西日本皮膚科
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61 巻, 2 号
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図説
症例
  • 西島 千博, 大槻 典男, 高澤 宏太郎, 大西 真世
    1999 年 61 巻 2 号 p. 131-133
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
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    49歳男性の強直性脊椎炎患者に生じたpustular vasculitisの1例を報告した。発熱と同時に下肢に紫斑, 壊死性紅斑, 膿疱が多発, 下腿の腫脹も認めた。強直性脊椎炎による元来の関節痛の増悪はなかった。顕微鏡的血尿もみられた。膿疱を伴う皮疹部の病理組織では表皮内および表皮下膿疱と, 真皮のleukocytoclastic vasculitisの所見がみられた。ステロイドの内服で諸症状は速やかに軽快し, 初診時にみられたIgA高値も正常化した。自験例は, pustular vasculitisという概念にあてはまると考えた。
  • 清井 起鵬, 松井 珠乃, 江川 清文, 小野 友道
    1999 年 61 巻 2 号 p. 134-137
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    20歳男性。四肢の皮膚硬化, 四肢関節(特に手指関節)の可動域制限を主訴に受診。臨床症状, 病理組織学的所見, 末梢血好酸球増多, 高γグロブリン血症等により好酸球性筋膜炎と診断した。プレドニゾロン40mg/日内服と抗アレルギー剤(ケトチフェン)2mg/日内服およびリハビリテーション治療を追加し, 症状の改善が見られた。
  • 田中 光, 山本 明美, 飯塚 一, 橋本 隆, 田中 俊宏, 岸山 和敬, Leena BRUCKNER-TUDERMAN
    1999 年 61 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    最近われわれが同定したVII型コラーゲンのcollagenous domainに対する抗体を有する特異な自己免疫性水疱症の1例を報告した。症例は8歳女児。粘膜を含むほぼ全身に炎症性の水疱を生じた。DDSとプレドニゾロンの併用が奏効し, 瘢痕形成なく治癒した。患者血清は免疫ブロット法でVII型コラーゲンのcollagenous domainに反応し, NC 1 domainには反応しなかった。免疫電顕ではcentral banded portionを含めanchoring fibrilに陽性所見を示した。過去に報告された同様な症例について文献的考察を行ったところ, 本症がこれまで十分な検索がなされないまま見過ごされていた可能性が示唆された。
  • 工藤 美也子, 梅林 芳弘, 小辻 智恵, 大塚 藤男
    1999 年 61 巻 2 号 p. 144-147
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    36歳, 女性。1990年(28歳)にほぼ全身に散在する角化性の紅斑に加え膿疱が出現した。当時, 膿疱性乾癬と診断されてステロイド剤を外用, 軽快した。その後も乾癬皮疹は出没したが, ステロイド剤の外用のみでコントロールされていた。1994年10月はじめ(第2子妊娠7週)に, 再び全身に角化性紅斑が再燃し, 膿疱, 膿痂疹様皮疹を伴った。37℃台の発熱と全身倦怠感があり血中タンパク4.4g/dl, アルブミン2.0g/dl, カルシウム7.2mg/dl, と低下していた。膿疱部は病理組織学的に, Kogojの海綿状膿疱を呈した。ステロイド剤の外用療法によく反応した。乾癬の皮疹はその後もみられたが, 分娩後には消退した。妊娠時に増悪した膿疱性乾癬と考えた。ELISA法にて経時的に血清中のIFN-γ, IL-1β, TNF-α, IL-6, IL-8を測定したところ, IFN-γ, IL-6, IL-8は皮疹増悪時に高値でその後低下した。IL-6, IL-8は分娩前にも一過性の上昇を見た。TNF-α, IL-1βは全経過を通じて上昇しなかった。IL-6とIL-8が皮膚症状と相関し, 病勢を反映すると考えた。
