西日本皮膚科
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68 巻, 2 号
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図説
綜説
症例
  • 渡辺 幸恵, 森田 明理
    2006 年 68 巻 2 号 p. 138-141
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    62歳,女性。1991年2月より顔面・前頚・手背を初発として紅斑が出現し,次第に拡大するため当科を受診した。その後の臨床症状および検査所見から,皮膚筋炎と診断した。同時に,抗トキソプラズマ抗体価の上昇を認めたため,治療経過中にアセチルスピラマイシンとサルファ剤による抗トキソプラズマ療法を併用したが,抗体価に速やかな変動はみられなかった。抗体価は,その後,皮膚筋炎に対してプレドニゾロンの投与が開始され,臨床症状・検査所見が安定するにつれて,ゆっくりと低下していった。皮膚筋炎と診断される症例の一部とトキソプラズマ症との関連が強く示唆されており,その発症に関与している可能性がある。皮膚筋炎の患者の診療にあたる際には,トキソプラズマ症についても念頭に置き,抗体価を測定するのが望ましいと考えられた。
  • 高畑 ゆみ子, 内平 美穂, 山口 道也, 出口 弘隆, 濱本 嘉昭, 武藤 正彦
    2006 年 68 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    54歳,女性。母および姉に神経線維腫症あり。幼少期よりcafé au lait斑を全身に認め,思春期頃より徐々にくるみ大までの半球状に隆起した腫瘤が全身に多発してきた。初診の1年前より背部の腫瘤が急速に手拳大まで増大したため受診。術前胸部レントゲン検査にて胸腔内腫瘤を認め,胸部CT検査及び胸腔穿刺にて胸腔内髄膜瘤と診断した。神経線維腫症では,脊椎の変形を合併しやすく,そのために生じた脊柱の構造上の変形が,髄膜瘤の発生に関与すると考えられ,自験例においても後側弯の著しい部位に一致して胸腔内髄膜瘤の合併を認めた。日常診療で,神経線維腫症患者を診察する際,脊椎変形を合併している症例については,併せて胸部レントゲン検査を行い,髄膜瘤の有無について検討する必要もあると考えられた。
  • 西岡 和恵, 高旗 博昭, 大淵 典子
    2006 年 68 巻 2 号 p. 146-149
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    1歳5ヵ月,男児。出生時より左下肢を主体に右下肢,外陰部,臀部に広範な血管腫を認め,門脈大循環短絡症を伴っていた。血管腫にレーザー治療を受けるも無効で,立位歩行に伴い1歳3ヵ月頃から血管腫が急速に増大,2週間前より血管腫表面の出血が止まり難くなり当院小児科入院,巨大血管腫に起因する播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断で当科紹介となった。当科受診時,左下肢の血管腫のため下肢径の左右差顕著であった。ステロイド内服療法(3~0.5mg/kg/日),放射線療法(1Gy/日,8回照射),さらにINF-α注射療法(50~140万単位/日,18回)を施行されるも血管腫の縮小はなく,DICも持続した。そこで左下肢のテーピングによる圧迫療法を試みたところ,4日目より検査値が改善し,物理的圧迫が有効と考えられた。弾性ストッキングを特注で作製し圧迫を継続したところ,血管腫は著明に縮小しDICも軽快した。
  • —本邦36例のまとめ—
    赤坂 江美子, 太田 幸則, 馬渕 智生, 岩下 賢一, 梅澤 慶紀, 松山 孝, 小澤 明
    2006 年 68 巻 2 号 p. 150-153
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    46歳,女。特発性血小板減少性紫斑病疑いで当院内科通院中。約1年前より下肢および体幹に膿疱を伴う暗紫紅色調の拇指頭大で,結節状に隆起する不整形局面が多数,出没を繰り返していた。組織学的には表皮の不規則な肥厚,真皮全層の好中球とその周囲に組織球・巨細胞が散見された。蚕食性潰瘍,瘢痕はみられなかったが無菌性であったことをあわせて,壊疽性膿皮症(増殖型)と診断した。その後の骨髄像・末梢血所見から骨髄異形成症候群(不応性貧血)の診断に至った。同様の臨床像を呈した本邦報告例について若干の文献的考察を加えた。従来は少ないと考えられてきた増殖型であるが,今回の検討ではMDS合併例のうち約14%が同様の臨床型であり,決して少ない比率ではないと考えた。
  • 仁井谷 暁子, 吉富 惠美, 山田 晶子, 樫野 かおり, 濱田 利久, 荒川 謙三, 物部 泰昌
    2006 年 68 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    症例1,79歳,女性。右頬部に紅褐色のドーム状腫瘤が出現し急速に増大。右頤下リンパ節に転移を認めた。症例2,66歳,女性。左頬部に丘疹が出現し急速に増大。病理組織学的にmalignant lymphomaと鑑別を要し,免疫組織学的にCK20の陽性所見によりMerkel cell carcinomaと診断した。いずれも放射線単独療法により著明に腫瘤の縮小がみられ,現在再発を認めない。
