西日本皮膚科
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80 巻, 2 号
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目次
図説
綜説
症例
  • 上野 あさひ, 大谷 翼伶, 宮本 揚子, 東海林 怜, 山内 瑛, 塚田 鏡寿, 嶋岡 弥生, 濱﨑 洋一郎, 橋壁 道雄, 籏持 淳
    2018 年 80 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    13 歳の女性。2 年前に右側頚部に出現した自覚症状のない色素斑が右側後頚部へ拡大し,消退しないため近医を受診した。初診時,右側頚部~右側後頚部に爪甲大の卵円形の淡褐色ないし灰色の色素斑を多数認めた。病理組織学的に,表皮基底層のメラニン色素増加,表皮真皮境界部に軽度液状変性を認めた。真皮ではメラニンの滴落と血管周囲にリンパ球浸潤がみられた。薬剤内服歴はなく,金属パッチテストで四塩化イリジウムに陽性を呈した。Ashy dermatosis と診断し,現在,アスコルビン酸およびトラネキサム酸内服で経過観察中であるが,皮疹の改善は認められていない。
  • 磯谷 智世, 木村 七絵, 執行 あかり, 桐生 美麿, 古江 増隆
    2018 年 80 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    66 歳,男性。23 歳頃に上腹部左側に軽度の痒みを伴う角化性の紅色ないし褐色の丘疹が出現した。60 歳頃より皮疹が拡大し,近医にてステロイド外用を行われるも不変であり,当科を紹介され受診した。体幹左側および左上下肢に角化性丘疹が多発集簇し,一部は Blaschko 線に沿って線状および帯状に配列していた。粘膜や爪に異常はなく,精神症状も認められなかった。家族内に同症なく,夏季の増悪傾向はなかった。病理組織学的には基底層直上に棘融解による裂隙を認め,顆粒層に異常角化細胞が散見された。Darier 病に合う臨床,組織所見を示し,皮疹が片側に限局していることから本症例を片側性 Darier 病と診断した。ビタミン D3 軟膏の外用では皮疹は改善せず,エトレチナートの内服を行い,皮疹の軽度平坦化と退色傾向がみられたが,患者が治療効果に満足せず 4 カ月で中止となった。アダパレンの外用も追加したが,それ以上の改善は認められなかった。
  • 辻 由貴子, 中島 喜美子, 石元 達士, 畠中 謙一, 佐野 栄紀
    2018 年 80 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    9 歳,女児。4 歳頃より腹部に渦巻き状の色素斑が出現し,初診数カ月前から上腕や頚部などにも線状の色素斑が拡大した。右側に限局して胸腹部,背部,下肢に丘疹,軽度浸潤を触れる紅褐色斑が線状,渦巻き状に癒合しており,Blaschko 線に一致していた。臨床所見,病理組織学的所見から線状苔癬と診断した。ヘパリン類似物質外用により一時皮疹は改善傾向となったが,外用を中断すると皮疹の再燃を認めた。
  • 井上 雄二, 宮下 梓, 尹 浩信
    2018 年 80 巻 2 号 p. 122-124
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    73 歳,女性。初診の 2 年前より体幹部を中心に痒みを伴う小丘疹・紅斑および色素沈着が出現した。皮膚科にて外用および内服療法を 2 年間受けたが,症状は改善しなかった。皮膚生検において,表皮の萎縮,基底層の液状変性に加え,真皮上層から中層にかけては,Langerhans 型巨細胞を混じ乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫の所見が認められたので,光沢苔癬と診断した。4 年前より高血圧にてアムロジン®を内服しており,同剤による中毒疹を疑い,薬剤を変更したところ,2 カ月で症状は寛解した。DLST は陰性であったが,経過より考え,アムロジン®による光沢苔癬型の薬疹と考えた。
  • 今村 友美, 古賀 文二, 古賀 佳織, 今福 信一
    2018 年 80 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    83 歳の女性。初診の 2 カ月前より瘙痒により搔破を繰り返していた左下腿前面に潰瘍形成がみられ,近医皮膚科にて治療されるも増悪したため,当科を受診した。初診時,左下腿前面内側に径 20 mm の壊死を伴う潰瘍があり,辺縁より皮膚生検を行った。真皮深層から皮下にかけて好中球がびまん性に浸潤し,多棘性の好塩基性物質が多数みられた。抗酸菌培養は陰性で,細菌培養にて Streptococcus intermedius (S. intermedius) のみが検出された。潰瘍の原因検索のため造影 CT を施行したところ,足趾末端まで血流は良好であったが,病変部の周囲の左前脛骨動脈の一部の描出が不良であった。レボフロキサシン内服を開始後,一時的に潰瘍の拡大がみられたが,内服薬の変更は行わず経過をみたところ,潰瘍は徐々に縮小し,約 5 カ月後に上皮化した。S. intermedius は,内臓など深部組織に膿瘍を形成した報告はあるが,皮膚科領域における報告は稀である。自験例は解剖学的血管奇形による局在性血流障害がある特殊な条件下であったが,S. intermedius は深い皮膚潰瘍を形成しうると考え,検出された際には慎重に対応すべきであると考えた
  • 櫻木 友美子, 佐々木 奈津子, 小林 美和, 西尾 大介, 安澤 数史, 中村 元信
