西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
46 巻, 3 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
図説
綜説
  • 飯塚 一, 水元 俊裕, 大河原 章
    1984 年 46 巻 3 号 p. 681-690
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Calmodulinは細胞内カルシウム受容体として近年注目を集めている比較的低分子の酸性蛋白である。この物質は当初cyclic nucleotide phosphodiesteraseの活性化因子として報告され, cyclic nucleotides系の調節因子と考えられたが, 以後Ca++-calmodulin系により制御をうける反応機構が次々と見出されるようになり, 現在calmodulinはCa++の幅広い機能を司る多機能蛋白と考えられている。この蛋白は事実上あらゆる真核動物細胞に存在しており, 表皮においても最近その存在証明がいくつかのグループによりなされた。今後の課題としてcalmodulinが表皮においてどのような働きをしているのか, すなわちcalmodulinにより制御をうける反応機構が何であるかを探ることが残されている。
症例
  • 中村 保夫, 日高 義子, 浜口 次生, 松岡 真吾
    1984 年 46 巻 3 号 p. 691-697
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    9年間の経過を有する39才男子のeosinophilic cellulitis(Wells)の1例を報告した。皮疹は顔面, 躯幹を中心に浸潤性紅斑, 丘疹, 膿疱が広範囲に認められ, 臨床検査所見では末梢血および骨髄の好酸球増多と心肺系の異常が認められた。皮疹部の経時的組織変化はWellsの記載所見に一致し, さらに電顕所見では真皮の血管内皮細胞とリンパ球, 組織球内にmicrotubular structureが証明された。プレドニゾロン内服により, 末梢血好酸球数の正常化とともに皮疹は消退したが, 心肺病変には変化がみられなかつた。現在までの内外報告例の集計と, hypereosinophilic syndromeとの関係について検討を行つた。
  • 功野 泰三, 横山 寧恵, 稲田 修一
    1984 年 46 巻 3 号 p. 698-703
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    29才女子。四肢末端部に角化性鱗屑を有する紫紅色局面を生じ, 病理組織像では, 光顕的には, lichen planus(LP)とlupus erythematosus(LE)の両者の像を示し, 電顕的には, 表皮および真皮の血管基底膜の多層化, 真皮上層の細線維塊, 血管内皮細胞内にパラミクソウイルス様管状構造物の集塊が観察され, LEに近い所見を認めた。また蛍光抗体法では, 表皮基底膜への免疫グロブリンなどの沈着はなく, Civatte小体様物質に一致して免疫グロブリン, C3, フィブリノーゲンの沈着を認めた。臨床検査成績では, γ-グロブリンの増加, RA陽性, 抗DNA抗体陽性を示した。以上より自験例は, LPとLEのoverlapを示し, いわゆるunusual variant of lupus erythematosus or lichen planusと診断した。さらにLPとLEのoverlapを示すと考えられる現在までの報告例をまとめ, 若干の考察を加えた。
  • 伊川 知子
    1984 年 46 巻 3 号 p. 704-708
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Mycobacterium fortuitumによる多発性皮下膿瘍の1症例を報告した。本症例は急性骨髄性白血病(くすぶり型)の寛解期に発症し, 外傷の既往はなかつた。病理組織学的にはほかの非定型抗酸菌症と同様に肉芽腫像を呈した。抗結核剤は無効で, 頻回な排膿と温熱療法は効果があつたと考えられる。全身状態の回復に伴い皮疹は軽快した。
  • 吉見 圭子, 本間 喜蔵, 篠田 英和, 西 寿一, 西本 勝太郎
    1984 年 46 巻 3 号 p. 709-715
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    昭和54年11月から昭和57年12月までの約3年間に当教室で経験した27例のスポロトリコーシスについて報告し, 併せて昭和26年から昭和54年10月までに当教室で経験した43例を加えた総括を行つた。長崎地方のスポロトリコーシスは近年報告が増加する傾向にあり, 年令では10才以下と40∼80才に多く, 男女差はなく, 顔面と上肢に多く, 発症季節は全季節にほぼ均等に分布していた。
