西日本皮膚科
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66 巻, 1 号
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綜説
症例
  • 石田 敏子, 横山 恵美, 石川 貴美, 奥田 未加子, 山口 道也, 吉川 義顕, 武藤 正彦, 豊田 耕一郎
    2004 年 66 巻 1 号 p. 6-8
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    67歳, 男性。糖尿病の既往あり。初診の約1年前より右足底に拇指頭大の潰瘍が出現し, 近医で外用療法にて加療されていた。初診の2日前より潰瘍部の発赤, 腫脹とともに39℃台の発熱を認めた。翌日, 悪寒, 戦慄, 腰部・右下肢痛を訴え, 2001年10月15日当科に入院となった。入院時の血液検査ではCRPは28.8 mg/dl。潰瘍部および血液培養にてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出された。塩酸バンコマイシンにて治療を開始するも臨床症状の改善はみられず, 腰部・右下肢痛は増悪し, 疼痛のコントロールができなくなったため精査を行ったところ, L 4/5領域の化膿性脊椎炎および両側腸腰筋膿瘍の合併が判明した。糖尿病患者の診療にあたっては合併症としてこのような稀な部位の細菌感染症の存在も念頭におく必要があると考えられた。
  • 小串 葉月, 國武 裕子, 前川 嘉洋
    2004 年 66 巻 1 号 p. 9-11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳女性。慢性関節リウマチ (RA) の既往あり。2000年2月より蛋白尿・浮腫等の腎症状, 3月より微熱が出現。初診時に右第2, 3指, 左第3, 4指のチアノーゼ, 紫斑があり, その後皮膚壊疽となった。臨床症状より, 慢性関節リウマチの経過中に顕微鏡的多発血管炎 (顕微鏡的PN) を生じた症例と診断した。腎症状はステロイド投与で軽快, 手指のチアノーゼは, プロスタグランジンE1 (以下PGE1) 投与で軽快したが, 皮膚壊疽部で骨の露出を認め, 外科的手術を要した。顕微鏡的多発血管炎, 皮膚壊疽を伴った慢性関節リウマチの1例として報告した。
  • 鉾石 真理子, 丸山 美鈴, 藤山 幹子, 村上 信司, 橋本 公二, 檜垣 高史
    2004 年 66 巻 1 号 p. 12-14
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    1カ月, 女児。生下時より, 手背, 足背の著明な浮腫を認めた。足背より生検を行い, リンパ浮腫と診断。染色体検査を行ったところ45XOであり, Turner症候群と診断した。
  • 竹田 公信, 渡辺 晴二, 阿部 真也, 松井 裕, 望月 隆, 柳原 誠, 石崎 宏
    2004 年 66 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    Down症候群にみられた稗粒腫様特発性皮膚石灰沈着症 (milia-like idiopathic calcinosis cutis with Down syndrome : MICCD) の6歳女児例を報告した。両手足に径2mmまでの白色の稗粒腫様丘疹が散在し, 両下眼瞼には汗管腫を認めた。自験例は国内外で14例目である。本症の多くは小児にみられ, 性差はない。白色丘疹は機械的刺激を受け易い手, 足に好発し, 組織像は, subepidermal calcified noduleに一致している。Down症候群の汗管腫合併は小児期には稀であるが, MICCDでの合併は半数と高率にみられる。
  • 帖佐 宣昭, 宮国 均, 津守 伸一郎, 緒方 克己, 瀬戸山 充
