西日本皮膚科
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55 巻, 4 号
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図説
綜説
症例
  • 竹中 基, 大神 太郎, 橋口 義久, 野中 薫雄
    1993 年 55 巻 4 号 p. 638-642
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    35歳男子。平成2年8月から4ヵ月間イラク南部の砂漠で抑留生活をおくっていた。同年11月, 左上腕外側に虫刺症様の紅斑, 丘疹が多発しているのに気付いた。現地の治療にて大部分の皮疹は治癒したが, 一部の皮疹の治癒傾向がないため帰国後近医を受診し, cutaneous leishmaniasisを疑われ, 平成3年4月23日当科へ紹介された。初診時, 左上腕にくるみ大の浸潤をふれる紅斑があり, 中央に豌豆大の潰瘍を認めた。塗沫標本でamastigote型虫体が陽性であった。組織学的には, 真皮上層に顆粒を有する組織球様細胞を多数認め, その周囲にはリンパ球, 組織球, 形質細胞, 巨細胞から成る肉芽腫様変化をみた。また同部の組織培養により虫体の培養に成功しLeishmania majorと同定された。Meglumine antimonate(Glucantime®)とpovidone iodineの混合液の外用により治療を行ったが皮疹の完治に至らなかった。その後, meglumine antimonateの局注を10回施行したところ, 皮疹は瘢痕を残して治癒した。副作用の発現は認めず, meglumin antimonateの局注は有効であると思われた。
  • 桐生 博愛, 松村 浩彦, 白石 正憲, 末永 義則
    1993 年 55 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    82歳男子。異型スポロトリコーシスの軽快後に, 再発疹として生じた疣状スポロトリコーシスの1例を報告した。左手背の潰瘍を伴う限局性皮膚スポロトリコーシスとして初発し, 組織内に菌要素を豊富に認める, いわゆる異型スポロトリコーシスであったが, ヨードカリ(KI)内服と局所温熱療法による治療にて一旦軽快するも再発し, 尋常性疣贅を思わせる皮疹が生じた。病理組織学的検査にて著しい角質の増生と表皮の偽癌性増殖, 真皮に軽度の肉芽腫様変化が見られた。組織内菌要素は角質内に発芽胞子状や菌糸状の菌要素として多数認められたが, 真皮内にはほとんど見られなかった。この皮疹は治療に抵抗し, 略治後再々発して, さらに長時間の温熱, KI療法を施行することにより治癒した。
  • 柴原 美保子, 長戸 紀, 西本 勝太郎
    1993 年 55 巻 4 号 p. 649-652
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    35歳女子の顔面にみられたロコイド®(酪酸ハイドロコーチゾン)軟膏による接触皮膚炎の1例を報告した。貼布試験による確認後, 一連の市販副腎皮質ステロイド外用剤による貼布試験を施行し, 酪酸プロピオン酸ハイドロコーチゾン, ブデゾニドにも陽性の所見をえた。前者についてはC17位を中心とする立体構造が抗原決定基となった可能性を考えた。
  • 田中 達朗, 大坪 東彦, 成澤 寛, 幸田 弘
    1993 年 55 巻 4 号 p. 653-657
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    症例1は63歳男子, 顔面の脂漏性皮膚炎の治療のため, 2ヵ月間スプロフェン軟膏を外用していたところ次第に皮疹の増悪を認めた。症例2は61歳男子, 右顔面の帯状疱疹罹患後, 右眼瞼の乾燥感が続くため, スプロフェン軟膏を外用したところ, 眼囲の発赤腫張を認めた。2例ともスプロフェン貼布試験陰性, 光貼布試験陽性を示し, スプロフェンによる光接触皮膚炎と診断した。発症機序としては, 2例とも1ヵ月以上の潜伏期が存在すること, 低濃度のスプロフェン(0.01%), 少量の光線量(UVA 2J/cm2)で皮疹が再現すること, 光貼布試験の反応はピークが72時間後で, その変化が20日間持続したこと, 組織学的には海綿状浮腫がみられたこと, などより光アレルギー性が示唆された。
