西日本皮膚科
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79 巻, 3 号
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目次
図説
綜説
症例
  • 橋本 明子, 永瀬 浩太郎, 永瀬 浩一, 小川 始主夏, 井上 卓也, 成澤 寛
    2017 年 79 巻 3 号 p. 225-229
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり
    症例 1:83 歳,男性。左上眼瞼の著明な浮腫性紅斑および下肢の筋力低下で受診した。精査にて甲状腺左葉に巨大な腫瘍を認めた。甲状腺腫瘍を摘出するも皮膚症状の改善なく,上肢の筋力低下も著明となった。その後,胃癌 (stage Ⅳ) がみつかった。症例 2:76 歳,男性。上眼瞼の浮腫性紅斑と嚥下困難で受診した。精査にて,肺癌 (stage ⅢA) がみつかり,摘出手術を行った。悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎では,顔面に紅斑を呈することが多く,皮膚筋炎診断時には半数が進行癌となっているとされる。顔面の紅斑や嚥下障害を主訴に高齢で発症した皮膚筋炎の症例では,特に潜在する悪性腫瘍の存在を疑い,画像検査,腫瘍マーカー測定を繰り返し行う必要がある。近年,急激な化学療法の進歩により,進行癌における予後の改善は著しく,皮膚科医の皮膚筋炎の早期診断における役割の重要性を強調したい。
  • 南里 文, 松田 光弘, 清永 千晶, 名嘉眞 武国
    2017 年 79 巻 3 号 p. 230-234
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり
    Lupus erythematosus tumidus(LET) は慢性皮膚エリテマトーデスの稀な 1 型で,病理組織学的に高度のムチン沈着を伴うことが特徴である。我々はタクロリムス外用が奏効した LET の 2 例を経験した。症例1:57 歳,男性。初診の 1 カ月前より頰部の紅斑局面を認め,皮膚生検で LET と診断した。ステロイド外用は効果が乏しく,タクロリムス外用が奏効した。症例 2:53 歳,男性。初診の 1 年前より日光曝露後に増悪する顔面の紅斑局面を認めた。皮膚生検で LET と診断し,タクロリムス外用が奏効した。LET 治療の第 1 選択としてステロイド外用療法が行われるが,効果が乏しい場合が多く,皮膚萎縮や毛細血管拡張などの副作用に注意する必要がある。本邦では LET に対するタクロリムスの使用報告例は少ないが,本軟膏の効果を期待し使用したところ,2 例とも有効な結果が得られ,副作用も認めなかった。今後 LET に対してタクロリムス外用も試みる価値があると考える。
  • 白築 理恵, 金子 栄, 森田 栄伸
    2017 年 79 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    73 歳,男性。2 型糖尿病の合併あり。1954年に兄が肺結核に罹患していた。1978 年発症の尋常性乾癬に対し,外用や紫外線療法を受けていた。2008 年に開始されたシクロスポリン内服の効果減弱がみられ, 2012 年 10 月よりアダリムマブを導入した。導入前のスクリーニング検査で潜在性結核感染と判明し,イソニアジドの予防投与を前投薬期間含め 10 カ月間行った。生物学的製剤投与中には定期的な胸部画像検査が必要であり,自験例においてもアダリムマブ開始 1,6,12 カ月後に定期的に胸部レントゲン検査を施行した。予防投与終了 3 カ月後に 39 度台の不明熱で入院となった。CT にて多発脾膿瘍,肺の septic emboli を認め,敗血症の診断にて各種抗生剤を投与したが効果に乏しかった。入院 18 日目に入院後採取した胃液から抗酸菌が検出され,PCR で結核菌と同定された。粟粒結核として抗結核薬 4 剤内服に切り換えたところ,速やかに治療に反応した。自験例は糖尿病を合併していたため,生物学的製剤治療時における結核予防対策最長期間の 9 カ月間内服を遵守したにも関わらず結核を発症したことから,結核予防対策に関して警告的な症例と考える。結核の治療終了前に呼吸器内科と相談の上,ウステキヌマブを投与したところ結核性リンパ節炎を発症したため投与を中止し,結核治療終了 2 カ月後よりセクキヌマブの投与を開始した。開始 5 カ月後の現在,結核の再発は認めていない。併発結核治療後の生物学的製剤の再投与についても考察を加え報告する。

