西日本皮膚科
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36 巻, 3 号
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図説
綜説
  • 肥田野 信, 小林 登喜子
    1974 年 36 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
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    新生児3,257名につき調査した。サモンパッチは20.6%にあり上眼腫と好発, 単純性血管腫は1.7%, 苺状血管腫は1.1%にあつた。先天性血管拡張性大理石様皮膚不全型4例, 貧血性母斑3例, 海綿状血管腫1例, 先天性皮膚欠損2例もみられた。扁平母斑は1.3%, 母斑細胞母斑は2.1%にみられた。新生児のレックリングハウゼン病1例をみた。青年男子7,435名の統計と比較して, サモンパッチ, 苺状血管腫は消失, 単純性血管腫はほぼ不変なのにたいし, 貧血性母斑, 硬母斑, 胸腺母斑, 母斑細胞母斑, 扁平母斑, 白斑性母斑は生後出現しうることを論じた。
  • 小谷 正彦, 名和 行文, 藤井 宏彦
    1974 年 36 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    リンパ球には胸腺由来のTリンパ球と骨髄由来のBリンパ球がある。新生仔胸腺摘出C3Hマウスに致死量の放射線を照射。直ちに骨髄細胞を移入した動物(Bマウス)のリンパ組織を観察すると, T, Bリンパ球は末梢リンパ組織では違つた領域に分布することがわかる。Bマウスにリンパロ胞が形成されることは, リンパロ胞が主としてB(骨髄)依存であることを示している。しかしながら, 放射線照射後骨髄細胞を移入する時に, 胸腺細胞を加えて注射すると, リンパロ胞は骨髄細胞だけを注射した場合よりはるかに早く, はるかに多く形成される。このことから, 胸腺細胞はリンパロ胞の形成を促進することが分る。Tリンパ球の再循環として知られた後毛細管静脈はまたBリンパ球の通路でもある。そしてリンパロ胞の形成に重要な役割を果たしているに違いないと思われる。放射線照射後骨髄細胞を移入した動物にテストステロンの水性懸濁液を使用すると, リンパロ胞の発育が抑制され, 抗体産生細胞が減る。幹細胞のリンパ系への分化にたいするテストステロンの効果が討議された。
シンポジウム—皮膚科領域における治療の動向
第2部 免疫抑制剤—
  • 利谷 昭治
    1974 年 36 巻 3 号 p. 299-307
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    Cytotoxic drugsである免疫抑制剤は核酸および蛋白合成を阻害し, 種々なstageで免疫学的応答を抑制することから, 自己免疫疾患の治療に応用されてからすでに20年が経過した。一方, 本剤には抗炎症作用が強いので, 多くの原因不明な炎症性皮膚疾患にも臨床的に投与され, 尋常乾癬にはきわめて高い有効率を有する。しかしながら本剤のもつ免疫抑制効果から致命的な感染という副作用や, 分裂毒としての副作用, 催奇性, 発癌性など問題点が多く, 比較的短期間の臨床的応用によつて免疫寛容をうるような薬剤の開発が望まれている。現在皮膚科領域において使用されている皮膚疾患についての概観をこころみた。
  • —SLEを中心に—
    丸田 宏幸
    1974 年 36 巻 3 号 p. 308-315
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    1)西日本地区の各大学よりいただいた免疫抑制剤を投与されたSLE患者総数は35例であつた。
    2)免疫抑制剤の種類としてはイムランがもつとも多く全体の86%をしめ, 6-MP, エンドキサン, メソトレキセートが使われている。
    3)イムランの投与方法はステロイド剤との併用で1日100mgから50mgを連日あるいは症状に応じて減量する方法がもつとも多い。
    4)免疫抑制剤の有効率は全体として60%, イムランでは63.3%であつた。
    5)最近イムラン投与をおこなつたSLEの自験例2例を供覧した。
    6)家兎ループス腎炎実験において, 抗DNA抗体価はエンドキサンとイムラン投与群では低下したがリンデロン投与群では低下傾向がみられなかつた。
    7)免疫抑制剤をSLEにたいして使用する是非について考察をくわえた。結論として現存する免疫抑制剤にかんするかぎり, 症例をえらんで最後の手段として慎重に使用すべきと考えた。
  • 旭 正一
    1974 年 36 巻 3 号 p. 316-323
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    天疱瘡, 類天疱瘡にたいする免疫抑制剤の使用例を, 自験例, 西日本各大学のアンケート回答, 文献例をあわせてまとめ, 考察をおこなつた。
    1)免疫抑制剤は, この両疾患にたいして, かなり有効な薬剤と考えられる。
    2)天疱瘡で, 免疫抑制剤投与の適応となるのは, ステロイド大量維持を要して副作用の危険が大きい場合と, 皮疹が限局性, 非拡大性で, ステロイドを併用せず本剤だけで治療可能なときの2つの場合である。
    3)皮疹の増悪, 拡大期にはステロイド投与が必要で, 本剤はそののちに投与すべきである。