  • 後藤 一史, 今泉 勤, 前嶋 啓孝, 安斎 真一, 近藤 慈夫, 麻生 和雄
    1993 年 55 巻 4 号 p. 658-664
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    43歳男子のSneddon症候群の1例を報告した。本症例では躯幹四肢におよぶ広範な網状皮斑と皮膚潰瘍, atrophie blanche, 右第2趾の壊疽がみられた。さらに本症例では多発性単神経炎を合併していた。病理組織学的には真皮乳頭層における赤血球の血管外漏出, 真皮深層動脈の内腔の狭小化を伴う内膜の肥厚をみた。血液検査ではトロンビン·アンチトロンビンIII複合体(TAT)とプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)が高値を示した。MRIでは多発性の脳梗塞を, 下肢の血管造影では末梢動脈の閉塞を認めた。皮膚潰瘍は難治性であったがアルガトロバン点滴静注を施行し治癒した。広範な網状皮斑あるいはlivedoid vasculitisをみた場合には脳血管障害の有無とともに多発性単神経炎など他の合併症の有無についても検索すべきであると思われた。
  • 笠松 正憲, 横田 径子, 森田 明理, 辻 卓夫, 一木 貴, 水野 美穂子, 和田 義郎
    1993 年 55 巻 4 号 p. 665-669
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    4歳男児。Febrile ulceronecrotic Mucha-Habermann’s disease(FUMHD)の1例を経験した。皮疹の形態は紅斑, 丘疹, 小水疱, 膿疱, および痂皮と多彩であった。その後の発熱·全身状態の悪化に伴い, 皮疹が急速に全身へ拡大し, 個診は大型化し多くは潰瘍化をみた。本症例は, Mucha-Habermann’s disease(MHD)の重症型であるFUMHDの範躊に属すると考えられた。ステロイド投与で解熱をみたが皮疹の新生は続いたので, DDS(4, 4’-diamino-diphenyl sulfone: レクチゾール®)を使用したところ皮疹の新生は止まった。DDS内服8週間で皮疹は瘢痕および脱色素斑を残し一旦治癒するも, 内服中止後3週間で再発した。現在, DDS内服で皮疹はほぼ消退している。
  • —パッチテストの有用性について—
    横尾 雅子, 籏持 淳, 岡 大介, 植木 宏明
    1993 年 55 巻 4 号 p. 670-673
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    メフェナム酸による固定薬疹の2症例を報告した。症例1は49歳女子。メフェナム酸内服後, 四肢に紅斑が出現し同部におけるメフェナム酸のパッチテストにて陽性を示した。症例2は12歳女子。メフェナム酸内服後, 腹部に小児手掌大までの発疹が数個出現した。皮疹部において通常のパッチテストは陰性であったがスクラッチパッチテストでメフェナム酸に陽性を示した。文献上, 固定薬疹におけるパッチテストの陽性率は低く, 一般的に診断には内服誘発試験が用いられることが多いが, 自験例を含めメフェナム酸による固定薬疹の場合はパッチテスト陽性率は高く, とくに皮疹部におけるそれが診断上有用と考えられた。
  • 佐久間 満里子, 大久保 千真季, 青島 かおり, 原 健, 大塚 藤男
    1993 年 55 巻 4 号 p. 674-679
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    不整脈治療のため塩酸メキシレチン内服後に生じた肝障害を伴った播種状紅斑丘疹型薬疹の1例を報告した。皮疹, 肝障害ともに高度で, GOT, GPTが正常化するまでに約3ヵ月を要した。発症3ヵ月後の肝組織では軽度のリンパ球浸潤を伴った脂肪変性が認められ, 肝細胞障害型肝障害の所見であった。塩酸メキシレチンの貼布試験は5%, 10%で陽性であった。同薬剤によるリンパ球幼若化試験は陰性であった。塩酸メキシレチンによる薬疹報告例は本邦では8例のみであるが, それらに自験例を加えて考察をした。
