西日本皮膚科
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85 巻, 6 号
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目次
図説
  • 竹内 聡, 石倉 侑, 米田 玲子, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 431-432
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:46 歳,男性

    主訴:外尿道口近傍の多房性白色結節

    既往歴:特になし

    現病歴:初診の 1 年前に外尿道口付近に自覚症状のない多房性白色結節に気づき,増大してきたため当科を受診した。

    現症:外尿道口の両側に白色調で小豆大の多房性白色結節がみられ,その表面には毛細血管拡張が目立った(図 1)。

    病理組織学的所見:皮膚生検時に白濁した内容物が流出した。囊腫内壁は重層円柱上皮に覆われた導管構造で(図 2),その一部が断頭分泌様にみえたためアポクリン腺囊腫との鑑別のため PAS 染色と免疫組織化学染色を施行した。囊腫内壁上皮の PAS 染色は表層が陽性,EMA が基底層を除き陽性,p63 は基底層と基底上層に陽性,GCDFP-15,CEA,α-SMA,リゾチームは陰性であり,尿道上皮由来の囊腫と考えた(図 2 ,一部の陰性結果は図示省略)。

    診断:傍外尿道口囊胞

    治療および経過:泌尿器科受診時に囊胞はいずれも破胞し切除すべき囊胞がなく有症時に再診となった。

  • 荒巻 ちひろ, 柴山 慶継, 佐藤 絵美, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 433-434
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:70 歳,男性

    主訴:前胸部の皮膚腫瘤

    既往歴:高血圧,心房細動

    現病歴:4 年前より自覚する前胸部の皮膚結節が増大し出血を伴い始めたため当科を受診した。

    現症:前胸部正中右側に 55×37 mm の半有茎性紅色腫瘤があり(図 1 a),表面にはびらん,潰瘍,痂皮を伴っていた(図 1 b)。

    ダーモスコピー所見:網目状白色支持組織下に淡黄色内容物と大小の出血が透見され(図 2 a),別箇所では点状および線状蛇行血管,半透明灰色領域が認められた(図 2 b)。

    病理組織学的所見(全摘像 HE 染色):表皮直下から皮下にかけて細い線維性間質で区画された粘液湖があり,粘液湖内には異型上皮集塊が浮遊していた(図 3 )。

    検査所見:全身精査にて他臓器の悪性腫瘍やリンパ節転移は認めなかった。

    診断:皮膚原発粘液癌

    治療および経過:腫瘤辺縁より 10 mm 離し,下床は大胸筋と胸鎖乳突筋の筋膜を含めて切除し分層植皮術を施行した。術後 4 年再発なく経過している。

  • 工藤 真亜子, 西依 諒, 中園 裕一, 甲斐 宜貴
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 435-436
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:2 歳,女児

    主訴:尾骨部の隆起性病変

    既往歴:特記なし

    家族歴:初診 6 カ 月前に兄が伝染性軟属腫に罹患した。

    現病歴:初診 3 カ 月前に尾骨部に隆起性病変が出現し,徐々に増大したため,当科に紹介となった。

    初診時現症:尾骨部に 20×5 mm の鶏冠状の鮮紅色,表面に凹凸のある腫瘤を認めた(図 1 2)。

    病理組織学的所見:表皮母斑,尖圭コンジローマ,伝染性軟属腫等を鑑別に考え,皮膚生検を施行した。乳頭状に隆起した病変で,表皮は一部でびらんを形成していた。内方性に増殖した角化細胞の胞体内に好酸性の封入体(molluscum body)がみられ,真皮浅層にリンパ球や好中球を交えた密な炎症細胞浸潤を認めた(図 3 4)。

    診断:伝染性軟属腫

    治療および経過:皮膚生検より 1 カ 月後の再診時,腫瘤はすでに縮小傾向を示しており(図 5),冷凍療法を一回施行したのみで消退した。

  • 竹内 聡, 石倉 侑, 米田 玲子, 隅田 幸佑, 中原 剛士
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 437-438
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    患者:24 歳,男性

