西日本皮膚科
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54 巻, 2 号
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図説
綜説
症例
  • 田中 敬子, 田中 彰
    1992 年 54 巻 2 号 p. 232-235
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    Hyperacute graft versus-host disease(超急性GVHD)は急性GVHDよりも骨髄移植後早期に発症する特異なGVHDである。原因は残存する宿主の免疫系と輸注されたドナーの成熟したリンパ球との反応によって生じると考えられている。移植後早期の1-2週に発症し, 40℃以上の高熱, 全身性の発疹, 下痢, 肝障害を特徴とし, さらに肺水腫, 心不全などを伴う重篤な合併症である。その主たる病態は急性GVHDによる病態に加え, 血管の透過性の亢進による全身症状を特徴とする。HLA不一致の骨髄移植ではHLAの一致した骨髄移植に比べて超急性GVHDが発生しやすい。皮膚生検では骨髄移植後3週以内のことが多いため, 表皮細胞の核の濃縮など放射線化学療法の影響が主に観察され, リンパ球浸潤やsatellite cell necrosisなどのGVHDに特徴的な所見を得ることは少ない。
  • 立山 直, 多田 茂, 宮城 恒雄, 井上 勝平, 川名 修徳
    1992 年 54 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    慢性関節リウマチ(RA)に併発した下腿潰瘍の4例の病態と治療について報告した。RA患者に併発する下腿潰瘍の頻度は増加の傾向にあり, その発症因子も多要因が関与している。自験4症例については, 症例1は末梢性血管炎型, 症例2は悪性関節リウマチ(MRA)の全身性動脈炎型, 症例3は静脈瘤性症候群, 症例4はコルチコステロイドによる皮膚萎縮(コーチゾン·スキン)が著明で易出血性, 易外傷性がそれぞれ主因と推定された。その治療には成因を的確に把握し, 病態に応じた適切な治療が必須である。末梢性血管炎型MRAでは植皮に際してコルチコステロイドの適量処方, 全身性動脈炎型MRAではICU的治療の最優先, 静脈瘤性潰瘍では切除範囲の術前検討, コーチゾン·スキンによる潰瘍では植皮後の日常生活指導の重要性を自省した。
  • 加藤 卓朗, 西岡 清, 宮崎 和廣
    1992 年 54 巻 2 号 p. 243-246
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    49歳男子, 酪農業(牛)。他にペットは飼っていない。1ヵ月前に左頬部に丘疹を生じ, ステロイド剤外用で悪化した。初診時, 左頬部に毛孔一致性の紅色小結節と膿疱, 脱毛, 痂皮を伴う手拳大の紅斑局面を認めた。トリコフィチン反応は陽性で, 一般血液·細胞性免疫系検査に異常はみられなかった。須毛の直接鏡検で毛外性大胞子菌性寄生を認め, Microsporum canisTrichophyton rubrumを分離した。病理組織学的所見は毛包の破壊を伴う毛包内外の膿瘍で, 毛の周囲に菌要素を認めた。グリセオフルビンを内服したところ8週で治癒した。M. canisT. rubrumの重複感染による白癬性毛瘡は極めてまれであり, 自験例では毛には主にT. rubrumが寄生していたと考えた。
  • 谷崎 泰象, 中山 樹一郎, 堀 嘉昭, 松本 忠彦
    1992 年 54 巻 2 号 p. 247-250
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    8歳男子のRud症候群の1例を経験した。生下時に小頭症を認め, 生後1ヵ月より全身に潮紅と鱗屑を生じた。1歳頃に魚鱗癬, 癲癇, 精神薄弱, 網膜色素変性, 小睾丸, 尿道下裂を, また8歳時に幼稚症を認めた。
  • 赤坂 俊英, 今村 優子, 松田 真弓, 間山 諭, 昆 宰市
    1992 年 54 巻 2 号 p. 251-254
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    88歳女子の顎部, 73歳女子の手背に生じたspreading pigmented actinic keratosis(SPAK)の2例を報告した。2例ともに臨床像が黒色環状を呈し, superficial spreading melanoma(SSM)に類似していたことから, SPAKの臨床鑑別診断にSSMも考慮するべきと考えた。また, 腫瘍細胞に混じって, pigment blockade melanocyteが存在し, 腫瘍細胞内のメラニン顆粒の増加と腫瘍直下の真皮に多数のmelanophageが認められた。以上の特徴的な臨床像と組織像, およびpigmented squamous cell carcinomaに進展しやすい腫瘍の性格から, SPAKはactinic keratosisの一型として位置付けるべきであると考えた。