  • 渡辺 加恵, 太田 幸則, 饗場 伸作, 市川 薫, 高須 博, 橋本 明彦, 勝岡 憲生
    1999 年 61 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    臨床症状の異なるlinear IgA bullous dermatosisの2例を経験した。症例1は71歳女で, 緊満性水疱に加えて, びらんを伴った紅斑性局面とその辺縁に緊満性の小水疱が配列するジューリング疱疹状皮膚炎様の臨床像を示した。症例2は64歳男で, 粘膜の重篤なびらんを主体とし, 皮膚の水疱は比較的軽症であった。この自験2例及び過去の報告例についてみたところでも, 本症はその症状, 治療に対する反応性において多彩である。
  • 安川 香菜, 加藤 直子, 木村 久美子, 相川 啓子
    1999 年 61 巻 2 号 p. 152-154
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    69歳, 女性。初診の1年前から左下腿に暗赤色局面が出現した。病理組織学的には真皮上層のxanthogranulomaで泡沫状組織球, リンパ球, ツートン型巨細胞から成り, 大型で不整形の異物型巨細胞も多数出現していた。13年前より白血球減少症の既往があったため, 膠原線維類壊死の所見に乏しかったが, necrobiotic xanthogranuloma with paraproteinemia(NXG)を疑い, 精査したところIgGのモノクローナルな増加が認められ, NXGと診断した。
  • 松内 瑞恵, 山本 俊幸, 渡辺 京子, 佐藤 貴浩, 横関 博雄, 西岡 清, 片山 一朗
    1999 年 61 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    33歳男性。10歳頃より下腿に米粒大の紅斑が出現し, 尋常性乾癬と診断されステロイド外用剤で加療されていた。平成7年, 39℃台の発熱と全身倦怠感が出現し, 同時に両手指の疼痛, 発赤, 腫脹, 運動障害を来し漸次増悪した。関節症性乾癬と診断され非ステロイド系消炎鎮痛剤を内服するも効果なくシクロスポリンの内服を開始した。1日400mg(6.35mg/kg)まで増量したが, 皮膚症状の改善を認めるものの, 関節症状は軽快せずメソトレキセート(7.5mg/週)に変更。その後皮膚症状は再燃するも関節症状は軽快した。関節滑膜生検では, 線維芽細胞様細胞や小血管の増生およびリンパ球, マクロファージの浸潤が認められた。入院後, 病巣感染の検索をしたところ歯根膿瘍がみつかり, 抜歯により加療したところ関節症状は徐々に消退し, メソトレキセート中止後も関節痛は自制内となった。細菌培養で歯根膿瘍から4種類の嫌気性菌が検出され, それぞれの細菌の培養上清を用いてリンパ球刺激試験を行ったが, 健常人との有意な差は認められなかった。
  • 東 裕子, 片平 充彦, 穂積 秀樹, 瀬戸山 充, 神崎 保
    1999 年 61 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    48歳の男性。20年前, 胃潰瘍のため胃の亜全摘術を施行。長期の飲酒歴があり, アルコール性肝炎を指摘されていた。臨床的には口角炎, 舌の発赤, 四肢末端部の紅斑, 陰部の紅斑, びらん, 体幹の皮脂欠乏性湿疹を認めた。検査の結果アルコール性膵炎, 糖尿病も合併し, 低アミノ酸血症, 低亜鉛血症, 正球性正色素性貧血, 低蛋白血症, 低アルブミン血症, 低コレステロール血症, ビタミンの低下を認めた。亜鉛, アミノ酸の投与では十分改善しなかったが, 高カロリー食, ビタミン剤, 消化酵素剤の投与で皮疹はすべて消失した。低栄養状態における皮膚症状と考えた。
  • 亀好 良一, 田中 稔彦, 檜原 理子, 柳田 明伸, 山本 昇壯, 神安 雅哉, 水野 正晴, 近藤 雅雄