    主訴:陰囊部のびらんを伴う紅色結節,疼痛

    既往歴:特になし

    現病歴:3 カ 月前より陰囊右側に疣様結節が生じて増大し,びらんを伴う紅色結節となり当院泌尿器科を受診した。MRI で両側リンパ節腫脹がみられ,陰囊癌を疑われ生検目的に紹介となった。受診約 3 カ 月前まで複数の異性との感染機会があった。

    現症:陰囊右側に 6.0×3.5 cm で白苔様の点状角化とびらんを伴う紅色結節と同左側にも同様の小結節がみられた(図 1 )。他に軽度の陰茎包皮炎とびらんがみられた。

    病理組織学的所見:表皮突起は著明に延長して不規則に融合し,一部に楔状の角化がみられた(図 2 a)。表皮細胞の異型は乏しく,真皮に浸潤する炎症細胞の主体は形質細胞であった(図 2 b)。核分裂像は少数で(4/20HPF 程度)で表皮の肥厚は炎症性変化と考えられた。追加の免疫組織化学染色では肥厚した表皮の比較的浅層に抗 Treponema pallidum 抗体が陽性で(図 2 c),細胞間に多数の菌体様構造がみられた(図 2 d)。

    血液検査所見:CEA:0.7 ng/ml,CA19-9:5 U/ml,SCC:2.3 ng/ml と正常範囲で,病理組織確認後,保存血清での TPHA と RPR 定性は強陽性,その後の定量では TPHA:20480 倍,RPR:64 倍と高値で,HIV,HBV,HCV,淋菌,クラミジアはいずれも陰性であった。

    診断:扁平コンジローマ

    治療および経過:当院感染症内科にてアモキシシリン 1500 mg/日を 28 日間処方され,再診予定であったがその後来院はなかった。

綜説
症例
  • 吉満 眞紀, 西田 絵美, 桝田 道人, 石岡 久佳
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 444-448
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    82 歳,男性。約 3 カ 月前からの物忘れを主訴に近医内科より当院脳神経内科を紹介され受診した。頭部 MRI にて特徴的な所見を認めたため神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease)を疑われ,診断のための皮膚生検を目的として当科へ紹介となった。腹部から脂肪織を含めて皮膚生検を施行した。病理組織学的に,汗腺細胞や血管内皮細胞の核の一部にごく小さな空胞状変化を認め,核内にユビキチン陽性の小型球状物を少数認めたものの典型像とは言えず確定診断には至らなかった。再度腹部から皮膚生検を行い,電子顕微鏡にて観察すると線維芽細胞,毛細血管内皮細胞において核内封入体を認め,神経核内封入体病と診断した。神経核内封入体病は皮膚生検により確定診断が得られる疾患であるため,今後も皮膚科への皮膚生検の依頼を受ける機会が見込まれる。診断には汗腺細胞や脂肪細胞を多く含む組織から生検を行うことが重要であり,生検部位は安全面・整容面を考慮し,腹部からの皮膚生検を提案する。またヘマトキシリン・エオジン(HE)染色のみでなくユビキチンなどの免疫組織化学染色を行うこと,さらに電子顕微鏡検査を行い核内封入体を正確に捉えることで,より診断に結びつきやすくなると考える。

  • 荒木 聖菜, 工藤 恵理奈, 松尾 敦子, 奥村 恭博, 大佐古 智文
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 449-455
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    症例 1:63 歳,女性。9 年前に左乳癌を発症し,寛解状態だった。2 カ 月前に多発転移が判明し,筋力低下と皮疹が出現した。CK 上昇,抗 TIF1-γ 抗体陽性より皮膚筋炎と診断した。プレドニゾロン(PSL) 70 mg/日を開始後に症状は一旦改善を認めたが,乳癌の多発転移増悪に伴い皮膚筋炎が再燃した。CK は軽度上昇にとどまり,PSL 増量にて皮膚筋炎症状の進行は抑制しえたが,乳癌の病勢が悪化し初診から 1 年 3 カ 月後に死亡した。症例 2:52 歳,女性。1 年 6 カ 月前に左乳癌と診断された。術後化学療法中に多発リンパ節転移を認め,免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブ(テセントリク®)を開始した。6 コース投与後に乳癌の病勢進行と,同時期に頭頚部の皮疹,筋力低下や嚥下障害を認め,抗 TIF1-γ 抗体陽性皮膚筋炎と診断した。PSL 60 mg/日内服により皮膚・筋症状は改善したが,乳癌の多発転移増悪に伴い皮膚筋炎症状が再燃した。乳癌は緩和的治療の方針となり,皮膚筋炎は改善と増悪を繰り返しながら,初診から 1 年 2 カ 月後に死亡した。本邦ではこれまでに 24 例の乳癌合併皮膚筋炎が報告されており,文献的考察を加えて報告する。