  • 米須 麻美, 川崎 恭子, 半仁田 優子, 丸野 元美, 上里 博, 野中 薫雄, 新濱 みどり, 具志堅 初男
    2006 年 68 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    71歳の女性。2000年5月中旬より左側頭部の紫斑に気付いた。腫瘤を呈してきたため近医を受診した。悪性血管内皮細胞腫の診断で7月初旬当科紹介入院となった。初診時左側頭部に血痂を伴う紫紅色扁平隆起性腫瘤と左前額から頬部にかけて広範囲に紫斑を認めた。rIL-2の動注及び局注,電子線照射にて腫瘤は一旦縮小したが紫斑は周囲に拡大し続け,それと共に血小板減少が出現した。当初播種性血管内凝固症候群(以下DIC)の所見はなかった。薬剤中止後も血小板数は改善しなかったため,薬剤の副作用によるものとは考え難かった。脾腫は無く,抗血小板抗体は陰性であった。紫斑拡大の勢いと平行していたことから,血小板減少の原因を腫瘍内での血小板消費亢進と考えた。多発骨転移を認めた後DICを併発し,11月末,右肺S6転移巣の穿孔に伴う多量の血性胸水貯留による圧迫性無気肺と,両肺への多発転移による呼吸不全で永眠された。
  • 伊藤 宏太郎, 久保田 由美子, 古村 南夫, 中山 樹一郎
    2006 年 68 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    62歳女性。2003年11月,38℃台の発熱,全身倦怠感と共に全身にそう痒を伴う紅斑が出現。異型リンパ球を含む末梢血白血球の増加,杭HTLV-1抗体陽性,高カルシウム血症,ガリウムシンチでの両肺野の集積像などより成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)と診断され当院血液内科に入院。当科初診時,顔面を含む全身にそう痒を伴う丘疹,浸潤性紅斑を認め,前胸部紅斑の生検では真皮上層の血管周囲に異型リンパ球が浸潤していた。急性型ATLLと診断し,種々の化学療法を施行し,初期は皮疹,末梢血所見ともに軽快していたが,再燃を繰り返し,発症10ヵ月後,ATLLの骨髄浸潤により,永眠された。自験例ではATLLの再燃の度に皮疹が先行し,治療開始の指標となった。病理組織学的には再燃の度により深部に異型リンパ球の浸潤が認められた。
  • 井上 卓也, 関山 華子, 三砂 範幸
    2006 年 68 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳の男性。右大転子部にドーム状に隆起する7.5×5cmの硬い皮下腫瘤が認められた。腫瘍辺縁から2cm離して,一部筋組織を含めて腫瘍を切除した。摘出した腫瘍は,明るい細胞質を持つ異型細胞がシート状に増殖していた。Bizzareな核を持つ巨細胞や紡錘形細胞が目立つ部分も認められた。細胞境界が明瞭であり,脂肪染色で一部のみしか陽性所見が得られなかったが,電子顕微鏡にて脂肪滴の存在を証明し,pleomorphic liposarcomaと診断した。さらに,自験例はMiettinenとEnzingerが提唱したepithelioid variant of pleomorphic liposarcomaに一致すると考られた。
  • 岡崎 布佐子, 荒川 謙三, 久山 倫代, 益田 俊樹, 物部 泰昌
    2006 年 68 巻 2 号 p. 171-174
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    32歳女性,左頬部の易出血性腫瘤を主訴に紹介受診した。血管腫を疑いCT,MRI,血管造影を施行し,口角挙筋内の腫瘤の大きさを決定し摘出術を施行した。病理組織より口唇挙上筋内の筋肉内血管腫と診断した。本腫瘍は血管腫のうちでも稀な疾患であり,診断方法について考察した。
治療
  • 宿輪 哲生, 石川 博士, 佐藤 伸一
    2006 年 68 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    MRSA伝染性膿痂疹の治療指針を作製するため,2003年7月~2004年2月に当科を受診した生後9ヵ月~11歳の伝染性膿痂疹25例について滲出液の細菌培養及び感受性検査を行い,CFDN 10mg/kg/日及びMINO 3mg/kg/日の内服の有効性を比較検討した。25例中12例よりMRSA単独,12例よりMSSA,1例よりMRSAとβ連鎖球菌が検出された。CEZ,CTM,CFDN,FMOX,IPMの感受性率はMRSAで0%であったがMSSAでは91.6~100%だった。MRSA及びMSSAともMINO,VCM,STでは感受性率は100%であったが,PCG,ABPC,GMでは20%以下だった。MRSA膿痂疹に対してCFDNは4例中2例に有効で,無効2例はMINOの内服で略治した。また,8例にMINOを投与したところ7例で効果が認められた。一方,MSSA膿痂疹ではCFDNは6例中5例,MINOは6例中5例に有効であった。MINOを内服した16症例中2例に悪心及び下痢がみられた。伝染性膿痂疹に対してはMSSA感染を想定してCFDNの内服を第1選択とし,症状の改善がみられない場合は,MRSA膿痂疹の可能性を考慮しMINOの内服が第2選択と考えられた。
