症例は26歳,女性。初診の約 2 週間前から左腰部の腫脹と疼痛が出現した。症状は徐々に増悪し,同部から排膿があったため当科を受診した。左腰部に熱感と圧痛を伴う 10 cm 大の紅斑性の腫脹を認めた。 紅斑の中央部からは,黄白色の膿と糞便状の液体が排出されていた。発熱はなく,腹部所見に異常を認めなかった。血液生化学検査では C 反応性蛋白の上昇を認めた。排出された膿の細菌培養検査では
Escherichia coli と
Streptococcus anginosus を検出した。腹部造影 CT 検査と MRI 検査において皮膚と結腸の間に瘻孔が認められ,結腸皮膚瘻による皮下膿瘍と診断した。当院外科で,ドレナージと抗生剤の投与が行われた。注腸造影検査では下行結腸の狭窄と同部から皮膚への瘻孔を認め,大腸内視鏡検査で下行結腸の狭窄と敷石状所見を認めた。臨床経過と検査所見から Crohn 病に伴う結腸皮膚瘻と診断した。抗 TNFα 抗体製剤による治療が開始されたが,狭窄病変の改善が乏しかったため,結腸部分切除術と瘻孔切除術を行った。皮下膿瘍は日常診療でしばしば遭遇する疾患であるが,本症例の皮下膿瘍は Crohn 病による結腸皮膚瘻であった。体幹部に生じた皮下膿瘍では慎重に診察を行い,腸管など深部臓器との連続性が疑われる場合は,安易に切開,排膿を行う前に,積極的に画像検査を行うべきであると考えた。
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