西日本皮膚科
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78 巻, 2 号
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目次
図説
綜説
症例
  • 森坂 広行, 寺石 美香, 佐野 ほづみ, 志賀 建夫, 山本 真有子, 中島 英貴, 松本 竜季, 佐野 栄紀
    2016 年 78 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    76 歳,女性。咽頭痛出現後に下腿に紫斑を生じて当科を受診した。初診時,両下腿から足背に紫斑が散在し,足背には拇指頭大の血疱を認めた。下腿の皮膚生検を施行し,好中球による核破砕性血管炎,蛍光抗体法で真皮浅層細静脈壁に IgA,C3 の沈着を認め,IgA 血管炎と診断した。血液凝固第 XIII 因子の著明な低下および尿蛋白を認めたため,入院のうえ抗生剤の内服治療を行った。紫斑は軽快傾向を示したが,第 6 病日より尿蛋白量の増加とともに紫斑の新生,頻回な鼻出血,眼瞼結膜の出血を生じた。臨床症状と臨床検査結果より播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation syndrome : DIC) と診断し,ステロイドミニパルス療法,トロンボモジュリン製剤投与,第 XIII 因子補充を施行し,続けてステロイド内服投与も開始した。これにより出血傾向や皮疹は改善したが,急速な腎障害を生じたため生検を施行し紫斑病性腎炎の所見を得た。このため,ステロイドパルス療法,シクロホスファミドパルス療法,血漿交換,LDL アフェレーシスを行い急性期は脱したが,慢性腎不全に移行した。第 XIII 因子の活性低下は IgA 血管炎の重症化予測因子として有効である可能性を示す症例であり,入院当初より IgA 血管炎に対してステロイド内服を含めた十分な初期治療を行うことで DIC の重症化および腎機能障害の遷延化を防ぐことができた可能性がある。
  • 佐々木 諒, 伊藤 宏太郎, 今福 信一, 山口 和記
    2016 年 78 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    65歳の男性。繰り返す脳梗塞に対しワルファリンで抗凝固療法中に右下腿に潰瘍を形成した。血清学的に抗カルジオリピン β2 グリコプロテインⅠ抗体,ループスアンチコアグラントの両者が陽性で抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome : APS)が疑われた。入院後の胸腹部造影 CT で腎動脈分岐部より末梢の大血管閉塞がみられたため,抗凝固薬リバーロキサバンによる血栓症のコントロールが不十分と考え,再度ワルファリンに変更した。ワルファリン変更の翌日に意識レベルの低下がみられ,頭部 CT で右側脳室に血腫が認められた。MRI では右後大脳動脈の描出が不良で,出血性梗塞と考えられた。抗凝固療法を継続していたにも関わらず,脳梗塞を繰り返し大動脈の閉塞と下腿潰瘍を発症したのは,抗リン脂質抗体による血栓症に対して抗凝固療法の効果が十分に得られなかった可能性が考えられた。現在ガイドラインは APS による血栓症予防に対しワルファリンによる抗凝固療法,アスピリンによる抗血小板療法などを推奨しているが,自験例,報告例の現状から検討すると APS の血栓症を抗凝固療法で抑制するのは依然難しく,新たな治療法の開発が望まれる。
  • 藤永 瑞穂, 伊藤 亜希子, 島田 浩光, 波多野 豊, 麻生 泰弘, 竹丸 誠, 花岡 拓哉 , 松原 悦朗, 藤原 作平
    2016 年 78 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は 44 歳,女性。主訴は 5 年前からの紅色皮疹(顔面,前胸部,両上肢),1 カ月前からの上腕と下肢の筋肉痛であった。末梢血で筋原性酵素の上昇(LDH 260 IU/l(119~229),アルドラーゼ 7.6 IU/l (2.7~5.9))とミオグロビンの上昇(67.4 ng/ml(25~58))を認め,抗核抗体 80 倍,抗 Jo-1 抗体陰性,抗 Mi-2 抗体陽性(Line blot 法)であった。徒手筋力テスト(MMT)では三角筋 4/4,上腕二頭筋 4/4,大臀筋 4/4 と近位筋の筋力低下を認めた。左上腕二頭筋の筋生検では変性が強く細胞成分に乏しかったものの,臨床所見と合わせて皮膚筋炎と診断した。プレドニゾロン 60 mg/日より内服開始し,皮疹・筋症状ともに速やかに軽快し,検査値も正常化した。ステロイドが奏効した症例であり,悪性腫瘍および間質性肺炎の合併はなく予後良好群に分類したが,慎重にプレドニゾロン漸減中である。
  • 中川 理恵子, 幸田 太, 執行 あかり, 古江 増隆
