西日本皮膚科
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71 巻, 6 号
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図説
症例
  • 井口 愛, 加藤 佐代子, 大東 淳子, 浅井 純, 竹中 秀也, 岸本 三郎, 小西 英幸
    2009 年 71 巻 6 号 p. 553-555
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
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    72歳, 女性。2006年9月に腸炎に合併した左大腿部の壊疽性膿皮症にて当科入院し, ステロイド内服と分層植皮術にて軽快した。腸炎については確定診断には至らなかった。以後, 腸炎, 皮膚潰瘍の再燃を認めず, 当科外来にてステロイド漸減中であった。2007年8月初旬, 腸症状の再燃とともに, 頚部, 左手関節部, 右足関節部に浮腫, 血疱が出現し, 壊疽性膿皮症の再発と診断した。潰瘍性大腸炎の診断のもと, メサラジンによる治療を行ったところ, 皮疹は腸炎の改善とともにステロイドの全身投与を行うことなく軽快した。
  • 坂本 藍, 原 肇秀, 小川 文秀, 佐藤 伸一, 加治 賢三, 藤本 学
    2009 年 71 巻 6 号 p. 556-560
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    53歳, 女性。2005年12月, 子宮体癌に対してパクリタキセル, カルボプラチンが投与された。2006年4月, 手指の浮腫が出現。2007年2月より手指の硬化を認め, 徐々に前腕にも拡大したため近医皮膚科を受診した。全身性強皮症を疑われ, 同年7月当科初診し, 臨床症状, 各種検査により全身性強皮症と診断された。プレドニゾロン20mg/日の投与を開始し皮膚硬化は軽快した。経過より全身性強皮症の発症にパクリタキセルの関与が疑われた。
  • 石川 真奈美, 白方 裕司, 村上 信司, 藤山 幹子, 谷本 圭子, 浦部 由佳里, 佐藤 直樹, 宮脇 さおり, 岡崎 秀規, 平川 聡 ...
    2009 年 71 巻 6 号 p. 561-565
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
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    症例は46歳, 女性。2007年10月頃より口唇, 舌, 外陰部にびらんが出現し, 口腔内, 頭部, 顔面, 体幹にも水疱・びらんが新生するため, 2008年5月尋常性天疱瘡の疑いで当科入院した。水疱の組織所見は, H-E染色では基底層を1層残した表皮内水疱を認め, 水疱内に棘融解細胞を認めた。蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgG, C3の沈着を認めた。ELISA法にて抗Dsg1 抗体86.5, 抗Dsg3 抗体987で, 天疱瘡の重症度判定基準スコア7点であったが, 摂食障害を認めたため重症と診断した。プレドニゾロン(PSL)50mg/日内服にても病勢を止められず, PSL 80mg/日内服に増量, シクロスポリン内服, 二重濾過血漿交換療法, ステロイドパルス療法も併用し, PSL 90mg/日まで増量したが上皮化が進まず, 2008年7月下旬より400mg/kg/日の大量ガンマグロブリン静注療法を5日間施行したところ, 抗体価の低下と共に急速に皮疹は改善した。
  • 笹岡 俊輔, 松浦 浩徳, 藤本 亘, 池田 政身
    2009 年 71 巻 6 号 p. 566-570
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
