新しく開発されたニューキノロン系経口抗菌剤フレロキサシン(Fleroxacin: FLRX)について皮膚組織内への移行濃度の測定および皮膚科領域感染症に対する治療を実施し, 本剤の基礎, 臨床両面における有用性を検討した。FLRXの200mgを12例に1回経口投与した2∼24時間後の皮膚組織内濃度は, 1.27∼7.29
μg/gで対血清比は, 0.84∼3.46と良好な皮膚組織への移行が示された。細菌性皮膚感染症148例に対して1日1回100∼300mgを3∼19日間投与した。治療成績は, 著効60例, 有効70例, やや有効10例, 無効8例で, 有効率は87.8%であった。各疾患群の有効率は, I群85.3%, II群93.1%, III群100%, IV群90.0%, V群90.3%, VI群76.9%であった。細菌学的効果は, 投与前に皮膚病巣より分離された134株に対し90.0%の菌消失率であった。本剤投与に起因すると考えられる副作用としては, 調査対象症例154例中, 嘔気, 食欲減退および腹部不快が各1例, 計3例(1.95%)に認められた。また臨床検査値の異常変動は, 調査対象症例127例中1例(0.79%)にBUNの上昇がみられたのみであり, 本剤の安全性の高さが示唆された。以上の結果より, FLRXは皮膚科領域感染症に対し, 1日1回の投与で有用な薬剤であることが推察された。
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