西日本皮膚科
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82 巻 , 6 号
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目次
図説
  • 佐藤 清象, 冬野 洋子, 河野 正太郎, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 401-402
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    患者:45 歳,女性

    主訴:胸背部の紅斑

    現病歴:初診の 25 年前に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)と診断され,20 年前に背部に網状の紅斑が出現した。1 カ月前に皮疹が増悪し,SLE の増悪や薬疹が疑われ当科紹介となった。

    既往歴:SLE

    現症:前胸部,背部中央に軽度瘙痒を伴う網状浮腫性紅斑を認めた(図 1 )。

    臨床検査所見(異常値に下線):WBC 7990/μl(Neut 83.5%Lymp 8.5%,Mono 5.1%,Eos 0.7%,Baso 0.5%),Hb 13.3 g/dl,PLT 25.3×104 /μl,抗核抗体 160 倍,抗 ds-DNA 抗体(-),抗 Sm 抗体(+)C3 71 mg/dlC4 7 mg/dl,CH-50 32.1 U/ml

    病理組織学的所見:角層は正常角化,表皮に部分的に軽度の空胞変性を認め,真皮浅層血管周囲・付属器周囲にリンパ球を中心とした炎症性細胞浸潤を認めた(図 2 )。Alcian blue 染色にて真皮全層性にムチン沈着を認め,特に真皮浅層で豊富に沈着していた(図 3 )。

    診断:Reticular erythematous mucinosis(REM)

  • 丸田 志野, 西 智美, 押川 由佳, 守屋 千賀子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 403-404
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    症例:0 歳 2 カ月,男児主訴:右第 2 趾の腫脹

    現病歴:入浴から約 2 時間後,患児の兄が右第 2 趾の色調変化に気付いた。両親が見たところ第 2 趾基部が絞扼し末梢側が赤く腫れており,救急外来を受診した。患児を入浴させた際異常には気付かなかった。

    初診時現症:機嫌・活気良好。第 2 趾基部に索状痕あり,末梢側に発赤・腫脹を認めた。絞扼部は浅い裂創になっており滲出液が付着していた(図 1 a)。

    診断および治療:第 2 趾を背屈して絞扼部を露出させると,足底側に黒色調の異物を認めた(図 1 b)。鑷子で異物を掴むとまず糸くずが取れて,続いて糸くずに絡みついて毛髪が露出した(図 2 )。毛髪を第 2~3 趾間から足背側へ 1 周回すと抵抗なく外れた。除去した毛髪は約 2.5 cm で両親の毛髪と比較すると非常に細く,長さ・色調は児本人の毛髪と差異なく,児本人の毛髪によるヘアターニケット症候群と診断した。30 分後,索状痕は残存しているが capillary refilling time<1 秒と循環不全を疑う所見は認めず翌日外来受診とした。翌日絞扼部の裂創は閉鎖していたが,腫脹・索状痕は残存したままであった。2 週間後に再診した際は第 2 趾の腫脹・索状痕は消失しておりフォロー終了とした。

  • 江川 清文, 松吉 秀武
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 405-406
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    患者:77 歳,女性

    主訴:右耳介の疼痛,発赤,腫脹と水疱

    現病歴:右耳介に,初診の 1 週間前より疼痛が,2 日前より発赤と水疱が出現した。

    初診時現症:右耳介に疼痛,発赤,腫脹と水疱を認めた(図 1 )。末梢性顔面神経麻痺や難聴,口腔内病変はなかった。

    初診時診断と治療経過:水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus,VZV)抗原検出キットを用いて陽性であり(図 2 ),耳介帯状疱疹と診断した。アメナメビル 400 mg/ 日分 1 とアセトアミノフェン 1200 mg/日分 3 内服を開始して 4 日後(第 6 病日)に末梢性顔面神経麻痺を来したため(図 3 ),後遺症対策から以後の治療を耳鼻咽喉科に委ねた。第 8 病日,柳原法1) による顔面神経麻痺スコアは 40 点満点中 4 点(高度麻痺).プレドニゾロン(PSL)60 mg/日分 3 内服から漸減し,1 週間後(第 15 病日)に顔面神経管開放術適応の有無が検討されたが,麻痺スコアが 22 点と改善し,神経筋電図検査(ENoG)値が 33.5%であったため1),PSL の予定内服終了後はシアノコバラミン 1500 μg/日とアデノシン三リン酸二ナトリウム水和物 300 mg/日の分 3 内服で経過観察とした。12 週経過時,麻痺スコアは 40 点(治癒:図 4 )で,疼痛はない。

