西日本皮膚科
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59 巻, 6 号
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図説
症例
  • 寺内 雅美
    1997 年 59 巻 6 号 p. 811-815
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病性潰瘍に対し, 入浴剤による人工炭酸泉浴療法を行い, 良好な結果を得たので報告した。以前より末梢循環不全に対する人工炭酸泉浴の有効性は血管外科や形成外科領域において報告がみられた。炭酸泉は脂溶性で経皮吸収され毛細血管床の増加および拡張作用により循環改善を生じ, また吸収されたCO2によりPtCO2は上昇すると同時に, 温浴により局所温度の上昇が起こる。このいずれの作用とも酸素解離曲線を右側偏位させ, ヘモグロビンの酸素飽和度を下げる。これら諸因子が複合して局所の組織酸素分圧が上昇し活性酸素増加により感染のコントロールも可能となり, 糖尿病性慢性潰瘍の改善がみられる。今回血糖コントロール不良の糖尿病患者の足に生じた潰瘍に対し同様に入浴剤を用いた人工炭酸泉浴療法を行い, 良好な結果を得たので, 治療法のひとつの選択肢となると考えた。
  • 尾之内 博規, 杉浦 一充, 荻山 幸子, 松本 義也, 吉田 宏, 谷沢 誠, 加藤 聡之
    1997 年 59 巻 6 号 p. 816-819
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    52歳の男性。初診の3ヵ月前より多関節痛, 四肢の筋肉痛としびれ感があり, 発熱, 胸痛, 咳, 血痰が出現し, 胸膜炎と診断された。初診時, 四肢末端に紫斑が認められ, その後, 同部は急速に境界明瞭な黒色壊死となった。紫斑周辺部からの皮膚生検による病理組織学的所見で真皮全層の動静脈および毛細血管の血管壁のフィブリノイド変性, 好中球, リンパ球の浸潤と核塵が認められ, 壊死性血管炎の所見を示した。また動脈壁の内弾性板の破壊が認められた。高血圧とともに白血球増加, 血小板増加, CRP陽性, 顕微鏡的血尿と蛋白尿が認められた。本症例は結節性多発動脈炎の臨床症状を呈するものの, 上気道炎症症状を示し, C-ANCA陽性であったこと, 病理組織学的所見では動脈ばかりでなく, 静脈および毛細血管にも壊死性血管炎の像が認められたこと, 近年, 肉芽腫性病変を伴わず, 壊死病変のみを示すWegener’s vasculitisの概念もあることから, 本症例はWegener肉芽腫に近い血管炎の症例と考えられた。
  • 久保田 由美子, 古賀 哲也, 利谷 昭治
    1997 年 59 巻 6 号 p. 820-825
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    小児に生じたgeneralized morphea(GM)の2例を報告した。症例1: 6歳の女児。3歳半頃より背部, 臀部, 下肢, 顔面に多発する硬化性萎縮局面を認め, 次第に左下肢の萎縮が著明となり下肢長や周径に左右差を生じてきた。左大腿伸側の皮疹は病理組織学的に真皮から皮下組織におよぶ膠原線維の膨化, 増生を認め, 血清学的にも抗核抗体, リウマトイド因子陽性, 抗1本鎖(ss)DNA抗体価高値を示し, GMと診断した。急速な拡大, 機能障害, 成長障害の可能性が予測されることよりステロイドの全身投与を開始し, 現在の所, 症状は軽快している。症例2; 6歳の男児。2歳頃より被髪頭部に3ヵ所脱毛斑があり, 左上眼瞼からこめかみにかけても褐色の萎縮硬化局面が生じてきた。血清学的には, 抗核抗体, 抗ssDNA抗体陰性。頭頚部のみであるが, 斑状硬化局面が5個認められることよりGMと診断し, 進行が緩やかで機能障害の可能性も低いためステロイド外用剤のみで経過観察中である。限局性強皮症は小児から若年者に好発し, 一般には数年でself-limitedな経過をとるといわれるが, しばしば四肢の成長障害や関節拘縮を伴うことも多く, また小児ということもあり, 有効とされるステロイドの全身投与も躊躇する傾向にあるが, 自験例は抗ssDNA抗体価の測定が治療開始にあたり有用であった。
