われわれは臨床的に白癬と診断し, 直接検鏡により白癬菌を確認した33歳から93歳までの26名(男性20名, 女性6名, 平均年齢58.5歳)を対象に, 白癬菌抗原であるトリコフィチンを用いたリンパ球刺激試験(LST)およびトリコフィチンの刺激による末梢血リンパ球のIFN-
γ産生, トリコフィチン特異IgEの測定をおこない, また患者群を年齢別, 爪白癬の有無, 重症基礎疾患の有無によって分け, 群間の比較検討をおこなった。その結果, 全患者についてLSTとIFN-
γ産生の間には正の相関関係がみられた。また, LSTとIFN-
γ産生に関し, 重症基礎疾患を有する患者群は, ない患者群より低い値を示した(P<0.05)。一方, 年齢別, 爪白癬の有無によるLSTとIFN-
γ産生の差はみられなかった。トリコフィチン特異IgEで高値を示したものは, 全患者26名中2例のみで, この2例に共通する特徴は認められなかった。一般に, 重症基礎疾患を有する患者に生じた白癬病巣は難治性であることが知られているが, これらの患者においてトリコフィチンの刺激によるLSTおよびIFN-
γ産生が有意に低下していることが臨床的に難治性を示すことと何らかの関連があることを示唆しているものと思われた。
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