西日本皮膚科
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53 巻, 4 号
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図説
症例
  • 盛岡 奈緒子, 古江 増隆, 石橋 康正
    1991 年 53 巻 4 号 p. 669-672
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    56歳男子。軽度の耐糖能異常あり。初診半年前より項部に丘疹出現, 遠心性に拡大, 辺縁堤防状に隆起して環状局面を形成した。上胸部, 肩, 背部, 両前上腕, 両手背にも丘疹, 結節が多発融合して環状∼連圏状局面をなしていた。丘疹部では変性した膠原線維巣を組織球, リンパ球が取り囲むpalisading granulomaがみられ, 多数の巨細胞が混在していた。環状局面部の組織像では, 堤防状隆起部外側の一見健常と思われた部において弾力線維が断裂し, 隆起部では多核巨細胞による弾力線維貪食像を認め, また隆起部内側では弾力線維が消失していた。組織学的にannular elastolytic giant cell granuloma(以下AEGCG)の性質を備えた汎発性環状肉芽腫と考えた。これまでAEGCGに特異的とされてきた弾力線維の一連の変化は環状肉芽腫においても生じ得るものと考えられる。
  • 大石 空, 小野 友道
    1991 年 53 巻 4 号 p. 673-675
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    45歳男子。初診1年前頃から右頬部の大豆大硬結が出現した。病変は中央部が陥凹し, 黒色隆起性で境界がやや不明瞭であった。基底細胞上皮腫または粉瘤の臨床診断下に摘除された。病理組織学的には外界と交通した上皮成分よりなる嚢腫であり, 内容物として多数の毛幹断面と角質が認められた。また嚢腫壁に接続する複数個の毛包がみられた。本症例はMehreganら(1982)により最初に報告されたpigmented follicular cystの所見に一致するものと思われ, 又本症の発症要因として外傷の可能性が考えられる。
  •  
    安富 弘, 妹尾 明美, 荒田 次郎
    1991 年 53 巻 4 号 p. 676-679
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    54歳男子。約10年前より左鼻翼下に黄白色硬化性局面が出現し, きわめて徐々に拡大した。臨床的には12×10mm, 中央陥凹し辺縁に小結節が環状に配列し堤防状に隆起する硬い局面で, 組織学的には真皮内に小型の基底細胞様細胞の索状増殖, 多数の角質嚢腫, 結合織形成の強い間質を認めた。臨床像, 組織像ともdesmoplastic trichoepitheliomaの典型例であった。本邦での報告は自験例を含め13例あり, いずれも単発性で顔面に発生している。
  • 前川 嘉洋, 嘉月 博
    1991 年 53 巻 4 号 p. 680-683
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ダウン症候群に尋常性乾癬を合併した13歳男子, 11歳男子, 41歳女子の3例について報告した。第1例においては抗核抗体は陰性であったが, マイクロゾームテスト100倍, サイロイドテスト100倍と陽性であった。文献的にも, 円形脱毛症を有するダウン症候群患者に抗サイログロブリン抗体, 抗マイクロゾーム抗体ともに上昇し, 血清γ-グロブリンの上昇した例の報告がある。一方, 乾癬患者でも免疫異常が存在することが報告されており, 両者の共通の病因に免疫の異常が存在する可能性が示唆された。
  • —長期の寄生が疑われた一例を中心として—
    鈴木 裕介, 伊藤 洋一
    1991 年 53 巻 4 号 p. 684-688
