西日本皮膚科
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73 巻, 3 号
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図説
症例
  • 松尾 明子, 林 宏明, 藤本 亘, 越智 順子
    2011 年 73 巻 3 号 p. 217-220
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    59歳,男性。左眼外傷の術後2日目より結膜の充血を伴い左眼囲,頬部に紅斑・小水疱が出現した。消毒薬もしくは点眼薬による接触皮膚炎が疑われ,ステロイド外用薬にて頬部の紅斑は改善したが眼瞼結膜炎は増悪した。ミドリン®P(トロピカミド0.5%,フェニレフリン塩酸塩0.5%含有),ネオシネジン®(フェニレフリン塩酸塩5%含有)のパッチテストは強陽性を示した。成分パッチテストの結果,0.05%濃度フェニレフリン塩酸塩で陽性であった。ミドリン®Pの使用中止後,散瞳検査にアトロピンを使用し眼瞼結膜炎は完全に消退した。患者は皮疹出現までの間にフェニレフリン含有点眼剤を最低15回は使用されていた。検査のため頻回に点眼薬を使用したことがフェニレフリン塩酸塩に対する感作をもたらしたと推測された。
  • 吉崎 麻子, 吉崎 歩, 室井 栄治, 小川 文秀, 佐藤 伸一
    2011 年 73 巻 3 号 p. 221-224
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    53歳,男性。2003年よりレイノー症状が出現した。その後,毎年冬に指尖部潰瘍を繰り返していたが,春になると自然軽快していた。2007年11月,指尖部に潰瘍が出現した。放置していたところ悪化し,壊疽となったため当院を紹介された。手指の皮膚硬化を認め,抗RNAポリメラーゼI/III抗体陽性であり,全身性強皮症に伴う指端壊疽と診断した。プロスタグランジン製剤の静注や血小板凝集抑制薬の内服,局所処置といった保存的治療が奏効し,指の切断を回避しえた。
  • 吉村 映里, 増永 可奈, 増野 年彦, 原田 佳代, 久保山 智世, 占部 和敬, 佐藤 和夫, 今山 修平
    2011 年 73 巻 3 号 p. 225-228
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    2ヵ月の女児。生後6日頃から左側頭部に淡い紅斑の出現を認め,その後,徐々に頭部,胸部へ拡大した。初診時,側頭部から前胸部にかけて浸潤を触れる環状紅斑を認めた。皮膚生検で表皮基底細胞層の液状変性を認めた。抗SS-A抗体104.9index,抗SS-B抗体53.2indexと陽性であり,新生児エリテマトーデスと診断した。房室ブロックの合併はなく,軽度の肝機能障害を伴っていたが,皮疹とともに,生後6ヵ月には自然に軽快した。児の母親に自覚症状を認めておらず,採血にて抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性が指摘された。新生児エリテマトーデスの診断を契機に,母親の膠原病の可能性を指摘された症例を文献検索した。詳細な検討が可能であった26例の中で抗体陽性のみを指摘された例は9例,検査の結果シェーグレン症候群と診断された例は16例,全身性エリテマトーデスと診断された例が1例あった。
  • 亀頭 晶子, 野田 英貴, 高萩 俊輔, 平郡 隆明, 秀 道広, 関口 浩, 新谷 誠康
    2011 年 73 巻 3 号 p. 229-232
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    5ヵ月,男児。生下時より頭髪,眉毛,睫毛がほぼ欠損し,生後14日目頃より不明熱と副鼻腔炎を繰り返していた。以後成長にもかかわらず全身の疎毛は改善せず,前額部と頤部の突出,鞍鼻,厚く突出した口唇などの特徴的な顔貌を呈し,顔面エックス線画像検査では歯数および歯冠形態の異常がみられた。さらに,ヨード・澱粉反応を用いた温熱発汗試験では腋窩,手掌,足底を含む全身で発汗が認められず,アセチルコリン皮内注射による局所発汗試験でも発汗はみられなかった。以上の所見より,自験例を無汗性外胚葉形成不全症と診断した。家族歴として母親に歯冠形態の異常があり,遺伝子解析で患児および母親の1本のX染色体上のEDA 遺伝子に同一のミスセンス変異(c. 1037>A)を認め,母親はヘテロ接合性の保因者と考えられた。
  • 木下 綾子, 松葉 祥一, 木村 有太子, 水野 優起, 須賀 康
    2011 年 73 巻 3 号 p. 233-236
