西日本皮膚科
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75 巻, 6 号
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図説
症例
  • 河原 紗穂, 三雲 亜矢子, 豊田 美都, 中原 真希子, 菊池 智子, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 6 号 p. 491-495
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    34 歳,女性。元来,アトピー性皮膚炎のため近医で加療されていた。不明熱,視野欠損,両手掌,足底に紫斑,血疱を認め,当科を受診した。足底の血疱穿刺液および血液培養にて Methicillin-sensitive Staphylococcus aureus (MSSA)を検出し,経胸壁超音波検査では僧房弁に疣贅と思われる所見と僧帽弁逆流を認め,感染性心内膜炎と診断した。弁破壊に伴う僧帽弁逆流と疣贅による脳梗塞などを含めた遠隔病巣があることから,手術目的に転院し,僧房弁置換術が施行された。アトピー性皮膚炎に感染性心内膜炎を併発した報告例は本邦では約 10 例認めるのみである。そのアトピー性皮膚炎患者の多くは重症型で,ほとんどの症例で起炎菌として黄色ブドウ球菌が検出されていることから,感染経路としてはバリア機能の低下した皮膚から細菌が侵入したと考えられている。黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎は,疣贅による弁破壊や全身諸臓器に転移性病巣を作りやすいといわれており,致死的となることが多い。このような重篤な合併症を予防するためにも,アトピー性皮膚炎に対して適切な治療を行い,皮膚におけるバリア機能を保つことが,重要と思われる。
  • 松木 真吾, 千貫 祐子, 新原 寛之, 森田 栄伸
    2013 年 75 巻 6 号 p. 496-498
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    64 歳,男性。春季の花粉症の既往あり。豆乳摂取 30 分後に眼のかゆみ,咳嗽,鼻閉,蕁麻疹,気道閉塞感を自覚し,当科を受診した。アナフィラキシーと診断し入院加療を行った。CAP-FEIA 法による血清中大豆特異的 IgE は陰性であったが,Gly m4 特異的 IgE およびハンノキ特異的 IgE は陽性であった。プリックテストでは大豆,豆乳が陽性であり,豆乳アレルギーと診断した。患者が実際に摂取した豆乳を用いて好塩基球活性化試験 (CD203c 発現測定) を行ったところ,豆乳添加によって患者好塩基球 CD203c の発現増強が認められた。本症例はハンノキ花粉抗原に感作され,交差反応する大豆 Gly m4 (大豆の Bet v 1 ホモログ) によって発症した豆乳アレルギーと考えた。また,好塩基球活性化試験 (CD203c 発現測定) は豆乳アレルギーの検査としても有用である。
  • 白井 礼子, 三砂 範幸, 井上 卓也, 成澤 寛
    2013 年 75 巻 6 号 p. 499-503
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    85 歳,女性。両側下腿に色素沈着を伴った比較的広範な板状の皮下硬結が出現した。その約半年後,肺結核と診断された。抗結核薬投与で肺結核は改善したものの,下腿の板状硬結に変化はなく,次第に潰瘍を伴ってきた。皮膚病変の病理組織像 (真皮から皮下脂肪織にかけての類上皮細胞肉芽腫,および真皮の血管壁内の類上皮細胞肉芽腫),両側肺門部リンパ節腫脹,ぶどう膜炎,および血清 ACE 活性高値から,サルコイドーシスと診断された。潰瘍を伴った板状硬結は,皮膚サルコイド (潰瘍型) とバザン硬結性紅斑の鑑別を要したが,臨床経過および病理組織像から前者と診断した。下腿潰瘍に対してプレドニゾロン 0.5 mg/kg/day 内服を開始し,約 2 カ月半で上皮化した。サルコイドーシスで潰瘍を呈するものは稀であり,さらに肉芽腫性血管炎を伴った潰瘍型皮膚サルコイドは非常に稀である。本症例は潰瘍化の原因として肉芽腫性血管炎の関与が考えられた興味深い症例であった。
  • 堤 玲子, 足立 孝司, 吉田 雄一, 山元 修
    2013 年 75 巻 6 号 p. 504-507
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    37 歳,女性。生後 3 カ月より膿疱性乾癬を発症し,以後ステロイド外用薬やシクロスポリン A(CyA) 内服による治療を受けていた。上気道感染や抗生剤内服後に皮疹が悪化することがしばしばあった。第 2 子出産後,皮疹と全身状態が著明に悪化した。CyA を 250 mg/day に増量した上,プレドニゾロン (PSL) 内服を 20 mg/day から開始し 50 mg/day まで増量したが治療抵抗性であり,インフリキシマブによる治療に変更した。治療後 6 日目までに劇的に症状は改善した。膿疱性乾癬が出産後に著明に悪化した例は,われわれの検索した限りでは本邦では報告が見当たらなかった。妊婦・授乳婦に対する CyA や生物製剤の使用に関しては,ガイドライン上,重症例では選択肢の 1 つに挙げられているが,その危険性と効果とのバランスを考え,慎重に判断する必要があると思われる。
