西日本皮膚科
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74 巻, 1 号
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図説
症例
  • 神尾 芳幸, 小川 文秀, 鍬塚 大, 宇谷 厚志, 川上 純
    2012 年 74 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    強皮症は全身臓器の硬化を特徴とするが,消化管の硬化により生じる偽性腸閉塞はまれであるとされる。ここにわれわれの経験した本疾患の2症例の治療を中心に報告する。症例1:59歳,女性。1995年頃,びまん型全身性強皮症と診断された。2010年8月下旬より腹痛および下痢症状が出現した。腹部レントゲンおよび腹部CTで明らかな閉塞がないものの腸管の拡張を認めたため,強皮症に合併した偽性腸閉塞と診断した。絶飲食ならびに輸液で症状は改善した。症例2:63歳,女性。2008年にびまん型全身性強皮症と診断された。2010年5月下旬より下痢症状と腹部膨満が出現し次第に増悪してきた。腹部レントゲンおよび腹部CTで腸管の拡張像があり強皮症に合併した偽性腸閉塞と診断した。絶飲食と輸液で改善したが,シクロフォスファミドのパルス療法も加えて施行した。強皮症の消化器症状は患者の約8割にみられるが,偽性腸閉塞はその中でも難治性でまれとされる。本症例ならびに文献的考察から,本症例のごとく難治性の場合は,入院の上,絶飲食と輸液を行うことが第一と考えられた。
  • 鶴田 紀子, 井上 卓也, 三砂 範幸, 成澤 寛, 御塚 加奈子, 多良 明子, 大津 正和
    2012 年 74 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    68歳,女性。2008年1月に皮膚腫瘍切除術を受けた際に,前額部に中央がやや陥凹した紅色丘疹を指摘され,その2週間後から全身に皮疹が拡大した。臨床像ならびに病理組織検査所見より汎発性環状肉芽腫と診断した。ステロイド剤の外用および内服で皮疹は改善したが,内服中止後に再燃し,トラニラスト内服やナローバンドUVB療法も無効であったため,当科を紹介受診した。ハンセン病治療で用いられるリファンピシン,オフロキサシン,塩酸ミノサイクリンによる多剤併用療法を行ったところ皮疹の改善を認めた。2週間後に汎血球減少の進行が認められたため中止したが,回復した後,塩酸ミノサイクリンを単独投与し,寛解が得られた。
  • 井上 雅子, 徳野 貴子, 加藤 りか, 池田 政身
    2012 年 74 巻 1 号 p. 15-17
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    56歳,男性。硝酸運搬船で作業中に98%の硝酸で受傷,作業服と長靴を取るのに手間取り約10分後より流水で洗い流し,着岸まで約1時間風呂で水につかっていた。着岸後近医受診しワセリンを塗布され,約48時間後に当院を受診した。初診時,左上腕,両側臀部から大腿,両側下腿にかけて受傷部周囲に水疱形成がみられ,中心部は黒色から黄色の痂皮が付着したII度深層からIII度の化学熱傷,両側手掌は水疱を伴い黄色に変化した化学熱傷がみられた。血栓性静脈炎の既往があり,ワルファリンカリウム,アスピリンを内服していた。入院2日目より38℃から40℃の発熱,炎症反応高値であったので抗生剤投与を行った。発熱は4日後より治まり,内服中であったワルファリンカリウム,アスピリンを中止して入院10日目にデブリードマンおよび mesh skin graft 施行した。真皮深層まで壊死に陥っていたため,移植皮膚の定着が悪く再手術を必要とした。化学熱傷の治療では,速やかに長時間洗浄することと,可能な限り早期にデブリードマンを施行することが重要である。本症例では,硝酸の濃度が極めて高かったこと,着衣をとり流水で洗浄するまでに時間がかかったこと,当院受診までに約48時間経過していたこと,さらに抗凝固剤を内服していたためデブリードマンを施行する時期が遅れたことなど,様々な理由によって深い潰瘍を形成してしまい治療に難渋した。
  • 熊澤 智子, 木村 徹, 古江 増隆