    2004 年 66 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳, 男性。Hepatitis B virus (HBV) キャリアとして2年来経過観察されていたが, くすぶり型成人T細胞性白血病 (ATL) を発症。その後急性転化が認められ, CHOP療法にて加療された。その後外来通院しながらコルチコステロイド, VP-16の投与を受けていたが通院約4カ月後にB型劇症肝炎を併発。集中治療を受けるも効果なく死亡した。HBVキャリアに発症した疾患に対し, 副腎皮質ステロイド剤などの免疫抑制剤や抗癌剤の投与中あるいは投与中止後に, B型劇症肝炎を発症することが知られており, その予後は不良である。HBVキャリアにこれらの薬剤を使用する場合にはこのことを認識し, 内科と連携してHBVの活動性を厳重に監視すべきである。
  • 宇宿 一成
    2004 年 66 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    51歳, 基礎疾患をもたない女性。ひとり暮らしであり, 寂しい気持ちを慰めるために近所の野良ネコに餌を与えている。いつものように餌を与えていたところ1匹のネコに右腕をひっ掻かれた。翌日には掻破部に疼痛と熱感を伴う発赤・腫脹が出現した。病理組織学的には真皮から皮下組織にかけて好中球の稠密な細胞浸潤があり, 細菌培養でPasteurella multocidaが検出された。セフジニル300 mgの経口投与2週間で軽快した。ネコ掻傷によるパスツレラ皮膚感染症と診断した。
  • 周 圓, 藤広 満智子
    2004 年 66 巻 1 号 p. 26-28
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    89歳, 女性。脳梗塞にて入院中に肺炎を併発した。酸素チューブを使用しはじめた頃より, 頭部, 耳介及び顔面に紅色丘疹が多発し, 掻破行動を示したため, 当科を紹介された。耳介に疥癬トンネルが認められ, KOH法では虫卵が検出された。イオウサリチル酸チアントール軟膏を2週間外用後, 皮疹は消失した。顔面に生じた疥癬は稀であり, 免疫力の低下との関わり, 更に疥癬の既往があったため, その再燃などが考えられた。寝たきりの高齢者では, 従来の外用剤の全身塗布は大変な労力が要りまた塗り残し部位において, 虫卵が残存する可能性があるため, 今後さらなる治療法の開発, 改善が望まれる。
  • 阿部 真也, 若松 伸彦, 田邉 洋, 望月 隆, 柳原 誠, 石崎 宏, 池田 玲子, 宮谷 信行
    2004 年 66 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    67歳女性。約20年前より慢性関節リウマチでプレドニソロンを内服。糖尿病と腎不全を合併していた。初診の10日前, 誘因なく左前腕に腫脹が出現し, 抗生剤を投与されたが徐々に手背にまで拡大した。当科入院時, 左肘から手背にかけ発赤, 腫脹, 硬結があり, 前腕伸側には瘻孔があった。左手背に皮膚の剥離による潰瘍が認められた。左肘から上腕屈側には圧痛を伴うそら豆大の皮下結節が数珠状につらなっていた。左前腕瘻孔からの膿の墨汁標本で莢膜を持つ胞子状菌要素を認め, Cryptococcus neoformans serotype Aが培養された。フルコナゾール 200 mg/日の内服を開始し, 血中濃度を測定しつつ50 mg/日まで減量。瘻孔, 腫脹は約4カ月で略治した。その2カ月後にも血中クリプトコックス抗原 (定性) が陽性であったため, フルコナゾールの内服を継続した。患者は治療開始約10カ月後に細菌性肺炎により死亡したが, 皮膚症状の再燃はみられなかった。
  • 山口 由衣, 佐々木 哲雄, 加納 塁
    2004 年 66 巻 1 号 p. 34-36
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    24歳女性。ウサギをペットとして飼育している。当科初診の約3週前, 左上眼瞼にそう痒を伴う紅斑が出現した。鱗屑のKOH鏡検で真菌要素を認め, 初診日からイトラコナゾール 100 mg/日を内服し, 3週で治癒した。スライドカルチャーでTrichophyton mentagrophytesと同定した。また, Chitin synthase 1遺伝子塩基配列の解析よりArthroderma benhamiaeと同定された。ペットのウサギに脱毛病変を認め, 獣医にて治療されており, それからの感染が最も疑われた。近年のペットブームに伴い動物からの真菌感染症に注意が必要であり, 感染の拡大・反復を防ぐためにも獣医師と連携し, 早期に感染源や感染経路を明らかにすることが重要と思われる。