  • 廣田 洋子, 武藤 正彦, 大村 明子, 廣田 徹, 麻上 千鳥
    1997 年 59 巻 6 号 p. 826-828
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    42歳の女性。初診の2ヵ月前より肩, 肘, 手関節痛とともに背部, 両上肢に軽度のそう痒を伴う紅色皮疹が出現した。関節痛が徐々に増強するため山口大学医学部皮膚科を受診した。初診時, 鼻根部に浮腫性紅斑と腰背部に浸潤性紅斑, poikiloderma atrophicansを認め, また全身倦怠感が強く右上腕の筋痛, 把握痛が認められた。筋生検では筋炎の所見は認められなかった。診断の結果, 軽症のSLEであった。Poikiloderma atrophicansはleukocytoclastic vasculitisで, 蛍光染色で細血管壁にIgG, IgM, C3, C4の沈着を認めた。
  • 力久 航, 桐生 美麿
    1997 年 59 巻 6 号 p. 829-831
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は58歳の女性。Polymyositisの診断でステロイド長期内服治療を受けていたが, 糖尿病, 高血圧, 骨粗鬆症, 口腔カンジダ症, 足白癬などが生じたためステロイドの減量を開始したところ, 両側腰背部に圧痛, 紅斑を伴う皮下硬結が生じてきた。病理組織学的には皮下脂肪織内に脂肪変性, 壊死, 異物型巨細胞, リンパ球や組織球の浸潤に加えて, 特徴的な針状結晶様裂隙が認められた。臨床経過と病理組織像からpost-steroid panniculitisと診断した。
  • —その病理組織学的検討—
    水野 尚, 石井 則久, 中嶋 弘
    1997 年 59 巻 6 号 p. 832-834
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    14歳の男子。左膝窩部に皮疹が出現し, 以後左下肢屈側, 左臀部および左第2趾間に線状, 飛び石状に拡大した。個々の皮疹は径10∼30mmのほぼ円形の, 痂皮を伴う紅斑で軽度のそう痒を伴っていた。病理組織学的には, 顆粒層の減少を伴う不全角化, 表皮突起の延長などが認められ, 角層内にはムンローの微小膿瘍も確認された。真皮浅層では血管周囲性に軽度の細胞浸潤を認めた。以上より線状乾癬, 線状苔癬, 線状扁平苔癬を鑑別した。しかし線状乾癬は, その存在自体が疑問視されており純粋な線状乾癬と思われる報告例は極めて少なく, またその報告例では皮疹の範囲は広汎であること, 本症例では外用療法により軽快傾向を認め, 再発がみられないことなどから否定的と考えた。線状扁平苔癬と線状苔癬については本症例が若年発症であること, 真皮細胞浸潤様式が血管周囲性であること, 線状苔癬は多彩な組織像を示し, 乾癬に類似するものもあることなどから線状苔癬と診断することがより妥当であると考えた。線状苔癬の鑑別診断には臨床像と病理組織像を合わせた総合的な判断が必要と考えた。
  • —産後および月経後に再発を繰り返す1例—
    溝口 志真子, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1997 年 59 巻 6 号 p. 835-837
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    27歳の女性, バングラデシュ人。月経後, 外陰部に激しいそう痒を伴う紅色丘疹が出現した。過去2回の産後にも同様の症状が認められたが, ステロイド外用剤で軽快していた。組織所見は棘融解細胞を伴った表皮内水疱であり, 直接蛍光抗体法では免疫グロブリンや補体の沈着は認められなかった。電顕的観察で表皮細胞のトノフィラメントの核周囲凝集やdyskeratotic cellが観察された。臨床および病理組織所見よりtransient acantholytic dermatosisと診断した。ステロイド外用のみでは完治しなかったため, etretinate内服を併用したところ, 皮疹は約6週間で消退した。