綜説
症例
  • 中村 紗和子, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 418-421
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    症例は 38 歳,女性。6 年前から腸管浮腫による腹痛を反復するようになった。血液検査で C1 インヒビター(C1-INH)活性が低下していたことと,母・姉に遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:以下HAE)Ⅰ型の既往があったことから,前医で同症と診断され,出産時などに C1-INH 製剤の投与を受けていた。予防内服としてトラネキサム酸 1500 mg/日を行っており,転居に際し加療継続のため前医皮膚科に紹介され,精査の目的で当院を受診した。血液検査では,C4,C1-INH 活性および定量がいずれも低値であり,HAE I 型として矛盾しない結果だった。さらに,遺伝子検査を行った結果,患者の SERPING1 遺伝子にミスセンス変異 c. 449C>T(p. Ser150Phe)がヘテロ接合型で同定された。本変異は過去に欧米人の HAEⅠ型の家系にも同定されていたことから,病的変異の可能性が極めて高いと考えられた。現在トラネキサム酸 1500 mg/日の予防内服を継続し,発作の発症なく経過している。HAE の発症機序は通常のⅠ型アレルギーとは全く異なり,発作時の治療法も特殊であることから,疾患について医療従事者に広く周知するとともに,患者の住居の近隣の総合病院に C1-INH 製剤を常備するなどの体制を整えることが求められる。

  • 川﨑 彩加, 佐藤 絵美, 吉村 郁弘, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 422-425
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    刺青が皮膚の局所感染症,ケロイド,異物肉芽腫などさまざまな皮膚症状の誘因となることは広く知られている。刺青上に局所的に生じる肉芽腫反応は刺青肉芽腫(tattoo granuloma)と呼ばれるのに対し,肉芽腫病変に加えサルコイドーシスに特徴的な全身症状や検査値異常を伴うものは刺青サルコイドーシス(tattoo sarcoidosis)と呼ばれる。症例は 35 歳の男性,当科初診 1 年前に入れた刺青部分が初診 4 カ月前より一部隆起していることに気付いた。その後視力低下も出現し,前医でぶどう膜炎を指摘された。サルコイドーシスが疑われ,当科での皮膚生検より刺青サルコイドーシスと診断した。sIL-2R や ACE 上昇も認め,胸部 CT では肺野間質に沿った粒状影も認めた。刺青肉芽腫に比較して刺青サルコイドーシスの報告は本邦では少なく,自験例を含め 17 例のみであった。刺青肉芽腫では赤色の刺青部分に皮疹を生じることが多いのに対し,刺青サルコイドーシスでは黒色の刺青の色素の濃い部分に皮疹を生じることが多いと報告されている。それぞれの色素に使用されている成分により肉芽腫を形成するメカニズムが異なり,全身性のサルコイドーシスまで引き起こすかを左右するのではないかと考えた。

  • 與語 晶子, 中原 真希子, 中原 剛士, 坂本 佳子, 桐生 美麿, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 426-428
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    62 歳,男性。数年前から頭頂部に自覚症状のない結節を認めており,徐々に拡大していた。初診時,直径 1 cm のドーム状で常色~淡紅褐色の皮膚結節を認めた。摘出した同部位の病理組織像では,真皮内に脂腺導管を介して放射状に増生する脂腺小葉がみられた。また,その外側に裂隙がみられ,周囲の膠原組織内に毛細血管の増生と脂肪織が一部取り込まれる所見を認め,病理所見より Folliculosebaceous cystic hamartoma(FSCH)と診断した。また,本症例では,FSCH に隣接して外毛根鞘囊腫がみられた。 FSCH に他の皮膚腫瘍が合併する例は少数の報告があり,それらの原因ははっきりしないものが大半である。FSCH と外毛根鞘囊腫には,発現部位が近いことや囊腫構造を持つなどの共通点があり,遺伝子変異を含め,なんらかの関連性があるのではないかと考えた。

  • Conventional GCT とNon-neural GCT
    横手 銀珠, 古賀 哲也, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 429-432
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:57 歳,男性。左胸部に 11×10 mm の褐色隆起性病変を認め,その皮下に左右 30 mm の索状皮下結節を触れた。索状皮下結節より 3 mm 離し筋膜直上レベルで切除した。病理所見では真皮に比較的境界明瞭な好酸性顆粒を有する大型の腫瘍細胞が増殖し,また表皮の偽癌性増殖を認め,免疫組織化学染色で S-100 蛋白陽性より conventional granular cell tumor(GCT)と診断した。症例 2:75 歳,女性。左腋窩に 10×6 mm の赤褐色のポリープ状腫瘤を認めた。腫瘍辺縁より 2 mm 離し,皮下脂肪組織下層レベルで切除した。病理所見では真皮に好酸性顆粒を有する腫瘍細胞が増殖し,PAS 染色陽性,免疫組織化学染色では,腫瘍細胞は NKI/C3(CD63)に陽性,一方,S-100 蛋白,CD68,HMB45,MelanA はすべて陰性であったことより non-neural GCT と診断した。近年,S-100 蛋白の有無により GCT は従来の conventional GCT とnon-neural GCT の 2 型に分類され,conventional GCT は症例 1 のような表皮肥厚や偽癌性増殖を伴うことが多く,non-neural GCT は症例 2 のようにポリープ状腫瘤を示すことが多い。臨床像が異なる GCT 両型の 2 例を報告し,異なる腫瘍の起源,表皮肥厚反応などを考慮すれば,GCT の臨床診断の一助になるかと考えた。