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    76歳男子の左大腿後面に生じたマンソン孤虫症を報告した。初診2ヵ月前より同部位に血栓性静脈炎様の皮下索状硬結があり, 組織学的に巨細胞を交える肉芽腫と好酸球浸潤像を認めたため, 深在性真菌症, 非定型抗酸菌症, 皮膚結核などを考えたが, 真菌·抗酸菌の特殊染色·培養とも陰性であった。その1ヵ月後, 索状硬結の上方に浅い線状蛇行状硬結が出現, この部位を全切除して真皮中層に虫体を発見し, von Kossa染色にて石灰小体を認めた。即時型皮内テストでは, マンソン裂頭条虫プレロセルコイド抗原液にて陽性, ウェステルマン肺吸虫にて陰性。プレロセルコイドを抗原としたELISA法による血清抗体価測定では, 患者血清2,700倍希釈にて全切除前血清でOD値1.36の抗体価が, 全切除3ヵ月後の血清でOD値0.6に低下した。北里大学皮膚科および寄生虫学で経験した本疾患12例を検討すると, このうち9例までは皮下硬結を主訴とし皮膚科を受診しているが, 中には虫体の眼窩内侵入による眼球突出例, 睾丸炎症状を呈し精巣内に虫体が存在した例, 皮膚症状のないまま終始した例もみられた。本症例では36年前マムシの不完全調理と生血を食し, その後発熱, 全身倦怠, 脱毛が年余にわたり出没していたが, 虫体切除以後これらの症状が消退したことより, 幼虫のまま体内に36年間潜伏していた可能性は否定できないと思われた。
  • 車地 祐子, 大城 由香子, 宮元 千寿, 加藤 卓朗, 西岡 清
    1991 年 53 巻 4 号 p. 689-694
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    スプロフェン軟膏による光接触皮膚炎の5例を報告した。症例は女子4例, 男子1例, その原疾患はアトピー性皮膚炎3例, 接触皮膚炎2例で, 外用開始後2週∼3ヵ月で発症した。UVA6J/cm2照射による光パッチテストでスプロフェン濃度0.01%まで陽性, 約2/3MEDのUVB照射による光パッチテストでも濃度0.1%まで陽性であった。また可視光では陰性であったことより, その作用波長はUVAを主体とし, UVBに及ぶ領域にあると考えられた。また潜伏期間, 光パッチテストの結果より光アレルギー性機序が推測された。他の非ステロイド抗炎症剤を用いた光パッチテストで, 全例チアプロフェン酸に対しても陽性を呈したことから, スプロフェンとチアプロフェン酸の交差感作が示唆された。
  • 田中 敬一, 渡辺 雅久, 大神 太郎, 野中 薫雄, 吉田 彦太郎
    1991 年 53 巻 4 号 p. 695-698
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    スプロフェンによる光接触皮膚炎, イブプロフェンピコノールによる接触皮膚炎を合併した25歳女子の1例を報告した。2年前の第1子出産後より, 顔面を中心に躯幹, 四肢にそう痒性皮疹を生じた。アトピー性皮膚炎の診断で, 内服·外用療法を受けた。躯幹の皮疹はステロイド外用療法で軽快したが, 顔面の皮疹が軽快しないため, 接触皮膚炎, 光接触皮膚炎などが疑われ, 光線テストを施行された。その結果, UVBのMEDは91.2mJ/cm2であり, UVAでは7.1J/cm2の照射で反応をみなかった。パッチテストではベシカム軟膏, 同クリーム, 5%イブプロフェンピコノール加白色ワセリンで48時間後, 72時間後に陽性であった。光パッチテストでは, スレンダム軟膏, 5%スプロフェン加白色ワセリンで, UVA 3.5J/cm2照射24時間後に陽性であった。その他鳥居薬品(株)のスタンダード系列, 使用していた各種ステロイドおよび非ステロイド系外用剤, 光感作物質などのパッチテスト, 光パッチテストは陰性であった。
  • 渋谷 倫子, 柏 秀雄, 中村 雄幸
    1991 年 53 巻 4 号 p. 699-704
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    てんかん発作時に発生した熱傷を3例経験したので報告する。
    症例1: 38歳女子。調理中に発作を起こし, 頸部, 前胸部, 手指を中心に熱傷を受傷した。
    症例2: 37歳女子。調理中に発作を起こし, 顔面, 頸部, 手指を中心に熱傷を受傷した。
    症例3: 43歳女子。調理中に発作を起こし, 手, 足背に熱傷を受傷した。
    いずれも, 抗てんかん薬の規則正しい服用ができておらず, 熱傷に対する理解が不十分であった。熱源との接触時間の長さ, 初期冷却の欠如が重症化を招いていた。てんかん患者が熱傷を負う頻度はかなり高く, さらに重症になりがちな傾向にあることを, てんかん患者, 家族, てんかん治療に携わる医師は認識する必要がある。