  • 小泉 裕子, 角田 孝彦, 伊藤 修, 藤山 幹子
    2004 年 66 巻 1 号 p. 37-39
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    アロプリノールによるdrug-induced hyper-sensitivity syndromeの1例を報告した。症例は51歳の男性。腎不全のため処方されたアロプリノール (ザイロリック®) を内服4週間後, 略全身に紅斑, 39℃台の発熱, 肝機能障害が認められた。アロプリノールによるDIHSを疑い, 内服中止およびステロイドの内服を開始した。また同時に腎機能悪化のため, 血液透析も導入した。11病日には落屑を残して皮疹は消退し再燃はなかった。アロプリノールのDLSTは陰性。発症約3週間後にHHV-6 IgG抗体価の上昇が認められた。DIHSは臨床経過が遷延することが多いが, 本症例は血液透析を導入したため, 比較的短期間に臨床症状が軽快したと考えた。
  • 森田 有紀子, 岩井 昭樹, 柴田 真一, 富田 靖
    2004 年 66 巻 1 号 p. 40-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    31歳, 女性の恥丘部に生じた皮膚子宮内膜症の1例を報告した。右鼠径ヘルニア手術の既往あり。初診の半年前から右恥丘部に大豆大の皮下腫瘤が出現, 月経時に増強する圧痛を認めた。全摘生検術を実施し, 病理組織学的に子宮内膜症と診断した。成人女性の外陰部に皮下腫瘤をみた時には, 稀ではあるが本症も鑑別疾患に入れ, 月経に伴う症状を問診すべきである。
研究
  • 中山 樹一郎, 山口 隆広, 長野 文子, 高橋 聡, 清水 昭彦, 若松 一雅, 伊藤 祥輔
    2004 年 66 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    悪性黒色腫の組織中5-S-cysteinyldopa (5-S-CD) 値を測定し, その臨床的意義について検討した。原発性悪性黒色腫の黒色結節性病変では20 nmol/g以上の測定値が得られた。腫瘤 (結節) 部, 常色潰瘍部, やや隆起した黒色斑部の測定値に著明な差は認められなかった。「主病変の辺縁あるいは隣接した部位でも正常組織とは明らかな差がみられた。」転移性病変では, 所属リンパ節の場合, 原発部の結節ほどではないが, 明らかな高値がみられた。転移のないリンパ節ではきわめて低値であった。遠隔皮膚転移病巣は400 nmol/g以上のきわめて高い5-S-CD値が得られた。血清5-S-CD値とは遠隔転移例のみが相関を示した。以上より悪性黒色腫の組織中5-S-CD値の測定はその補助診断, 治療効果の判定, 転移性病変の判定などに有用と考えられた。
治療
  • 前田 学, 荒木 麻里, 藤沢 智美, 澁谷 佳直, 杉野 佳奈
    2004 年 66 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    2002年10月から2003年3月末までの1年6カ月間で当院皮膚科外来にて投与したシェーグレン症候群 (Sjs) とその疑い例及び口渇を伴う皮膚疾患患者合計137例を対象に塩酸セビメリン (エボザック®) を投与し, その治療効果を検討した。内訳は原発性Sjs 19, 二次性Sjs 12 (SSc7, SLE2, 皮膚筋炎2, RA1), Sjs疑い80及び非Sjs26例 (男27 : 女110) で, 平均年齢は61.4±13.5歳であった。各種自覚症状の改善は, 著効28, 有効37, やや有効58及び無効14例で, 有効以上の有効例は65例 (有効率47.4%) で, 唾液分泌増加が最多で55例, 夜間分泌増加は内15例 (27.3%) にみられた。