  • 後藤 一史, 安斎 真一, 麻生 和雄, 佐藤 裕信, 松田 幹夫, 今井 大, 前田 邦彦
    1993 年 55 巻 4 号 p. 680-685
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    菌状息肉症の経過中に生じた皮膚CD30陽性リンパ腫が9年後右腋窩リンパ節に浸潤した72歳女子のsecondary cutaneous CD30+ anaplastic large cell lymphoma(SC ALCL)の1例を報告した。本症例の皮下腫瘍は組織学的に菌状息肉症が大細胞リンパ腫化したtransformed mycosis fungoides(tMF)といわれる像を示し, BerH2(CD30)が陽性であった。右腋窩リンパ節の腫瘍細胞のマーカー検索ではBerH2(CD30), EMA, HLA-DR, IL-2R1, LN2が陽性で一部にはLeuM1の発現をみとめた。Leu4, Leu3a, Leu1についてはわずかな腫瘍細胞が弱陽性を示した。また, 腫瘍組織を用いた遺伝子解析ではT cell receptor β鎖遺伝子の再構成を認めた。自験例の経過はSC ALCLあるいはtMFとしては比較的良好で特異な例と思われる。
  • 金子 栄, 原田 佳代, 河本 博明, 山本 昇壯, 柳原 正志
    1993 年 55 巻 4 号 p. 686-690
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳男子。昭和62年頃, 両下眼瞼に自覚症状のない粟粒大紅色小丘疹が出現し, その後ほぼ全身に皮疹が拡大した。平成2年11月頃, 皮疹に強いそう痒を訴えるようになり, また両指関節痛も出現してきたため当科を紹介された。初診時, ほぼ全身に粟粒大から半米粒大の赤褐色調の小丘疹がみられ, また病理組織学的にすりガラス状の胞体を有する大小不同の多核巨細胞, および組織球性細胞の増殖が認められたことから, multicentric reticulohistiocytosisと診断した。本症例の一部の皮疹にアルミチェンバーを用いたステロイドODT療法を試み, 局所の皮疹の寛解をみた。
  • 吉澤 正浩, 音山 和宣, 勝岡 憲生, 國弘 幸伸
    1993 年 55 巻 4 号 p. 691-697
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    症例は20歳の女子。発熱とともに, 頬部に浮腫性紅斑を生じた。抗核抗体> ×1280(speckled), 抗SS-A, SS-B抗体陽性, Schirmer test陽性, 唾液腺造影, 口唇生検などの所見よりSjögren症候群と診断した。紅斑を呈したSjögren症候群の本邦報告例につき臨床形態表現および病理組織像を中心に文献的に集計した。臨床形態表現では, 環状紅斑が39例中13例と最も多く, 次いで浮腫性紅斑11例であった。環状紅斑として報告されている症例でもDarierの環状紅斑と類似しないものや, 組織学的にcoat-sleeve状のリンパ球浸潤を認めない症例もあり, 臨床形態の注意深い表現が必要であると思われた。
  • 伊与田 修, 山元 修, 中山 管一郎, 末永 義則, 旭 正一
    1993 年 55 巻 4 号 p. 698-702
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    Erythrokeratodermia variabilisの1例を報告した。症例は13歳男子, 生後3ヵ月より全身に, 数日の経過で消退する不整形紅斑の出現を繰り返していた。しだいに一部の紅斑は消退しなくなり, 角化局面へと変化してきた。病理組織所見では, 著明な角質肥厚と顆粒層·有棘層の肥厚が認められた。電顕所見では, Odland小体が著明に増加し, 有棘層上層にすでに出現していた。ケラトヒアリン顆粒は顆粒層で不規則に沈着していた。電顕像でトノフィラメントやケラチンパターンはほぼ正常であった。本症は特徴的な臨床像をとるまれな疾患で, その本態についてはまだ不明であるが, 世界的にはヨーロッパを中心に多数の報告がある。本邦においては, 本例が29例目に相当する。
研究
  • 當間 由子, 藤澤 重樹, 森嶋 隆文