  • 田代 研児, 竹内 実, 今山 修平, 永江 祥之介, 堀 嘉昭
    1992 年 54 巻 2 号 p. 255-260
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    36歳女子, 右第1指に発生した類上皮肉腫の1例を報告した。初回生検では, 膠原線維の増生と類円形ないし紡錘形の細胞の増殖をみとめたが, 細胞の異型性は軽度で, 確定診断に至らなかった。約2年後, 右上肢から, 右大胸筋外側縁にかけて多発性に結節性の病巣を生じてきたため再受診した。再受診時の病理組織は真皮内に異型の強い核と好酸性の豊富な細胞質を持つ多角形ないし類円形細胞の充実性の増殖を示し, 免疫組織化学的に増殖する細胞はビメンチン, EMA, サイトケラチンにそれぞれ陽性であった。電顕的に胞体内の豊富な中間径フィラメント, 細胞表面の多数の微絨毛, 一部の細胞周囲のbasal laminaの形成をみとめ, 滑膜肉腫細胞との類似性が高いと考えられた。患者が宗教的理由により手術を拒否したため, 放射線照射, 温熱療法, インターロイキン-2の全身的使用にて治療したところ, 原発巣を含めて全ての病変部の縮小をみた。
  • 大森 正樹, 末永 義則, 渕 曠二
    1992 年 54 巻 2 号 p. 261-265
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    62歳女子。放射線科医師。約30年間X線透視に従事している。約7∼8年前に左手指背に紅色皮疹が出現し, 糜爛, 潰瘍を伴うようになり, 生検の結果Bowen病と診断された。治療として切除および分層植皮術を行い, 現在までのところ再発はない。本症例について報告するとともに放射線皮膚炎上に生じたBowen病の本邦報告例について文献的考察を加えた。
  • 安富 弘, 山田 琢, 多田 譲治, 長尾 洋, 荒田 次郎, 武 誠
    1992 年 54 巻 2 号 p. 266-271
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    3歳男児。生下時より, 右前頭から頭頂にかけて軽度陥凹し, 毛髪疎な局面があった。満1歳頃よりその前端に柔らかい小腫瘤が出現し, 次第に硬度を増し, また局面の後端にも柔らかい血管様の腫瘤が生じた。組織像では, 毛細血管の増生と一層の内皮細胞の外側に類円形の細胞の増殖を認めた。電顕にて基底板, 細胞質内の繊細なフィラメント, focal density(限局性の高電子密度部)を認め, 免疫組織化学的所見として, ビメンチン陽性, 第VIII因子関連抗原陰性であった。生下時よりまたは生後1歳までに生じるcongenitalあるいはinfantile hemangiopericytomaは, adult typeとは臨床経過から, また組織学的にも相違があるといわれている。自験例を加えた本邦18例について考察した。
  • 久原 智子, 野村 洋文, 樋口 満成, 蜂須賀 裕志, 津田 眞五, 田中 俊一
    1992 年 54 巻 2 号 p. 272-275
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    単発性神経線維腫の1例を報告した。患者は74歳女子。初診の約4ヵ月前, 舌背に正常粘膜色の小豆大の腫瘤があるのに気づいた。線維腫を疑い局麻下に全摘し, 病理組織学的検索を行った。HE染色では腫瘍は紡錘形あるいは類円形の核と好酸性に染まる細長い胞体をもつ細胞により構成されていた。免疫組織化学的検索では, 腫瘍細胞の多くは抗S100蛋白抗体陽性を示し, 一部は抗neuron specific enolase抗体陽性であった。抗vimentin抗体は一部に弱陽性であり, 抗β2microglobulin抗体は半数以上の腫瘍細胞で陽性であった。これらより本腫瘍を神経線維腫と診断した。文献的に舌に生じた単発性神経線維腫の報告は本邦においては自験例を含めて7例である。
  •  
    高野 美香, 西村 正幸, 林 紀孝, 利谷 昭治, 曽爾 彊, 久野 修資
    1992 年 54 巻 2 号 p. 276-280
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は40歳の福岡県出身の主婦で初診の1年前, 躯幹に紅色丘疹を生じ, 2ヵ月前より同様の皮疹が全身に播種状に認められるようになった。組織学的に真皮上層から中層に異型性のあるリンパ球様細胞の浸潤がみられ, 表皮内にも異常リンパ球が認められた。浸潤細胞の大半はT cellの表面マーカーを有し, cutaneous T cell lymphomaと診断した。初診の2年後, 全身倦怠感と著しい皮疹の増悪, 表在リンパ節腫脹とともに末梢血に異常リンパ球13%を認めるようになった。化学療法(VEPAMなど)を開始したが効果なく, 初診後3年半(白血化してから1年半)の経過で死亡した。