    2012 年 74 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    80歳の男性。初診の前日,誘因なく,突然口腔内からの出血を生じ,舌の粘膜疹を自覚して受診した。舌背に,径15mm,暗赤色~黒色の結節を生じていた。臨床像からは悪性腫瘍も疑われたが,ダーモスコピーでは,無構造な暗赤色調の構造物として観察された。粘膜疹は自然に消失し,約1週間で瘢痕を残さず治癒した。特徴的な臨床経過から,粘膜疹は血疱であったと思われ,angina bullosa haemorrhagica と診断した。Angina bullosa haemorrhagica は,硬い食べ物などのわずかな刺激を誘因として,口腔内に血疱を生じる疾患である。中高年の軟口蓋に好発し,自然に治癒するが再発することも多い。本邦皮膚科からの報告は少ない本疾患の1例を報告し,その特徴について過去の報告をまとめた。また,我々が調べ得た限りでは,国内外において,本疾患をダーモスコピーで観察した報告はなかった。
  • 寺石 美香, 三好 研, 佐野 栄紀, 池田 光徳, 大畑 雅典
    2012 年 74 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    45歳,女性。初診の3ヵ月前より両下腿に紅斑,紫斑,潰瘍が出現した。初診時,両下腿および内足縁に網状の紅斑,紫斑が散在し,一部に痂皮を付着する潰瘍を認めた。病理組織では真皮全層に小血管が増生し,内腔は拡張して好酸性無構造物質による閉塞像を認めた。臨床検査から単クローン性のI型クリオグロブリン血症による末梢循環障害および皮膚潰瘍と診断した。更に,骨髄およびリンパ節に濾胞構造と,IgM(+),λ(+)の大型のリンパ球を認め,濾胞性リンパ腫と診断した。化学療法によるリンパ腫の寛解に伴って,血中のクリオグロブリンは消失し,皮疹は軽快した。
  • 一ノ宮 愛, 芦田 美輪, 芦塚 文美, 小川 文秀, 宇谷 厚志
    2012 年 74 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    17歳,男子。頭部~頚部に水疱が多発しカポジ水痘様発疹症の診断で入院した。4日後,頭部~額部に散在する水疱と38度台の発熱を主訴に同級生が受診し,さらに10日後,頭部に水疱を認める同級生が2名受診した。いずれも同じ柔道部員であり部活動を通して頭部に単純ヘルペスウイルスが感染,濃厚な身体接触をきたすスポーツ選手内で拡がる herpes gladiatorum と考えた。格闘技選手の単純ヘルペスでは,指導者などと連携を図り,罹患者の練習禁止や,他選手の症状出現の有無確認など,部活動全体で治療と予防を行う必要がある。Trichophyton tonsurans 感染症と同様に herpes gladiatorum についても啓蒙していくことが重要であると考えた。
  • ―沖縄県での第3例目―
    仲宗根 尚子, 上原 絵里子, 是永 正敬, 山口 さやか, 高橋 健造, 上里 博
    2012 年 74 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳の男性。初診の約40日前から腹部に自覚症状のない紅斑が出現した。前医でステロイド剤の外用を行ったが改善がえられず当科を受診した。当初,皮疹はベルトのバックルが当たる部位に一致していたため,接触皮膚炎と考えデルモベート®軟膏の外用を行った。しかし病変は軽快せず,次第にω状の線状爬行疹を呈し先端に皮下硬結が触れたため,寄生虫による皮膚感染症を疑い皮下硬結部を全切除した。病理組織学的に虫体構造と,その体内に束状筋線維束,コッサ染色で陽性を示す石灰小体を認めた。患者血清を用いた multiple-dot enzyme-linked immunosorbent assay (Dot-ELISA) ではマンソン裂頭条虫抗原に対し強陽性を示し,マンソン孤虫症と診断した。10年以上前に加熱したヘビの摂取と時期不明ながらアオリイカの生食歴があった。本症例は沖縄県で発症したマンソン孤虫症3例目の報告である。1993年から2010年までの18年間に日本で報告されたマンソン孤虫症84例を集計した結果から,マンソン孤虫症で皮膚爬行疹を示す症例は比較的稀と思われた。
  • 渡辺 真也, 飯島 茂子, 海老原 至
    2012 年 74 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    73歳,女性。農業に従事し,鳥の飼育歴はない。ループス腎炎のため,プレドニゾロン20mg,タクロリムス3mg内服約1ヵ月後より左大腿内側に痛みを伴う紅斑が出現した。初診時,6×6cmの皮内から皮下に及ぶ硬結と紅斑を認めた。皮膚生検にて真皮深層から脂肪織にかけて多数の小円形物質があり,小円形物質はPAS染色,グロコット染色陽性であった。また,塗沫標本の墨汁法にて莢膜を有する菌体を確認した。画像所見にて肺病変も伴ったことから,肺病変が先行した続発性皮膚クリプトコッカス症と診断した。各種治療に対し抵抗性であったが,ボリコナゾール投与,外科手術にて小康状態を維持している。
  • 関山 華子, 篠田 英和, 西本 勝太郎