  • 安齋 眞一
    1997 年 59 巻 6 号 p. 838-840
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    生後7日目に受診した色素失調症の女児例2例を報告した。第1例の母親には上顎の歯牙欠損と両側鼠径部の色素斑があり, 母娘例と考えられた。第2例は孤発例であった。ともに皮膚症状は四肢·躯幹の糜爛·紅斑·水疱と網状の色素沈着で典型的であり, 相違はみられなかった。両例ともステロイド剤の外用で速やかに症状は改善した。
  • 杉田 康志, 矢野 貴彦, 今中 文雄, 信藤 肇, 林 雄三
    1997 年 59 巻 6 号 p. 841-846
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    51歳の女性。MDSを治療中に, とくに誘因なく右手第1指に紅色の小水疱が出現した。激しい疼痛を伴った発赤腫脹は, 一部糜爛, 潰瘍となり右前腕部にまで拡大した。皮疹部は, 病理組織学的に表皮は剥離し, 真皮は著明な浮腫性の膨化を示し, 真皮全層にわたり好中球を主体とした著しい炎症性細胞浸潤が認められた。フィブリノイド変性像や壊死性血管炎の像は認められなかった。MDSに伴ったneutrophilic dermatosisと診断した。ステロイド増量, ステロイドパルス療法を行ったが, 病変部は徐々に中枢側に向かって広がり, 骨が露出, 他部位にも浮腫性紅斑が出現するようになった。コルヒチンが軽度ながら有効と考えられたが, その後, 敗血症, 間質性肺炎を併発し11月12日死亡した。右手の皮疹は, Sweet病様皮疹として発症したにもかかわらず, 次第に巨大な潰瘍となり, その潰瘍の辺縁は強く発赤し不規則堤防状に隆起したように, 経過中に壊疽性膿皮症様症状に移行したと考えられた。MDSには重篤な皮膚病変を伴う症例があり, 慎重な対応が必要と思われた。
  • —治療経過と瘢痕性皮疹について—
    並里 まさ子, 角田 美英, 藤田 祐介, 小原 安喜子, 小川 秀興
    1997 年 59 巻 6 号 p. 847-854
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    初診時, 著明ならい腫性浸潤巣に多数の桿状抗酸菌を認め, ハンセン病と診断された35歳の男性例を報告する。初診後minocycline(MINO)を1週間投与され, その後WHOのmultidrug therapy(MDT)を開始した。治療開始後早期に, 発熱, リンパ節腫脹を伴う浸潤性皮疹が出現した。この反応はthalidomide(CG)には直ちに反応せず, prednisolone(PSL)の投与で軽快し, 臨床, 病理組織所見よりI型らい反応(リバーサル反応, R反応)が主体と考えられた。初診時所見より病型をLLsとした。初診後6ヵ月以降には臨床的炎症所見はほとんど認められず, 浸潤は著明に改善した。初診時より認められた四肢に散在する瘢痕性皮疹について経時的病理組織変化を観察するとともに, その成立機序について考察した。その結果, これらの瘢痕はらい腫性肉芽腫が経表皮排泄(transepidermal elimination)された部位である可能性が考えられた。治療経過中, 抗phenolic glycolipid-I(PGL-I)抗体および抗lipoarabinomannan-B(LAM-B)抗体を測定した結果, 早期より著明な低下がみられた。
研究
  • 西本 正賢, 沼原 利彦, 中嶋 邦之, 吉田 智子
    1997 年 59 巻 6 号 p. 855-858