  • 斎藤 すみ, 池澤 善郎, 大沢 純子, 内藤 静夫, 相原 道子, 吉田 貞夫, 宮本 秀明
    1991 年 53 巻 4 号 p. 705-712
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    薬疹が疑われ, その原因薬剤同定のために施行した皮内試験により, 汎発疹が惹起された7症例を経験した。症例の平均年齢は約45歳(20∼60歳), 全例が女子であった。原因薬剤は7例中6例が抗生物質であり, そのうち4例がペニシリン系で, 残りはセフェム系とマクロライド系が1例ずつであった。初発時の薬疹の発疹型は, 紅皮症型が4例, 紅斑丘疹型が1例, 多形紅斑型が1例, 蕁麻疹型と多形紅斑型のoverlap型が1例であった。全身症状が激しく, 発熱を伴う症例は7例中4例であり, その4例中3例に明らかな白血球増多がみられた。皮内試験により初発時の薬疹と同様の皮疹がほぼ全身に誘発され, 血液検査された2症例では再度白血球増多が認められた。なおoverlap型では, 皮内試験の回数を重ねるうちに, 3回目にアナフィラキシーショック症状を呈した。皮内試験で誘発された汎発疹が出現してくるまでの時間は, ショック症状を呈する場合を除くと, 多くは数時間であり, 時に24∼48時間に及んだ。また貼布試験は, ICDRGで(+)?の1例をも加えると, 全例が陽性であった。以上より, 初発時の汎発疹から強力な薬剤アレルギーの関与が疑われた場合, とくに紅皮症型や蕁麻疹型, あるいは発熱や白血球増多を伴う場合の皮内試験は, 強い全身反応を惹起することがあるので注意を要する。このような場合, まず貼布試験から実施すべきであり, また皮内試験の際には, 必ず低濃度の試験薬剤から慎重に実施すべきである。
  •  
    安部 小百合, 今山 修平, 堀 嘉昭, 坂本 亘司, 高比良 健市
    1991 年 53 巻 4 号 p. 713-718
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    3才と9ヵ月の先天性Horner症候群の姉妹例を報告した。姉は顔面右半側に, 妹は左半側に生下時から眼裂狭小, 縮瞳, 発汗低下を認めた。皮膚温の測定で, 遠赤外線照射後には患側が高温を示したのに対し, 運動負荷時には逆に健側の方が高温を示すという興味深い所見がサーモグラフィーを用いた検査で明らかになった。
  • —輸血液GVHDとの鑑別を中心に—
    亀山 孝一郎, 尾立 朱実, 木下 正子, 元島 謙司
    1991 年 53 巻 4 号 p. 719-726
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    48歳男子の大腿骨骨折に対する, 輸血を伴う固定手術後に生じた, 薬剤性TENと思われる1例を報告した。平成元年9月4日大腿骨骨折に対して創外固定術を施行した。なおこの際に濃厚赤血球5 pack, 保存血5 packの輸血を受けた。骨折の原因として黄色ブドウ球菌が骨髄より検出されたため, 8月24日よりコスモシン, 手術直後よりペニシリンGとウロキナーゼが投与された。9月19日に, 体幹, 四肢に紅斑が出現した。9月26日より紅斑は急速に拡大し, さらに大小の水疱, びらん面が出現した。薬剤性TENあるいは輸血後GVHDを疑いステロイドホルモンのパルス療法を行い, 救命し得た。紅斑部の組織像では, 表皮と真皮との間には裂隙が形成され, 表皮は全層性に好酸性の壊死を生じ, 真皮上層および裂隙内には単核球浸潤をみとめた。免疫組織学的にはCD8陽性のsuppressor/cytotoxic-T細胞が真皮に認められたが, 裂隙内, および表皮内への進入像は明らかでなかった。また表皮角化細胞のHLA-ABCの発現が低下するほどに表皮の障害性変化が進行していたにもかかわらず, CD1陽性のLangerhans細胞が表皮内に痕跡的に少数ではあるが散見された。リンパ球刺激試験やパッチテストは陽性でなく, 薬剤性TENと確定診断できなかったが, 強い骨髄抑制や下痢など輸血後GVHDに必発する所見が認められず, 薬剤性TENと診断した。
研究
  • 谷川 英子, 坂本 文野, 中野 俊二, 蜂須賀 裕志, 笹井 陽一郎
    1991 年 53 巻 4 号 p. 727-731