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    80歳,男性の顔面に単発した異型線維黄色腫の1例を報告する。数年前から徐々に拡大する左鼻翼部の結節性病変を主訴に来院。皮疹は紅色調,中央には痂皮を付着。病理組織学的所見では真皮に限局した異型や核分裂像を伴った線維芽細胞様細胞が fascicular pattern に配列し,巨細胞,泡沫細胞も認められた。また,表皮には epidermal collarette もみられた。鑑別診断のため免疫染色を施行したところ,ビメンチン,αアンチトリプシンに対する抗体で陽性,サイトケラチン,S-100,CD34に対する抗体では陰性であった。以上の所見から自験例は異型線維黄色腫と考えられた。患者は重症の肝硬変を合併していたため,姑息的切除を行った。
  • 増岡 美穂, 三砂 範幸, 上村 春子, 古場 慎一, 成澤 寛, 望月 良子
    2011 年 73 巻 3 号 p. 237-240
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    29歳,女性。右臀部に結節が出現し,妊娠に気付いた頃より徐々に増大した。妊娠8週頃に流産し,その後,結節は縮小傾向であった。近医皮膚科を受診し,局所麻酔下に切除され,病理組織学的に悪性黒色腫のため,当科紹介となった。明らかな遠隔転移なく,センチネルリンパ節生検は陰性であり,pT4aN0M0 : Stage II B と診断した。原発巣の拡大切除術を行い,DAV-Feron 療法を開始後まもなく,右鼠径部のリンパ節転移を認めた。リンパ節郭清を行い DAV-Feron 療法を5クール目まで行ったが,初診の2年後に多発転移を認め,永眠された。自験例は,妊娠中に増大し流産後に縮小傾向となった悪性黒色腫であり,妊娠と悪性黒色腫の関与を伺わせ,文献的考察を加え報告した。
  • 小野 槙子, 古場 慎一, 久富 万智子, 北山 明日香, 三砂 範幸, 成澤 寛
    2011 年 73 巻 3 号 p. 241-244
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は55歳,女性。左大腿内側に青色調の皮下硬結を認め,MRIで脂肪織炎や外傷性変化が疑われた。切除時に白色索状物が摘出され,病理組織学的所見よりマンソン孤虫症と診断した。全身検索で他臓器に病変は認めなかった。切除後も硬結が残存するためプラジカンテル内服を行い,硬結は速やかに消失した。治療効果判定のため測定した抗マンソン孤虫-IgG抗体は3ヵ月後に低下した。自験例のように一定期間,臨床的変化がない単発の皮下結節では通常は皮膚良性腫瘍をまず疑い,マンソン孤虫症などの寄生虫症を考えることは困難なため文献的考察を加え報告する。
  • 中橋 佳子, 高橋 博之, 加賀谷 真起子
    2011 年 73 巻 3 号 p. 245-247
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    55歳,女性。進行期の直腸癌のためセツキシマブ治療による皮膚障害コントロール目的に当科紹介となった。治療当初は定型的なざ瘡様皮疹が中心であったが,4回目の治療終了後に皮膚障害は急速に増悪し膿痂疹状皮膚炎の像を呈した。セツキシマブ投与を中止したものの皮膚障害は増悪し,鏡検と培養によりカンジダが検出されたため顔面に発症した非定型皮膚カンジダ症と診断した。当科入院治療により皮膚障害は治癒したが,セツキシマブ投与中止により原病は悪化した。一般に分子標的薬による皮膚障害は予測可能な場合が多いが,一方続発性に発生する障害は予測が困難である。従って,皮膚障害によりセツキシマブを含む分子標的薬治療の中止を可能な限り回避するためには皮膚症状の充分な観察と早期診断・治療が不可欠であり,皮膚科医が他科患者の癌治療にとって重要な役割を担っていることを痛感した。
研究
  • 大井 一弥, 三谷 宜靖, 林 雅彦
    2011 年 73 巻 3 号 p. 248-252
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    デキサメタゾン吉草酸エステル軟膏(ボアラ®軟膏)と油中水型ヘパリン類似物質含有保湿剤(ヒルドイド®ソフト軟膏)の適用順序によるステロイドの皮膚内移行性について,豚耳および健康ヒト皮膚により検討を行った。ステロイド軟膏単独適用はA群,ステロイド軟膏剤適用後,保湿剤適用はB群,保湿剤適用後,ステロイド軟膏剤適用はC群とし,豚耳における,ステロイドの皮膚内移行性をみるため,皮膚中のデキサメタゾン吉草酸エステル濃度を,HPLCを用いて測定した(n =8)。また,健康ヒト皮膚(n =2)により,ステロイドの皮膚内移行性を,共焦点ラマン分光光度計を用いて測定した。豚耳において皮膚移行したステロイド濃度について,A群,B群およびC群をそれぞれ比較したところA群が最も高く,次いでB群がC群に比べて有意に高かった(p <0.01 ; t-test)。豚耳における試験と健康ヒト皮膚による検討では,塗布順によるステロイド皮膚内移行が同様の傾向になることがわかった。しかしながら,その差はわずかであり,臨床的効果に差を認めることはないと考えられた。
講座
治療
  • 尾藤 利憲, 大森 俊, 吉澤 真裕子, 春山 護人, 澤田 雄宇, 川上 千佳, 椛島 利江子, 椋本 祥子, 杉田 和成, 吉木 竜太郎 ...