    4)使用する薬剤としては, 現在のところではImuranがすぐれている。
    5)類天疱瘡は, まずステロイドを使用し, 治療経過が長く完治せぬ時に, はじめて併用投与を考慮すべきである。
  • —Methotrexateを中心に—
    居村 洋, 武田 克之
    1974 年 36 巻 3 号 p. 324-332
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    西日本13大学皮膚科施設における乾癬の免疫抑制剤使用についてのアンケート集計によると, もつとも使用頻度の高い免疫抑制剤はMethotrexateであつた。Methotrexate経口投与の有効率は86%(64例中55例), 副作用出現率は58%(64例中37例)であつた。有効率も高いが, 副作用の出現率も高かつた。Methotrexateの投与法としては, Weinsteinらの方法が他の投与法に比較して臨床効果も優れ副作用も比較的少なく, 今後さらに検討されるべき方法と思われた。しかしmethotrexateが乾癬に著効を示すとはいえ, 再燃·再発もさけえないので, 副作用を考慮すればmethotrexate療法を長期にわたつて漫然とおこなうことは一考を要する。
  • 半田 純雄
    1974 年 36 巻 3 号 p. 333-336
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    免疫抑制剤には, 代謝拮抗物質, アルキル化剤, 抗生物質, ステロイド剤などがあるが, 動物実験ではそのほとんどに催奇性がみられる。この中には, aminopterinなどのように人間に催奇性がみられた薬剤も含まれている。本論文では, 主な免疫抑制剤をリストアップし, 人および動物での催奇性について論評を加えた。
  • —SLEを中心に—
    笹岡 和夫, 高橋 勇, 阿南 貞雄, 力丸 正治, 山浦 英明, 野中 薫雄, 藤原 直子, 前島 和樹, 里見 行義
    1974 年 36 巻 3 号 p. 337-343
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    われわれの教室では, プリン拮抗剤のひとつであるイムラン(azathioprine)をSLEを中心に使用してきた。イムランを3ヵ月以上使用した症例はSLE15例, subacute LE4例, 汎発性鞏皮症, 落葉状天疱瘡, 壊疽性膿皮症各1例であつた。SLEではイムラン単独使用で効果のあつたのはわずか2例にすぎなかつたが, 「ス」剤との併用例は非常に有効なものが多かつた。Subacute LEは, 単独療法のみの有効例が多かつた(3/4例)。その他の疾患では, いずれもイムランが無効であつた。イムラン単独使用で著効を奏したSLE, subacute LEの症例を検討した結果, 臨床症状と一般検査成績の改善が免疫学的検査成績の改善よりも早くて顕著であることから, 本剤には抗炎症効果もあることが推察された。なお, 軽度の貧血と白血球減少(4,000)をきたす例に有効例が多いことから, 貧血と白血球減少をきたし一時的に骨髄機能を抑制するほどに投与量, 投与期間を調節することが治療のポイントと思われる。また, 軽度の胃腸障害と白血球減少以外, 不可逆性で重篤な副作用は経験しなかつた。
症例
  • 難波 英彦, 徳丸 伸之
    1974 年 36 巻 3 号 p. 344-348
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    1956年Sneddon & Wilkinsonは既知のいずれの疾患にも属さず, きわめて特徴的な組織学的, 臨床学的所見をていする7例をsubcorneal pustular dermatosisとして報告していらい, 内外ともに多数の症例が報告されているが, 報告例が増すにしたがい, オリジナルとはことなる非定型的症例が多数認められる。われわれは, ほぼオリジナルに一致する44才の婦人の1症例を経験したので, この症例をもととして, 本症のオリジナルに立帰り, 本症の疾患概念を再整理した。Subcorneal pustular dermatosisを診断するにあたり, もつとも重要なことは, 「臨床的, 組織学的構築が常に一定していること」である。
  • 清水 康之, 島雄 周平, 三原 基之
    1974 年 36 巻 3 号 p. 349-352
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    皮膚科領域よりの脂腺癌の報告は, 割合に少ないものである。最近われわれは, 83才の女性の左頬の腫瘤を, 基底細胞癌として切除, 組織学的検索により, 脂腺癌であつた1例を経験したので報告する。この腫瘤は, 6~7年前の切創瘢痕上に, 6ヵ月前より発生したものである。初診時, その大きさは示指頭大の, 半球状に盛り上つた, 黒褐色の腫瘤で, その表面は一部にびらん面, 痂皮の形成を認めた。頸部その他のリンパ節の腫脹はなかつた。腫瘍は, その周囲8mm位しか離さずに切除したが, 術後1.5年経過した現在, 再発やリンパ節転移は認められない。組織学的に, 真皮内の腫瘍巣の中心部は一部では壊死状となり, cavityを形成する部も認め, スダンIII染色で, lipidはとくに腫瘍巣中心部の壊死状となつた部に多く認められた。
  • 綱脇 ヒロ子, 猿田 隆夫, 木村 秀人