  • 須永 知里, 山内 輝夫, 岩切 琢磨, 永田 茂樹
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 456-459
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    60 代,男性。40 年前から痛風の既往があるが,治療は自己中断していた。自覚症状はなかった。手指,足趾に白色結節が多数みられ,当科を受診した。両側手掌と指腹,右足趾に自覚症状がない 2~10 mm の黄白色,弾性軟および硬の小結節ないし結節が多発していた。左手第 4 指の DIP 関節には 1 cm の結節があり,全周性に腫脹がみられた。右第 3 趾 PIP 関節には同様の結節が認められた。石灰化病変を考え,単純 X 線撮影を施行したが石灰化病変は描出されなかった。末梢血尿酸値は 11.4 mg/dl であった。病理組織学的所見:真皮乳頭下層から皮下組織にかけて,不整形,大小不同の好酸性無構造物質が存在し,偏光顕微鏡で黄白色の針状結晶がみられ,痛風結節と診断した。両膝痛風性関節炎のため,プレドニゾロン 20 mg/ 日内服とトリアムシノロンアセトニド関節内注射を施行した。フェブキソスタット 30 mg,ベンズブロマロン 50 mg 内服追加し 1 カ 月後,尿酸値 4.7 mg/dl まで低下し症状軽快した。高尿酸血症は近年,内科的治療が確立されており痛風結節に至る症例は稀である。しかし,皮膚科領域でも痛風結節を診察する機会はあり,特に手指の結節は鑑別に関節リウマチ,黄色腫,石灰沈着症,腫瘍性疾患などが挙げられる。高尿酸血症の早期治療の重要性を認識するとともに,手指の結節を診察した際には痛風結節も念頭に置いて,積極的に皮膚生検にて診断し,一部をアルコール固定法に供し,偏光顕微鏡で針状結晶を確認する必要がある。

  • 上野 彩夏, 山﨑 修, 山田 義貴
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 460-462
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    55 歳,女性。初診の 3 週間前に鼻根部左側の硬結に気付いた。少しずつ増大したため同月当科を紹介され受診した。鼻根部左側に表面常色,小指頭大の弾性硬の硬結を認めた。生検では表皮に変化はなく,真皮中層~深層から皮下に及ぶ結節性~びまん性に肉芽腫性病変を認めた。内部には笹の葉状の裂隙を形成し,それを取り囲むように組織球を主体とするリンパ球などの炎症細胞の浸潤を認めた。皮膚コレステリン肉芽腫と診断した。生検 1 週間後の再診時には鼻根部左側の硬結はほぼ消退していた。コレステリン肉芽腫は耳鼻科領域での報告が多く,皮膚科領域では報告数が少ない。自験例を含めた報告例の集積から鼻根部に生じた場合は自然消退する可能性があるため,経過観察してもよいと考えた。

  • 麻生 麻里子, 古賀 文二, 鶴田 紀子, 今福 信一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 463-465
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    4 歳,男児。生下時より頭部に脱毛斑,頚部前面にポリープ状の小結節があった。当科初診の 1 カ 月前に,母親が両鼠径部周囲の皮膚の色調変化に気づき当科を受診した。初診時,下腹部から両鼠径部にかけて広範囲の皮膚が軽度陥凹し,淡紅色を呈していた。病理組織所見では皮下脂肪織の減少をみとめ,小児腹壁遠心性脂肪萎縮症と診断した。頭部と頚部前面の病変は,それぞれ臨床像および病理組織像より脂腺母斑,軟骨母斑と診断した。頚部軟骨母斑は全身の合併奇形が多いとする報告があるが,渉猟した限りこれら 3 疾患を合併した報告はなかった。