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    2年間のアトピー性皮膚炎患者324名のうち痒疹型40名について, 結節性痒疹に似る結節型と掻破痕·丘疹·小結節が混在した状態を示す掻破型にわけて背景因子, 検査所見, 治療および経過について検討した。掻破型は42歳の1例を除き2歳から30歳までに分布し男女各13名の計26名。結節型は10歳未満の2例を除き17歳以上で14名中男性が10名。結節型は成人に特有の臨床型といえる。年齢, 気道アトピーの合併率, 0歳発症率, 好酸球増多, 総IgE値, Df-E抗体, Df-G4抗体, Df-scratchの陽性率も結節型が高い。結節型では4名が入院し, 10名に光線療法を, 7名に凍結療法を行い, 掻破型の入院は1名で, 光線療法, 凍結療法を行った患者は少ない。92年末に皮疹がコントロールされているのは結節型で43%, 掻破型で77%。痒疹型は他の臨床型以上にそう痒の抑制が重要で, 治療抵抗性の結節型に移行する前の掻破型の段階でそう痒をいかにコントロールするかにかかっている。
  • —原因薬剤同定法としての可能性について—
    野中 由紀子, 古賀 哲也, 利谷 昭治
    1997 年 59 巻 6 号 p. 859-863
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    臨床的に明らかに薬疹が確診される患者に対して原因薬剤を追求するために原因薬剤含有白色ワセリンを用いてパッチテスト(閉鎖法)を行い, パッチテスト陰性の症例16例, あるいは何らかの理由によりパッチテストが施行できなかった症例4例, 合計20症例の原因薬剤未確定患者を対象とし, 原因薬剤検索のin vitro検査法として薬剤刺激によるリンパ球のIFN-γ産生の測定を行い, その陽性率を薬剤刺激リンパ球幼若化試験(DLST)と比較検討した。20症例の薬疹患者末梢血リンパ球を原因薬剤を添加して培養し, 培養上清中のIFN-γ活性を測定し, 薬剤無添加状態で患者末梢血リンパ球を培養した培養上清中のIFN-γ活性と比較し, 刺激比180%以上を陽性とした。薬剤刺激によるIFN-γ産生は20症例中9例で陽性(陽性率45%)を示し, 一方, DLSTは19症例中4例で陽性(陽性率21%)を示した。症例数が少ないため両者間の陽性率に統計学的な有意差はなかったが, このようにIFN-γ産生試験ではDLSTと同等以上の陽性率が得られ, パッチテスト陰性あるいは未実施, すなわち原因薬剤未確定薬疹患者においても次のステップの原因薬剤確定のin vitro検査法のひとつになりうる可能性が示唆された。
講座
治療
  • —アトピー性皮膚炎(躯幹·四肢)に対する吉草酸ベタメタゾン軟膏との群間比較試験—
    FK506軟膏研究会
    1997 年 59 巻 6 号 p. 870-879
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    FK506(タクロリムス)軟膏の第III相試験の一環として, アトピー性皮膚炎に対する有効性および安全性を評価する目的で, 躯幹·四肢の皮疹を対象に本疾患の治療に繁用されている吉草酸ベタメタゾン軟膏(リンデロン®V軟膏0.12%)を対照薬として無作為化群間比較試験を実施した。最終全般改善度評価での「中等度改善」以上の改善率は, FK506軟膏群(FK群)93.6%, 吉草酸ベタメタゾン軟膏群(BV群)90.5%で, 両群間に有意差は認められなかった。治験薬と対照薬との改善率の差の90%信頼区間は-3.9%∼10.1%で, Δ=10%とした場合同等性を検証できた。安全性に関しては, 概括安全度評価で「安全である」と判定された患者はFK群87.5%, BV群91.1%で, 両群間に有意差は認められなかった。ただし被験部位への治験薬塗布による刺激感の発現率は, 大部分の症例で皮疹の改善とともに発現しなくなったもののFK群の方が有意に高かった。今回の成績からFK506軟膏はアトピー性皮膚炎の躯幹·四肢の皮疹に対して, 現在広く臨床の場で使用され, 有用性の確立しているBV軟膏と同等の有効性を示すことが明らかとなった。ステロイド剤とは異なる構造と作用を有するFK506の軟膏剤が, アトピー性皮膚炎の躯幹·四肢の皮疹に対して吉草酸ベタメタゾン軟膏と同等の有効性を示したことは, 本疾患に対する治療の選択肢を拡大するものと考えられた。