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    落葉状天疱瘡は一般にステロイド薬の全身投与により治療される自己免疫性水疱症である。天疱瘡ではステロイド薬の使用に関連する合併症を減少させ, かつ治癒を向上させるため補助療法を併用することが多い。54歳女性で糖尿病を合併した落葉状天疱瘡の患者を報告する。患者は紅皮症を呈し, 治療開始時の抗デスモグレイン1(Dsg1)抗体のELISAインデックス値は4672であった。治療はプレドニゾロン40mg/日内服とシクロフォスファミド100mg/日内服法の併用にシクロフォスファミドパルス療法1コースを加えた。2カ月後には抗Dsg1抗体のインデックス値の著明な減少とともに疾患活動性は抑制され, 治療開始11カ月には部分寛解となった。本症例は治療に難渋する落葉状天疱瘡, 特に糖尿病を合併し高容量ステロイド治療を行えない患者の治療に早期からシクロフォスファミドを併用することが有用であることを示唆している。
  • 吉村 映里, 千葉 貴人, 高原 正和, 小林 真二, 竹井 賢二郎, 城戸 真希子, 内 博史, 師井 洋一, 古江 増隆, 山野 龍文
    2009 年 71 巻 6 号 p. 571-574
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
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    63歳, 男性。2007年9月頃から左頬部が腫脹してきた。2008年1月より近医皮膚科で丹毒として抗生剤で加療されたが軽快しなかったため, 3月に皮膚生検を施行された。病理組織学的に, 脈管肉腫が疑われ, 当院紹介入院となった。初診時, 左頬部に浸潤を触れるびまん性の腫脹があり, 明らかな紫斑などの出血性病変は認められなかった。組織学的には, 異型を伴う腫瘍細胞が管腔を形成して増殖しているが, 組織内出血や管腔内の赤血球はほとんど認められなかった。免疫染色ではCD34陰性, CD31陽性, D2-40陽性であった。これらの臨床所見と組織学的所見から, リンパ管肉腫と診断した。パクリタキセル(175mg/m2)の投与, 70Gyの局所電子線照射を行い, 腫瘍は縮小傾向となった。現在も外来にてmonthlyパクリタキセル投与を継続中である。診断に関して, 文献的考察を加え報告する。
  • 中野 倫代, 稲福 和宏
    2009 年 71 巻 6 号 p. 575-579
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
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    49歳の男性, 千葉県在住。初診の10日前に養鶏場の大掃除をした。7日前より38℃以上の発熱と全身の紅斑が認められ, 当科受診した。刺し口を疑う皮疹は認められなかったが, 高熱が続き, 腎機能障害も認められたため, リケッチア症の可能性を考え, 塩酸ミノサイクリン200mg/dayを内服したところ速やかに解熱した。日本紅斑熱抗原に対する抗体価はIgM, IgGともに160倍以上に上昇しており, 日本紅斑熱と診断した。紅斑部の病理組織では, 真皮上層から下層の血管に白血球破砕性血管炎を認めた。病理組織を検討した報告は我々が調べ得た限り本邦で2例のみであった。我々は, 皮膚生検で白血球破砕性血管炎を認め, 腎機能障害を併発した日本紅斑熱の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告した。
  • 鎌田 恵美子, 佐野 陽平, 早川 あずさ, 山田 康子, 池田 佳弘, 西大路 賢一, 北川 朋子, 竹中 秀也, 岸本 三郎
    2009 年 71 巻 6 号 p. 580-583
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    61歳, 男性。初診日の1カ月前から難治性頭痛に対し, カルバマゼピン300mg/日の内服を行っていた。全身の紅斑, 発熱, 肝機能障害, 服薬歴より薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome : DIHS)を疑い, カルバマゼピンの中止とプレドニゾロン30mg/日の内服を開始した。第18病日の血液検査で肝酵素の著明な上昇を認めた。また同時期にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)の再活性化と共に, パルボウイルスB19 IgMの抗体価の上昇を認めた。DIHS は一般的にHHV-6などのヒトヘルペス属ウイルスの再活性化と関連があるとされ, パルボウイルスB19に関しても経過中に再活性化したという報告がある。自験例も関連が疑われたがパルボウイルスB19 IgGの抗体価の上昇を示さず偽陽性と考えた。