研究
  • 野中 薫雄, 長戸 紀, 大神 太郎, 渡辺 雅久
    1992 年 54 巻 2 号 p. 281-286
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    光毒性反応物質として知られているアントラセン(AN)の光溶血反応が酸素依存性の反応であるか否かを検討した。同時にヘマトポルフィリン(HP)とANの光溶血反応を比較した。方法は生理的食塩水100mlに0.6mlの正常人血液を加えて血球浮遊液を作製した。HPは1.0μg/ml, ANは2.0μg/mlの濃度に調整し血球浮遊液に加えた。光源はHPに対してはメタルハライドランプ, ANに対してFL-20BLBランプを用いて光線照射を行った。同様の操作を酸素ガス, 窒素ガス添加群について比較検討を行った。その結果, HP, ANいずれも光溶血反応を起した。HPと同様にANも酸素添加群で光溶血を高度に起していた。すなわち, ANによる光溶血も酸素依存性の光溶血現象であることが推測された。
  • 内田 尚之, 二宮 啓郎, 大浦 一, 荒瀬 誠治, 重見 文雄, 武田 克之
    1992 年 54 巻 2 号 p. 287-292
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド外用剤を長期使用の湿疹, 痒疹, 慢性光線過敏性皮膚炎およびwidespread DLEにエトレチナート(チガソン®)を0.5mgから0.8mg/kg/day投与した。湿疹·皮膚炎では1ないし3週で効果が現われ, ステロイドの外用量が減り, ランクも落とすことができ, 皮疹は12ないし18週で略治した。しかし, 四肢の皮疹は躯幹に比べ反応が劣った。Widespread DLEでは約23週間投与し, 皮疹は次第に浸潤がとれ, 扁平化したが, 完治には至らなかった。副作用としては, 足底皮膚の菲薄化と落屑, 口唇炎, トリグリセリドとコレステロールの上昇, 腹痛が出現したが, いずれも減量または一時中止して軽快した。
  • 赤松 浩彦, 朝田 真木, 西嶋 攝子, 朝田 康夫, 丹羽 靱負
    1992 年 54 巻 2 号 p. 293-296
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    抗アレルギー剤の1つであるketotifenの好中球由来活性酸素(reactive oxygen species: ROS)産生能に及ぼす影響を, superoxide radical anion, hydrogen peroxide, hydroxyl radicalについて検討した。またcell-freeのROS産生系であるxanthine-xanthine oxidase系についても調べた。その結果, ketotifenは好中球系において3種類のROSを濃度依存性に抑制することが判明した。一方xanthine-xanthine oxidase系では, ketotifenは3種類のROSに対して全く影響を及ぼさなかった。これらの結果より, ketotifenは産生されたROSに対してscavenger(捕捉除去)作用を示すことによってROSを低下させるのではなく, 細胞機能に作用することによりROS産生を抑制し, 抗炎症作用を発揮すると考えられた。このことは, ketotifenが好中球による炎症を伴ったアレルギー性疾患に対して有効である可能性を示唆するものと思われる。
  • 松永 若利, 石原 剛
    1992 年 54 巻 2 号 p. 297-302
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    粉瘤は日常診療でよくみられる疾患の一つで, その好発部位は顔面頬部である。治療法としては皮内の嚢腫を摘出する以外に根治は望めないが, たとえ根治しても術後の瘢痕に関してはいろいろ開題が多い。我々は最近, 粉瘤の摘出術にディスポパンチ®を利用する術式を採っている。本法は非常に簡便で術後の合併症が少ない。しかも術後の瘢痕が非常にきれいである。例えば頬部に発生した粉瘤の手術後瘢痕は部位によって一定の方向をもった短い線状瘢痕として治癒する。本法は, 真皮内の膠原線維や弾性線維を切ることなく, 線維を押し広げて侵入し, 粉瘤のみを摘出するのであり, 正常に存在する真皮組織に殆どダメージを与えない。術後にできる瘢痕の長軸方向はまさに生体における皮膚割線であり, それ故にきれいな瘢痕となるものと考える。
  • —毛ケラチン蛋白の二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析—
    勝海 薫, 伊藤 雅章
    1992 年 54 巻 2 号 p. 303-307