  • 木村 七絵, 前村 紘美, 高松 紘子, 原田 佳代, 占部 和敬, 古江 増隆
    2017 年 79 巻 3 号 p. 242-245
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    80 歳,男性。初診の約 10 年前,右眼の加齢黄斑変性の手術後に突然頭髪が白毛になり,その後顔面に白斑を生じた。白斑は全身に拡大し,他院で紫外線治療を行われるも改善なく経過していた。初診の約 3 週間前に霧視が出現したため近医眼科を受診し,両眼の汎ぶどう膜炎を指摘され当院眼科へ紹介された。 眼科診察では前眼部の炎症後変化と夕焼け様眼底を認めた。白斑について当科受診し,皮膚生検では基底層にメラノサイトを認めず,免疫組織化学染色では Melan-A は陰性であった。眼底所見と合わせて Vogt-小柳-原田病と診断した。滲出性網膜剝離などの急性期眼病変がみられず,髄膜炎や感音難聴の合併もなく,点眼治療のみで視力改善傾向であることからステロイド全身投与は行われなかった。白斑に対してはステロイド軟膏を外用したが改善しなかった。Vogt-小柳-原田病ではぶどう膜炎から 2∼3 カ月後の回復期に夕焼け様眼底や皮膚の白斑など色素脱失所見が出現し,白斑は通常眼周囲や頭頚部に多く分布し,左右対称性であることが多い。比較的広範囲の白斑を伴った Vogt-小柳-原田病の症例は国内外で数例報告されているが,自験例ほどの汎発性の白斑を伴う例は稀である。

  • 苅谷 嘉之, 﨑枝 薫, 眞鳥 繁隆, 佐久川 裕行, 仲村 郁心, 高橋 健造, 上里 博, 宮城 恒雄
    2017 年 79 巻 3 号 p. 246-250
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    69歳,女性。当科初診の 2 カ月前から急速に増大する右こめかみ部の紅色結節を自覚した。近医皮膚科を受診し,切除目的で当科に紹介された。当科初診時,結節は 14 × 13 mm で,弾性やや硬の表面が平滑な淡紅色のドーム状を呈していた。ダーモスコピー所見で結節は淡紅色を呈し,黄白色内容物が透見された。また,不整な白色線条や不規則に分岐する血管拡張がみられた。生検による病理組織像で毛母腫と診断したが,腫瘍成分に重層扁平上皮を伴っていた。一般に毛母腫は若年者に好発し,正常皮膚に覆われ硬く触れる皮内あるいは皮下結節が多いが,表面に突出する腫瘤など多彩な臨床像を呈することもある。 本稿では高齢者に生じた毛母腫の症例を集計し,また非典型的症例ではダーモスコピー所見が毛母腫の診断に有用である可能性が示唆されたので報告した。

  • 中村 優佑, 後藤 真由子, 石川 一志, 甲斐 宜貴, 板井 健, 上原 幸, 清水 史明, 白下 英史, 猪股 雅史, 糸永 一朗, 津 ...
    2017 年 79 巻 3 号 p. 251-254
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は 85 歳,女性。2011 年 1 月に転倒して打撲したのを契機に左腰部に皮下腫瘤を形成した。腫瘤が徐々に増大してきたため,同年 3 月に近医を受診し,当初皮下血腫の診断にて加療されていたが,同年 8 月頃より急激な皮下腫瘤の増大を認めたため,同年 9 月に当科を紹介され受診した。初診時,左腰部に熱感を伴う 15×12 cm で高さが 8 cm の表面に光沢を伴った弾性軟の皮下腫瘤を認めた。皮膚生検で脂肪肉腫を疑われ,腫瘍辺縁より 3 cm マージンにて腫瘍切除術を施行した。術中所見で腸骨との癒着を認めたため,腸骨稜全体を切除した。腹壁形成後に有茎前外側大腿皮弁と分層植皮による再建術を施行した。その後,皮弁部・植皮部の潰瘍および欠損部に対して計 3 回植皮術を施行して治癒したため,自宅退院とした。病理組織検査の結果,最終的に粘液線維肉腫 (myxofibrosarcoma) と診断した。画像による定期的経過フォローを行い,再発転移を認めていなかったが,2015 年3 月療養所で死亡した。

  • 久場 友加里, 永瀬 浩太郎, 桑代 麻希, 鶴田 紀子, 井上 卓也, 成澤 寛
    2017 年 79 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:46 歳,男性。背部原発の転移性悪性黒色腫治療中に消化器症状が出現し,小腸重積と診断された。重積部には腫瘤性病変を認め,生検の結果,悪性黒色腫の小腸転移によるものであった。症例 2:37 歳,男性。貧血の精査中,空腸に 7 cm の潰瘍性病変を認め,組織学的に悪性黒色腫と診断された。その後,3 年前から左下腿に黒色斑を認めていた病歴が判明したため,同部位を生検したところ悪性黒色腫の消退期に合致する組織像であり,左下腿の皮膚病変が原発巣であると判断した。悪性黒色腫の小腸転移は生前での診断例は少ないものの,剖検例においては少なからず報告されており,本邦における症例をまとめたところ,自験例と同様に急性腹症を来したものも比較的多かった。悪性黒色腫の小腸転移は発見が困難であるが,それに伴う腸重積や消化管穿孔など重篤な症状を来す可能性があり,注意が必要である。