  • 広瀬 憲志, 松立 吉弘, 飛田 泰斗史, 安齋 眞一, 久保 宜明, 荒瀬 誠治, 藤山 幹子, 村田 純子, 阿部 理一郎
    2009 年 71 巻 6 号 p. 584-588
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    17歳, 男性。てんかん発作に対して, 2007年5月上旬からゾニサミド, 5月下旬よりカルバマゼピンを内服していたところ, 6月上旬39℃台の発熱があり, 翌日, 全身に紅斑, 粘膜疹が出現した。6日後(第6病日)の当科初診時, 全身にびまん性の紅斑, 粘膜疹があり, 白血球増加, 好酸球増加, 異型リンパ球の出現, 重度の肝機能障害が認められたため薬剤性過敏症症候群(DIHS)を疑い, 同日よりPSL60mg/日の投与を開始した。6月中旬(第9病日)に上下肢に水疱やびらんがみられたため, 中毒性表皮壊死症(TEN)を考え, mPSL 1g/日のパルス療法を3日間施行し, 第12病日よりベタメタゾン8mg/日投与を開始した。しかし皮疹の拡大は止まらず, 免疫グロブリン大量療法(20g/日×5日間)を追加した。以後, 皮疹は軽快し, ステロイド薬を漸減した。血清中のHHV-6 DNAが陽性で, HHV-6 IgG 抗体価は80倍(第6病日)から10240倍(第19病日)へ上昇した。第2, 6, 8病日の血清ではsoluble Fas ligand(sFasL)が高値であった。第51病日に実施した薬剤リンパ球刺激試験(DLST)とパッチテストでは, ともにゾニサミド, カルバマゼピン, アモキシシリン(6月上旬の発症時より内服)で陽性であった。本邦ではHHV-6の再活性化がみられたStevens-Johnson症候群(SJS)/TENの報告は8例で, そのうちDIHSと診断可能な症例が6例あった。従来の薬疹と同様に, DIHSの中にも, 表皮の障害が軽度のものから重症のものまで存在していると考えられた。
  • 指宿 敦子, 東 裕子, 松下 茂人, 金蔵 拓郎, 井手迫 俊彦, 川越 真理
    2009 年 71 巻 6 号 p. 589-591
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    32歳, 男性。排膿を伴う臍部の紅色結節を主訴に来院した。初診の約3週間前に下腹部痛と発熱があり, 2日後に臍から排膿がみられた。排膿後, 症状は軽減したが, 排膿は持続していた。臍部に径1cmの紅色結節と瘻孔を認めた。腹部造影CTでは臍部から腹直筋下を膀胱に接するように連続する索状構造を認め, 尿膜管膿瘍と診断した。下腹部に横切開を加え膀胱前腔へ到達し, 尿膜管を一塊にして切除するとともに臍欠損部に対して三角皮弁を用いる簡便な手法で一期的に, 臍形成術を施行した。
講座
統計
  • ――VASによるそう痒の評価とDLQI-base QOL調査票によるQOL評価――
    増田 裕子, 渡辺 大輔, 田中 伸, 玉田 康彦, 松本 義也
    2009 年 71 巻 6 号 p. 597-602
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎患者(AD)に対し, 外用療法と塩酸セチリジン内服を併用した場合の症状改善効果および患者評価によるそう痒およびquality of life(QOL)に対する影響をアトピー性皮膚炎重症度スコア, Visual Analogue Scale(VAS)およびDermatology Life Quality Index(DLQI)-base QOL質問票を用いて検討した。対象はAD患者19例(男性7例, 女性12例, 平均年齢28.4±13.6歳)で, 外用療法に加え塩酸セチリジン10mg/day を4週間投与した。軽度改善以上の改善率は2週後で50%, 4週後で80%であり, 中等度以上の改善率は2週後で16.7%, 4週後においては33.3%であった。患者評価によるそう痒のVASスコアおよびDLQI-base QOLスコアも経時的に有意な改善が認められた。これらの結果から, 外用薬と塩酸セチリジンを併用したことでADが改善され, 患者QOLに良好な影響をおよぼしたと考えた。
治療
  • 田中 稔彦, 鍋島 裕紀子, 秀 道広, 森本 謙一, 高路 修, 鼻岡 佳子, 堀内 賢二, 森 保, 新見 直正, 森川 博文, 柳瀬 ...