その他, 口渇改善11, 涙の分泌増加3, 便秘の改善2, 腸内ガスの改善, 発声の改善や味覚改善, 舌の刺激感の改善及び食べやすさが各々1例にみられた。1日3カプセル (C) より投与開始し, 副作用出現時は随時半減する方法で, 最終的に6分の1Cまで減量したが, 内服困難例には100 ml水に1Cを溶解し, うがいをさせた。途中1日1~2Cより変更投与とし, 随時増量した。著効, 有効, やや有効及び無効例の投与期間は各々11.8±6.3, 12.6±5.6, 11.1±5.5及び5.4±6.4カ月で, 無効例とやや有効例以上では有意差があった。著効例ではSjs疑いや非Sjs例の口渇例が多く, 無効例では逆にSjs例が多くみられ, かつ抗SS-A/B抗体陽性率が高い傾向がみられた。随伴症状として, 寝汗が13例, 口渇3例, 多汗, 胸焼け, 放屁, 夜間の視力低下, 胃もたれ, 便秘及び頻尿が各々1例にみられた。副作用は胃部不快感10, 悪心・嘔吐7, 腹痛4, 下痢4, 胃腸障害3, 腹部膨満感, 食欲不振, 寝汗・冷や汗が各々2例, 発声困難, 頻尿, 咽頭痛, 睡眠障害, 顔面腫脹, 視力障害, 全身倦怠感及び皮膚カンジダ症悪化が各々1例にみられたが, 一過性で自然回復した。本剤はSjsや疑い例の口渇症状に対して唾液腺分泌亢進作用がある。副作用は延べ42件 (30.7%), 胃腸障害が最多であったが, 何れも一過性であったので, 日常診療では有効かつ有用と考えられる薬剤の一つといえよう。
  • 村上 義之, 高梨 真教, 湧川 基史
    2004 年 66 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    局所多汗症に対してボツリヌス菌毒素製剤 (BTX-A) を補助療法として用いることによって, 患者のQOL (quality of life) を高めることができた5例を経験したので報告した。症例1 : 24歳の女性。掌蹠・腋窩多汗症のために右手と右腋窩に対しての胸腔鏡下交感神経節遮断術 (ETS) を行い, 右手の効果は良好なるも代償性発汗が著明であったため, 対側多汗症治療として左手・左腋窩にBTX-A注入を行った。代償性発汗を来すことなくVAS (visual analogue scale) にて100から10への改善を認めた。症例2 : 31歳の女性。掌蹠・腋窩の多汗症治療としてETSを受けたが, 腋窩での効果が不十分であったため, BTX-A注入にて自覚症状は1/10に軽減した。症例3 : 33歳の男性。足底の多汗症と足臭, pitted keratolysisを認め, 腰部交感神経ブロックを受ける前にBTX-A試行を目的に来院。BTX-A注入にて一過性ではあるものの発汗の減少 (VAS : 100 → 31), 足臭とpitted keratolysisは消失した。症例4 : 39歳の女性。腋窩多汗症に対して吸引法での手術を受けた。しかし夏の暑い時期の発汗が十分には抑制されなかった。そのため3年前から, この時期にあわせてBTX-A注入することによってVASは100から10~20へ軽減している。症例5 : 30歳の女性。腋臭症と腋窩多汗症のために翻転剪除法での手術を受けた。暑い時期の発汗のさらなる抑制を得るためにBTX-A注入を行い, 満足できる結果が得られた。
  • ―フマル酸ケトチフェンドライシロップを対照薬とした二重盲検群間比較試験―
    Epinastine Hydrochloride Dry Syrup Clinical Study Group
    2004 年 66 巻 1 号 p. 60-79
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    小児アトピー性皮膚炎 (15歳以下) のそう痒に対する塩酸エピナスチンドライシロップ (以下「WAL-DS」) の有効性ならびに安全性を評価するため, フマル酸ケトチフェンドライシロップ (以下「KET-DS」) を対照薬とした多施設共同二重盲検群間比較試験を実施した。