  • 中川 浩一, 東田 理恵, 德田 一三, 松尾 彩子, 岡林 綾, 下村 裕
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 466-469
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    62 歳,男性。身体各所に多数の色素斑,黒褐色結節を認め,近医より精査加療目的に紹介された。病変はいずれも直径 1 cm までで潰瘍化したものはなかった。背部の色素性病変を切除し病理組織検査に供した。表皮にぶら下がるように好塩基性細胞の胞巣が散見され基底細胞癌表在型と診断した。頭部 CT 検査では顎骨内の囊腫性病変と大脳鎌の石灰化を認め,胸部 CT 検査では肋骨の分裂像が観察された。以上の所見を Kimonis らの診断基準に当てはめて基底細胞母斑症候群と診断した。なお,家族に同症はなかった。末梢血の DNA を用いて本疾患の原因遺伝子の 1 つである PTCH1 遺伝子を解析した結果,エクソン 13 に 1 塩基の欠失変異 c2218delT がヘテロ接合型で同定された。本変異は,われわれが調べえた限りにおいて過去に報告されておらず,新規の変異と考えられた。症例を記載し,遺伝子変異についても考察した。

  • 天野 友里恵, 安達 ルナ, 岩瀬 優子, 西川 恵理
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 470-472
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    74 歳,男性。左下腿に約 16×15 mm 半球状に隆起した皮下結節を認めた。全摘生検の結果,外毛根鞘性囊腫(trichilemmal cyst:TC)と診断した。病理組織学的所見は重層扁平上皮からなる囊胞壁を有し,壁細胞は腔側に向かうにつれて大型化し,顆粒層はほとんどみられず直接角化していた。TC は被髪頭部に好発し,頭部以外に生じた場合は臨床診断がやや困難である。今回われわれは下腿に生じた TC の症例を経験したので報告した。TC は臨床的に表皮囊腫(epidermal cyst)との鑑別が難しく病理学的診断により鑑別されるが,両者にはそれぞれいくつか臨床的特徴があるため,その点に関しても考察を加えた。また最近では TC と一連のスペクトル上にある疾患として捉えられている増殖性外毛根鞘性囊腫(proliferating trichilemmal cyst)や malignant proliferating trichilemmal tumor に関しても若干の考察を加えた。

  • 佐々木 千晃, 松立 吉弘, 岡﨑 秀規, 定本 靖司
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 473-476
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    70 歳,女性。子宮筋腫(子宮全摘術),左腎珊瑚状結石(左腎摘術)の既往があった。60 歳頃より眉毛部,前額の皮膚肥厚を自覚しており,時折疼痛を伴うため当科を受診した。両眉毛部から前額にかけて,皮膚表面の変化を伴わないびまん性の硬結を認め,眉間や前額の皺襞が深くなっていた。上口唇白唇部や鼻唇溝部も全体的に皮膚が肥厚し,表面の毛孔が開大してみえた。右手関節部には約 6 mm で弾性硬の褐色丘疹を認めた。左眉毛上部の皮膚生検では真皮全層性に紡錘形細胞の増生を認め,Desmin 陽性であった。右手関節部の丘疹の切除検体も同様の腫瘍細胞が増生していた。以上より,多発性皮膚平滑筋腫と診断した。顔面の腫瘍は境界が不明瞭で,外科的治療は困難なため無治療で経過をみている。多発性皮膚平滑筋腫のなかには Fumarate hydrataseFH)遺伝子変異が同定されるものがあり,子宮筋腫や腎細胞癌を合併する頻度が高いことが知られている。自験例は遺伝子検査を行っていないが,子宮筋腫の既往を有しており,FH 遺伝子変異を有する可能性がある。今後は腎細胞癌の発症に注意が必要である。多発性皮膚平滑筋腫の皮疹分布・数は報告によりさまざまであるが,いずれの報告でも個疹は丘疹,小結節であり,自験例のように顔面にびまん性の硬結,深い皺襞を形成した症例は見当たらず貴重な症例と考えた。