  • 渡辺 昭洋
    2006 年 68 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    2004年2月に承認されたイトラコナゾール(ITCZ)400mg×3サイクルパルス療法は,治療期間は3ヵ月,実際の服薬日数は21日間と大幅なコンプライアンスの向上が期待される治療法である。今回,日常診療においてITCZ 400mg×3サイクルパルス療法の爪白癬に対する有用性を検証するとともに,爪白癬患者の多くが併発しているとされる足白癬に対する有用性も合わせて検討を行った。エントリー症例91例(男性55例,女性36例)中,治療を完結した症例は81例(89.0%)と高い治療完結率が得られた。混濁比の推移は,パルス療法開始後速やかに改善が認められ,3パルス終了後の観察期間中においても経時的に改善が認められた。爪白癬における臨床効果は著効以上で24週目までで58.4%,44週目までで69.7%であった。パルス療法開始1ヵ月後の患者の症状改善に対する評価を聴取したところ,良い以上が爪で70.6%,足白癬で97.1%であった。本療法では1ヵ月からの効果発現が確認された。本治療法は投与初期から爪の混濁比のみならず肥厚や爪全体の色調の改善を多くの症例で経験した。このことは,患者自ら治療効果を実感できるといった観点からもコンプライアンスの向上につながり,爪白癬の治癒率をさらに高めることが出来る治療法と考えられる。
  • 村上 義之, 高梨 真教, 大原 こずえ, 柳本 行雄
    2006 年 68 巻 2 号 p. 185-194
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    従来より美白剤としてハイドロキノンは汎用されてきたが,日本では2001年の規制緩和以降は化粧品成分としても配合されるようになり,その使用はさらに拡大している。しかし,その効果についての報告数に比べ,薬剤の安全性に関する基礎的報告は少ない。今回我々は,「化粧品の安全性評価に関する指針2001」に準拠して,単回経口投与毒性試験,皮膚一次刺激性試験,連続皮膚刺激性試験,皮膚感作性試験,光毒性試験,光皮膚感作性試験,眼刺激性試験,復帰突然変異試験,ヒトパッチテストからなる9項目の安全性試験を行ったので報告する。その結果,ハイドロキノンは皮膚感作性ポテンシャルを有しており,強くはないが皮膚一次刺激性を持った成分と考えられた。
  • 古江 増隆, 今福 信一
    2006 年 68 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    そう痒性皮膚疾患患者64例(蕁麻疹17例,アトピー性皮膚炎25例,その他の湿疹・皮膚炎群22例)を対象として,ロラタジン口腔内速溶錠(クラリチン® レディタブ®錠)の使用感と有用性に関するアンケート調査を行なった。飲みやすさの総合評価については,良いと答えたもの54例(84.4%),どちらともいえない9例(14.1%),悪い0例(0%)であった。本剤の「飲み忘れ」があったものは11例(17.2%),なかったものは53例(82.8%)であり,本剤の「飲み忘れ」の確率は統計学的に有意に少なかった。54例(84.4%)がこの薬を続けたいと答え,その理由(複数回答可)として,「どこでも飲めて便利だから」28例(43.8%),「水がいらないから」25例(39.1%),「1日1回でいいから」23例(35.9%)などをあげた。口腔内速溶錠という剤型によるコンプライアンスの向上が明らかとなった。
  • 宿輪 哲生, 陳 文雅, 佐藤 伸一
    2006 年 68 巻 2 号 p. 199-201
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/15
    ジャーナル 認証あり
    帯状疱疹罹患後の回復期に入り,痛みが軽減するに伴って生じるそう痒の発生頻度と抗アレルギー薬塩酸エピナスチンの有効性について検討した。1999~2000年に佐世保市立総合病院皮膚科を受診した帯状疱疹276例において,中等度以上のそう痒を生じた症例の性別,年齢およびそう痒の発生時期を調査した。また,そう痒を生じた症例に塩酸エピナスチンを20mg/日投与し,有効率を検討した。そう痒の発生率は38例(13.8%)で,男女別では男性15例,女性23例であった。患者年齢は16~88歳,平均58.7歳であったが,そう痒の年齢別頻度に一定の傾向はみられなかった。そう痒を生じた時期は発症後1~31日,平均10.5日で,そう痒の持続日数は4~18日,平均10.1日であった。塩酸エピナスチンを38例に平均10.3日投与し,34例(89.5%)にそう痒の改善が認められた。塩酸エピナスチンは,帯状疱疹に伴って生じるそう痒に対する治療効果があると考えられた。
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