  • 橋本 弘規, 江藤 綾桂, 永江 航之介, 仲本 すみれ, 佐藤 友紀, 大野 文嵩, 大野 麻衣子, 伊東 孝通, 古江 増隆
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 433-437
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    細胞癌は一般的に発育が緩徐であるが,被髪頭部発生例では気づかれず巨大化することがあり,注意が必要である。 79 歳,女性。2 年前から前頭部に腫瘤を自覚した。前医での皮膚生検で基底細胞癌と診断され,当科を紹介受診した。黒色腫瘤の周囲に遠心性に拡大する色素斑を認め,辺縁から 5 mm 離して全切除した。病理組織学的検査で腫瘤部だけでなく周囲の色素斑にも異型な基底細胞様細胞が胞巣状に増殖していた。自験例は腫瘍径 5 cm 以上の巨大基底細胞癌であり,中央の腫瘤部と周囲の色素斑で組織型が異なる。基底細胞癌は一般的に発育が緩徐であるが,被髪頭部発生例では気づかれず巨大化することがあり,注意が必要である。

  • 宮崎 愛子, 加藤 裕史, 真柄 徹也, 中村 元樹, 森田 明理
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 438-441
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    50 歳,男性。10 年以上前に生じた左側頭部の腫瘍が,数カ月前から増大したため,近医を受診した。 切除生検が施行され,皮膚病理検査の結果から隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans,以下 DFSP)と診断され,当院に紹介となった。局所麻酔下に腫瘍辺縁より側方は 3 cm マージン,深部は可能な限り骨膜上で腫瘍を切除し,人工真皮で保護した。切除後病理所見としては,生検標本と同様の所見,すなわち DFSP であり,下床マージンを含めて,断端陰性であることの確認を行った。下腹部から採皮し,全層植皮術で再建した。その後再発を認めていない。DFSP は体幹に発症することが多く,頭頚部に生じる例は比較的稀である。特に頭部に生じた場合には垂直方向のマージンの設定が困難となることをしばしば経験する。当科で経験した 44 例の発症部位も解析し,若干の考察と併せて報告する。

  • 松田 杏奈, 安野 秀一郎, 中野 純二, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 442-445
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    症例は 67 歳,男性。当科初診の約 1 年前から右前腕に隆起性病変が出現。腫瘤は徐々に増大した。当科初診の 1 カ月前に,右前腕を打撲後,病変部から出血が持続し,前医を受診した。悪性腫瘍が疑われ,当科を紹介され受診した。右上腕伸側に約 60 mm の弾性硬の広基性一部有茎性の腫瘤を認め,易出血性で内部に黄色石灰化様粒状物が露出していた。画像検査でリンパ節転移や遠隔転移を認めなかった。全身麻酔下で十分な切除マージンを確保し,腫瘍全摘切除術を施行し人工真皮を貼付した。切除断端陰性を確認した後に分層シート植皮術を行った。臨床および病理組織学的所見から pilomatrix carcinoma と診断した。Pilomatrix carcinoma は非常に稀な毛母分化を示す悪性腫瘍である。治療は拡大切除術が望ましいが,その標準的なマージンは決まっておらず,術後補助療法も確立されていない。再発や転移を起こすことがあるので,術後の慎重な経過観察が必要と考える。なお,切除標本から抽出した DNA を用いての遺伝子解析で β-catenin(CTNNB1)遺伝子にミスセンス変異が同定されたことから,pilomatricoma と同様に,pilomatrix carcinoma でも Wnt シグナルの過剰な活性化が起きていることが強く示唆された。