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    11歳女児。7歳頃より頭髪が縮毛状となった。走査型電顕による観察で捻転毛と診断した。さらに, 毛髪より毛ケラチン蛋白を抽出し, 二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した。その結果, ケラチン線維蛋白には異常を認めないが, 線維間物質でありhigh-sulfur proteinと呼ばれる毛基質蛋白の一部に泳動像の異常を認めた。
  • 豊島 弘行, 堀 真, 吉田 彦太郎
    1992 年 54 巻 2 号 p. 308-311
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    57歳女子の右大腿部に発生し, 生検後約2週間で消退したnodular fasciitisの1例を報告した。本症の本態を調べるため, 自験例の初診時のパラフィン包埋標本について核DNA量パターンを検討した。方法としては, azokarmin G前処置による非特異螢光除去を施行後, Feulgen染色をほどこし, 顕微螢光測光により核DNA量を測定した。その結果, そのDNAヒストグラムは正常有棘細胞とほぼ同様のパターンをとった。これらの結果より, nodular fasciitisが悪性腫瘍ではなく, 反応性の結合織増殖による疾患であることが示唆された。
講座
統計
  • 綿枝 耕二, 浜中 和子, 高橋 敦子, 森田 健司
    1992 年 54 巻 2 号 p. 322-328
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    昭和63年1月より平成1年12月までの2年間に尾道総合病院皮膚科に入院した帯状疱疹患者116例について統計的観察を行った。入院患者総数に対する帯状疱疹患者の占める割合は31.0%であり, 季節的には冬と秋に比較的多かった。年齢別分布では高齢者に多く60歳代にピークを示し, 性別では女子に多かった。発症部位は顔面·頭部が最も多く, 左右差はみとめられなかった。基礎疾患を有するものは45.7%に及び, 高血圧, 癌, 肝疾患, 心疾患, 糖尿病の順に多かった。疼痛の強い期間は加齢に伴い延長し, 部位的には腹部, 上肢·胸部に発症したものに長い傾向がみとめられた。汎発化は37.1%にみとめ, より高齢者の男性に多く, 疼痛の強い期間はより遷延する傾向にあった。水痘—帯状疱疹ウイルスに対する補体結合反応抗体価は発症後2週間以内では汎発化との間に相関関係はみとめられなかったが, 発症後2週間以上を経て検索した場合には汎発例では著明に高値を示した。抗体価と疼痛の強い期間との間には, 相関関係はみとめられなかった。
治療
  • —ステロイド外用剤軽減効果の検討—
    斉藤 胤曠, 樋口 光弘, 丸山 光男
    1992 年 54 巻 2 号 p. 329-341
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    幼児のアトピー性皮膚炎患児の中で, ステロイド外用療法継続中にもかかわらず, その症状が持続しているものを対象に, レピリナストの併用を試みその有用性を検討した。レピリナストの用量は, 一日用量を体重あたり平均8mg/kgとし, 投与期間は12週間とした。試験では, 観察日から4週間ごとに, ステロイド外用剤軽減効果と皮膚所見の改善を指標として観察および評価を行った。その結果, 以下の結果が得られた。
    1. 総症例29例のうち, 安全性については28例を, 有効性·有用性については26例を解析対象とした。
    2. ステロイド外用剤軽減効果では, 有効性解析対象26例のうち, ステロイド外用剤軽減効果「有効」とされたものが13例(50%)であった。その中でより弱いステロイド外用剤へランクを変更できたものは4例あった。また, 同一薬剤の使用量を25%以上減少できたものは9例あり, そのうち50%以上減少できたものは4例であった。使用量の推移をみても有意な減少が認められ, その平均減少率は30.9%であった。
    3. 皮膚所見の経時的改善度は, 投与12週で「改善」以上30.4%, 「やや改善」以上82.6%であった。
    4. ステロイド外用剤軽減効果と皮膚所見の経時的改善度を勘案して判定した最終全般改善度では, 「改善」以上34.6%, 「やや改善」以上76.9%であった。
    5. 副作用および臨床検査値の異常変動は1例も認められなかった。
    6. 以上より, ステロイド外用療法継続中の幼児アトピー性皮膚炎の患児に対してレピリナストを併用することは, 皮膚所見の改善とともにステロイド外用剤軽減が期待され, 有用性の高い治療法であると考えられる。
  • 吉田 彦太郎, 長戸 紀, 岡田 茂, 西本 勝太郎, 本田 実, 大野 まさき, 藤田 和夫, 鳥山 史, 清水 和宏, 村山 史男
    1992 年 54 巻 2 号 p. 342-349