    2016 年 78 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    64歳,男性。初診の 3,4 年前より顔面,躯幹に褐色丘疹が出現し,近医でステロイド剤,抗真菌剤外用するも改善しないため,当院に紹介された。顔面,前胸部,背部に褐色丘疹が多数みられた。背部の褐色丘疹より生検を行ったところ,病理組織では,真皮血管周囲,毛包周囲に形質細胞の浸潤と,毛包周囲に膠原線維の硝子化がみられた。免疫染色では,IgG 染色陽性形質細胞の半分以上は IgG4 染色陽性だった。血清の IgG4 は,281 mg/dl(4.8~105 mg/dl)と上昇しており,IgG4 関連疾患と診断とした。全身検索を行ったところ,CT で両肺上葉,下葉背側に淡い斑状のすりガラス影,胸膜肥厚,肺門リンパ節,気管傍リンパ節腫大,両側耳下腺内の不均一な結節状の造影効果がみられ,IgG4 関連疾患に伴う臓器障害と考えられた。膠原病内科でプレドニゾロン(PSL)30 mg/日より治療を開始し,肺病変は改善,皮疹も徐々に改善していたが,PSL 8 mg に減量したところで,肺病変が再燃し,皮疹も残存している。IgG4 関連疾患は,全身臓器を侵す全身性疾患であるが,皮膚が初発症状のこともあるため,本疾患が存在することを念頭に置いて診察する必要がある。
  • 上野 あさひ, 小田 佐智子, 濱崎 洋一郎, 籏持 淳
    2016 年 78 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    症例 1:54 歳,男性。3 カ月前より下口唇の腫脹が出現し,近医にて抗ヒスタミン薬内服とステロイド外用で治療を受けるも,改善しないため当科を受診した。初診時,下口唇右側の腫脹を認めた。病理組織学的所見はリンパ球,組織球,巨細胞からなる非乾酪性類上皮性肉芽腫であった。金属パッチテストで亜鉛に陽性を示し,歯科金属除去で改善なく,ロキシスロマイシン,ミノサイクリン,トラニラスト内服で効果がみられなかった。プレドニゾロン(PSL)内服で著明改善し腫脹が消退したので PSL を漸減し中止した。その後一度再燃するも PSL 投与ですみやかに口唇の腫脹は消失し,その後は再燃を認めていない。 症例 2:20 歳,女性。半年前より下口唇の腫脹が出現した。近医にてセレスタミン® とステロイド薬外用で治療を受けるも改善しないため当科を受診した。初診時,下口唇右側の腫脹を認めた。病理組織学的所見はリンパ球,組織球,巨細胞からなる非乾酪性類上皮性肉芽腫であった。金属パッチテストで亜鉛に陽性を示し,トラニラストとロキシスロマイシンの併用内服で 10 カ月後には著明に改善し口唇の腫脹は消退した。その後は再燃を認めていない。
  • 桑代 麻希, 井上 卓也, 木村 裕美, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2016 年 78 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    27歳,男性。双極性障害があり,向精神薬を大量内服して意識を消失した。3 日後の初診時,体温 39.3度,全身の筋肉痛と赤色尿,CK 高値があり横紋筋融解症と悪性症候群と診断された。また四肢伸側の関節部,前額部,前胸部に緊満性水疱とびらん,浸潤性紅斑が散在していた。病理組織学的に表皮下水疱とエクリン汗腺の変性・壊死,真皮浅層への軽度の炎症細胞浸潤を認め coma blister と診断した。横紋筋融解症と悪性症候群に準じた治療を行い,紅斑や水疱,びらんは外用治療のみで治癒した。
  • 宇都宮 亮, 藤山 幹子, 花川 靖, 村上 信司, 白方 裕司, 佐山 浩二
    2016 年 78 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    53 歳,女性。生後3 カ月頃より指趾爪の変形,足底の角化,水疱形成を認めており,35 歳頃より体幹に瘙痒を伴う紅斑が出現した。当科初診時,足底に角化性局面があり,全指趾の爪には混濁肥厚があった。体幹四肢には部分的にびらん化する鱗屑を伴う紅斑が多発していた。足底の角化部位の皮膚生検では角層下の裂隙と表皮上層の細胞質の泡沫状の変性を認め,電子顕微鏡検査で細胞質内のケラチンの凝集を認め,pachyonychia congenita と診断した。体幹の紅斑は尋常性乾癬の病理組織像を示したが,足底角化部と同様に角層下で広範囲に裂隙を認め,表皮上層の細胞では空胞変性を伴っていた。乾癬病変部の角化細胞は,爪や掌蹠と同様に K6/K16 あるいは K6/K17 を発現することから,ケラチン遺伝子の異常が,自験例の乾癬病変部の水疱形成に関与している可能性が示唆された。
  • 上尾 大輔, 本田 周平, 卯野 規敬, 近藤 宣如, 長峯 理子, 大島 孝一, 石川 一志, 波多野 豊, 藤原 作平
    2016 年 78 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    成人 T 細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma;ATLL)慢性型・リンパ腫型と診断されており,急性増悪の約半年前に突然全身に紅斑が多発した症例である。ATLL の皮膚浸潤を疑い 4 回皮膚生検を施行したが,いずれも interface dermatitis を呈し,異型は目立たなかった。薬疹の可能性を考えて,内服薬を全て中止しステロイドの全身投与をしたところ,皮疹は軽快傾向を示すものの消退しなかった。皮疹出現後半年で急性増悪し,予後不良の転帰をとった。後日追加の免疫染色を行ったところ,1 回目の生検組織では CD3,CD4,CCR4,Foxp3,CD25,CD30 陽性の少数の大型異型リンパ球がみられた。2,3 回目の生検組織では異型リンパ球はほとんどなく,CD4/8 比が低下した。4 回目生検組織には少数の大型異型リンパ球が真皮浅層にみられたが 1 回目より少なく,CD8 陽性細胞も多く,ATLL の病変が免疫反応で修飾されたものと考えられた。全経過を通して皮疹が消退することはなく,紅斑性局面は ATLL 急性増悪の予兆と考えられた。