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    組織作製法が表皮細胞膜のレクチン結合性に及ぼす影響について検討した。未固定あるいはホルマリン固定, エタノール固定の凍結切片, パラフィン切片を用い, ABC法による酵素抗体法と, 螢光抗体法を行って, RCA, WGA, PNA, SBA, ConAの表皮への結合を観察した。固定やパラフィン包埋という操作は反応基の隠ぺいをもたらし反応を妨げることがあるが, これらのレクチンに関するかぎり, 固定法の相違あるいは包埋の有無によって, その結合性に大差はなかった。しかしながら, 組織の構築を保ち, 非特異反応の少ない染色を簡便に行うには, ホルマリンあるいはエタノール固定, パラフィン包埋切片を用いたABC法による酵素抗体法が最も適していると思われた。
  • —帯状疱疹後神経痛への効果を中心に—
    松本 義也, 川部 美智子, 安江 隆
    1991 年 53 巻 4 号 p. 732-736
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    基礎疾患を有しない40歳以上の帯状疱疹患者105例に対し, 外来にて抗ウイルス剤のビダラビン(アラセナA®)300mg/日: 3∼5日間(80例), またはアシクロビル(ゾビラックス®)を簡便法として1日1回500mg: 3∼7日間(25例)点滴静注した。そして, その疱疹後神経痛(PHN)への効果についての両者の比較, および両者と抗ウイルス剤非投与対照群(51例)との比較を行った。その結果, 発症より1ヵ月以上を経過しても神経痛が残存するPHN(1ヵ月PHN)は, ビダラビン群では25%, アシクロビル群では24%に認められ, 両者間に有意差は認められず, 対照群の29%とも有意差はなかった。発病より5日以内の早期から抗ウイルス剤を投与することが1ヵ月PHNの減少に有効との結果はえられなかった。初診時に疼痛による睡眠障害を訴えた群では1ヵ月PHNの頻度が有意に高かった。
  • —過去13年教室85症例の病理組織学的検索—
    麻生 和雄
    1991 年 53 巻 4 号 p. 737-750
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    教室の過去13年間の基底細胞癌(basal cell carcinoma, BCC)85症例を臨床·病理学的に検索した。病理組織学的に85症例(95病理組織·再発例をふくむ)は1) solid-circumscribed 24, 2) solid-infiltrative 25, 3) keratotic 17, 4) adenoid 6, 5) superficial 4, 6) BCC with sebaceous differentiation 2, 7) baso-squamous BCC 4, 8) fibroepithelioma 1であった。
    1) solid-circumscribedとsolid-infiltrativeは病理組織学的のみならず, 臨床的にも後者は再発性, 局所侵襲性であり区別されるものがあった。
    2) solid-circumscribed BCCでは病巣中に毛包分化性構造であるsquamous eddyの存在を認める場合が少なくなかった。Squamous eddyの存在は, また, keratotic, 一部のadenoid, adamantinoid BCCにおいても認められた。
    3) BCCは大別して局所破壊性, 再発性のa) aggressive type(solid-infiltrative, baso-squamous BCC)およびb) 臨床·病理組織学的にもnon-aggressiveな毛包分化性BCC(分化段階からsolid-circumscribed, 一部のadenoid, adamantinoid, BCC with sebaceous differentiation)およびエクリン·アポクリン分化性BCCに大別され, その区別はBCCの病態, 臨床, 治療において意義があると結論した。
  • 西村 正幸, 神宮 政男, 延永 正, 堀 嘉昭
    1991 年 53 巻 4 号 p. 751-754