  • —各種抗生物質内服との併用—
    畑 三恵子, 天野 薫子, 本田 光芳, 相良 宗徳, 中村 進一, 岩崎 容子, 鈴木 かやの, 伊東 文行
    1997 年 59 巻 6 号 p. 880-882
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    尋常性ざ瘡患者59例(平均22.5±4.4歳)に対し, 従来使用していた抗生物質(塩酸ミノサイタリン, 塩酸テトラサイクリン, ロキシスロマイシン)にニューキノロン系外用抗菌剤ナジフロキサシン(アクアチム®クリーム以下アクアチム)を併用した際の臨床効果を検討した。その結果, 効果判定可能症例53例中, 著効が13例(24.5%), 有効が28例(52.8%), やや有効が8例(15.1%), 無効が4例(7.5%)であり, 有効以上は41例(77.4%)であった。副作用はロキシスロマイシンによると思われる胃腸障害が2例, 石鹸によると思われる紅斑, 丘疹が1例あった。アクアチムによると思われるものは発赤が1例, 紅斑が1例であり, キノロン系抗菌剤の内服薬にみられる光線過敏症は1例もみられなかった。このことよりざ瘡を治療する上で抗生物質内服とアクアチム外用の併用は十分効果があり, 治療の選択肢が広がった。
  • 高橋 英俊, 伊部 昌樹, 木ノ内 基史, 橋本 喜夫, 飯塚 一, 深見 洋一, 水元 俊裕, 山内 利浩, 岸山 和敬
    1997 年 59 巻 6 号 p. 883-888
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    重症乾癬におけるシクロスポリン(CYA)療法は, 現在では3∼5mg/kg/日の低用量を使用することが一般的となっている。今回, より低用量のCYAでの寛解維持の可能性を検討した。乾癬患者をCYA 4∼5mg/kg/日の投与で寛解に導いた後, 維持療法としてA群(CYA 3mg/kg/日 1日2回投与群)とB群(CYA 2mg/kg/日 1日1回投与群)に分け, 12週間継続投与し臨床的有用性を検討した。寛解導入療法に組み入れられた33例(平均PASIスコア19.6±8.5)中, 寛解維持療法に移行した症例は29例, 87.9%(平均PASIスコア1.6±1.2)で, うちA群17例, B群12例であった。維持療法終了時の全般改善度は, A群で改善もしくは寛解継続が76.5%, B群で75%といずれの群も良好であった。PASIスコアは維持療法開始時, A群1.39±0.20, B群1.88±0.43, 維持療法終了時, A群2.78±0.63, B群5.03±1.56で, 両群間に有意差は認められなかった。副作用は, A群4例(23.5%), B群3例(25.0%)に認められ, BUN上昇, 全身倦怠感, 高血圧が主なものであった。有用度はA群82.4%, B群75.0%が有用以上の有用度を示した。以上の結果から乾癬寛解例の維持にはCYA 2mg/kg/日でも十分可能であることが示された。
  • —低用量投与による効果の検討—
    広島シクロスポリン研究会
    1997 年 59 巻 6 号 p. 889-894
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    尋常性乾癬に対するシクロスポリンのより安全でかつ有効な投与法を検討する目的で, 2mg/kg/日のやや低用量から投与を開始し症状に応じて投与量を増減するという方法で34例の中等症, 重症の尋常性乾癬患者に対して治療を行った。その結果, 最終全般改善度は著明改善52.0%, 改善以上76.0%, やや改善以上96.0%と良好な治療成績を得た。2mg/kg/日より開始した投与量は症状に応じた増減で最終的に平均3mg/kg/日に収束した。副作用は10例に認められたもののいずれも軽度で, 最も頻度の高かった血圧上昇についても全症例の平均値では上昇が認められなかった。以上の結果から低用量より開始, 症状に応じて増減するというシクロスポリンの投与方法は有効でより安全な方法であるという可能性が考えられた。