    1999 年 61 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    54歳の男性。先天性骨髄性ポルフィリン症の症例を報告した。両親はいとこ結婚。8歳頃より顔·手など露出部に水疱·糜爛·潰瘍·瘢痕形成を繰り返すようになり, また赤色尿も出現した。その後, 露出部の色素沈着·色素脱失, 多毛, 皮膚脆弱化が顕著となり, また, 耳介·手指末梢の変形, 眼球強膜病変も伴ってきた。神経症状·腹部症状の既往はないが, 数年前より軽度肝機能障害を指摘されていた。これまで特に加療されていなかったが, 半年前より皮疹の出現頻度が増加したため受診した。検査にて血中·尿中·便中ポルフィリン体の異常高値を認め, 特に尿中·便中コプロポルフィリンは大部分がI型異性体であった。軽度脾腫はみられたが, 検査上溶血性貧血はみられなかった。肝生検の結果, 軽度炎症所見はみられたが, ポルフィリン体の沈着は明らかではなかった。入院後安静および遮光により, 皮疹と肝機能は徐々に改善した。その後シメチジン投与を試みたがポルフィリン値, 皮膚症状とも特に変化は見られなかった。現在, 遮光および機械的刺激を避けるよう留意し経過観察中である。なお患者の家族に同症は見られなかった。
  • 柴田 智子, 林 士弘, 今福 信一, 安元 慎一郎, 永江 祥之介, 今山 修平, 古江 増隆, 中山 樹一郎
    1999 年 61 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    14歳の男児。出生時に左下肢の肥大と, 腹部から左下肢にかけての紅斑および同側の多趾症が認められた。成長とともに左下肢の肥大は進行し, 静脈の怒張·蛇行が認められるようになった。1996年秋, 左第1趾に化膿性肉芽腫様の易出血性の結節病変が出現し, 増大傾向を示した。骨X線像にて骨の延長と変形が, MR像にて左下肢の軟部組織の過形成が確認された。血管造影では左足背と膝関節周囲に血液貯留像が認められたが, 明らかな動静脈吻合は認められなかった。病理組織学的に患肢には血管, リンパ管および結合組織の異常な増生を認め, 中胚葉系全体の形成異常が示唆された。左第1趾の化膿性肉芽腫様の病変に対してはCO2レーザーが有効であった。
  • 村上 義之, 永江 祥之介, 古江 増隆, 笹富 英三郎, 入江 康司
    1999 年 61 巻 2 号 p. 172-176
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    69歳の女性。左上腕に直径44mmの紅色腫瘤1個, 左大腿外側に直径24mmの表面にやや紅色調を呈した皮内から皮下にかけての腫瘤2個, 左足関節内側に直径10mmの常色からやや褐色調の皮内から皮下にかけての腫瘤2個を認めた。表在リンパ節は触知せず, 腹部エコー, 胸部·腹部CT, Gaシンチグラフィーにて他臓器病変を認めなかった。血算では白血球4,800/mm3のうち3%に異型リンパ球を認め, 抗HTLV-1抗体陽性であった。皮膚生検にてdiffuse pleomorphic typeのmalignant lymphomaと考えられ, 生検皮膚組織を用いたサザンプロット法によりHTLV-1 proviral DNAの腫瘍細胞へのmonoclonalなintegrationが認められたことから, 成人T細胞白血病·リンパ種皮膚腫瘤型と診断した。CHOP 1クールとTHP-COP 5クールに加え局所電子線を30Gy照射した。
  • 石川 博康, 熊谷 恒良, 小川 俊一
    1999 年 61 巻 2 号 p. 177-180
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    クモ刺咬症の診断は虫体の確認と医療サイドの充分な知識が必要なため, 報告例は意外に少ない。今回我々はカバキコマチグモと同定しえた1例を含めクモ刺咬症を3例経験した。いずれも局所症状として腫脹は軽度であるにも拘らず激痛を伴うことが特徴的であった。3例中2例は全身症状を伴う大利分類IV度(重症)であったが, 副腎皮質ステロイド剤の全身投与が著効を示した。本邦におけるクモ刺咬症について文献的検索を行ったところ, 中央医学雑誌における1954∼1997年のクモ刺咬症の報告は54例であり, 今回の3例を含めて総計57例であった。このうちカバキコマチグモによる確診例が35例, 推定された3例も含めると38例となり, 国内で報告されたクモ刺咬症はその約2/3がカバキコマチグモによるものと考えられた。また全身症状を伴う大利分類IV度(重症)を来した14例中13例がカバキコマチグモによるものと考えられた。すなわちカバキコマチグモ刺咬症患者の約3人に1人が全身症状を伴う重症であった。近年国内において外来種であるセアカゴケグモの発見報告が相次いでおり, 今後クモ刺咬症の更なる増加が十分予想される。皮膚科医を始め医療従事者側がクモ刺咬症に対し, 充分な認識を深める必要があると思われる。