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ランクIII(strong)以上のステロイド外用薬を平均3.4ヵ月の間継続使用していながら, 一定の皮膚症状が持続しているアトピー性皮膚炎患者を対象に, レピリナストを1日300mg·12週間併用し, ステロイド外用薬のランク軽減効果について検討した。
    1. 総投与例数24例のうち, 安全性については24例全例, ステロイド外用薬のランク軽減効果については13例をそれぞれ解析対象とした。
    2. 最終的に, ステロイド外用薬のランク軽減に成功した例は13例中7例(53.8%)であり, ランク軽減度の内訳は, 1ランク軽減: 1例(7.7%), 2ランク軽減: 4例(30.8%), 非ステロイド系外用薬までの軽減1例: (7.7%), 一切の外用療法から離脱し得た例1例: (7.7%)であった。これら7例全例においてランク軽減後の皮膚所見の改善は維持されており, かつ, ランク軽減後にステロイド外用薬の使用量が増量されておらず, むしろ軽減後に使用量が25%以上削減された例が5例(38.5%)あった。
    3. 1例に投与開始2日目より悪心·嘔吐の発現を認めたが, レピリナストの内服中止により軽快している。他の23例(95.8%)には, 安全性上の問題は認められなかった。
    4. 以上の結果より, ステロイド外用療法の長期継続にもかかわらず一定の皮膚症状を持続しているアトピー性皮膚炎患者に対して, レピリナストを併用することにより, より弱いランクの外用薬への切り換えを可能にする, 新しい治療法の可能性が示唆された。
  • トラニラスト長崎大学形成外科関連施設研究班
    1992 年 54 巻 2 号 p. 350-356
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ケロイドおよび肥厚性瘢痕患者35例を対象に, トラニラストドライシロップ剤の有用性を検討した。投与量はトラニラストとして1日5mg/kgを投与し, 期間は12週間とした。その結果, 全般改善度判定における「中等度改善」以上の割合は64.7%であり, 臨床症状のうち, 特にそう痒, 潮紅で50∼60%と高い改善率を認めた。副作用については, 中等度の悪心が1例みられた以外, 問題となるものはなく, 有用度判定における「有用」以上の割合は62.9%であった。また, 継続投与可能であった5例について最長9ヵ月まで長期使用した結果, 良好な経過並びに安全性を確認することができた。以上のことから, 本剤は, ケロイドや肥厚性瘢痕の治療剤として有用であると考えた。
  • 北海道トラニラスト研究班
    1992 年 54 巻 2 号 p. 357-367
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    ケロイドや肥厚性瘢痕に対するトラニラストドライシロップの有用性を11施設の共同研究で検討した。トラニラストとして1日5mg/kg, 4週間以上投与した37例について評価を行った。全般改善度判定の結果, 62.2%の中等度改善以上の改善が認められた。自·他覚症状別改善率はそれぞれ64.9%, 45.9%であり, 自覚症状の改善率が高く, 中でもそう痒における改善が明らかであった。副作用については, 軽度の胃部不快感, 白血球の減少が各1例にみられたが, 長期投与を含め, その他の症例では問題となる所見はなかった。有用度判定では, 有用以上が59.5%の症例に認められた。以上のことから, トラニラストドライシロップは, ケロイドや肥厚性瘢痕に有用な薬剤であると考えられた。
  • 大畑 恵之, 中山 秀夫, 橋本 隆, 荒木 由紀夫, 仲 弥, 小松 威彦, 宮川 俊一, 福田 知雄
    1992 年 54 巻 2 号 p. 368-372
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2011/09/29
    ジャーナル 認証あり
    皮膚表在性化膿性疾患54例に新しいピリドンカルボン酸系抗菌剤であるエノキサシンを投与し, その臨床的効果を検討した。治癒34例, 著効10例, 有効8例, やや有効1例, 無効1例という, 優れた治療効果が得られた。副作用は特に認められなかった。起因菌としては検出し得た45検体のうち, 21検体がStaphyrococcus aureus, 11検体がS. epidermidis, 3検体がS. saprophyticusでありブドウ球菌が全体の約8割を占めた。菌の消失率については全体として98%であった。黄色ブドウ球菌感染症のうち2例はメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)によるものであったが, エノキサシンの内服により治癒せせることができ, 特筆すべきことと思われた。
世界の皮膚科学者
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