    2012 年 74 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    症例1:6歳,男児。鼻背,眉間,下顎に痒みを伴う紅斑が出現した。症例2:45歳,女性(症例1の母親)。症例1の発症より2週間後,頚部,右上胸,両上肢に紅斑が出現した。症例1,2とも培養にて表面粉状,辺縁が放射状に発育するコロニーを形成した。Trichophyton mentagrophytes var. asteroides による顔面白癬および体部白癬と診断した。治療はグリセオフルビン錠250mg~500mg/日の35日間の内服とクロトリマゾールクリーム外用を行い治癒した。自宅には脱毛巣を有する白血病に罹患した飼猫がおり,Hair brush 法にて,症例1,2と同様のコロニーを無数に検出した。菌株の PCR-RFLP(分子生物学的検査)法ではArthroderma vanbreuseghemii に一致する所見であった。飼猫が感染源と推定され,飼猫より症例1と症例2に感染したと考えた。培養によりTrichophyton mentagrophytes var. asteroides が分離された場合は好獣性皮膚糸状菌の可能性があり,患者周囲の小動物の感染源検索が重要であり,さらに原因菌種の遺伝子による同定も望まれる。
研究
  • ―ヘパリン類似物質含有製剤を中心に―
    土肥 孝彰, 上田 勇輝, 石井 律子, 赤塚 正裕
    2012 年 74 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)治療時にスキンケアとして用いられる保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤,白色ワセリン,尿素製剤)および炎症の鎮静に使用されるステロイド外用剤(プレドニゾロン製剤)ならびにタクロリムス製剤の皮膚バリア機能に及ぼす影響を検討した。実験的モルモットドライスキンモデルを用いて,経表皮水分蒸散量(TEWL)および電子顕微鏡により表皮の角層/顆粒層境界域を観察した。ヘパリン類似物質含有製剤は基剤塗布と比較して有意にTEWL が低下し,皮膚バリア機能回復作用が認められ,尿素製剤,白色ワセリンおよびプレドニゾロン製剤と比較して皮膚バリア機能回復作用は有意に優れており,タクロリムス製剤と同程度であった。また,ヘパリン類似物質含有製剤塗布により,角層/顆粒層境界域で層板顆粒の分泌が盛んになり,層状構造物が多数認められた。さらに,in vitro にてラメラ液晶構造の形成促進作用を検討した。ヘパリン類似物質は著しく強いラメラ液晶構造形成促進作用を示し,タクロリムスも有意な促進作用を示した。以上,ヘパリン類似物質の皮膚バリア機能回復作用にはラメラ液晶構造の形成促進が関与しており,優れた水分保持機能と合わせ,乾燥症状主体のADにおいて,有用性は高いと考えられた。また,タクロリムス製剤はプレドニゾロン製剤と異なり,抗炎症作用だけでなく,皮膚バリア機能回復作用を有し,ADの寛解導入および維持療法に有用であることが示唆された。
講座
治療
  • 高原 正和, 千葉 貴人, 里村 暁子, 辻 学, 加藤 しおり, 三苫 千景, 竹内 聡, 師井 洋一, 古江 増隆
    2012 年 74 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 2012/02/01
    公開日: 2012/04/16
    ジャーナル 認証あり
    今回,我々は,掌蹠膿疱症患者に対して,ターゲット型エキシマライト光線療法機器を用いて治療を行い,その有効性と安全性を検討したので報告する。セラビーム®UV308は,ターゲット型エキシマライト光線療法機器であり,308nmを作用波長とし,不要な短波長をフィルターでカットしているという特徴を有する。今回,我々は8例の掌蹠膿疱症患者に対して,週1回の頻度で,計16回,セラビーム®UV308を照射し,その有効性について検討した。Palmoplantar Pustular Psoriasis Area and Severity Index (PPPASI)スコアを用いて4週ごとに皮疹の状態を評価した。その結果,照射開始前のPPPASIスコアは10.8であったが,治療開始4週後には8.7,8週後には6.5(p<0.05),12週後には4.6(p<0.01),16週時には4.2(p<0.01)と有意に改善が認められた。1回最終照射量は,平均1100±334mJ/cm2,全照射量は平均12.4±4.2J/cm2であった。重篤な副作用は認められなかった。以上の結果から,本治療は,掌蹠膿疱症に対して有効であることが示された。
世界の皮膚科学者
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