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬患者および正常人の皮膚および末梢血単球を培養し上清中のTNF-αの濃度をELISA法で測定し, 比較検討した。皮膚器官培養上清中にTNF-αは全く検出されなかった。正常人単球の培養上清中には非刺激の状態ですでにTNF-αが検出され, LPS刺激により増加傾向がみられた。これに対して患者由来の単球の場合, 非刺激の状態ではTNF-αは検出されず, LPS刺激によってはじめて正常人と同程度の量のTNF-αが検出された。これらの所見は尋常性乾癬患者の末梢血単球のTNF-α分泌がなんらかの機序で抑制されていることを示唆している。
  • 西村 正幸, 神宮 政男, 延永 正, 堀 嘉昭
    1991 年 53 巻 4 号 p. 755-757
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬患者および正常人の末梢血単球をリポポリサッカライド添加または無添加の培養液で24時間培養し, 上清中のIL-1α, IL-1βおよびIL-6の濃度をELISA法で測定し, 患者由来の単球のIL-1αの分泌亢進と患者由来の単球のIL-1β分泌活性のリポポリサッカライド刺激に対する反応性の低下を示唆する所見を得た。
  • 西村 正幸, 神宮 政男, 延永 正, 篠 力, 堀 嘉昭
    1991 年 53 巻 4 号 p. 758-761
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    器官培養皮膚のIL-6分泌に対するTNF-αの影響について検討した。尋常性乾癬およびアトピー性皮膚炎患者の病変部皮膚および健康人の正常皮膚をTNF-α添加または無添加の培養液で24時間培養し, 培養上清中のIL-6濃度をELISA法で測定した。乾癬病変部皮膚のIL-6分泌はTNF-α刺激により著明に増加したが, アトピー性皮膚炎の病変部皮膚や健康人の正常皮膚のIL-6分泌は増加しなかった。これらの所見はTNF-αが乾癬病変部皮膚のIL-6分泌亢進に関与している可能性を示唆している。
  • 高路 修, 森田 栄伸, 中村 浩二, 山田 悟, 山本 昇壯
    1991 年 53 巻 4 号 p. 762-766
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    MAST法は最近新たに開発された血清中抗原特異IgEの同時多項目測定法である。今回われわれはアトピー性皮膚炎患者55例を対象として, 本法を用いて35種の抗原に対する特異IgE抗体を測定し得たので報告する。特異IgE抗体の陽性率が高かった抗原はコナヒョウヒダニ(69%), ヤケヒョウヒダニ(67%), ハウスダスト(58%), スギ(47%), ネコ上皮(38%), イヌ上皮(24%)であり, これら環境抗原に特異的なIgE抗体は食物抗原に比して高率に陽性であった。全症例におけるIgE抗体陽性の抗原数は平均7.1で, 5種以上の抗原に同時に陽性を呈した症例が58.2%, 10種以上では27.3%であった。これらの結果からアトピー性皮膚炎患者が多種の抗原に感作されていることは明らかで, さらに重症度別, 罹病期間別の解析から, 特異IgE抗体陽性の抗原数は重症例ほど, また罹病期間の長い症例ほど多くなる傾向が認められた。さらに抗原特異IgE抗体を同時に多項目測定でき, ラジオアイソトープを使用しないMAST法は本症患者の感作状況を把握するうえで有用であることが示唆された。
講座
統計
  • —第1報 医療施設に対する調査—
    前川 嘉洋, 伊藤 寿樹, 中村 佳代子, 野上 玲子
    1991 年 53 巻 4 号 p. 774-779
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    熊本県における全身性強皮症(PSS)の実態を知る目的で県内248医療施設に郵送による疫学調査を行った。1次調査の回答率は100%で, 患者のいる23施設に2次調査を施行し97.1%の回収率を得た。調査期間は1988年7月より1989年6月までとした。熊本県のPSS患者は80名(男子9, 女子71)で男女比1:7.9, 新患15名, 再来患者65名であった。1988年10月1日現在の熊本県の推定人口によると有病率は入口10万対4.34(男子1.03, 女子7.34), 罹患率0.82(男子0.11, 女子1.45)であった。受診施設では大学病院31.1%, 国公立病院43.3%, 診療所16.7%で, 受診科目では皮膚科57.3%, 内科38.2%の順であった。主要症状で陽性率の高かったのはレイノー症状, 抗核抗体, 強指症, 組織学的硬化, 近位部硬化の順であった。治療としては血管拡張剤が最も頻用され, 次いで副腎皮質ホルモン剤, 消炎鎮痛剤の順であった。