  • 浅井 幸, 小池 雄太, 富村 沙織, 竹中 基, 宇谷 厚志
    2013 年 75 巻 6 号 p. 508-510
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    83 歳,男性。小児期より露光部の色素沈着を自覚していた。64 歳時に長崎大学病院皮膚科を初診した。皮膚症状は軽症で,神経症状や眼症状はみられなかった。UVB による最少紅斑量 (minimal erythema dose ; MED) 低下,不定期 DNA 合成能低下を認め,細胞融合による XP 相補性テストにより XP-F 群と診断した。その後,露光部に有棘細胞癌 2 個,基底細胞癌 1 個,日光角化症 14 個の出現があり,適宜切除を行っている。本例では診断後,本人のできる範囲で遮光をするも皮膚腫瘍の発生は抑制できていない。このことから,皮膚腫瘍発生を抑えるにはより若年からの厳重な紫外線防御が重要であることが示唆された。現在まで,本例では定期的な経過観察により皮膚腫瘍の早期発見を行うことで対応している。
  • 内藤 玲子, 藤崎 亜紀, 徳丸 良太, 藤崎 伸太, 古賀 佳織, 木村 鉄宣, 中山 樹一郎
    2013 年 75 巻 6 号 p. 511-513
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
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    36 歳,男性。初診の 1 カ月前に腹部右側の腫瘤に気が付いた。初診時,腹部右側に長径 10 mm,表面平滑な弾性硬の皮下腫瘤を認めた。下床との可動性は乏しく,深部組織との固着が疑われた。治療と診断確定のため,初診から約 1 カ月後に皮下腫瘍摘出術を行った。腫瘍は皮下脂肪織に存在し,一部筋膜と癒着していた。病理組織学的所見は,正常軟骨細胞に類似した細胞により構成される境界明瞭な結節性病変であり,軟骨腫 (chondroma),発生部位より骨外軟骨腫 (extraskeletal chondroma) と診断した。骨外軟骨腫の中でも,体幹に発生した稀な症例を経験したので報告する。
  • 中村 友果, 一宮 誠, 根本 圭, 中村 好貴, 山口 道也, 山田 健介, 山本 滋, 岡 正朗, 武藤 正彦
    2013 年 75 巻 6 号 p. 514-517
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    44 歳,女性。約 10 年前より右乳房に腫瘤を自覚。その後徐々に増大し,表面に潰瘍形成を認めた。当科初診時には,最大径 24 cm ほどの巨大腫瘤となっており,表面に腫瘍が露出し多量の滲出液を伴っていた。造影 CT 上は腫瘍内に不規則な造影効果を認めたが,明らかな転移所見は認めなかった。生検にて葉状腫瘍が疑われ,右乳房腫瘍切除術および遊離分層植皮術を施行した。切除された腫瘤の重量は 3 kg であった。病理組織学的に,葉状腫瘍と診断した。乳腺葉状腫瘍は比較的稀な疾患であり,ときに急速な発育と巨大腫瘤化を認める。主に外科領域からの報告が多いが,皮膚の発赤・壊死・潰瘍形成などの症状を来した場合は初診時に皮膚科を受診することもある。本腫瘍の良性・悪性に関する生物学的性状については意見が分かれるところであり,腫瘍切除術後も再発に注意し慎重な経過観察が必要であると考える。
  • 大津 玉緒, 秋草 文四郎
    2013 年 75 巻 6 号 p. 518-522
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    63 歳,男性。2003 年に Wegener 肉芽腫症を発症,その後軽快したが,2012 年1 月に再燃し,シクロホスファミド大量静注療法とプレドニゾロンの増量にて加療され,症状改善に伴いプレドニゾロンが 27.5 mg/day に漸減されていた。2012 年 3 月上旬に肺炎となり,抗生剤点滴投与されたが,その治療開始から約 2 週間後に静脈留置針が固定されていた左前腕に疼痛を伴う複数の膿疱が出現し,約 2 日後に当科を初診した。皮膚常在菌感染症として抗生剤で加療するも難治であった。2012 年 8 月に左前腕の結節から皮膚生検を施行し,抗酸菌培養,DNA-DNA hybridization 法で Mycobacterium chelonae が同定された。レボフロキサシン 500 mg/day とクラリスロマイシン 400 mg/day を連日内服し内服開始 6 週間後に皮疹は改善し,約 5 カ月間加療を継続して再燃していない。膿疱を伴う Mycobacterium chelonae 皮膚感染症の症例報告は少ない。自験例において,初診時の膿疱が本症の皮膚症状であるとは証明できなかったが,初診時から生検時まで結節または疼痛といった症状が消失せず,初診時に膿疱を認めた箇所と生検を施行した結節の箇所はほぼ一致しており,初診時の膿疱も本症の皮膚症状であった可能性もあると考えた。
  • 根本 利恵子, 帖佐 宣昭, 緒方 克己, 瀬戸山 充
    2013 年 75 巻 6 号 p. 523-527