    2009 年 71 巻 6 号 p. 603-608
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    イトラコナゾール(ITCZ)パルス療法を行った爪白癬の混濁比を1年間にわたり経時的に計測し, 本治療法の有効性を評価するとともに, 経過中に治療追加の必要性を判断する根拠を検討した。エントリーした104例の爪白癬患者中, ITCZパルス療法を3サイクル完了した例は70例(67.3%)であり, 1年後に混濁比が測定できた17例中9例(52.9%)において混濁比が1以下となった。一方で, 効果不十分な例も2例(11.8%)認められた。そこで6カ月目の混濁比を1年後の効果予測因子として検討したところ, 6カ月目までに5以上の混濁比改善が得られた8例では, 1年後には中6例(75.0%)が1以下になったのに対し, 改善度が5未満であった9例については, 1年後に1以下にまで改善したのは3例(33.0%)であった。ITCZパルス療法後に経時的に混濁比を計測することにより, 早期に治療追加の必要性を判断できることが示唆された。
  • ――追加投与による評価――
    古川 福実, 金澤 伸雄, 吉益 隆, 西出 武司, 青木 真理子
    2009 年 71 巻 6 号 p. 609-615
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    第二世代抗ヒスタミン薬であるエバスチン(エバステル®)のそう痒性皮膚疾患に対する有用性について, エバスチン10mg/日投与の効果不十分例に対し追加投与(20mg/日投与)した場合の有効性および安全性を検討した。そう痒性皮膚疾患の新患で未治療例および他の抗ヒスタミン薬の効果不十分例115例を対象に, エバスチン10mg/日を2週間投与し, 効果不十分の場合は20mg/日をさらに2週間投与した。20mg/日投与が有効な場合は10mg/日に減量し継続, 効果不十分の場合は20mg/日を継続し, いずれも2週間投与した。その結果, エバスチン10mg/日を2週間投与後, 再来院のあった99例中, 有効例は61例, 効果不十分例は38例であった。効果不十分例のうち脱落1例を除く37例にエバスチン20mg/日をさらに2週間投与したところ, 有効例は11例であった。これらの症例では皮膚症状とかゆみ(VAS値)の有意な改善が得られ, 10mg/日に減量後も維持された。エバスチンの追加投与に伴う新たな有害事象の発現はなかった。以上の結果から, エバスチンはそう痒性皮膚疾患に有効な薬剤であることが確認され, さらに10mg/日投与で効果不十分の場合は20mg/日投与に増量することでさらなる改善効果が期待できることが確認された。
  • 松尾 圭三, 中山 樹一郎, 七隈ロラタジン研究会
    2009 年 71 巻 6 号 p. 616-623
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/01/29
    ジャーナル 認証あり
    小児の皮膚そう痒性疾患患児(15歳以下)91例に対し, 第二世代抗ヒスタミン薬であるロラタジンドライシロップ1%による臨床効果および薬剤の使用感等の検討を行った。主要評価項目であるそう痒・皮疹の程度は, ロラタジン投与開始1週後から有意な改善がみられ, 投与2週後もその改善効果は維持された。また, VASによるそう痒のスコアも同様の臨床効果を示した。全般改善度(改善以上)は91.3%であった。また, 安全性の面においては, 1例に鼻出血が認められたのみであり, 良好な忍容性を示した。さらに, 薬剤投与後の使用感等に関する調査では, 回答が得られた患児の90%以上が嫌がらずに飲み, 飲み忘れが全くなかったかほとんどなかった割合は94%であった。服用後, 数時間以内に効果が現れたと回答した割合は81%であり, 72%の患児または保護者が, 今後もこの薬剤を希望すると回答し, 希望しないと回答したのは5%であった。これらの結果により, 本剤は小児の皮膚そう痒性疾患に対する治療において, 極めて有用な薬剤であることが示唆された。
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