西日本皮膚科
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65 巻, 6 号
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図説
症例
  • 中村 充貴, 中野 純二
    2003 年 65 巻 6 号 p. 543-545
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
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    生後3日,女児。出生時よりほぼ全身に浸潤を伴わない暗赤色紅斑が認められ,腹部,下肢では一部網状,大理石紋様を呈していた。人中部と下口唇には,火焔状母斑が認められた。皮疹部の陥凹·萎縮はなかった。大頭症,前額突出を伴っていた。組織学的に真皮上層から中層にかけ,毛細血管の増生と拡張が認められた。大頭症を伴う先天性血管拡張性大理石様皮斑の中には出生後の高度な発育障害や,致死性不整脈により,突然死する症例も報告されており,注意深い観察を要す。
  • 室井 栄治, 室田 浩之, 濱崎 洋一郎, 片山 一朗, 一ノ瀬 弥久
    2003 年 65 巻 6 号 p. 546-549
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    33歳,女性。2002年4月1日,右手首に箸による刺入創を負った。創閉鎖後,徐々に右手の腫脹,灼熱痛が出現した。当科初診時,右手は僅かに紅色,光沢を伴い,皮膚硬化を認め,関節は拘縮のため自動運動が不可能であった。皮膚生検にて膠原線維の肥厚,均質化を認め,単純レントゲンで骨萎縮,骨シンチグラムで異常集積,サーモグラフィーで皮膚温上昇などの所見を示し,病歴とあわせ反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy: RSD)と診断した。星状神経節ブロック,リハビリ等の組み合わせによる治療を行い臨床症状の改善を認めた。
  • 中村 郁代, 米澤 智一, 東 裕子, 吉井 典子, 宇宿 一成, 金蔵 拓郎, 神崎 保
    2003 年 65 巻 6 号 p. 550-553
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    43歳,男性。当科初診の1ヵ月前より右第3指の黒色変化と手指のこわばりが出現。初診時,右第3指末端の壊疽,左手指の指尖陥凹性瘢痕,右第4,5指以外の手指末端の短縮,手指全体の光沢のある腫脹,爪周囲のチアノーゼ,点状出血,前腕の皮膚硬化を認めた。抗Scl-70抗体198.5 Index(<16),抗核抗体640倍(<20)であった。右第3指背側の生検にて真皮から皮下にかけて膠原線維の増生を認めた。胃内視鏡検査にて逆流性食道炎が認められた。以上より,全身性強皮症と診断した。一方,指の壊死が急速に拡大してきたため,上肢の血管造影を施行,右尺骨動脈の手首部位での途絶とその他の動脈の先細り像がみられ,バージャー病が考えられた。以上より,全身性強皮症とバージャー病の合併と考えた。両者の合併は稀少で過去本邦にて2例しか報告されていない。
  • 大川 毅, 森 徹, 中房 淳司, 三砂 範幸
    2003 年 65 巻 6 号 p. 554-557
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例:47歳男性。1985年頃より腋窩·陰部にそう痒を伴う紅斑·小水疱が出現し,その3年後に当院でヘイリー·ヘイリー病の診断を受けた。2001年1月より鼠径部·腋窩·肛囲に多数の小結節が出現し,恥丘部に約3cmの腫瘤を形成した。病理組織学的に悪性化の所見は認めず,尖圭コンジローマと診断した。
  • —糖尿病性腎症で透析中の患者にみられた2例—
    高倉 桃子, 佐々木 哲雄, 掛水 夏恵, 山川 有子, 長谷 哲男, 池澤 善郎
    2003 年 65 巻 6 号 p. 558-562