    2018 年 80 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    86 歳,女性。糖尿病で治療中。職業は農業。当科初診 1 カ月前に左手掌拇指球部に疼痛を伴わない皮下腫瘤を自覚した。近医皮膚科を受診し,精査・加療目的に当科に紹介された。表面は常色で弾性軟,直径 15 mm の平滑で可動性良好な皮下腫瘤であった。試験穿刺にて黄褐色膿を認め,臨床的に表皮.腫を疑い排膿処置も兼ねて局所麻酔下に皮膚生検およびデブリードマンを行った。病理組織検査では真皮に肉芽組織を壁とする偽.腫があり Grocott 染色と PAS 染色で連珠状の胞子と菌糸構造を多数認めた。培養検査ではサブロー寒天培地上に黒色絨毛状の集落を形成し,スライドカルチャーは分生子形成細胞の先端は先細りになり,菌糸側壁の小突起から類円形の分生子の形成を認めた。PCR 法から Exophiala jeanselmei (以下 E. jeanselmei) と同定した。細菌培養は陰性であった。以上より E. jeanselmei の phaeohyphomycosis と診断し,テルビナフィン塩酸塩 125 mg/日で内服加療を開始した。2 週間後の診察時には皮下腫瘤は消失した。以後,6 カ月間再発は認めていない。自験例は糖尿病があり,農作業時の外傷を契機に発症したと考えられる。臨床像は phaeohyphomycosis として典型的だが,表皮囊腫や皮膚腫瘍との鑑別が困難であった。Phaeohyphomycosis を疑ったときは,積極的に内容物の検鏡を行い,真菌培養などの追加検査や適切な処置が必要である。
研究
  • 分山 英子, 岩永 洋, 田中 洋一
    2018 年 80 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    61 歳,男性。小児期よりてんかんの治療を行っており,多剤の抗てんかん薬による肝障害の既往があった。バルプロ酸ナトリウム (VPA) とラモトリギン (LTG) の併用開始 26 日目より 38℃台の発熱を認め,29 日目より顔面を含む全身に鱗屑を伴う紅斑が出現し,36 日目に当科を初診した。薬剤性過敏症症候群 (drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS) を疑い,LTG を中止し,プレドニゾロン 20 mg/日の内服を開始した。抗 HHV-6 IgG 抗体は,初診時に 20 倍,その 3 週間後に 160 倍と有意な上昇を認めた。初診から 3 日目の薬剤リンパ球刺激試験では,LTG が陽性,VPA は陰性であった。リンパ節腫脹を除き,他の診断基準は満たしており DIHS と診断した。LTG は,推奨された用量の逸脱や,VPA との併用によって重症薬疹を発症する場合が多いことが報告されているが,一方で,LTG 単独での DIHS の報告も多い。自験例では,VPA に LTG が推奨用量で投与されていたが,投与開始から約 4 週後に DIHS を発症した。また,プレドニゾロンの減量中に皮疹の再燃を認めた。LTG の用量遵守や VPA 併用の有無だけでは,DIHS の発症の予測は困難で,肝障害の既往やステロイドの減量法にも注意が必要と考えられた。
  • 新澤 みどり
    2018 年 80 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    2010 年 7 月から 2013 年 12 月までの 3 年 6 カ月間に当院を受診した帯状疱疹患者のうち,水痘の既往歴がない 0~5 歳までの小児と同居,または日常的に接触がある 78 例に追跡調査を行った。その結果,96 人の小児のうち 10 人に水痘二次発症が確認された。帯状疱疹患者のうち 9 例 (11.5%) が水痘の感染源となった。家族関係では,兄から妹への感染が 1 例,父母から子への感染が 4 例,祖父母から孫への感染が 4 例であった。帯状疱疹患者の世代・性別を問わずほぼ均等に水痘の二次発症を生じており,小児との接触の濃厚さは無関係であった。三叉神経および頚神経領域の帯状疱疹は,それ以外の部位の帯状疱疹に比して水痘を感染させる率が高かった (Odds 比 1.7)。分節では眼神経領域からの感染率が 22.2%と最も高かった。デルマトームにおける水疱の多寡は感染率に影響しなかった。0 歳児の水痘発症率は 12.5%で,それ以降の年齢 (1~5 歳) に比べ 1.5 倍高かった。小児の水痘のうち 3 例は,家族の帯状疱疹の水疱出現から10 日に満たない短期間に発症していた。水痘帯状疱疹ウイルスは,帯状疱疹の水疱が出現する数日前からすでに唾液中に排出され空気感染を起こしている可能性がある。
講座
治療
  • 馬岡 愛, 欠田 成人, 津田 憲志郎, 近藤 誠, 東山 文香, 水谷 仁, 半田 智春, 石井 惠玲, 村上 拓, 吉原 成朗, 山中 ...
    2018 年 80 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/07/13
    ジャーナル 認証あり
    Very strong クラスのステロイド外用剤で治療されているアトピー性皮膚炎(AD)患者を対象に,秋冬および春夏の 2 期間について軟膏基剤製剤から油中水型(以下,W/O 型)乳剤性基剤製剤へ変更後のかゆみスコア(VAS),アトピー性皮膚炎の重症度スコア(SCORAD およびEASI),患者満足度(TSQM-9)およびアドヒアランス(MMAS-8)を評価した。調査対象は秋冬期間(Period 1)34 例,春夏期間(Period 2)22 例であった。試験中止例は 10 例であったが,試験中止例も含め全症例を解析対象とした。VAS,SCORAD および EASI は,両期間で登録時からの有意な低下が認められ,変化量はともに Period 1 と比較して Period 2 が大きかった。患者の治療満足度の評価には TSQM-9 を用いたが,要素である「効果」と「全般満足度」は Period 2 で登録時からの有意な上昇が認められ,変化量はともに Period 1 と比較して Period 2 の方が有意に大きかった。「利便性」には有意差は認められなかった。MMAS-8 は W/O 型製剤投与前後の割合に有意な変化はみられなかった。AD 患者において軟膏基剤製剤から W/O 型乳剤性基剤製剤への変更により,かゆみスコア,患者満足,AD の重症度の改善がみられ,特に春夏期間で顕著であった。
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