    1993 年 55 巻 4 号 p. 703-709
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    B16メラノーマ担癌マウスの尿中5-S-cysteinyldopa(5-S-CD)と5-hydroxy-6-methoxyindole-2-carboxylic acid(5H6MI2C)値の腫瘍増大との相関, およびDTIC, ACNU, vincristine(DAV)療法, interferon(IFN)-β療法やIFN-β·DAV併用療法の効果判定における上記両物質測定の有用性を明らかにする目的で実験をおこない, 以下のような結果を得た。1. 尿中5-S-CDと5H6MI2C値は腫瘍の増大とともに有意に上昇した。2. IFN-β·DNA併用群が最も延命効果があり, 次いでDAV群であり, IFN-β群では延命効果はなかった。3. 治療効果のないIFN-β群の尿中5-S-CDと5H6MI2C値は未治療群のそれと同様の挙動を示し, 治療効果があったIFN-β·DAV併用群とDAV群では増殖抑制がかかった時期に両値の上昇がなだらかになったことから, 尿中5-S-CDと5H6MI2C値の経時的測定が治療効果の判定に有用であると考えられた。4. 尿中5H6MI2Cは5-S-CD値に比し, 腫瘍接種早期に有意に上昇し, 後期ではDAV群を除いて腫瘍体積と相関して変動した。
講座
統計
  • 藤広 満智子, 高木 肇, 前田 学, 尾関 俊彦, 南波 正
    1993 年 55 巻 4 号 p. 718-726
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    揖斐総合病院皮膚科における1985年6月から1990年5月の6年間の白癬菌相を報告した。白癬の総症例数は2,909例で新患総数の13.6%であった。その病型別内訳は足白癬2,047例(61.2%), 股部白癬416例(12.4%), 体部白癬311例(9.3%), 爪白癬307例(9.2%), 手白癬247例(7.4%), 頭部白癬10例(0.3%), ケルスス禿瘡4例, 白癬性毛瘡2例であった。分離総株数は2,519株で, 培養陽性率は75.4%であった。その内訳はTrichophyton rubrum 1,837株(74.4%), Trichophyton mentagrophytes 574株(22.8%), Microsporum canis 39株(1.5%), Epidermophyton floccosum 18株(0.7%), Microsporum gypseum 10株(0.4%), Trichophyton sp. 7株(0.3%)であり, TR/TM比は3.3であった。1個体から2株以上白癬菌が分離された467例中, 2種以上の菌種が分離された重複感染例は79例(17.0%)認められ, 足白癬からT. mentagrophytes, 足またはその他の部位からT. rubrumが分離された症例が62例(78.5%)と最も多かった。また2度以上白癬菌が分離された足白癬164例中27例(16.5%)に重複感染が認められ, 複数の病型のみならず, 足白癬の重複感染もまれではないと考えられた。
治療
  • 武田 克之, 荒瀬 誠治, 渡辺 晋一, 永島 敬士, 渡辺 靖, 佐久間 昭
    1993 年 55 巻 4 号 p. 727-734
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    育毛剤LHOP(ペンタデカン酸グリセリド2.5%, 酢酸トコフェロール0.2%を含むエタノール製剤)の男性型脱毛症に対する有用度を評価するために, 24週間の臨床無作為化比較試験を実施した。本試験は比較対照剤として, LHOP製剤からペンタデカン酸グリセリドだけを除いた製剤を用い, 二重盲検群間比較法により行った。解析対象例は不完全症例として5例を除き, 両群とも75例であった。この結果, 毛髪所見(洗髪時などの抜け毛量の変化, 軟毛の発生, 軟毛から硬毛への変化)をもとにした改善度評価においてLHOP群は高い改善率を示した。また, LHOP群, 対照剤群とも全試験期間中, 副作用は1例も認められなかった。そして, 有効性および副作用の両面から試験終了時に有用度を評価した結果, LHOPの有用率は76.0%, これに対し対照剤は32.0%で, その差は44.0%(95%信頼区間: 29.7∼58.3%)であり, 群間に有意な差が認められた(p=0.000)。以上の成績により, LHOPは男性型脱毛症に対して有用度の高い製剤であると考えられた。