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 69歳女性。糖尿病性腎症にて血液透析施行中。透析導入4年後よりそう痒性皮疹が出現し,ステロイド局注や冷凍凝固療法を施行されたが,難治性のため当科初診。背部から両側腹部にかけて,中央部に壊死を伴う拇指頭大までの痒疹を認め,一部周囲に発赤を伴う部分を認めた。ケブネル現象陽性。病理組織学的に毛包と連続する経表皮的排出像を認めacquired reactive perforating collagenosis(ARPC)と診断した。ミノサイクリン1日200mg内服を開始し,3週間後にそう痒が軽快し,皮疹も色素沈着を残し軽快した。症例2: 66歳男性。糖尿病性腎症にて血液透析中。透析導入7年後より症例1と同様の皮疹を背部に認め,病理組織学的にもARPCと診断した。ミノサイクリン1日200mg内服を開始し,皮疹は軽快した。ARPCにミノサイクリンが有効であるという報告はこれまでみられていないが,ミノサイクリンの多彩な作用機序からも今後試みる価値のある治療法と思われる。
  • 石上 剛史, 浦野 芳夫, 山之内 浩司, 田村 利和
    2003 年 65 巻 6 号 p. 563-566
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    29歳,女性。2002年6月,歯科医院にて左下顎智歯周囲炎を治療中,左頬部の腫脹が出現し,急速に両側頚部に拡大してきたため同日当科紹介受診。初診時,左頬部から両側頚部にかけて腫脹し,触診にて握雪感を認めた。CTで上咽頭から上縦隔に広範囲に皮下気腫がみられ,縦隔内にもガス像を認めたため,歯科治療に使用したエアシリンジによる皮下気腫および縦隔気腫と診断した。予防的にレボフロキサシンを投与し6日目には腫脹は消退した。歯科治療により顔面から頚部の皮下気腫が生じることがあることを知っておく必要があると考える。
  • 三角 修子, 松井 珠乃, 小野 友道, 佐藤 圭創, 菅 守隆
    2003 年 65 巻 6 号 p. 567-569
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    43歳男性。気道損傷を伴った顔面,四肢のII度からIII度の熱傷受傷(受傷面積44%)で治療経過中,アスペルギルス肺炎を併発した。当初細菌性肺炎に対する加療を行ったが,良好な反応を示さなかった。血清β-Dグルカン値(ファンジテック®G-テスト)の上昇,喀痰中のアスペルギルス抗原陽性を認め,また喀痰の性状や臨床経過よりアスペルギルス肺炎の合併を考えAmphotericinB(以下AMPH)の投与を開始した。胸部X線にて肺野の透過性の改善,さらに患者の全身状態の改善をみた。
  • 福島 聡, 三宅 大我, 影下 登志郎, 小野 友道, 栗崎 道紀
    2003 年 65 巻 6 号 p. 570-573
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    乳児汎発性膿疱性乾癬と診断された10ヵ月の女児。活性型ビタミンD3外用剤マキサカルシトール軟膏の外用治療により皮疹の著明な改善をみたが,治療開始10日後より血清Ca値が上昇,16日後には12.8mg/dlと高Ca血症を来した。外用中止後同値は正常化したが皮疹の再燃をみた。タカルシトール軟膏外用に変更するも改善しないためカルシポトリオール軟膏を併用し,皮疹は軽快した。乳児汎発性膿疱性乾癬において活性型ビタミンD3外用剤は有効な治療法であるが,広範囲に外用する際は血清Ca値を注意深くモニターすることが重要である。
  • 雄山 瑞栄, 小田 真喜子, 清島 真理子, 鈴木 達也, 佐々 敏
    2003 年 65 巻 6 号 p. 574-577
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    44歳,女性。心不全のため循環器科入院中に,顔面,頚部の紫斑を主訴として皮膚科を受診した。顔面から前胸部にかけて紫斑が,また頭皮に脳回転状の変化がみられ,ともに生検でアミロイドの沈着を認めた。また胃生検でもアミロイドの沈着がみられた。血清よりM蛋白,尿中よりBence-Jones蛋白(ともに抗L-λ抗体陽性)を検出したが,多発性骨髄腫を伴わないことより,原発性全身性アミロイドーシスと診断した。その後,メルファラン·プレドニゾロンによるMP療法を受けたが,皮疹については無効であった。
  • —結節性硬化症におけるAngiofibromaとの比較検討—
    小楠 優子, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2003 年 65 巻 6 号 p. 578-582