    1974 年 36 巻 3 号 p. 353-355
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    38才女子。初診昭和47年3月11日。12年前より, 手足に凍瘡様皮疹を生じていた。昭和42年ころより, 四肢に硬直感出現し, 関節リウマチの診断を受けた。昭和47年11月ころまでは, 手足の凍瘡様皮疹は, しだいに発赤し, 辺縁隆起性となり局面を形成した。昭和48年2月には皮疹の中央に潰瘍を形成した。これらの皮疹の増悪は, 関節リウマチの症状の増強, 血清学的リウマチ反応の増悪と, ほぼ並行していた。これらのことから, われわれはchilblain lupusとリウマチとの関連性を疑つた。
  •  
    松本 忠彦, 有吉 道泰, 西本 勝太郎
    1974 年 36 巻 3 号 p. 356-359
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    ケルスス禿瘡の2例を報告した。原因菌はTrichophyton verrucosum Bodin, 1902であつた。本菌による白癬はこれまで九州地方において報告がなく, 第1, 2例と思われる。
研究
  • —Betamethasone ValerateとBetamethasone DipropionateのDouble-Blind Testによる比較,およびHalocorticoidにおけるFとClの評価—
    小林 敏夫
    1974 年 36 巻 3 号 p. 360-371
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    0.12% Betamethasone 17-valerate(BM-V)と0.064% betamethasone 17, 21-dipropionate(BM-DP)の尋常乾癬にたいする臨床効果をhalf-side test法によつて比較した。両剤とも同一基剤を用い, 2重盲検法によつた。各患者にたいしてまずクリーム製剤のODTをおこない, 乾癬皮疹消失効果をしらべ, 皮疹消退後ただちに軟膏製剤の単純塗布に切りかえて, 皮疹再然抑制効果の持続性を比較した。その結果ODT効果, 皮疹再燃抑制効果のいずれについてもBM-DPがBM-Vに比べて有意にすぐれたが, とくに皮疹再燃抑制効果の持続性にいちじるしい差がみられた。一方, BM-DPとは9位のFをClで置換しただけで構造式上類似するコルチコイドとしてbeclomethasone 17, 21-dipropionate(BCM-DP)がある。構造上のFとClの差異による消炎活性の強弱をしらべるため, 同一濃度(0.025%)のBM-DPとBCM-DPをhalf-side test法により比較し, 前者のすぐれることを確認した。以上より, BM-DPは, 消炎活性の持続性においてすぐれたコルチコイドであると考えられる。
  • —密封包帯法によるBetamethasone 17-Valerate Creamと17α-Desoxymethasone Ointmentとの同一症例における比較—
    島雄 周平, 蓮尾 統子, 臼井 敏明, 河本 裕子
    1974 年 36 巻 3 号 p. 372-378
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    1) 慢性湿疹様皮膚炎の1症例に0.12% betamethasone 17-valerate cream 10g/day (betamethasone 17-valerate 12mg)にひきつづいて0.25% 17α-desoxymethasone軟膏5g/day(17α-desoxymethasone 12.5mg)によるODTをおこなつて, 毎日血清11-OHCS, 尿中17-OHCSを測定することにより副腎皮質機能抑制を比較検討した。
    2) 17α-Desoxymethasone軟膏の場合明らかに血清11-OHCS, 尿中17-OHCS値の減量が観察されたが, betamethasone 17-valerate creamの場合その減量の程度はごく軽かつた。
    3) 17α-Desoxymethasone軟膏によるODTの臨床効果はbetamethasone 17-valerate creamの場合に比べて明らかに優れていた。
    4) 5g/dayのステロイド軟膏のODTによつて経皮吸収による副腎皮質機能抑制の起こる症例もあることを認めた。
  • I. DNA分解酵素
    宮河 昭雄
    1974 年 36 巻 3 号 p. 379-381
    発行日: 1974/06/01
    公開日: 2012/03/24
    ジャーナル 認証あり
    1) ラット表皮と毛根抽出液のDNase活性を感高の高いアイソトープ法で測定し, その性質を調べた。
    2) 表皮DNaseは5.0付近に, 毛根DNaseは4.5~5.0付近に至適pHを示した。
    3) 2価陽イオンは表皮DNaseの活性にほとんど変化をあたえなかつたが, 毛根DNaseはCa++, Mg++, Mn++, Co++などにより, かなり活性が上昇した。
    4) 表皮抽出液中にDNase inhibitorの存在を示唆する結果がえられた。
    5) 表皮DNase活性は表皮の上方に分布していると考えられる。
治療
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