  • —二重盲検比較試験による至適用量の検討—
    Liranaftateクリーム研究班
    1993 年 55 巻 4 号 p. 735-746
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    Liranaftateクリームの1%および2%製剤の足白癬, 体部白癬ならびに股部白癬に対する有効性, 安全性ならびに有用性を比較し, 至適用量を検討するため全国30施設からなる研究班を組織して試験を実施した。試験実施総症例数は553例であったが, 安全性評価対象例は516例, 有用性評価対象例は432例であった。その結果, 1日1回の塗布における1%および2%製剤の菌陰性化率は, 足白癬で82.5%および81.3%, 体部白癬で88.7%および94.1%, ならびに股部白癬で90.6%および95.0%であり, いずれも両製剤間に有意差はなかった。皮膚症状の改善率は, 足白癬で1%製剤89.5%および2%製剤90.7%, 体部白癬で両製剤とも100.0%, 股部白癬で96.2%および100.0%であり, 両製剤間に有意差はなかった。有効率は, 足白癬で1%製剤80.7%および2%製剤80.4%, 体部白癬で88.7%および94.1%, 股部白癬で90.6%および95.0%であり, 両製剤間に有意差はなかった。副作用については, 1%製剤で1.1%(3/262)および2%製剤で1.6%(4/254)であった。臨床検査値においては, liranaftateに起因すると思われる異常値は認められなかった。有用率は, 足白癬で1%製剤80.2%および2%製剤78.9%, 体部白癬で88.7%および94.1%, 股部白癬で92.5%および95.1%であり, 両製剤間に有意差はなかった。以上の成績より, 2%製剤と1%製剤との間に有意差は認められなかったものの, 体部白癬の有効率, 有用率および股部白癬の皮膚症状の改善率, 有効率, 有用率のいずれにおいても1%製剤より2%製剤が高い数値を示したことから2%製剤を至適用量として選択した。
  • —Well-Controlled Comparative StudyによるBifonazoleクリームとの比較試験—
    Liranaftateクリーム研究班
    1993 年 55 巻 4 号 p. 747-758
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    2% Liranaftateクリーム(以下LNT)の1日1回塗布による足白癬, 体部白癬ならびに股部白癬に対する有効性, 安全性ならびに有用性を検討するため, 全国41施設からなる研究班を組織し, 1%bifonazoleクリーム(以下BFZ)を対照薬としたwell-controlled comparative studyを実施した。試験実施総症例数は712例(LNT群355例, BFZ群357例), 安全性評価対象総症例数は647例(LNT群319例, BFZ群328例), 有用性評価対象総症例数は565例(LNT群280例, BFZ群285例)であった。1日1回の塗布において, 真菌学的効果の菌陰性化率は足白癬でLNT群82.4%, BFZ群82.0%, 体部白癬でLNT群86.7%, BFZ群81.6%ならびに股部白癬でLNT群89.8%, BFZ群97.0%で有意差は認められなかった。皮膚症状の改善度は足白癬でLNT群がBFZ群より有意に優れていた(p<0.05: U検定)。また, 皮膚症状の改善率は, 足白癬でLNT群90.8%, BFZ群84.9%, 体部白癬でLNT群96.0%, BFZ群97.4%, 股部白癬でLNT群93.2%, BFZ群98.5%と両薬剤間に有意差は認められなかった。総合効果の有効率は足白癬でLNT群81.0%, BFZ群80.6%, 体部白癬でLNT群85.3%, BFZ群81.6%ならびに股部白癬でLNT群89.8%, BFZ群97.0%と有意差は認められなかった。副作用については, LNT群で5例(1.6%), BFZ群で4例(1.2%)にみられたが, 有意差は認められなかった。また, 臨床検査値においては, 両剤に起因すると思われる異常値は認められなかった。有用率は, 足白癬でLNT群83.4%, BFZ群80.1%, 体部白癬でLNT群88.0%, BFZ群82.9%ならびに股部白癬でLNT群90.0%, BFZ群95.6%で有意差は認められなかった。以上の成績より, LNTは1日1回塗布において皮膚真菌症の白癬に対し, BFZと同様に優れた効果を示し, とくに足白癬の皮膚症状の改善度においてはBFZ以上に優れた治療薬であると評価された。