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    症例は53歳女性。初診の約10年前より鼻尖部に淡紅色,半球状の小結節が出現した。病理組織学的には,膠原線維および毛細血管の増生,真皮内に散在する星芒状細胞を認めた。以上の所見より,fibrous papule of the nose(以下FPN)と診断した。また自験例においては,病理組織学的に, perifollicular sheathの拡大を伴う異常な形態を示す毛包を認め,本症がfollicular hamartomaであるとの考えを支持するものと考えられた。さらに,結節性硬化症の血管線維腫とFPNとは同一とする考えがあるため,当科での過去の血管線維腫2例について病理組織学的に検討を加えた。その結果,2例のうち1例にfollicular hamartomaの所見を認めたが,もう1例には認めなかった。したがってfibrous papule of the noseの中の一部にはfollicular hamartomaの性格を伴うものが含まれるのではないかと考えた。
  • 古賀 佳織, 久保田 由美子, 中山 樹一郎, 山口 隆広, 岩崎 宏, 桐生 美麿
    2003 年 65 巻 6 号 p. 583-585
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    58歳男性の頭頂部に生じたtrichoblastomaの1例を報告した。4年前よりある頭頂部の自覚症状を欠く常色丘疹が増大してきたため当科受診。頭頂部に0.7×0.7×0.5cm,弾性軟,表面平滑,毛細血管拡張を認める球状の桃紅色腫瘤を認めた。腫瘤は容易に剥出でき,病理組織学的には,ドーム状に隆起するほぼ左右対称で境界明瞭な腫瘍巣がみられた。腫瘍細胞は胞巣状に増殖し,腫瘍内部には毛芽様構造が複数認められた。Ackermanの定義に従い,trichoblastoma, large nodular typeと診断した。抗サイトケラチン(CK)モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色の結果は,CK 8に陽性でCK 19,CK 20は陰性であった。
  • 荒尾 友美子, 清水 昭彦, 久保田 由美子, 中山 樹一郎, 桐生 美麿
    2003 年 65 巻 6 号 p. 586-588
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    79歳の女性。初診の2週前,右頬部の自覚症状のない皮下結節に気づいた。臨床像,超音波検査より神経性腫瘍が疑われたが,病理組織学的所見より副耳下腺に発生したpleomorphic adenomaであることが判明した。現在まで術後局所再発は認められず,顔面神経の損傷を思わせる所見もない。副耳下腺の解剖学的位置関係および副耳下腺腫瘍の存在を知ることは頬部皮下腫瘤を扱う上で重要だと考えられる。
  • 加賀谷 真起子, 嵯峨 賢次, 鎌田 麻子, 兼古 理恵, 大森 房之, 神保 孝一, 西東 崇雄
    2003 年 65 巻 6 号 p. 589-591
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    53歳,男性。1999年に左下腿,2002年に右下腿の皮疹が出現。臨床的に,表面凹凸不整な褐色の肉芽腫様浸潤性局面があり,多数の瘻孔が開口していた。病理組織では,表皮索の延長,角質を含む嚢腫の形成,真皮·皮下組織の慢性炎症像等を認め,慢性膿皮症と診断した。自験例では両下腿に限局して病変が認められ,陰股部,腋窩,項部,頭部等,慢性膿皮症の好発部位には同皮疹は認められなかった。
  • —真皮内に菌糸性菌要素を呈した例—
    凌 太郎, 中房 淳司, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2003 年 65 巻 6 号 p. 592-594
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    60歳の男性。2001年9月頃,左上腕内側に小結節を認め,虫刺症の診断にて副腎皮質ステロイド外用剤を塗布したが改善なく当科を受診した。生検組織標本にて真皮内に多数のsclerotic cellを認めchromoblastomycosisと診断した。治療は切除術を施行し,術後1年経過するも再燃を認めていない。原因菌はFonsecaea pedrosoiと同定した。本菌は通常真皮内ではsclerotic cellの寄生形態をとるが,自験例は基礎疾患がないにも関わらず,多数の組織内菌要素に加えその一部に菌糸性菌要素を認めたことが特徴的であった。
統計
治療
  • 村上 義之, 高梨 真教, 湧川 基史
    2003 年 65 巻 6 号 p. 599-604