  • —自験4例と本邦報告例の集計—
    鹿野 由紀子, 藤廣 満智子, 森 俊二, 前田 学, 北島 康雄
    1984 年 46 巻 3 号 p. 716-722
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Trichophyton violaceum感染症の4例を報告した。症例1は7才男児。前頭部から頭頂部のblack dot ringwormとケルスス禿瘡。症例2は4才女児, 症例1の妹。顔面(右口角から右下顎)の体部白癬。症例3は10才男児。右後頭部のblack dot ringworm。症例4は11才女児。頭頂部のblack dot ringworm。4例とも原因菌は培養所見とスライドカルチャー所見からT. violaceumと同定された。あわせて昭和54年から57年までに本邦において報告されたT. violaceum(T. glabrumを含む)感染症を蒐集し, 渡辺ら(東京大学)の昭和49年から53年までの統計に倣い, 若干の統計的考察を加えた。症例数は71例あり, 男女比は18:53で圧倒的に女子に多く, その平均年令は男子4.4才, 女子31.0才と女子に高かつた。12才以下の症例は43例あり, 男女比は18:25であつた。13才以上の症例は28例あつたが, すべて女子であつた。これらの結果はblack dot ringwormに関する永田ら(熊本大学)の報告に非常に近かつた。
  • 藤田 優, 小林 まさ子, 長谷川 隆, 伊藤 達也
    1984 年 46 巻 3 号 p. 723-726
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    37才男子, 77才男子, 71才女子, 67才女子のいずれも第1指に発生した爪甲下黒色腫の4例を報告した。症例1に外傷, 症例2に抜爪の既往があり, 4例中3例に先行する黒色斑を認めた。臨床, 組織学的にいずれの症例もacral lentiginous melanomaに属したが, 腫瘍部の腫瘍細胞の型はさまざまであつた。臨床的事項につき, 本邦報告例72例の検討も行つた。
  • 井上 普文, 谷 太三郎, 幸田 衞, 植木 宏明
    1984 年 46 巻 3 号 p. 727-731
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Pseudocyst of the auricle (Engel) の5例を経験した。いずれも中年男子で, 臨床, 組織像とも典型的であつた。5例中1例のみは両側性で, その片方は15年の経過をへて内溶液は消失し耳介軟骨の肥厚変形を残し略治していた。全例手術療法を行い経過良好である。本症について悪性化の報告はなく, 患者の希望がなければ放置してもよい疾患と考えた。
  • 青木 重信, 井上 俊一郎, 北島 康雄, 矢尾板 英夫
    1984 年 46 巻 3 号 p. 732-735
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    尋常乾癬の家族内発生例を報告した。症例1は48才男子。症例2は18才女子。症例3は12才男児。組織学的に3例とも, 乾癬として定型的である。家族全員のHLA抗原の検索を行つたところ, 乾癬患者の3例のいずれについてもA 2, BW 46, CW 1, DRW 8のhaplotypeを認めた。従来尋常乾癬において報告されているどのhaplotypeとも異なつていた。
研究
  • 小竹 喜美子, 今林 一美, 高橋 正伸, 相模 成一郎
    1984 年 46 巻 3 号 p. 736-741
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    マウスの腹部皮膚にtape strippingを行つて角質層を剥離した後, その皮膚におけるL細胞の動態をATPase染色法と電顕を用いて観察し, また, その皮膚にDNFBを塗布することにより得られる遅延型接触過敏反応を観察した。その結果, 以下のことが観察された。1) Tape stripping後におけるL細胞の表皮内存在は, (i) ATPase染色上では減数し, その減数は遅くとも4日目には回復する。(ii) 電顕的にはL細胞の表皮内密度は必ずしも低下しているとは断定できないが, tape strippingによりL細胞とK細胞に僅かな形態的変化をみる。2) Tape strippingを行つた皮膚のもつDNFBに対する感作能は, ATPase染色所見に比例する。3) Tape stripping後1日目にDNFBで感作した動物には, 脾細胞内にsuppressor cellが誘導されている可能性がある。以上のことより, C3H/HeNCrj系マウスの皮膚のもつDNFBに対する感作能は, L細胞の表皮内における数のみではなく, そのATPase活性の強さにも比例すると考えられる。