  • 小宅 慎一, 小野 勝馬, 内藤 秀一
    1999 年 61 巻 2 号 p. 181-183
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は, 38歳女性。鶏に左下腿を引っ掻かれてから約1ヵ月後同部位に発赤, 腫脹が出現。セフェム系抗菌剤投与を受けたが症状は軽快せず当科受診。抗酸菌培養で, Mycobacterium abscessus(M. abscessus)が同定され同菌による皮膚非定型抗酸菌症と診断した。治療として, minocyclineは, 臨床的に無効, ciprofloxacin, levofloxacin, sparfloxacinは臨床的に有効と思われたが副作用のため継続投与できずlomefloxacin18日間投与にて治癒した。M. abscessusなどの非定型抗酸菌は, 抗菌薬に耐性を示すことが多く同菌による感染症の治療には難渋することが多い。自験例では, 複数のニューキノロン系抗菌剤が臨床的に有効であり皮膚非定型抗酸菌感染症の治療において同薬剤が有効である可能性が示唆された。
  • 赤嶺 千賀子, 高宮城 敦, 稲福 和宏, 長嶺 安司, 上原 啓志, 野中 薫雄
    1999 年 61 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例: 59歳, 男性。初診: 平成2年6月19日。既往歴, 家族歴に結核なし。初診の約3年前より臀部に紅色丘疹出現し, 徐々に拡大してきた。近医にて生検等施行されるも原因不明と言われ長期間抗生剤を内していたが, 改善みられないため当科受診した。現症: 両臀部∼大腿部にかけて鱗屑, 痂皮を付着する境界明瞭な淡褐色疣状隆起性局面を認めた。所々に脱色素斑と膿汁の排泄を認めた。病理組織学的には真皮上∼中層にかけて島状に稠密な類上皮細胞, 小円形細胞からなる細胞浸潤を認めた。表皮肥厚, 表皮乳頭の不規則な下方への延長があり, 乾酪壊死は認めなかった。胸部X線写真で右胸膜の石灰化を認めた。ツ反は陽性。組織培養にてM. tuberculosisを検出した。内臓結核精査のため行った注腸造影検査で回盲部, S状結腸間の瘻孔が認められた。同部の組織にて古い結核病巣が考えられた。以上より腸結核からの自家接種による皮膚疣状結核が疑われた。1987年より1996年までに本邦で36例(4例の自験例を含む)の皮膚疣状結核が報告されているがこの中には腸結核を伴う症例報告は認めなかった。
  • 分山 英子, 小玉 優子, 西本 勝太郎
    1999 年 61 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    69歳, 女性。平成9年3月頃より左鼠径部の皮下腫瘤を自覚。8月には右下腹部腫瘤も出現したため, 精査目的で9月18日当院内科入院。ATLのリンパ腫型の診断のもと化学療法を予定されていた。10月1日, 下肢のdry skinを主訴に当科初診。内科入院直後より両足背の鱗屑局面に気付いていたとのことであったが, 初診時鱗屑局面の有無は確認できていなかった。10月8日の再診時には, 全身に著明なそう痒を伴う黄褐色鱗屑および角化局面の多発を認めた。鱗屑よりのKOH鏡検では多数の疥癬虫および虫卵を認め, ノルウェー疥癬と診断した。25%安息香酸ベンジル加エタノールの週2回の外用, ムトウハップによる足浴, 5%サリチル酸加亜鉛華軟膏による鱗屑の除去で, 一旦, 疥癬虫および虫卵陰性になったが, オンコビン®, エンドキサン®, アドリアシン®, プレドニン®による化学療法中に帯状疱疹および疥癬の再発を認め, 完治し得ないままATLによる多臓器不全で初診より4ヵ月後に死亡退院となった。
  • 三好 研, 中島 英貴, 安井 喜美, 小玉 肇
    1999 年 61 巻 2 号 p. 192-195
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    H2レセプター拮抗剤である塩酸ロキサチジンアセタート(アルタット®)による著明な鱗屑を伴う剥脱性皮膚炎型の薬疹を報告した。病理組織学的にsatellite cell necrosisを認め, 表皮内に浸潤しているリンパ球はヘルパーT細胞であり, Langerhans細胞は消失していた。異常角化細胞は積極的に表皮外に排出されていた。スクラッチパッチテストおよび内服誘発試験で原因薬剤を特定できた。シクロスポリンが著効を呈した。
研究
  • —多施設調査における解析—