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    近年,多汗症の治療にボツリヌス菌毒素製剤が使用され,他の保存的治療や外科的治療に代わる簡便で,安全かつ有効な治療であることが報告されてきている。ボツリヌス菌毒素製剤の表情皺への投与に比べると,多汗症での注入法·注入量の基準は未だ確立されているとは言い難い。今回我々は4例の掌蹠多汗症患者に対してDysport®を用いて,その注入法や注入量を検討した。先ず掌蹠多汗症患者に対してDysport®を1単位/0.2 mlの濃度で1.5~2cm間隔で注入を行ったが,腋窩多汗症患者に対する効果と比較すると安定した効果が得られなかった。そこで薬剤濃度を変えて試験紙による発汗抑制範囲を比較し,その結果をもとに1単位/0.1mlの濃度で1cm間隔での注入に変更したところ,臨床効果の改善が得られるようになった。しかし,中には同様の治療法にても効果の乏しい症例もあるため,今後さらなる注入法や注入量に関しての検討が必要と思われた。
  • 関山 光弘, 神崎 保
    2003 年 65 巻 6 号 p. 605-609
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    14員環マクロライド系抗生物質ルリッド®のざ瘡に対する治療効果を検討した。16歳以上の炎症性(顔面に炎症性ざ瘡が10個以上)および非炎症性(顔面に炎症性皮疹が10個未満で散在している程度)のざ瘡患者を対象とした。投与方法は2錠(300mg)/日を2~4週間投与した後,症状改善傾向が認められた例は1錠/日に減量し,さらに8週まで長期維持投与した。炎症性ざ瘡および面皰は投与2週後に有意に個数が減少し,その後8週まで漸減した。全体の有効率は70.5%(31/44)であり,炎症性ざ瘡では75%(21/28),非炎症性ざ瘡では64.3%(9/14)であった。4週以降8週まで長期維持投与を行い有効性評価が行えた症例の有効率は,炎症性ざ瘡で73.7%(14/19),非炎症性ざ瘡で54.5%(6/11)であった。副作用は,1例に眠気が認められた。以上より,ルリッド®の12週までの長期維持投与では安全性に特に問題がなく,炎症性ざ瘡および面皰を主とした非炎症性ざ瘡の治療に有用な投与法であると考えられる。
  • 名嘉眞 武国, 西岡 昭二, 橋本 隆
    2003 年 65 巻 6 号 p. 610-615
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    老人性皮膚そう痒症(65歳以上)患者に対して塩酸セチリジン(ジルテック®)の有効性と安全性について検討した。オキサトミド(セルテクト®)と比較検討した結果,有用性,全般改善度とも4週後には両剤とも有意な改善が認められた。全般改善度において,塩酸セチリジン投与群がオキサトミド投与群よりも2週後から4週後にかけて有意な改善が認められた。また塩酸セチリジン投与群では,18例中12例(66.7%)において,高齢者に対して推奨されている低用量5mgで皮膚所見の有意な改善が得られた。さらに通常量の10mgに増量した3例中2例は著明改善,1例は不変であった。副作用は,塩酸セチリジン投与群では18例中1例にしびれ感,オキサトミド投与群では20例中2例に眠気を認めたが,ともに投与中止後,速やかに改善した。以上の結果より塩酸セチリジンは老人性皮膚そう痒症に対して1日1回5mgで有効性が期待され,効果不十分であれば通常量の10mgで効果が期待でき,また添付文書中に併用禁忌および併用注意を要する等の記載がないことから第一選択薬として試みるべき薬剤と考えられた。
  • 古賀 哲也, 古江 増隆, 西江 温子
    2003 年 65 巻 6 号 p. 616-619
    発行日: 2003/12/01
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    ツバキ油配合クリームに対する安全性および有用性を検討した。乾燥性皮膚疾患患者37例に対して,臨床試験を実施した結果,乾燥,鱗屑,掻破痕,そう痒の観察した全ての皮膚症状に有意な改善が認められた(p<0.01)。有用性は,やや有用以上が81.1%で,皮膚症状の悪化は1例,副作用は1例認められた。また,使用感については,のびがよく,べたつきのない,しっとり感のあるクリームであるとの回答が得られた。以上のことより,ツバキ油配合クリームは,乾燥性皮膚疾患患者の日常のスキンケア剤として,安全かつ有用に使用できる保湿剤であると考えられた。
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