  • —第2報 特定疾患医療受給者証交付申請書による調査—
    野上 玲子, 前川 嘉洋, 伊藤 寿樹, 中村 佳代子
    1991 年 53 巻 4 号 p. 780-784
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    熊本県における全身性強皮症(PSS)の実態を知る目的で, 熊本県衛生部保健予防課の許可を得て1988年7月から1989年6月までの1年間に強皮症, 多発性筋炎·皮膚筋炎として認定を受けた患者の中から強皮症患者の特定疾患医療受給者証交付申請書を選別し, これをもとに疫学調査を行った。PSS患者は86名(男子10, 女子76, 男女比1:7.6), 1988年10月1日現在の県内推定人口10万対の有病率は4.67で, 他県の報告に近似し, 全身性強皮症の分布は全国的に比較的均等であるという従来の報告を裏付けるものだった。また県内保健所管轄区域による有意差はみられなかった。第1報で述べた医療機関に対する調査結果との間に高い一致率および相対比率を示し, どちらの方法も疫学調査として有用で, 信頼性のあるものと考えられた。
治療
  • Terbinafine研究班
    1991 年 53 巻 4 号 p. 785-806
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    Terbinafine(SF86-327)1%クリーム剤の治療効果について皮膚真菌症に対する1日1回塗布療法と1日2回塗布療法との臨床的有効性, 安全性ならびに有用性を比較検討する目的で, 全国22施設共同のもとに試験を実施し, 以下の成績を得た。菌所見ならびに皮膚所見の結果を考慮した総合効果判定における有効率は, 足·手白癬群においては, それぞれ1日1回塗布群で72.2%, 1日2回塗布群で78.4%であった。生毛部白癬(体部白癬, 股部白癬)においてはそれぞれ81.6%と84.6%, カンジダ症〔カンジダ性指間びらん症, 間擦疹型皮膚カンジダ症(乳児寄生菌性紅斑を含む)〕群においてはそれぞれ85.3%と86.7%, 癜風群においてはそれぞれ93.3%と86.5%であった。すなわち, 4疾患群のいずれの疾患群においても二つの治療法群の双方において優れた治療効果が認められ, 二つの治療法群間に有意差はみられなかった。副作用については, 1日1回塗布群において148例中4例(2.7%), 1日2回塗布群において167例中6例(3.6%)に副作用がみられたが, 副作用の発現頻度に有意差は認められなかった。また, 試験薬剤に起因すると思われる臨床検査値の異常変動は, 両群のいずれの疾患群においても認められなかった。総合効果および安全性を考慮した有用率は, 足·手白癬群において1日1回塗布群で72.2%, 1日2回塗布群で78.4%であった。生毛部白癬群ではそれぞれ84.2%と87.2%, カンジダ症群ではそれぞれ85.3%と88.9%, 癜風群ではそれぞれ93.3%と89.2%であった。すなわち, 4疾患群のいずれの疾患群においても高い有用率が認められ, 二つの治療法群間に有意差はみられなかった。以上, 本剤の治療効果と有用率において, 1日1回塗布群と1日2回塗布群との間に有意差は認められず, 1日1回塗布療法は1日2回塗布療法とほぼ同等の治療効果をあげたものと考えられる。したがって, 本剤は1日1回塗布療法においても臨床的に有用性が期待できる薬剤であると考えられた。
  • Terbinafine研究班
    1991 年 53 巻 4 号 p. 807-814
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    アリルアミン系抗真菌剤terbinafine 1%クリームの1日2回塗布による皮膚真菌症に対する有効性と安全性を, 21施設による共同研究のもとに検討した。皮膚所見と菌検査の結果を考慮した総合効果判定における有効率は, それぞれ足白癬で73.4%, 体部白癬で87.4%, 股部白癬で90.1%, カンジダ性指間びらん症で81.3%, 間擦疹型皮膚カンジダ症で89.4%, および癜風で87.4%であった。副作用の発現率は629例中6例(0.95%)であった。有用性はそれぞれ足白癬で78.0%, 体部白癬で89.5%, 股部白癬で92.6%, カンジダ性指間びらん症で79.2%, 間擦疹型皮膚カンジダ症で90.6%, および癜風で89.7%であった。以上の結果から, terbinafine 1%クリーム剤は皮膚真菌症に対し有用な薬剤と考えられた。