  • 屋宜 宣武, 山口 さやか, 佐野 文子, 高橋 健造
    2017 年 79 巻 3 号 p. 260-263
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    83 歳の女性,関節リウマチの診断で 20 年前からステロイドを含む免疫抑制剤が投与されていた。頭部に脱毛斑が出現し,近医皮膚科を受診した。頭部の皮疹はステロイド外用で悪化し,右手背にも落屑を伴う紅斑が出現した。頭髪の毛根部,頭部と手背の皮疹部鱗屑の直接鏡検で真菌成分がみられ,ケルスス禿瘡と手白癬と診断した。真菌培養にて Microsporum gypseum が原因菌であると同定した。テルビナフィン125 mg/日の内服を開始したが,瘙痒と疼痛が悪化し,頭部に厚い黄色の痂皮,いわゆる菌甲が生じた。テルビナフィンを 250 mg/日に増量投与したところ,症状は次第に改善し,内服開始から 5 カ月後に治癒した。関節リウマチの治療により免疫抑制状態にあり,通常量のテルビナフィンに治療抵抗性を示し,さらに菌甲を形成したと考えられた。

  • 辻 由貴子, 青木 奈津子, 山本 真有子, 中島 英貴, 中島 喜美子, 荻野 慶隆, Juan José Lauthier , 是永 正 ...
    2017 年 79 巻 3 号 p. 264-268
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    症例 1 : 58 歳,男性。アマゴを生食した 1 カ月後から左側腹部に瘙痒を伴う皮下硬結が出現し,上腹部へ移動した。当科初診時,上腹部に熱感,発赤を伴う拇指頭大の硬結があり,皮膚生検では好酸性構造を認めたが,明らかな虫体は認めなかった。イベルメクチン 12mg(0.2 mg/kg) を内服後,硬結は消失した。症例 2 : 57 歳,男性。マムシを生食した 10 日後頃より腹部正中に瘙痒を伴う紅斑が出現し,両側腹部に伸長した。皮疹は発赤を伴う硬結となり,水疱を伴った。同部位からの皮膚生検では虫体を認めなかった。イベルメクチン 12mg(0.2 mg/kg) 内服後,さらに下腹部,上背部に搔破痕が新生したため,イベルメクチン 12mg を初回,7 日後,20 日後に計 3 回内服し,初診から 1 カ月半後に褐色斑を残して治癒した。2 例とも明らかな虫体は認めなかったが,患者の血清を用いた multiple-dot enzyme-linked im munosorbent assay (Dot-ELISA) でドロレス顎口虫に対する反応が陽性であり,ドロレス顎口虫による creeping disease が強く疑われた。

  • 小川 始主夏, 永瀬 浩太郎, 溝口 協子, 井上 卓也, 成澤 寛
    2017 年 79 巻 3 号 p. 269-272
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    47 歳,女性。C 型慢性肝炎に対してダクラタスビル・アスナプレビル併用療法を開始した翌日より両手・両下腿に瘙痒を伴う紅斑が出現した。ステロイド外用を開始するも紅斑が拡大したため,発症 7 日目に当科を受診した。上肢と下腿に浸潤を触れる紅斑が多発し,一部は融合傾向を示していた。手掌には小水疱の集簇を伴っていた。手掌から皮膚生検を行ったところ,interface dermatitis の像を認めた。上記 2 剤いずれかの薬疹と診断し,薬剤を中止したうえで,ステロイドの内服を行ったところ,紅斑は退色傾向を示し,消退した。臨床像,経過,および病理所見から上記肝炎治療薬の薬疹と診断したが,薬剤投与から発症までの期間は1日と非常に短く,被疑薬に類似した薬剤の投与歴もなかったことから,非アレルギー性の機序による薬剤性皮膚障害の可能性を考えた。

統計
  • 亀倉 南穂, 山下 利春
    2017 年 79 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 2017/06/01
    公開日: 2017/08/03
    ジャーナル 認証あり

    2008 年 1 月 1日から 2014年 12 月 31 日までの間に当科を受診し,天疱瘡と診断し治療した患者 17 例について,治療経過と治療期間を病型別に検討した。7/17 例(41.2%)が寛解となり,プレドニゾロン(以下 PSL)を中止できた。日本皮膚科学会の天疱瘡診療ガイドラインの治療目標である PSL 0.2mg/kg/日または PSL 10 mg/日以下を達成した症例は 13/17 例(76.5%)で,尋常性天疱瘡(7/10 例)と落葉状天疱瘡(6/7 例)であった。尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡の治療期間に差はみられなかったが,落葉状天疱瘡(5/7 例)は尋常性天疱瘡(5/10 例)に比べ併用療法を要した割合が高かった。これまでに日本皮膚科学会の天疱瘡診療ガイドラインに照らし合わせて治療や長期予後について検討された報告は非常に少なく,今回我々の検討ではおよそ 8 割もの症例が治療目標を達成していたことが明らかとなり,今後の日常診療において,ガイドラインに従って治療を行うべきであることが再認識された。

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