    古江 増隆, 力久 航, 山本 昇壯
    1999 年 61 巻 2 号 p. 196-203
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬の使用状況を検討するために, 10施設においてアンケート調査を行った。6ヵ月以上臨床経過を観察し得た患者548例の初診時の視診によるグローバルな重症度, アンケート時の視診によるグローバルな重症度, 頬部の血管拡張, 肘窩の皮膚萎縮, 膝窩の皮膚萎縮, アンケート前6ヵ月間の顔面, 頭部, 顔面·頭部以外の部位へのステロイド外用量を記入することとした。2歳未満の患者は22例であり, 患者の80%以上が顔面へは20g未満/6ヵ月, 顔面·頭部以外の部位へは90g未満/6ヵ月を外用していた。今回のアンケートでは頭部にステロイドを外用していた症例はなかった。2歳以上13歳未満の患者は74例であり, 患者の80%以上が顔面および頭部へはそれぞれ30g未満/6ヵ月, 顔面·頭部以外の部位へは180g未満/6ヵ月の外用量であった。13歳以上の患者は452例であり, 患者の80%以上が, 顔面へは60g未満/6ヵ月, 頭部へは120g未満/6ヵ月, 顔面·頭部以外の部位へは300g未満/6ヵ月の外用量であった。13歳以上の患者で顔面への外用量が60g未満の群は60g以上の群に比べ, また頭部への外用量が120g未満の群は120g以上の群に比べ, 頬部の血管拡張が有意に少なかった。また顔面·頭部以外の部位への外用量が300g未満の群と300g以上の群の間に肘窩や膝窩の皮膚萎縮の発現頻度に有意差は認められなかった。一方, 最重症や重症の患者では強いランクのステロイド外用薬が使用される傾向が明らかであり, 13歳以上の顔面への外用は最重症では70.5%がstrong以上を外用しているのに対し, 中等症·軽症では90%はmedium以下を外用していた。
  • 加藤 卓朗, 丸山 隆児, 渡辺 京子, 谷口 裕子, 西岡 清
    1999 年 61 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    足白癬患者を通常の試験管培養, foot-press培養法(以下FP法と略す)およびneutral red染色法(以下NR法と略す)を用いて検討した。病変部鱗屑の直接鏡検が陽性で未治療の足白癬患者20例を対象とした。試験管培養は20例中14例が陽性でTrichophyton rubrum 7例, T. mentagrophytes 7例であった。FP法は14例が陽性で, 同じくT. rubrum 7例, T. mentagrophytes 7例であった。集落数は10コロニー未満が12例, 40コロニー以上が2例であった。NR法は判定不能4例を除く, 16例中15例が陽性であった。試験管培養とFP法の関係は, 両者ともに陽性が11例, 試験管培養陽性·FP法陰性が3例, 試験管培養陰性·FP法陽性が3例, 両者陰性が3例であった。しかしながら, 試験管培養陰性の6例はすべてNR法は陽性であった。したがって, 20例すべてにおいて鱗屑中に菌が生きていることが確認され, 菌は生きていてもFP法は20例中6例(30%)で陰性で, 足白癬患者においては大量に菌を散布する症例もあるが, 菌は生きていてもほとんど散布しない症例もあると結論した。以上は感染源として足白癬患者の評価·対処を行う上で重要なことである。
  • —足と爪白癬以外の病型について—
    加藤 卓朗, 丸山 隆児, 渡辺 京子, 谷口 裕子, 西岡 清
    1999 年 61 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    足白癬および足からの直接の進達と考えられる爪白癬以外の生毛部, 頭部, 手白癬などの感染経路に関して, まず仮説を立て, 次にこの仮説上の感染経路が実際に起こりうるか実験的に検討した。仮説として, (1)病変部→非罹患部, (2)病変部→環境(マット, 下着, その他の日用品など)→非罹患部, (3)病変部→手指→非罹患部, (4)病変部→環境→手指→非罹患部を考えた。実験方法はTrichophyton mentagrophytesによる未治療の足白癬患者(25歳男)を感染源とし, 白癬に罹患していない健常人(42歳男)を被験者とした。