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    17 歳,男性。柔道部員に生じた Trichophyton tonsurans (以下 T. tonsurans) によるケルスス禿瘡の 1 例を経験した。頭部に毛.一致性の膿疱,紅色結節を伴う小脱毛斑が多発,強い痛みを伴っていた。容易に抜ける病毛の KOH 直接鏡検および真菌培養所見から T. tonsurans に起因するケルスス禿瘡と診断した。治療はイトラコナゾール 200 mg/日内服,病毛抜去などを行ったが内服治療終了後も皮下膿瘍の出没が続き難治性で,繰り返し切開ドレナージを追加し治療開始後約10 カ月で略治した。自験例より本菌によるケルスス禿瘡の治療には抗真菌剤内服療法は必須であるが,病毛を積極的に抜毛する方法の併用が有用であったと考えられた。
講座
治療
  • ―― 0.05%ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏単独と 50 μg/gカルシポトリオール軟膏併用療法の比較検討――
    中原 剛士, 竹内 聡, 国場 尚志, 里村 暁子, 三苫 千景, 師井 洋一, 古江 増隆
    2013 年 75 巻 6 号 p. 534-539
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬外用療法におけるステロイド外用薬の減量を目的として尋常性乾癬患者 16 例を対象に,ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏(アンテベート® 軟膏) 単独外用群 (単独群) と,ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏とカルシポトリオール軟膏 (ドボネックス® 軟膏) の手掌での等量混合による併用外用群 (併用群) の 2 群間での比較試験を実施し,皮膚所見,そう痒の臨床症状と共に,患者 QOL と薬剤使用量から,外用アドヒアランスを評価した。両群において皮膚所見,そう痒の臨床症状は,2 週後より有意に改善し,4 週後においても改善は継続したが,両群間に有意な差は認められなかった。患者 QOL は,併用群で試験前後において有意な改善が認められた。外用アドヒアランスの評価では,各薬剤処方量と試験開始時の罹患面積スコアとの間には有意な相関性が認められ,薬剤処方量から算出したベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏の薬剤使用率は,単独群で約 51 %,併用群で約 42%であった。PASI スコアの変化量あたりのベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏の使用量は,単独群で約 8 g,併用群で約 4 g と併用群では単独群に比べて低値を示した。以上より,両外用療法の外用アドヒアランスは約 50%と低いものの,同等の臨床効果を示し,併用療法では単独療法と比べてステロイド外用薬の減量の可能性が示唆された。
  • 西村 景子, 矢上 晶子, 佐野 晶代, 小林 束, 沼田 茂樹, 高橋 正幸, 三和 拓人, 佐々木 りか子, 福永 淳, 錦織 千佳子, ...
    2013 年 75 巻 6 号 p. 540-544
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/03/12
    ジャーナル 認証あり
    2010 年 11 月から 2011 年 5 月の間に藤田保健衛生大学病院,りかこ皮フ科クリニックおよび神戸大学医学部附属病院を受診したアトピー性皮膚炎,小児乾燥性皮膚炎,光線過敏症などの患者の中で口唇の乾燥を有する 50 例に対し,口唇の保湿と遮光を目的として「ノブ® リップケアクリーム UV」を 4 週間使用した。試験開始および終了時に口唇の皮膚所見を得るとともに角層水分量と経表皮水分蒸散量を測定し,さらに新しい皮膚生理機能の評価としてテープストリッピングにより採取した角層細胞の有核細胞数と TNF-α および TSLP を測定した。50 例中,3 例が被験者の嗜好などの自己都合にて使用を中止したため 47 例を評価対象とした。有害事象としては,1 例において口唇の軽度の鱗屑と皮膚表面の硬化感(ごわごわした感じ)を被験者自身が自覚したものの使用を継続した。皮膚所見においては,乾燥,鱗屑,亀裂,紅斑および縦皺において有意な改善を認めた。また従来の機器測定による角層水分量と経表皮水分蒸散量では有意な変化は認めなかったが,テープストリッピングにより得た角層細胞において,有核細胞数と TNF-α および TSLP の有意な減少を認めた。これらの結果から,試験に供した「ノブ® リップケアクリーム UV」は,口唇の乾燥した皮膚症状を改善することが明らかとなった。また口唇は口腔粘膜との移行部位であり凹凸や弾力性および呼吸などにより水分量や蒸散量の正確な計測の難しさがあった。テープストリッピングによる角層解析は採取が簡単で安定した結果を得ることができ,臨床症状の改善に合致した皮膚生理機能の客観的評価として有用と考えた。
世界の皮膚科学者
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