のリンパ節郭清を行い,level Ⅰのリンパ節に転移を認めた。手指に生じた脂腺癌はきわめて稀であり,文献的考察を含め報告する。

  • 澤田 文久, 牧野 英一, 山本 剛伸, 田中 了, 藤原 愉高, 藤本 亘
    2016 年 78 巻 5 号 p. 516-521
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor : MPNST)の多くは神経線維腫症 1 型(NF1)患者の結合織深部で神経の神経線維腫(plexiform neurofibroma)から発生する。真皮から皮下組織の末梢神経および神経線維腫を起源とするものは皮膚悪性末梢神経鞘腫瘍(cutaneous malignant peripheral nerve sheath tumor : cutaneous MPNST)と称される。その多くは NF1 非合併例に生じるが,本症例のように,孤立性神経線維腫に続発したという報告は稀である。NF1 を伴わない 65 歳の女性で,初診の 7 年前に孤立性神経線維腫と診断され切除されていた右前胸部の腫瘤の切除部位に生じたcutaneous MPNST の症例を報告する。初診時,右前胸部に淡褐色で,なだらかに隆起し,一部は赤みを帯びてやや陥凹する直径約 5 cm の弾性硬の腫瘤を認めた。全摘出標本の組織像は異型性の強い紡錘形細胞が真皮から皮下にかけて不規則に交錯して稠密に増殖し,同部における切除した筋膜断端には腫瘍細胞の浸潤が認められた。手術から 1 年 5 カ月後,切除部に皮下結節が生じ,再切除した 4.5×3 cm の病変は組織学的には異型性,細胞密度ともに低い紡錘形細胞が増殖し,MIB-1 index は 5%であった。高率な遠隔転移ゆえに MPNST の生命予後は一般に不良であるのに対し cutaneous MPNST は早期発見と完全な切除で予後は悪いばかりではない。予後良好の因子としては,病変が頭頚部以外で,腫瘍径が 5 cm 以下であり,切除断端において腫瘍が陰性であることが挙げられる。

  • 園崎 哲, 大久保 優子, 大嶺 卓也, 宮城 拓也, 苅谷 嘉之, 山本 雄一, 高橋 健造, 上里 博
    2016 年 78 巻 5 号 p. 522-527
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2017/02/10
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 は 58 歳,女性。症例 2 は 68 歳,男性。症例 3 は 56 歳,男性。各患者ともヘビ,カエル,ニワトリ,イノシシなどの生食はないという。3 症例中,1 例はマンソン弧虫症に典型的な皮下腫瘤であったが,症例 1,3 の皮疹は線状ないし帯状に配列する丘疹,紅斑の皮膚爬行疹を呈した。いずれの症例も病理組織学的に皮内にコッサ染色陽性の同心円状物質,いわゆる石灰小体をもつ虫体が確認された。血清のmultiple-dot ELISA 法ではマンソン弧虫に対する抗体が陽性であった。また,3 症例とも,PCR と direct sequencing 法にてマンソン裂頭条虫(Spirometra erinaceieuropaei)によるマンソン弧虫症と診断した。各症例とも治療と診断を兼ねて全切除した。

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