皮膚有棘細胞癌28例を, Brodersの病理組織学的悪性度分類に基いて, 1度(12例), 2度(8例), 3度(6例), 4度(2例)に分類し, それぞれの腫瘍細胞の電顕所見の差違を以下のパラメーターについて検討し, あわせて, 腫瘍細胞の微細構造を電顕的に検索した。
1. 腫瘍細胞の大きさ(Sc): 悪性度1度 156.9±24.1
μ2, 2度 123.3±12.3, 3度 101.9±8.9, 4度 71.2±3.1となり, 分化した1度が最大, 以下2, 3, 4度の順であつた。
2. 核の大きさ(Sn): 悪性度1度 35.3±5.2
μ2, 2度 48.1±2.9, 3度 57.3±5.5, 4度 36.2±5.0と, 1度から3度に進むにつれて大となり, 4度では逆に縮小した。
3. 核·細胞比(Sn/Sc): 悪性度1度 0.23±0.04, 2度 0.39±0.04, 3度 0.57±0.06, 4度 0.51±0.10と, ほぼ未分化になるに従い増大した。
4. デスモゾームの密度(Ds/Lc): 悪性度1度 0.41±0.06個/
μ, 2度 0.27±0.04, 3度 0.21±0.05, 4度 0.03±0.00と未分化になるにつれて著明に減少した。
5. 悪性度1, 2度の腫瘍では, しばしば変性あるいは異常角化した細胞をマクロファージがとり囲み, 腫瘍細胞が貪食処理される過程が認められた。
6. 悪性度2, 3度の腫瘍細胞内には, 種々な形態を示すデスモゾームがみられた。
7. 悪性度3度の腫瘍細胞では, 辺縁の微絨毛が著明に形成され, 基底板欠損部より突出した腫瘍細胞の一部はほとんど小器官や張原線維を欠き, アクチン線維様細線維を認め, このような脱分化所見や間質内への活発な侵入像が高頻度に認められた。
8. 悪性度4度では張原線維はきわめて少なく, デスモゾームは痕跡的で正常な基底板はほとんど形成されず, 腫瘍細胞間結合は不規則でその間隙は離開し, 不整な紡錘形を呈するものが多かつた。
9. 間質内に浸潤している腫瘍細胞周囲には膠原線維がほとんどみられず, 弾力線維のみが残存していた。
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