  • 徳永 孝道, 今山 修平
    1984 年 46 巻 3 号 p. 742-747
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    Corrosion cast法を用いてラット皮膚汗腺周囲の微小循環系の構築を走査型電顕によつて観察した。その結果, acrosyringiumの部位にあたるところの微小構築は王冠状に毛細血管が集合しており, そこからの血流は概して2方向にわかれ大部分の血流は最表層の毛細血管網へと戻り残りの血流は汗腺の導管壁にそつて皮膚深部へと下行することが判明した。今回の観察結果は腎近位尿細管とエクリン汗腺のそれぞれの分泌方向と血流の相似性を示唆しており非常に興味深い。
  • 阿部 順一, 野中 延子, 笹井 陽一郎
    1984 年 46 巻 3 号 p. 748-751
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    尋常性天疱瘡における水疱の疱膜裏面および水疱底表面を走査電顕を用いて観察した。水疱底面は一般に平滑で, 円柱状ないし紡錘状の基底細胞が間隙をもつて乱杭状に水疱腔内へ突出する, いわゆる“墓石状の配列”を呈していた。疱膜裏面においては, 水疱腔に面する有棘細胞は少数の微絨毛を有し, 棘突起は減少して全体として球形化し, 水疱腔内へ脱落する過程が観察された。
  • 岡本 光世, 磯田 美登里, 日高 桂子
    1984 年 46 巻 3 号 p. 752-755
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    天疱瘡患者2例の水疱液を採取し, Boyden chamber法を用いて好酸球遊走活性を測定し, 水疱性類天疱瘡患者のそれと比較検討した。その結果, 両疾患はほぼ同程度の好酸球遊走活性を示し, 濃度依存性であつた。Sephadex G-25カラムクロマトグラフィーで分画すると, 天疱瘡水疱液ではビタミンB12マーカーよりやや分子量の大きい分画に活性のピークがみとめられた。この好酸球遊走活性物質はECF-Aとは異なる物質であろうと推測された。
講座
統計
  • 下田 淳子, 植木 宏明
    1984 年 46 巻 3 号 p. 762-768
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    昭和49年3月より, 昭和57年12月までの約9年間に, 川崎医大皮膚科に入院した帯状疱疹患者102例につき, 統計的観察を行つた。年度別発症頻度は, 昭和57年で帯状疱疹患者の占める割合は9.9%であり, 全体的に軽度増加傾向を認めた。発症時期は, 年間を通じてほぼ同じような分布を示し, 性別では, 女子45例, 男子57例で若干男子に多く, 発症年令は20代と60代に多い二峰性ピークを認めた。発生部位は躯幹, ついで頭部顔面に多く, 基礎疾患では, 糖尿病とSLEが目立つた。SLE患者については, 帯状疱疹発症前後のANF, 抗DNA抗体, CH50の推移をみたが, 有意な変動を認めなかつた。また, アンケート調査を施行し, 返答のあつた64例について, 疼痛の残存期間や程度について分析した。皮疹治癒後1ヵ月以内に疼痛が消退した例は73.4%, 6ヵ月以上におよんだものは9.4%であり, 高令者では疼痛が長く残存する傾向がうかがわれた。特殊な例として, 帯状疱疹後脊髄炎の合併例, Ramsay-Hunt症候群についても触れた。
治療
  • —Well Controlled Studyによる検討—
    RS44872研究班
    1984 年 46 巻 3 号 p. 769-782
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    RS44872(硝酸スルコナゾール)クリーム(RS)の臨床的有用性を評価するために全国20施設よりなる研究班を組織し, クロトリマゾールクリーム(CL)を対照薬とし各種皮膚真菌症に対するwell controlled studyを行い以下の成績を得た。足白癬(5週間観察)では最終総合効果および有用性の判定ともWilcoxonの順位和検定によりRSとCLとの間に有意差(p<0.05)が認められ, RSがCLより勝つていた。股部白癬(2週間観察)では最終総合効果および最終菌陰性化率においてχ2検定によりRSとCLとの間に有意差(p<0.05)が認められ, RSがCLより勝つていた。体部白癬, 間擦疹型皮膚カンジダ症および癜風(いずれも2週間観察)ではRS, CL間に有意差は認められなかつた。各疾患におけるRSの有効率は足白癬で84.8%, 股部白癬で96.3%, 体部白癬で71.7%, 間擦疹型皮膚カンジダ症で96.0%, 癜風で91.5%と高い有効率を示した。RS投与群にみられた副作用は3.4%(11/323)で, CLの3.2%(10/316)と同程度であつた。副作用の症状は発赤, 刺激感, 接触皮膚炎, 腫脹感, そう痒などであり, 副作用による中止例はともに3例であつた。以上の成績からRS44872クリームは皮膚真菌症の治療において対照薬クロトリマゾールクリームを上まわる優れた効果を有し, 安全性にもとくに問題はなく, 有用な薬剤であると評価された。