培地として5-fluorocytosineなどを添加したサブロー·ブドウ糖寒天培地, 培養法として被験部位を直接圧抵するfoot-press培養法(足底), hand-press法(手掌と指腹), finger-press法(指腹)など, およびhairbrush法(頭髪)を用いた。仮説に対して, (1)患者の足底に被験者の皮膚(手, 手指, 頭髪, 肘)を接触後培養, (2)患者が踏んだ足拭きマット, あるいは足底を拭いた布タオルに被験者の皮膚を接触後培養, (3)足底に被験者の右手を接触, その右手で皮膚を擦過後培養, (4)患者が踏んだマットに被験者の右手を接触, その右手で皮膚を擦過後培養した。その結果, 全20検体のうち(1)の頭髪を除くすべての検体からT. mentagrophytesを分離した。とくに直接接触よりマット, タオル, 手指を介した方が, 多数の集落が生える傾向にあった。以上から前述の仮説上の感染経路のすべてに可能性があることが証明された。
講座
統計
治療
  • 中岡 啓喜, 橋本 公二, 大塚 壽
    1999 年 61 巻 2 号 p. 221-223
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    近年開発された短パルス炭酸ガスレーザー装置による正常皮膚組織に対する凝固, 壊死効果を, 組織学的に検討したので報告する。手術時採取した鼠径部正常皮膚に, 照射出力10∼30Wの条件で, 照射密度を3段階に変えて一回照射(1 pass)を行った。照射面のエネルギー密度は4.25∼12.75J/cm2で, レーザーのパルス幅は約100∼1800μsであり皮膚の熱拡散時間にほぼ近似していた。照射出力を変えることにより, 表皮内(厚さ約60μm)から真皮上層(厚さ約200μm)までのほぼ均一な凝固, 壊死層を得ることが可能であった。今後, 短パルス炭酸ガスレーザー装置の特性を利用した表在性皮膚疾患の皮膚剥削術に代わる治療の展開が期待される。
  • 福岡地区乾癬治療研究会
    1999 年 61 巻 2 号 p. 224-234
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    従来のコルチコステロイドあるいはビタミンD3の外用剤で, ある程度の臨床的改善があるもののQOLの面で満足度が低い中等症以下の乾癬患者にサンディミュン®の内服療法を1日2.5mg/kg以下の量で併用し12週間にて最終全般改善度が78.2%, 有用度69.5%を得た。患者QOLの満足度は「多少満足している」以上が73.9%であった。副作用は29例中8例にみられ内訳は関節痛, 肝機能異常, 高血圧, 血清BUNの上昇などであったがいずれも重篤なものはなくサンディミュン®の中止あるいは減量で回復した。今回の臨床研究は福岡地区の開業医を中心とした研究組織で行われたもので第一線での乾癬患者の治療法のひとつの選択肢として上記サンディミュン®低用量併用療法が有用と考えられた。
  • 広島フランカルボン酸モメタゾン研究班
    1999 年 61 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 1999/04/01
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル 認証あり
    難治性の湿疹·皮膚炎群および尋常性乾癬, 掌蹠膿疱症に対する0.1%フランカルボン酸モメタゾン軟膏の外用漸減療法の有用性を検討した。1日2回の外用にて治療を開始し, 症状の改善にしたがって1日1回の外用とし, 症状の変化とともに局所および全身性の副作用を観察した。各疾患の皮膚所見は2週目から明らかに軽快し, いずれの症例においても塗布回数を減じても明らかな悪化をみなかった。平均塗布回数がほぼ1日1回となったのは6週目からであった。また試験開始時の1日平均外用量は3.8gであったが, 6週目では1.7gとなった。副作用として62例中2例に局所性の副作用(軽度毛細血管拡張, 体部白癬)が認められた。全身性の副作用の指標として用いた血清コルチゾール値は試験前後での変動を検討し得た61例中10例において試験開始後4週もしくは8週目において明らかな低下が認められた。本試験の結果は湿疹·皮膚炎群, 尋常性乾癬, 掌蹠膿疱症におけるステロイド外用の漸減療法の有用性を示唆している。この方法は副作用の軽減, 患者のコンプライアンスの点からみても有用と思われる。
世界の皮膚科学者
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