各群の用量は体重別に設定し, WAL-DS群では体重14 kg以上24 kg未満で1.0 g (塩酸エピナスチン含有量10 mg), 24 kg以上で2.0 g (塩酸エピナスチン含有量20 mg) を1日1回 (朝食後), KET-DS群では体重14 kg以上24 kg未満で0.6 g (フマル酸ケトチフェン含有量0.828 mg), 24 kg以上で1.0 g (フマル酸ケトチフェン含有量1.38 mg) を1日2回 (朝食後および就寝前) とし, ダブルダミー法を用いてそれぞれ4週間投与した。WAL-DSの有効性の評価は, 治験薬投与4週時の「そう痒の程度」の基準値からの変化量を主要評価項目として行った。その結果, WAL-DS群78例の最小二乗平均値は−0.95, KET-DS群69例では−0.81であり投与群間差の95%信頼区間は−0.35~0.06であった。この信頼区間の上限が非劣性限界値として事前設定した0.5より小さいことからWAL-DSのKET-DSに対する非劣性が証明された。「皮疹の程度」, かゆみアンケートによる「そう痒スコア」 (副次評価項目) の結果も主要評価項目の結果を支持するものであった。有害事象はWAL-DS群で84例中37例 (44.05%), KET-DS群で78例中38例 (48.72%) にみられた。また, 副作用はWAL-DS群で84例中9例 (10.71%), KET-DS群で78例中22例 (28.21%) にみられた。主な有害事象は傾眠・倦怠感であり, WAL-DS群で7例, KET-DS群で20例にみられた。傾眠・倦怠感の発現には投与群間で差がみられた (p = 0.0054, Fisher正確検定)。傾眠・倦怠感の発現オッズ比は3.79, その95%信頼区間は1.50~9.57であったことから, KET-DS群の傾眠・倦怠感の発現はWAL-DS群のおよそ1.5~9.6倍と推定された。治験薬投与前後で増加や減少傾向がみられた臨床検査項目はWAL-DS群で総タンパク, ALP, KET-DS群で白血球数, ヘモグロビン, 総タンパク, 尿素窒素であったがその変動はすべて生理的な範囲内のものであった。小児での用量と有効性や安全性の関係については, 単位体重当たりの投与量 (以下「体重換算投与量」) を基に検討を行った。今回設定した体重換算投与量の範囲で有効性 (治験薬投与4週時の「そう痒の程度」の基準値からの変化量) はほぼ同等であり, また安全性 (有害事象発現の有無) における体重換算投与量の分布にも違いはなかった。以上の成績より, WAL-DSは小児アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療薬として1日1回の投与で有用で, 眠気・倦怠感などの中枢抑制作用の少ない薬剤であると考えられた。
  • ―ステロイド外用とBath-PUVA療法の併用療法との比較―
    中山 樹一郎, 水間 聖子, 田宮 正恵, 高橋 聡, 藤田 晶子, 久保田 由美子
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 66 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/10/21
    ジャーナル 認証あり
    3例の尋常性乾癬患者に入院によるbath-PUVA療法とマキサカルシトール軟膏外用の併用療法を行い, その臨床効果と副作用, とくに色素沈着について, 酪酸プロピオン酸ベタメサゾン軟膏を対照として検討した。月曜日から土曜日まで朝1回bath-PUVA療法を行い, その後下肢の一方をマキサカルシトール軟膏, 他方を酪酸プロピオン酸ベタメサゾン軟膏を1日2回外用し, 毎日臨床効果と色素沈着の程度を詳細に観察した。その結果, 臨床効果の速効性についてはステロイドの酪酸プロピオン酸ベタメサゾン軟膏の方が若干あるが, 治療開始後2週間程度で効果は同程度となり, 色素沈着についてはマキサカルシトール軟膏の方が必ずしも強くおこるということではなく, 酪酸プロピオン酸ベタメサゾン軟膏でもほぼ同程度のものがおこることが判明した。また, 一旦強くおこった色素沈着も6カ月以上たつと常色に戻ることも明らかとなった。これらの結果から, bath-PUVA療法とビタミンD3の外用療法による色素沈着は炎症後色素沈着であると結論された。
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