  • —治療期間と治療効果発現との関係—
    Liranaftate第1研究班
    1993 年 55 巻 4 号 p. 759-770
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    新規チオカルバメート系抗真菌剤2%M-732含有クリームの1日1回塗布による足白癬, 体部白癬, 股部白癬に対する有効性, 安全性および有用性を検討する目的で全国18施設からなる共同研究班を組織し, 一般臨床試験を実施した。回収された総症例数は350例(足白癬215例, 体部白癬86例, 股部白癬49例)であった。皮膚症状と菌検査の結果を考慮した最終総合効果判定(足白癬では4週目, 体部白癬および股部白癬では2週目)における有効以上の有効率は, それぞれ足白癬は68.6%, 体部白癬は85.2%, 股部白癬は94.1%であった。本剤は, さらに長期間使用すると, 総合効果の有効率は高くなり, 足白癬では7週目, 体部白癬および股部白癬では4週目にそれぞれの有効率は100%となった。このことから, 白癬の治療において, 足白癬では7週間以上, 体部白癬および股部白癬では4週間以上, 本剤を使用することが望ましいものと考えられる。一方, 副作用は299例中3例(1.0%)に発現したが, いずれも接触皮膚炎で塗布部位に限局された副作用であった。いずれの疾患とも薬剤に起因すると思われる臨床検査値異常変動は認められなかった。また, 最終判定日における有用性は有用以上の有用率でそれぞれ足白癬は71.2%, 体部白癬は88.5%, 股部白癬は97.1%であった。以上の成績から, 2%M-732クリーム剤は, 有効性の高い安全な薬剤であり, 白癬治療に対し有用な薬剤であると考えられる。
  • 馬場 貴子, 野村 和夫, 橋本 功
    1993 年 55 巻 4 号 p. 771-777
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    0.05%difluprednate(DFBA)軟膏と0.05%budesonide(BDS)軟膏との臨床的有用性を比較する目的で, 慢性に経過する湿疹·皮膚炎群および乾癬を試験対象としてopen studyによる比較臨床試験を実施した。両薬剤の臨床効果並びに有用性は, 全般改善度において, 有効率が1, 3, 4週目でDFBA軟膏の方が(50.0%, 90.0%, 83.3%)とやや高かったが有意差は認められなかった。全般改善度の優劣比較の結果, 各観察日で両薬剤間に有意差はなかった。有用率はDFBA軟膏90.0%, BDS軟膏85.0%とややDFBA軟膏の方が高かったが有意差はなく, 有用性の比較で両薬剤間に有意差は認められず, 同等であった。また副作用の発生は両薬剤ともに認められなかった。以上よりDFBA軟膏はBDS軟膏と同等の臨床効果を示し, 慢性に経過する湿疹·皮膚炎群および乾癬の治療に際し有用な外用剤であると考えられる。
  • —長期間の投与例とその経過について—
    春原 晶代, 辻 卓夫, 横田 径子
    1993 年 55 巻 4 号 p. 778-784
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    重症でかつ他の治療に抵抗性であるかあるいは副作用のために他の治療が行えないかのいずれかの乾癬患者4例にシクロスポリンA内服治療を行った。投与量は症例に応じて初期量3∼5mg/kg/日で開始し, その後症状をみながら適宜増減した。内服期間は6ヵ月から27ヵ月で, うち2例は25ヵ月と27ヵ月という長期間であった。全例最終観察日でのPASIスコアは内服前より改善しており, その改善率は36.8∼67.5%であった。1例で脂肪肝によるGOT, GPTの上昇があり, 内服を中止した。また1例で軽い高血圧がみられた。しかし腎機能障害は1例もみられなかった。シクロスポリンA内服は, 重症でかつ他の治療に無効あるいは副作用を示す乾癬患者に対し有用であり, 長期間内服を行っても比較的安全な治療法であると考えられた。