    2011 年 73 巻 3 号 p. 260-265
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    日光角化症とBowen病に対するメタルハライドランプを用いた光線力学療法(PDT)の治療効果について検討した。30名の患者から合計39病変,日光角化症31例とBowen病8例について検討した。全例臨床的寛解まで照射し,組織学的に治癒判定を行った。また,判定に際しp53蛋白発現を参考にした。日光角化症とBowen病の寛解率はそれぞれ87.1%と62.5%であり,痛みなどの副作用で治療が中断することもなく,満足できる結果であった。日光角化症の病理組織学的分類の5型とBowen病,それぞれについて照射量を検討し,推奨照射量と回数を提案した。治療前に病理組織学的検討を行い,病型に合わせた照射量を選択することで,日光角化症は1から2回の施行,Bowen病は3回の施行で寛解が期待でき,PDTは症例によっては第一選択になりうる治療法と考えた。
  • 竹中 基, 佐藤 伸一
    2011 年 73 巻 3 号 p. 266-270
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    酪酸プロピオン酸ベタメタゾン軟膏は皮膚疾患に対し最も頻用されているステロイド外用剤の一つであり,優れた臨床効果が認められている。われわれは,酪酸プロピオン酸ベタメタゾン軟膏の臨床効果および患者QOLに対する効果について検討した。対象は湿疹・皮膚炎群患者30例で,併用療法として,3例は外用開始前から抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤が投与されていたが,27例は外用のみによる治療であった。皮膚症状は,紅斑・浮腫,丘疹・小水疱,苔癬化,糜爛,鱗屑,掻破痕のいずれの項目についても治療前に比べ有意な改善が認められ,総合効果判定でも87%の症例で中等度改善以上であった。また,VAS (Visual Analogue Scale) による評価でも,皮膚症状,そう痒ともに有意な改善が認められた。QOLについては,DLQI (Dermatology Life Quality Index) による評価を行い,4.17±0.49から0.93±0.27と有意なQOLの改善を認めた。特に「症状・感情」「日常生活」「仕事・学校」の項目で有意な改善がみられた。以上より,外用剤による皮膚症状の改善が患者QOLの改善に寄与していると考えた。そう痒も外用のみで軽減していることより,酪酸プロピオン酸ベタメタゾン軟膏の多方面における有用性が推察され,外用療法において第一選択となり得る薬剤と考えた。
  • 福永 淳, 錦織 千佳子, 伊藤 圭, 清水 宏, 佐々木 りか子, 加藤 真弓, 宮地 良樹, 竹内 聡, 田代 あかり, 古江 増隆
    2011 年 73 巻 3 号 p. 271-277
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    2009年5月から12月の7ヵ月間に5施設の医療機関を受診した光線過敏症患者およびエリテマトーデスなど日光により増悪を来す疾患患者49例に対し,日光露光部へのサンスクリーン剤3製品の4週間の使用試験を実施した。サンスクリーン剤は,紫外線吸収剤を含まず紫外線散乱剤として微粒子酸化チタンを配合した「ノブ®UVローションEX」,「ノブ®UVシールドEX」および「ノブ®UVスティックEX」である。2例において,塗布部位での紅斑やそう痒にて使用を中止したが,皮膚症状は中止数日後に軽快した。また使用中止を除いた47例において,試験前後に担当医師による皮膚所見を得るとともに,テープストリッピング法により得た表皮角層から,酸化タンパクおよびTNF-αの測定を行い,試験前後の有意な差を認めた。さらに,アトピー性皮膚炎など,治療上,紫外線を避けることが望ましい疾患患者77例に対しても同様の使用試験を行い,安全性を確認した。これらの結果から,本試験に供した3製品は,光線過敏症患者および日光により増悪を来す疾患患者などに対して安全に使用でき,かつ有用性の高いサンスクリーン剤であると考えられた。
  • 川島 眞, 中川 秀己
    2011 年 73 巻 3 号 p. 278-289
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル 認証あり
    オロパタジン塩酸塩の小児アトピー性皮膚炎に対する有効性および安全性を,ケトチフェンフマル酸塩ドライシロップを対照薬とした二重盲検群間比較試験により検討した。対象は,年齢7歳以上16歳以下,体重20kg以上のアトピー性皮膚炎患児とし,オロパタジン塩酸塩の5mg(以下,O群),もしくはケトチフェンフマル酸塩ドライシロップの1gを1日2回(以下,K群),2週間経口投与した。本試験は,305例がランダム化された。この全被験者305例を主要評価解析対象集団であるFASとして評価した。その結果,有効性に関しては,主要評価項目である最終評価時におけるそう痒スコアの治験薬投与前からの変化量について,治験薬投与前値を共変量とした共分散分析で解析した結果,O群のK群に対する非劣性が証明された。安全性では,有害事象がO群19.1%(29/152例),K群24.2%(37/153例)に,副作用がO群11.8%(18/152例),K群6.5%(10/153例)に認められた。重篤な有害事象および重症度が「高度」の有害事象は両群とも認められず,臨床上安全性に問題はないと考えられた。以上より,オロパタジン塩酸塩はケトチフェンフマル酸塩群と同様に,小児アトピー性皮膚炎に対して有用な薬剤であることが確認された。
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