  • 松本 忠彦, 中山 樹一郎, 永江 祥之介, 堀 嘉昭
    1991 年 53 巻 4 号 p. 815-818
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    汎発型皮膚そう痒症27例, 慢性蕁麻疹7例, 計34例に自律神経調整剤のグランダキシン®と抗ヒスタミン剤のメキタジンを併用して治療効果を検討した。総症例34例中著明改善および改善が28例(82%), 疾患別では汎発型皮膚そう痒症27例中著明改善·改善が22例(81%), 慢性蕁麻疹7例中著明改善·改善が6例(86%)であった。また, グランダキシンの使用によりCMIの改善が18例中5例(28%)にみられた。副作用は34例中1例(3%)にみられた。以上のように, そう痒, 紅斑, 膨疹などの皮膚症状を示す疾患にグランダキシンとメキタジンの併用療法は高い有用性が認められた。
  • 高田 実, 稲沖 真, 広根 孝衞
    1991 年 53 巻 4 号 p. 819-823
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    PASI scoreが20以上の, エトレチナートおよびPUVAに抵抗性を示す尋常性乾癬5例と乾癬性紅皮症1例および膿疱性乾癬1例を対象に選び, シクロスポリン(CS)含有ソフトゼラチンカプセルを投与し, その臨床的有用性を検討した。CSの初回投与量は5mg/kg/dayとし, 症状の改善に応じて適宜減量した。対象とした乾癬および乾癬性紅皮症の全例においてCS投与後皮膚症状の速やかな改善がみられ, PASI scoreの平均改善率は投与4週後71.7%, 8週後88.7%, 12週後90.7%であった。また, 膿疱性乾癬例においても紅斑および膿疱はCS投与後急速に消退した。いずれの症例においても問題となるような副作用は認められなかった。以上の成績から, CSは重症乾癬および膿疱性乾癬に対して有用な薬剤と考えられた。
  • 上出 良一, 岩田 忠俊, 新村 眞人
    1991 年 53 巻 4 号 p. 824-829
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    重症乾癬患者10例(尋常性乾癬7例, 膿疱性乾癬2例, 関節症性乾癬1例)にシクロスポリン·ソフトゼラチンカプセルを12週間投与し有用性を評価した。初期投与量は5mg/kg/日相当量とし適宜減量した。Psoriasis area and severity index(PASI)は投与開始時, 関節症性乾癬の1例(PASI 11.5)を除いて尋常性ならびに膿疱性乾癬患者9例では24.0∼46.5にわたり, 全例の平均は33.0と高値であった。いずれの症例もPASIの減少は4週後までが著しく, 12週後には, 平均PASIは1.9(平均改善率94.7%)を示し, 6例が完全緩解(PASI 0)と著明な効果が認められた。副作用は血圧の軽度上昇(1例), 下痢·腹痛(1例)が, 臨床検査値異常は尿酸値の軽度上昇(2例)がみられたが, いずれも重篤なものでなかった。有用度は「きわめて有用」8例, 「有用」2例であった。本剤型はコンプライアンスの点でも有用であった。
  • 内藤 しゅう一, 大久保 千真季, 泉 美智子, 本田 智子
    1991 年 53 巻 4 号 p. 830-833
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    PASI 20以上の高度な皮疹を広範囲に有する尋常性乾癬3例, 乾癬性紅皮症1例, 膿疱性乾癬1例の5例にシクロスポリン(以下CYA)を投与し, その臨床的有用性を検討した. CYAは, 症例に応じて3∼7mg/kg/dayの投与量で開始し, 12週間の投与を行った。尋常性乾癬の3例中2例と乾癬性紅皮症の1例において12週後のPASIの改善率が73.3∼97.5%と顕著な皮疹の改善が得られた。また, 膿疱性乾癬の1例においても12週後にはPASIの改善率88.9%と皮疹はほとんど消退した。投与期間中に膿疱性乾癬の1例において毛包炎および口内炎が認められたが, 対症療法により軽快した。以上の結果から, CYAは全身に皮疹の拡大した重症乾癬の治療として有用なものと考えられた。
  • 高路 修, 山田 悟, 中村 浩二, 森田 栄伸, 山本 昇壯
