高速液体クロマトグラフィー(high pressure liquid chromatography, HPLC)を利用して, 晩発性皮膚ポルフィリン症(porphyria cutanea tarda, PCT)患者13例, 対照として肝疾患患者32例の尿中ポルフィリン体パターン分析をおこなつた。このカラムにZorbax SIL, 移動相にethyl acetate, n-hexane (55:45, V/V), ポルフィリン体標準サンプルとして, protoporphyrin IX dimethylester, coproporphyrin III tetramethylester, およびuroporphyrin esterを用いて, 各ポルフィリン体の保持時間(retention time)を決定した。PCT 13例のHPLCによる分析結果の平均値は, coproporphyrin (CP) 9.7%, penta-carboxyl porphyrin (Penta-P) 6.8%, hexa-carboxyl porphyrin (Hexa-P) 4.9%, hepta-carboxyl porphyrin (Hepta-P) 18.8%, uroporphyrin (UP) 59.8%を示し, UPがCPより優勢に排泄されていた。肝疾患患者32例では, 9例に分析可能で, その平均値はCP 80.1%, Penta-P 3.0%, Hexa-P 5.7%, Hepta-P 5.3%, UP 5.8%とCPが大部分を占めていた。PCT 13例のうち5例に瀉血療法を実施し, その経過中のポルフィリン体パターン分析をおこなつた。その中の4例で, 瀉血療法に伴う著明な尿中ポルフィリン体値の減少がみられ, それとともにパターン分析でもUP優勢からCP優勢への移行がみられた。しかし1例では, 瀉血後も尿中ポルフィリン体値, パターン分析像ともに著しい改善を認めなかつた。HPLCによる尿中ポルフィリン体パターン分析は, その操作性, 簡便性, 再現性などの点で優れており, 今後PCTの診断および経過観察に十分利用され得るものと考えられる。
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