  • RS44872臨床研究班
    1984 年 46 巻 3 号 p. 783-791
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    1) 新しいイミダゾール系抗真菌剤であるRS44872(sulconazole nitrate)クリームを浅在性皮膚真菌症の二, 三の疾患に使用して優れた治療成績を得た。
    2) 足白癬68例では著効, 有効併せて59例で, 有効率86.8%であり, 股部白癬23例で100%, 体部白癬39例で94.9%, 24例の間擦疹型皮膚カンジダ症では95.8%, 26例の澱風で96.2%の有効率を示した。
    3) 副作用については, 足白癬の1例に接触皮膚炎(発赤, 刺激感)が見られたのみであつた。また, とくに問題となるような臨床検査値異常を来した例は認められなかつた。
    4) 以上のことから, RS44872(sulconazole nitrate)クリームは浅在性皮膚真菌症の治療にきわめて有用な薬剤であると結論することができる。
  • RS44872研究班
    1984 年 46 巻 3 号 p. 792-801
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    RS44872クリームの臨床的有用性を評価するため, 10施設よりなる研究班を組織し, 白癬, カンジダ症および澱風について試験を行い, 以下の成績を得た。
    1) 最終判定時における菌陰性化率は足白癬で78.9%, 股部白癬で95.1%, 体部白癬で89.9%, カンジダ性指間糜爛症で94.4%, 間擦疹型皮膚カンジダ症で96.3%, 澱風で92.0%であつた。
    2) 皮膚所見および菌所見を合わせた総合効果判定における有効率は, 足白癬で64.2%, 股部白癬で95.1%, 体部白癬で84.1%, カンジダ性指間糜爛症で83.3%, 間擦疹型皮膚カンジダ症で88.8%, 癜風で90.0%であつた。
    3) 副作用は8例(2.3%)にみられ, 皮膚炎·接触皮膚炎5例, 刺激感2例, そう痒1例であり, 比較的低い発生率であつた。
    4) 臨床効果, 菌所見, 副作用, さらに従来の薬剤の使用経験を考慮した有用性の判定では, 有用率は足白癬で62.4%, 股部白癬で92.7%, 体部白癬で84.1%, カンジダ性指間糜爛症で83.3%, 間擦疹型皮膚カンジダ症で85.2%, 癜風で88.0%であつた。
    5) RS44872クリームは臨床的有効率に優れ, 副作用の比較的少ない有用な抗真菌剤であると考えられる。
  • 中山 管一郎, 末永 義則
    1984 年 46 巻 3 号 p. 802-805
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    1) 0.1% Halcinonide含有アドコルチン軟膏およびクリームを接触皮膚炎, アトピー皮膚炎, 急性湿疹, 日光皮膚炎, 慢性湿疹, 痒疹, 乾癬など21例に使用した。
    2) 有効率は, アドコルチンクリームで100%, 軟膏で92.3%, 全例では95.2%ときわめてすぐれた成績をえた。
    3) 疾患別では痒疹の1例を除き, すべての症例に有効であつた。
    4) 副作用として, 1例にざ瘡様皮疹の発生を認めた。
    5) 以上の点から, かなり有用な外用剤であると考えた。
  • 武石 正昭, 徳永 孝道, 松村 美幸
    1984 年 46 巻 3 号 p. 806-808
    発行日: 1984/06/01
    公開日: 2012/03/21
    ジャーナル 認証あり
    ハルシノニドを0.1%含有するアドコルチン軟膏を湿疹·皮膚炎群19例, 尋常乾癬3例, 計22例に使用し, それぞれ78.9%, 33.3%の有用率を得た。ハルシノニドの臨床的位置づけについては意見の分れるところであるが, 軟膏基剤のものの作用はマイルドで, アトピー皮膚炎などの長期ステロイド外用を余儀なくされる疾患でも比較的に安心して使える製剤であるとの印象を得た。
世界の皮膚科学者
feedback
Top