  • 加古 志織, 小林 瑞穂, 澤田 啓生
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 477-480
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    49 歳,男性。5 年前から頭頂部右側に疼痛を伴わない皮下腫瘤を認め,徐々に増大したため来院した。 初診時,直径 4 cm 程度の弾性軟で可動性良好な皮下腫瘤を認めた。脂肪腫などの皮下腫瘍を考え CT を施行した。CT では頭頂部右側頭蓋骨に沿って 36×38×11 mm のレンズ型の皮下腫瘤を認めた。内部は脂肪吸収値であったが,一部にやや淡い吸収値上昇を伴っていた。脂肪腫を考え局所麻酔下で全摘出術を施行した。病理組織学的には皮下に脂肪細胞を多く含んだ腫瘍を認めた。脂肪細胞は成熟した大型サイズが主体であったが,小型サイズの脂肪細胞もみられ,繊細なものから太い好酸性のロープ状の膠原線維(ropey collagen)まで膠原線維性の結合織の増生を混じていた。その中に紡錘形細胞や多彩な核を有する細胞を認めた。紡錘形細胞の核は大小不同で腫大化しており,紡錘形脂肪腫より非定型な組織像であった。免疫組織化学染色で CD34,p16 がびまん性に陽性を示し,MDM2,CDK4 は陰性であった。異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫(atypical lipomatous tumor/well-differentiated liposarcoma)との鑑別を要したが fluorescence in situ hybridization 法(FISH 法)にて MDM2 の増幅は認めなかったため,異型紡錘形細胞/ 多形脂肪腫様腫瘍(atypical spindle cell/pleomorphic lipomatous tumor)と診断した。

  • 掛地 由貴人, 渋谷 真美, 江川 形平, 神戸 直智, 曽根 尚之, 椛島 健治
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 85 巻 6 号 p. 481-484
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    47 歳,男性。45 歳時に粘膜優位型尋常性天疱瘡を発症し,プレドニゾロンの内服,免疫抑制剤,ステロイドパルス,免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIG)などで治療をされるも,プレドニゾロン内服薬の減量とともに症状が再燃し,難治であった。2021 年 12 月,本邦でリツキシマブ(リツキサン®)が難治性天疱瘡群に対して保険適用となったため,本患者に 4 週間隔でリツキシマブ 1000 mg を 2 回投与した。2 回目投与 2 週間後に発熱,呼吸困難が出現し,重症 COVID-19 肺炎と診断され当院 ICU へ緊急入院となった。人工呼吸器管理や抗ウイルス薬,ステロイドパルスなどの治療で一旦は肺炎が改善したものの,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome)を発症し死亡の転帰となった。なお,本症例では COVID-19 ワクチンは未接種であった。COVID-19 禍における天疱瘡患者へのリツキシマブ投与について,文献的考察を加えて報告する。

研究
  • ――繰り返し使用を含む長期の安全性及び有効性の検討――
    是松 健太, 横田 成彬, 可児 毅, 村上 尚史, 松井 慶太
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 85 巻 6 号 p. 485-491
    発行日: 2023/12/01
    公開日: 2024/01/25
    ジャーナル 認証あり

    クロベタゾールプロピオン酸エステルシャンプー(コムクロ® シャンプー 0.05%:以下,本剤)は, 2017 年に頭部の尋常性乾癬を効能・効果として製造販売承認されたシャンプー様外用液剤である。2018 年 3 月から 2020 年 11 月まで,頭部の尋常性乾癬に対する本剤の特定使用成績調査を実施し,日常診療下での繰り返し使用を含む長期使用時(4 週を超える使用)の安全性・有効性を検討した。副作用は 2.40%(8/333 例)で認められたが,いずれも非重篤であり,ステロイド外用剤の副作用として広く知られているものであった。シャンプー剤及び短時間接触療法に特有の副作用はなく,漫然と使用を継続しない場合において,頭部尋常性乾癬治療に対して,安全かつ有用な選択肢の一つと考える。有効性については,頭部の尋常性乾癬の改善割合は 80.2%(267/333 例)であり,繰り返し使用時でも十分な効果が認められていた。また,投与期間の長い患者は改善割合が高く,投与を継続することでより高い効果が得られることが確認された。本剤はシャンプー剤として短時間接触療法を特徴とする薬剤であり,アドヒアランスの向上及び副作用の低減が期待できる。 本調査結果より,本剤は実臨床での頭部の尋常性乾癬の繰り返し使用を含む長期使用においても有用な薬剤であることが示された。

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