  • 齊藤 華奈実, 佐藤 俊宏, 高木 崇, 河口 政慎, 卜部 省悟, 波多野 豊
    2016 年 78 巻 2 号 p. 156-160
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    75 歳,女性。草刈り後に発熱,嘔吐,意識障害を認め前医に入院した。不明熱の持続,下痢,肝機能障害,血小板減少を認め,重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)疑いにて当院に転院。体温 40 度,全身に紅斑を認め,播種性血管内凝固症候群(DIC),血球貪食症候群/血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic syndrome/hemophagocytic lymphohistiocytosis:HPS/HLH)を併発していた。血清の RT-PCR にて SFTS ウイルスは陰性。日本紅斑熱を疑いミノサイクリン,パズフロキサシンを投与したところ著効した。ペア血清にて紅斑熱リケッチア抗体価は IgM 抗体,IgG 抗体ともに有意に上昇しており,日本紅斑熱と診断した。日本紅斑熱と SFTS は両者ともマダニ媒介性感染症であり,臨床的類似点が多い。本症例を踏まえ,臨床的共通点,相違点を主眼に考察した。
統計
  • 大森 俊, 中村 元信
    2016 年 78 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    クライミングとは,もともと自然の岩を登る行為を指すが,近年では人口壁を用いてスポーツとしての競技性を高めた「スポーツクライミング」が広く普及してきている。クライミングに伴うスポーツ障害として,筋・骨格系の異常については多くの報告があるが,皮膚障害の実態はよく分かっていない。そこで,60 名のクライマー(男性 51 名,女性 9 名)を対象に問診ならびに手足の診察を行った。対象となったクライマーの平均年齢は 33.9 歳,クライミング歴の平均は 40.8 カ月,1 週間あたりの活動時間の平均は 9.1 時間であった。問診の結果,多くのクライマーが手指の表皮剝離を経験していた(93.3%)。皮膚および爪について意識して行っている自己処置については,「こまめな爪切り」が最も多かった(76.7%)。診察の結果,手指の胼胝形成は 90.0%のクライマーにみられ,特に右第 5指 DIP 関節/PIP 関節間が最多であった(68.3%)。足については 83.3%のクライマーで両側第1 趾にアスリート結節がみられ,その長径は 1 週間あたりの活動時間と強い相関があった(r=0.653)。指への負担が大きく,きついシューズを履くという競技特性が皮膚にもたらす影響を明らかにすることができた。本調査結果を皮膚障害の予防,スキンケアの指導に繋げていきたい。
講座
治療
  • 小林 裕美, 柳原 茂人, 田宮 久詩, 中西 健史, 水野 信之, 鶴田 大輔, 石井 正光
    2016 年 78 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2016/04/01
    公開日: 2016/07/07
    ジャーナル 認証あり
    標準治療のみでは改善しない中等症以上のアトピー性皮膚炎患者に,それまでの治療を続けたうえで温清飲あるいは四物湯のいずれかを 4 週間投与して,痒みなどの自覚症状,皮膚症状の重症度および QOL に及ぼす効果を比較検討した。温清飲群 8 例,四物湯群 7 例を解析した結果,痒み,乾燥および睡眠障害の自覚症状は,温清飲群では全てに有意な改善を認めたが,四物湯群では有意な改善が認められなかった。特に,乾燥症状の投与前後の変化量は,温清飲と四物湯の群間比較においても有意差を認めた。皮膚症状の重症度の指標である SCORAD スコアは,温清飲群のみで有意な改善を認めた。TARC 値による評価では,両群共に投与前後の有意な変化はなかったが,温清飲群において投与前中等症(> 700 pg/ml)を呈した 1 例が投与後に軽症(< 700 pg/ml)となった。Skindex-16 による QOL 評価では,温清飲群で「合計」,「症状」および「感情」で,四物湯群では,「合計」,「感情」および「機能」で有意な改善を認めた。 スコアの変化量はいずれも群間の有意差は無かったが,「症状」および「感情」で温清飲群の改善度がより高い傾向を示した。黄連解毒湯と四物湯の合方である温清飲は,皮膚の血行改善や保湿に働く四物湯単独よりも,抗炎症などの作用を有する生薬が加わることにより,アトピー性皮膚炎の炎症,乾燥および痒みを軽減させる作用を発揮し,QOL 改善に貢献できる薬剤であることが示された。
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