  • 坪井 良治, 河井 正晶, 海野 公成, 西村 久美子, 小松崎 久乃, 小川 秀興
    1997 年 59 巻 6 号 p. 895-900
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    角質増殖型足白癬は, 足底の角質増殖を特徴とする比較的稀な慢性難治性の足白癬である。今回この病型に対してアリルアミン系抗真菌剤, 1%テルビナフィンクリーム(ラミシール®クリーム)の単純塗擦療法(L群)と尿素軟膏との併用塗擦療法(LU群)の有効性と安全性を比較検討した。薬剤は1日1回, 原則として10週間外用し, 投与方法の割り付けば無作為に行った。登録症例は40例(L群20例, LU群20例)で, そのうち有効解析症例は21例(L群10例, LU群11例), 12例は安全性のみ評価した。その結果, 最終皮膚所見は改善以上がL群90.0%(9/10), LU群100.0%(11/11), 最終菌陰性化率はL群70.0%(7/10), LU群82.0%(9/11), 最終総合効果は有効以上がL群70.0%(7/10), LU群82.0%(9/11)であった。分離菌の内訳はT. rubrum8例(L群4例, LU群4例), T. mentagrophytes1例(LU群)であり, また副作用は1例も認められなかった。解析症例が少なく, L群とLU群の間に統計的有意差を認めなかったが, 傾向としては併用療法の方がやや優れていた。以上の結果から, 従来の外用抗真菌剤では治癒させることが困難とされた角質増殖型足白癬に対して, テルビナフィンクリームは単独塗擦でも尿素軟膏との併用でも高い有効性と安全性を示すことが判明した。このことは, この外用剤の高い抗真菌活性と角質浸透性を示唆する所見と考えられた。
  • 広島市皮膚科グループ
    1997 年 59 巻 6 号 p. 901-906
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    塩酸ネチコナゾール(1群), ビフォナゾール(2群), 塩酸テルビナフィン(3群), 塩酸ブテナフィン(4群)のいずれかを2週間以上使用しても臨床症状が残存し, かつ直接鏡検により白癬菌を証明し得た足白癬症例(小水疱型, 趾間型)を対象に, 塩酸アモロルフィンクリーム(ペキロン®クリーム)の有効性, 安全性を検討した。総症例数121例中, 除外症例を除く84例を有効性, 有用性評価の対象とし, 安全性評価は113例を解析対象とした。最終菌検査結果と皮膚所見全般改善度から判定した総合効果判定は, 有効以上の症例数は小水疱型では44例中33例(75.0%), 趾間型では40例中34例(85.0%)であった。全体での有効以上の症例数は84例中67例(79.8%)であった。副作用は113例中1例(0.88%)に発現した。1∼4群における本剤の効果に統計学的有意差は認められなかった。以上の結果より, 塩酸アモロルフィンクリームは臨床の場で多く繁用されている外用抗真菌剤が無効であった症例にも, 有用かつ安全性の高い薬剤であることが認められた。
  • 安元 慎一郎, 辻田 淳, 小林 順一, 今福 信一, 松田 哲男, 猶塚 正明, 島田 公一
    1997 年 59 巻 6 号 p. 907-909
    発行日: 1997/12/01
    公開日: 2011/01/14
    ジャーナル 認証あり
    抗ウイルス剤ビダラビンを3%含有する外用剤(アラセナA®軟膏)を4例の帯状疱疹患者の病変部に外用したのち, 外用開始後24時間までの血漿中ビダラビンとその代謝産物濃度をHPLC法を用いて経時的に測定した。4例とも全ての採血時点においてビダラビンとその代謝産物は検出限界(0.05μg/ml)以下であった。アラセナA®軟膏外用時にはビダラビンは皮膚組織中に限局して分布し, 血液中に移行する可能性は極めて低いと考えた。
世界の皮膚科学者
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