  • 田中 由華, 安野 秀一郎, 奥田 未加子, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 446-450
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    56 歳,男性。当科初診の約 1 カ月前に左下腿に紅色結節を自覚した。結節部からの皮膚生検組織のヘマトキシリン・エオジン染色で,真皮に大型の核を持つ好塩基性の腫瘍細胞の地図状増生が認められた。 さらに,免疫組織化学染色で,腫瘍細胞はサイトケラチン 20 とクロモグラニン A が陽性だったため, メルケル細胞癌と診断した。また,腫瘍組織内に Merkel cell polyomavirus(MCPyV)が検出された。CT では,所属リンパ節転移や遠隔転移は認められなかった。生検後より結節は徐々に縮小し,1 カ月でほぼ消退し瘢痕化したが,瘢痕部の辺縁から 2 cm マージンで拡大切除術および全層植皮術を施行した。切除後の病理組織学的所見では腫瘍細胞は完全に消失しており,自然消退したと考えた。過去の自然消退した報告例で MCPyV を検索した症例は 2 例しかなく,自然消退との関連は言及できない。今後も再発・転移の可能性を考慮しながら注意深い経過観察を要する。

  • 加来 裕美, 永瀬 浩太郎, 森 槙子, 井上 卓也, 成澤 寛
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 451-454
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    83 歳,女性。初診の 4 日前から体幹に紅斑および水疱が出現し,徐々に全身に拡大した。成人 T 細胞性白血病リンパ腫(adult T cell leukemia/lymphoma:ATLL)の既往あり。初診時,皮疹の臨床形態から水疱性類天疱瘡や薬疹,ATLL の特異疹・非特異疹を疑った。しかし,その 3 日後より左三叉神経第 2, 3 枝領域に特徴的な帯状の浮腫性紅斑,水疱の多発を認め,さらに全身の水疱数カ所で Tzanck test 陽性所見が得られたため,自験例を ATLL 患者に生じ汎発疹が先行した汎発性帯状疱疹と診断した。帯状疱疹は,水痘発症後に脊髄後根神経節に潜伏感染していた水痘帯状疱疹ウイルスが免疫抑制的な機転により再活性化して発症する。ウイルスが増殖しウイルス血症を来した場合に,通常の帯状疱疹の皮疹に加え全身に散布疹を伴うことがあり,汎発性帯状疱疹と呼ぶ。これまでに国内外を含めて,自験例ほどの高度な汎発疹を呈した汎発性帯状疱疹の報告例は調べえた限り認めない。また,自験例では帯状皮疹に先立って高度な汎発疹を形成しており,その非典型的な臨床像と病状経過について考察する。

  • 小松 恒太郎, 山口 さやか, 内海 大介, 大嶺 卓也, 砂川 文, 粟澤 剛, 大城 健哉, 高橋 健造
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 455-459
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    壊死性軟部組織感染症は比較的まれな疾患である。我々は 6 カ月間で 4 例を経験し,3 例を救命できた。4 例の初診時主訴は多彩であり,明らかな感染徴候がない例,発熱・嘔吐・下痢など急性胃腸炎様症状を呈した例など,発症初期には軟部組織感染症を疑うことができなかった症例が存在した。1 例は搬送時に全身状態が悪くデブリードマンを行えず死亡,3 例は緊急デブリードマンを行い救命できた。診断には A 群 β 溶血性連鎖球菌抗原キット検査が全例陽性であり非常に有用であった。血液検査では好酸球数の著明な低下と CRP 高値が 4 例に共通していた。A 群 β 溶血性連鎖球菌による壊死性軟部組織症は,初期診断が困難な症例があるが,治療が遅れると致死率が高く,早期診断が重要である。

  • 谷本 尚吾, 川上 佳夫, 安富 陽平, 山﨑 修, 森実 真
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 82 巻 6 号 p. 460-463
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/05
    ジャーナル 認証あり

    71 歳,男性。2018 年 8 月上旬に,瀬戸内海での漁で網にかかったナルトビエイ(Aetobatus narutobiei)を外していた時に,尻尾の棘が左小指の基部に刺さった。直後に海水で洗浄し,しばらく自宅で様子をみていたが,同部位が次第に腫脹してきたため,1 カ月半後に当科を受診した。初診時,左小指 MP 関節の背側に中心がクレーター状に陥凹し,潰瘍化している 15×14 mm の紅色結節を認めた。組織片を 2%小川培地に接種し,30℃と 35℃の条件下で培養を行ったところ,いずれの条件下でも 28 日目に灰白色のコロニー形成を認め,MALDI-TOF MS のマススペクトルのパターンから Mycobacterium marinum と診断した。皮膚病変はミノサイクリン塩酸塩(200 mg/日内服を 3 カ月間)を投与して完治した。エイ刺傷は,その鋭利な尾棘による損傷と刺毒による炎症を特徴とし,創部感染のリスクもある。近年ナルトビエイの瀬戸内海での生息域の拡大が問題視されている。そのため,エイ刺傷への対応を知ることは大切である。

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