右利きの女性で, 病巣が指腹のみに限局し, 手掌に病変がおよんでいない進行性指掌角皮症38例, および対照として正常人右利き女性20例, 同男性21例につき, 手掌部の拇指球部, 中指球部, 小指球部における水素イオン濃度を測定, さらに本症群と対照女性群の手掌皮表脂質を採取し分析した結果, つぎのような成績をえた。
1) 本症群は左右手掌とも, 拇指球部, 中指球部でpH値がアルカリ傾に向つて高く, 対照群との間に有意の差を認めた。
2) 薄層クロマトグラフィーによる分析では, 本症群は対照群に比較して, トリグリセライドが高く, 遊離脂肪酸が低くなつており, トリグリセライドの分解遅延の傾向がうかがえた。
3) ガスクロマトグラフィーによる分析では, C
16-0は本症群および対照群とも, もつとも高く, 両者の間に差はみられなかつた。C
14-0は本症群が高く, したがつて, C
14-0/C
16-0は本症群が高値を示した。C
18-0/C
16-0およびC
18-0/C
18-1比では両者の間に差がみられなかつた。以上の結果から, 手指掌の発汗異常にもとづく, 皮表脂質の性状変化が, 本症発症となんらかの関連があるものと考えられた。
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