    1991 年 53 巻 4 号 p. 834-836
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    種々の治療に抵抗性の重症の尋常性乾癬3例, 膿疱性乾癬2例に対してシクロスポリン·ソフトゼラチンカプセルを投与し, その有用性について検討した。低用量(5mg/kg/日相当量)の投与にて, 5例中4例に著効を示し, いずれの症例においてもその効果は2週間以内に発現した。また有効例4例中3例(いずれも尋常性乾癬)は4∼8週後3mg/kg/日に減量可能となった。シクロスポリン·ソフトゼラチンカプセルは, 重症乾癬における緩解導入にきわめて有用な薬剤と考えられた。
  • 中川 秀己, 石橋 康正
    1991 年 53 巻 4 号 p. 837-844
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    従来の治療に抵抗性となった乾癬患者および副作用のため従来の治療を中止せざるを得なくなった乾癬患者計12例に対しシクロスポリン(以下CYA)を長期投与し, その臨床的有用性を検討した。CYAは症例に応じて2.5∼5mg/kg/dayの投与量より開始し, 臨床効果, 血清クレアチニン値および血圧などの変化をみて増減した。20∼64週間(平均41.3週間)の連続投与を行った10例では, 投与終了時に9例が「改善」以上であった。また, CYAにより皮疹の十分な改善が得られたため, CYAを一旦休薬し再投与を行った2例では, 初回投与終了時および再投与終了時において2例ともに「改善」以上であった。また, 副作用は, 連続投与10例中4例に, 間歇投与例では2例ともに認められ, 主なものは, 全身倦怠感, 血圧上昇, 多毛などであり重篤なものはなかった。以上の成績より, CYAは慎重に投与すれば難治性乾癬の緩解維持療法剤として有用であると考えられた。
  • 鹿児島地区乾癬研究班
    1991 年 53 巻 4 号 p. 845-851
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬に対するニセリトロールの臨床効果を7施設の共同により検討した。ニセリトロール750mgを4∼10週間投与し, 全症例28例中24例(85.7%), ニセリトロール単独投与14例中13例(92.9%)に皮膚所見の改善を認めた。症状別に重症度をスコアー化しその経時的変化を検討したところ, 各症状ともニセリトロール投与後2週と比較的早期から改善傾向が認められ, 投与期間の延長に伴いさらに著明な改善が認められた。臨床検査成績では25例中17例(68.0%)に, ニセリトロール投与開始時に血清脂質の異常を認め, この内15例(60.0%)はTGの異常であった。さらに, 乾癬の重症度とTGの関係について検討したところ, 中等症では軽症例に比較しTGが高い傾向が認められた。この血清脂質の異常はニセリトロール投与により改善が認められ, TGでは有意の低下を認めた。
  • 中山 樹一郎, 桐生 美麿, 堀 嘉昭
    1991 年 53 巻 4 号 p. 852-858
    発行日: 1991/08/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    1. アトピー性皮膚炎, あるいはアトピー性皮膚炎を基礎疾患にもち, 接触皮膚炎や貨幣状湿疹などの他の湿疹, 皮膚炎を合併した患者20例を対象とし, 塩酸アゼラスチンを原則として1日2mg, 4週間以上投与し, その有効性, 有用性を検討した。結果は最終全般改善度, 有用性ともに75.0%であった。副作用は3例にみられ, その内訳は眠気, 倦怠感, 味覚異常であった。いずれも軽度∼中等度で薬剤の減量ないし中止で症状は速やかに消失した。
    2. 塩酸アゼラスチン投与前の13例の患者について血中のロイコトリエン(LT)値およびヒスタミン値を測定した。LTB4値が特に高値を示した症例が4例あったが, ヒスタミン値はすべて正常人の上限値以内であった。LTB4の高値とIgE値との相関は認めなかった。上記4例中2例は治療後の症状の改善とともにLTB4値は速やかに低値となった。また治療前は正常範囲であったものが, 治療の中断で症状が高度となった2症例にLTB4の高値が認められた。
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