2004年7月から7ヵ月間に当科で加療中のシェーグレン症候群(Sjs)34例とSjs疑い42例および非Sjs33例(男17名,女92名,年齢61.1±11.7歳)の計109例を対象に舌苔のカンジダを培養·同定し,検討した。延べ総検体数は188件で,方法はスワブ(綿球)にて舌表面全体に軽く10回擦過後即,クロムアガーカンジダ平板培地で塗沫·培養を行い,3日以内に菌集落5個以上のものを便宜上,陽性とし,API Cオクサノグラムを用いて同定した。その結果,総検体188個中160個(85.1%)に菌集落陽性で,内39例は1種類,44例に複数の菌集落を得た。1種類中28例(71.8%)に
Candida albicans(
C. albicans)が得られ,その他には
Candida tropicalis(
C. tropicali)3例,
Candida famata(
C. famata)2例,
Candida glabrata(
C. glabrata)と
Cryprococcus neoformans(
C. neoformans)各々1例で不明4例であった。一方,複数の菌集落44例中,
C. albicansと他菌種組合せが33例(75%)でその他の複数菌種組合せは11例(25%)であった。他菌種の延べ集計では
C. glabrata39例,
C. tropicalis11例,
Candida dubliniensis(
C. dubliniensis)と
Candida parapsilosis(
C. parapsilosis)は各々6例,
Candida guilliermondiiと
Saccaromyces cerevisiaeは各々3例,
C. famataと
Cryprococcus laurentiiは各々2例,
Rhodotorulaglutinisと
C. neoformansは各々1例で,不明は14例であった。菌種別の合計では
C. albicansは61例,
C. glabrata40例,
C. tropicalis 14例,
C. dubliniensisと
C. parapsilosis各々6例の順に多かった。Sjs群では他群に比較して菌集落が多く得られ,Sjs疑群では特に
C. albicansを主とする菌種が目立った。12回の平均ガムテスト値が10ml未満の唾液低下群と10ml以上の正常群別に各菌種との相関を検討した結果,
C. albicans(CA)とCA以外の菌では,口渇群に有意にCA以外の菌が多かった(p<0.05)。一方,
C. glabrata(CG)でも,同様な傾向(0.1<p<0.15)がみられ,かつ60-67歳に有意に多かった。CG以外の菌では有意差はみられなかった。以上より,Sjs群は菌集落が多く,Sjs疑群はカンジダ菌が目立ち,唾液分泌低下群は弱毒株がより多く検出されると分かった。この原因は明かではないが,唾液分泌の低下と相関している可能性が考えられた。
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