  • 桜井 美佐, 中山 秀夫, 永島 敬士, 利谷 昭治, 新村 眞人, 稲葉 義方, 加藤 吉策, 佐藤 良夫, 清水 直也
    1993 年 55 巻 4 号 p. 785-790
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    グリチロン®の円形脱毛症に対する有用性および安全性について再確認するため臨床効果の検討を行った。中等症の円形脱毛症患者64名にグリチロン®を1日6∼9錠(小児は3∼4錠)投与した。治癒: 12例(18.8%), 著明改善: 16例(25.0%), 改善: 12例(18.8%), 一部改善, 一部悪化: 3例(4.7%)と計43例, 67.2%に有効であり, その有用性が再確認された。副作用は3例(4.6%)に認められたのみであった。その内訳は浮腫1例, 蛋白尿1例, 多型滲出性紅斑1例であり, 重篤ではなく中止により消退した。その地電解質, 血圧などに著変無く安全性も再確認できた。以上より原因, 機序の不明な円形脱毛症に特効薬がない現在, 有効性, 安全性共にすぐれたグリチロン®は用いる価値のある薬剤であると考えた。
  • 島根地区アゼプチン臨床研究班
    1993 年 55 巻 4 号 p. 791-796
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    島根地区12施設の共同研究により, アゼプチン®の蕁麻疹, 湿疹·皮膚炎, 皮膚そう痒症, 痒疹に対する有効性, 安全性および有用性について検討し, 以下の成績を得た。対象となった症例は蕁麻疹65例, 湿疹·皮膚炎138例, 皮膚そう痒症40例, 痒疹5例で, 総計248例であった。全般改善度では「改善」以上は蕁麻疹60例(92.3%), 湿疹·皮膚炎116例(84.1%), 皮膚そう痒症35例(87.5%), 痒疹3例(60%)であり, 全疾患の累計では214例(86.3%)であった。以上のように, 各疾患において高い改善率を示した。副作用および臨床検査値異常を生じた症例は6例(2.4%)であった。眠気4例, ALPおよびBUNの異常がそれぞれ1例ずつみられた。重篤な副作用は認められなかった。有用度は「有用」以上は蕁麻疹61例(93.8%), 湿疹·皮膚炎112例(81.2%), 皮膚そう痒症35例(87.5%), 痒疹3例(60.0%)であり, 全疾患の累計では211例(85.1%)であった。各疾患において高い有用率を示した。以上より本剤は各種そう痒性皮膚疾患に対して有用性の高い抗アレルギー剤であると考えられた。
  • 中山 樹一郎, 古賀 哲也, 入来 敦, 竹内 実, 桐生 美麿, 堀 嘉昭, 安田 勝, 水田 良子, 野中 由紀子, 武石 正昭, 日高 ...
    1993 年 55 巻 4 号 p. 797-802
    発行日: 1993/08/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル 認証あり
    中等症および重症の急性接触皮膚炎患者104例を0.05%プロピオン酸クロベタゾール軟膏·同クリームの単純塗擦により治療した。101例はほぼ2週間以内(2日∼16日)の治療期間で, また残りの3例は17日∼28日の治療期間で, 95.2%(99例/104例)ときわめて高い改善率を示した。平均使用期間は8.8日, 1日当たりの平均塗擦回数は2.4回, 1日当たりの平均使用量は3.2gであった。副作用は全例に認められなかった。なお, 中等症の1例に悪化を認めたが, 治療期間8日で無効(有用性なし)と判定し他の治療に切り替えた。以上の結果より, strongestに位置付けされているプロピオン酸クロベタゾール外用剤は, 発売以来10年以上経過した現在でも急性接触皮膚炎のごとく限局性で炎症症状の強い皮膚疾患の治療にきわめて高い有用度を示すステロイド外用剤であると考えられる。
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